「同一労働同一賃金と労働条件の不利益変更」
~山口総合病院事件(山口地判令和5.5.24)から見る今後の均等・均衡待遇~
■ 我が国の労働者の中で非正規雇用者の占める割合は、平成元年には全体の19.1%であったのが、令和4年には36.9%にも上るなど(厚生労働省「『非正規雇用』の現状と課題」)、年々高くなっており、今や非正規雇用者は、我が国の労働力の重要な担い手となっています。
■ また、現在、我が国は深刻な少子高齢化社会を迎えている中で、平成25年改正高年法により、企業には、正社員を65歳まで雇用し続ける義務が課されることになったため、60歳定年に達した正社員を、以後、非正規雇用者として一定年齢まで雇用し続ける企業も多く見られるようになりました。
■ これらに伴い、正社員と非正規雇用者の待遇差や非正規雇用者の雇用の不安定さなどが社会的に注目をされるようになり、平成5年パート法改正、平成25年労働契約法改正を経て、平成30年にパート有期法8条9条において、正社員と非正規雇用者の均等待遇及び均衡待遇が定められるに至りました。
■ これと並行して、ハマキョウレックス事件・日本郵便事件といった同一労働同一賃金の問題に関して、非正規雇用者(労働者)側の主張を広く認めた最高裁判決も出始めたことは記憶に新しいところです。これらの判決の中で示された、「正社員と非正規雇用者の待遇差については、費目ごとにその支給の目的等から不合理性の有無を判断する」という基準はその後の裁判例でも踏襲され、従来正社員のみの支給が当然に認められてきた賃金が、その性質によっては不合理な待遇差として違法と判断されています。
■ その一方で今年5月24日に山口地裁は、正職員の手当を削り、非正規職員との同一労働同一賃金化を図るという不利益変更につき、合法と認める判決を下しました。これは、正社員の待遇を引き下げることで正社員と非正規雇用者の待遇の格差を解消することを認めた初めての判決といえるでしょう。
■ 今後、企業としては、無尽蔵ではない原資の中で、正社員と非正規職員の待遇のバランスを図ることが求められていくものと思われますが、これは上記の事件のように、正社員にとっては労働条件の不利益変更に当たる可能性もあるため、労使間の交渉が難航することも予想されるところです。
■ そこで、本セミナーでは労働条件の不利益変更の有効性を確保しながら、正社員と非正規雇用者の均等待遇・均衡待遇を実現するために企業が留意すべき点を解説していきます。
■ もちろん、上記山口地裁判決は令和5年6月末時点では他に類を見ない判例であり、今後の裁判所の判断の方向性は不透明なところではありますが、上述した社会の変容や、政府が推進する解雇規制の緩和・ジョブ型雇用から、正社員と非正規雇用者間の待遇差解消とそれに伴う不利益変更は避けられない流れであると考えられます。
■ 本セミナーでは、まずは労働条件の不利益変更の基本知識を概観したうえで、同一労働同一賃金の要諦を解説し、企業における同一労働同一賃金化を進める中で、押さえるべきポイントを押さえずに労使関係がこじれるような事態が生じることを回避することを目標としたいと思います。
セミナー概要
テーマ詳細 |
内容:
① 労働条件の不利益変更の基本知識の解説
② 判例・ガイドラインを踏まえた同一労同一賃金の要諦の解説
③ 最新裁判例の解説 |
主催者 |
株式会社金融財務研究会 |
講師 |
弁護士法人髙井・岡芹法律事務所 代表社員弁護士 岡芹健夫 |
日時 |
2023年9月8日(金)13:30~16:30 |
会場 |
グリンヒルビル セミナールーム(東京都中央区日本橋茅場町1-10-8) 地図を見る
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参加費用 |
35,000円 /お二人目から30,000円
※消費税・参考資料込 |
定員 |
・会場
・LIVE配信(Zoom):制限なし
・後日配信:制限なし
※いずれも開催前のお申込みが必要です。 |
お申込み方法
株式会社金融財務研究会のHPよりお申込みください。