【巻頭言】
「技能と技術、改善と改革、将棋とチェス ~日本人の特質に寄せて」 弁護士 岡芹健夫
【人事労務の時言時論(第12回)】
「インターンシップ導入時の注意点」 弁護士 米倉圭一郎
【エッセイ】
「非文化国家日本」浦上蒼穹堂 浦上満様
【連載エッセイ】
「【重慶通信】『官二代』と『窮二代』」四川外語学院(重慶)福田繁様
「はり入門 ― 針? 鍼?」東邦大学医療センター大森病院東洋医学科顧問 ツチヤ診療所 所長 土屋喬様
【髙井伸夫の愚論凡説】
「拡大均衡を旨とする「アベノミクス」は大失敗に終わる!」 弁護士 髙井伸夫
【ティータイム】
弁護士 帯刀康一
【北京だより(34)】
「海外高校生による日本語スピーチコンテスト その2」
NPO法人エデュケーション ガーディアンシップ グループ JSA中国事務局 佐久間徹様
【上海だより(35)】
「上海凱阿の呟き その2」 滋慶投資諮洵(上海)有限公司特別顧問 上海和僑会顧問 浅地安雄様
【事務所行事報告】
・新刊本のご案内
・改訂本のご案内
・第16回 人事・労務実務セミナーのご報告
・共催セミナーのご案内
・「判例・事例から見えてくる労働対策セミナー」開講のお知らせ
・NPO法人キャリア権推進ネットワークのご案内
・懇親会のご報告
・上海代表処活動報告
・北京代表処活動報告
・夏期休業のお知らせ
<同封物一覧>
(1)『取締役の教科書 これだけは知っておきたい法律知識』刊行のご案内(兼申込書)
(2)労判セレクション③『改訂版 労使の視点で読む最高裁重要労働判例』のご案内(兼申込書)
(3)第17回「人事・労務 実務セミナー」のご案内
(4)ベトナムセミナーのご案内
(5)第22回 中国セミナーのご案内
(6)北朝鮮視察旅行のご案内
(7)ミャンマー視察旅行のご案内
(8)東京経営者協会 入会のご案内
(9)NPO法人「キャリア権推進ネットワーク」入会のご案内
(10)自然農園 風戸農園を応援する会の発足と限定会員の募集
(11)中国情報№64
経営法務情報「Management Law Letter」は、顧問会社及び弊所のお客様に無料にて配布しております。ご質問等ございましたら、下記までご連絡下さいますようお願い申し上げます。
問合わせ先担当:宮本・池田 tel 03-3230-2331
【巻頭言】
「技能と技術、改善と改革、将棋とチェス~日本人の特質に寄せて」 弁護士 岡芹健夫
1 弁護士稼業20年目にして思う
自分でも信じがたいところであるが、私も今年の4月で弁護士歴20年を迎えた。20年の長きにわたり、弁護士稼業という浮き沈みの少なくない職業人生を曲りなりにも大過なく送れてきたのは、ひとえに、髙井伸夫会長と、何よりも弊所を支えてくださっている顧客の皆様方のご支援の賜物である。まずは、心より、御礼申し上げる次第である。
さて、弊所も私も、業務の主な柱は労働事件(企業側、使用者側)であり、そうした仕事をしていると、企業の業務の実情、さまざまな労働者(相手方当事者に限らず、その上司、同僚、部下としてむしろ企業側の立場にいる者も含む)の実態、人柄に触れることが多い。そうした中で、本稿では、日本の企業、ひいては日本人につき、常日頃から感じている雑感につき、少し述べてみたいと思う。
2 日本企業および労働者の傾向
よく、「日本人は、改善は得意だが、改革は苦手」と言われる。これは、日本=将棋、西洋=チェス、といった対比と共通する。すなわち、改善にしても将棋にしても、既存のシステム・駒が否定や抹消されることがない一方で、改革やチェスでは、既存のシステムは否定され、駒はゲームから抹消される。そこには、日本人の「もったいない」精神というべきか、あいまいさを残すというべきか、いずれにせよ、人でも物でも、極力捨てることのないようにしよう、という国民性が表れている。
これに近い例として私が思うのが、「技能と技術」の違いである。日本人は鍛錬により既存の道具をいかに上手く使いこなすことができるようになるかを好む(それこそ匠の技というもの)。西洋では、道具そのものを換えてしまう開発が好まれる感がある。これも、既存の道具を否定することを避ける日本人の傾向であろう。
3 人事システム、ルールにおける日本の特色
前述のような、日本人には既存の人、物を否定することへの怖れがあることにより、全体のために一部を犠牲にするということを怖れるところが(西洋に比して)強い。評価やそれに伴う給与分配なども、上下で差をつけるいわゆる信賞必罰的な処遇は、比較的好まれない傾向にあるし、さらには裁判例にしても昇給は良くとも降給の合法性には厳しい審査を行うことが通例である。また、経営的苦境における賃金カットにしても、一部の、いささか仕事に比してもらいすぎの社員の賃金をカットすることには厳しく、社員全体に及ぶ薄く広い賃金カットには寛大な傾向もある。
私は、本稿において、こうした日本の特色が時代遅れとかグローバル競争にそぐわないと言っているのではない。ただ、日本にとってますます厳しい時代となるこれから、願わくば、こうした日本の特色を活かした社会制度、法制度、教育制度が設計されていってほしいと願うところである。
以上
【人事労務の時言時論(第12回)】
「インターンシップ導入時の注意点」 弁護士 米倉圭一郎
今まさに、平成26度入社の採用活動が行われていますが、近年、採用活動に類するものとしてインターンシップが活用され始めています。そこで本稿では、このインターンシップについて、労働法的見地からあらためて検討していきたいと思います。
インターンシップに関する共通した定義はありませんが、平成9年9月18日に当時の文部省、通商産業省、労働省が発表した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」によれば、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と幅広い内容を含んだ定義づけがなされてます。本稿でもインターンシップはこのような広い意味で用いることとします。
まず、労働法的見地からは、インターンシップに参加する学生の労働者性を検討する必要があります。学生が「労働者」(労働基準法九条)に該当することになると、労働基準関係法令が適用されるからです。
この点については、厚生労働省の解釈例規では、「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある」とされています(平成9・9・18基発636号)。
たとえば、インターンシップが職場見学、研修という内容であれば、見学や体験的なものとして、学生は「労動者」には該当しません。これに対して、社員と同じようにプログラミングをし、それを会社が活用するのであれば、作業による利益・効果が事業場に帰属することになり、さらに、使用者と学生との間に使用従属関係が認められる結果、学生は「労働者」に該当することになります。
学生が「労働者」に該当する場合、インターンシップ中の日当を支払うのであれば、それは賃金に該当します。そして、学生がアルバイトをしているのであれば、そこの労働時間とインターンシップ中の事業場での労働時間の合計には、1日8時間、週40時間という労働時間に関する規制(労働基準法32条)が適用され、これを超えると時間外割増賃金の支払いが必要になります。また、インターンシップ中に事故が発生した場合には、労働災害として取り扱われるため、労災保険の対象となります。なお、健康保険における業務上・外の区分が廃止され、労災保険の給付の対象とならないインターンシップは健康保険の対象となりました(平成24・11・5基労管発1105・1号、基労補発1105・2号)。
もっとも、学生が「労働者」に該当しない場合においても、インターンシップ中は企業は学生に対して、安全配慮義務を負っているものと考えられますので、実務上は事故の発生に備えて、賠償責任保険等への加入を検討する必要があると思います。
以上のことから、インターンシップについては、学生とアルバイト契約を締結し、労働契約が成立していることを明確にすることが望ましい場合も出てきます。
インターンシップに参加することで、学生は社会で実際に行われている業務を体験し、業務に関する希望と現実のギャップを埋めていくことができます。現在、新卒社員の離職率が三割ともいわれています。費用をかけて優秀な人材を新卒採用したにもかかわらず、離職することになると、会社にとっても学生にとっても損失が大きいことになります。インターンシップは、学生の意識を変え、長期的に企業に優秀な人材をとどめる一つの方法であると思われます。
以上
【エッセイ】「非文化国家日本」浦上蒼穹堂 浦上 満 様
本年3月19日、ニューヨークの大手競売会社サザビーズで、中国北宋時代の定窯白磁碗が米ドルで約220万(約2億2000万円)で落札され、注目を浴びました。CNNテレビをはじめ世界中のマスコミが大騒ぎし、私もテレビ朝日の午後6時からのニュース番組の取材を受けました。もちろん直径12センチほどの小さな碗に2億円以上の値が付くというのは驚きでしょうが、実は古美術の世界ではそれほど驚く数字ではありません。ちなみに半月後の4月8日の香港サザビーズでは、清康煕時代の直径11センチの琺瑯彩碗が7400万香港ドル(約10億円)で落札されています。
それでは冒頭の白磁碗がなぜそんなに世間の耳目を集めたのかといいますと、出品者が5年ほど前にニューヨーク州のガレージセールでなんと3ドル(約300円)でこの器を購入し、自宅の暖炉の上に飾っていたからなのです。査定を行ったサザビーズの専門家はエスティメートを20万~30万ドルと見積りましたがオークションでは競り合いになり、上記のような結果になったのです。
私に質問したテレビ朝日のニュースキャスターは、まず「こんなことはよくあるんですか?」と聞いてきましたので、当然「滅多にあることではありません」と答えました。世間はこのような掘り出し話が大好きなのですが、それは宝くじに当たるよりも小さな確率と言えます。 ただ、ほとんどの人にとって古美術はわけがわからない世界なので、ひょっとしたらという夢のような話が増幅されるのでしょう。実際、全く同じものは二つとないのが古美術作品ですし、本物でもピンからキリまであります。それに加えてニセモノもたくさんあるのですから途方に暮れる方もいらっしゃるでしょう。
それでは、どのようにしたら良い古美術品が買えるのかといいますと、ずばり、信頼できる人間や店を見つけることです。そして彼ら専門家によって選び抜かれた作品の中から、自分の好みと予算に合うものを買うのが王道だと思います。
先述の定窯白磁碗を落札したのはジュゼッペ・エスケナージというロンドンの有名美術商ですが、私は彼とは35年以上の交友があります。彼は、CNNテレビのインタビューで「類品は大英博物館に一点あるだけ。この作品が買えてとてもハッピーだ」と語っています。売った人も喜び、買った人も喜ぶ、そして仲介手数料を得たオークション会社も喜ぶという構図です。誰かが泣きをみるという場末の骨董話はここにはありません。
同じ3月19日のサザビーズオークションには、日本からのプライベートコレクションも50余点出品されました。かなり質の高い作品群でしたので高値で落札されました。これも売った人はハッピーだったかもしれませんが、日本から良い美術品が一方的に流出しているという事実を直視しなければいけません。美術品の売買・移動はその時々の国力や文化力を反映しますが、そういう意味では、まさに日本は文化の危機的状況にあるといえます。日本人は元々、高い鑑識眼や優れたセンスをもっていて、中国古美術の優品を千年以上前から継続して収集してきたのに残念なことです。
今年に入ってからアベノミクス効果で株価などはかなり高騰しましたが、まだまだ美術品にはその恩恵がきていません。諸外国では一級の美術品は金融資産よりも高く評価されることがあります。目先の金儲けということではなく、長期的に安定した資産としてです。そこには単に資産として考えるだけでなく、一級の美術品をもつ喜びや誇りもあります。国家としての文化予算も日本は貧しいものです。日本を代表する東京国立博物館の年間予算(購入予算ではありません)はソウルの中央博物館の半分以下、大英博物館の5分の1、ルーブル美術館の10分の1と聞き及んでいます。政治・経済ももちろん大切ですが、最後に残るのは文化ということを肝に命じていないと、わが国は世界中から尊敬される国には決してなれないと思います。
以上
【連載エッセイ:重慶通信】「『官二代』と『窮二代』」四川外語学院(重慶)福田繁様
就職難です。といっても労働者ではありません。労働者はむしろ不足気味ですが、大卒が余っているのです。深刻な「大学は出たけれど」時代の到来です。
今年の大学卒業生(高専を含む)は700万人に達します。わたしが教えはじめた16年前の1997年は、まだ100万人以下でしたから、実に七倍です。いくら経済が高度成長したからといって、大卒のホワイトカラーの仕事が七倍に増えるわけはありません。しかも現在の景気の低迷を反映して、今年の求人は昨年比15%減少しているそうですから、新聞が「史上最大の就職難の年」と書き立てるのも無理はありません。
就職難に関連してもう一つ深刻な問題があります。それは「階層格差の固定化」です。
昨年北京のある有名大学の博士課程の学生が自殺しました。彼は農村出身で努力に努力を重ねて進学した学生でしたが、就職がうまくいかず、前途を悲観して自殺したのです。彼の母親あての遺書は次のようなものでした。
「この世界は絶望の泥水だ・・・すべての努力は既得権益集団の足元で踏みにじられる・・・いくら努力しても一歩も前に進めない・・・学んだ知識などなんの役にも立たない・・・役に立つのはカネと権勢と関係(コネ)と背景(出自)だけ・・・まっとうな才能が世に認められることのなんと困難なことか・・・」。
貧しい農村出身の彼の肩には、一家を挙げての支援(借金を含む)と期待がかかっていました。しかしその期待は空しい夢と散ったのです。
先日学生たちに一番人気の就職先はどこかと訊きました。するとクラス全員が声を揃えて「コームイン」と答えてどっと笑いました。嘲笑的なシニカルな笑い声でした。理由はと訊くと、ほとんどが「安定」をあげましたが、中には「おいしいから」と茶々を入れる学生もいました。正直ですね。公務員の「灰色収入」を考えれば・・・。
公務員になるにはもちろん公務員試験に合格しなければなりません。たいへんな難関です。職位によって違いますが、何百倍、何千倍という競争率も珍しくありません。ただその試験の成績の良いものがそのまま採用されるというわけでもないようです。
わたしの学生の中でも、ごく少数ですが公務員や大手国有企業に就職が決まった学生がいます。しかし彼(彼女)たちがみな良くできる学生かというと、ちょっと頭を傾げざるを得ません。ほかの学生によれば、最後に「面接」があり、そこで「関係(コネ)のあるなし」「背景(出自)の善し悪し」が物を言う・・・のだそうです。決まった学生の関係や背景はさぞ良かったのでしょう。
わたしの学生の中に親が税務署勤務という子がいます。彼女によれば、その税務署で欠員ができた場合、その穴埋めの採用人事は公務員試験に関係なく、次の次、さてはその次まで全部、すでに「関係者」で決まっているそうです。税務署が「おいしい」仕事として公務員の中でも人気が高いことを考えれば当然かもしれませんね。
こういう現象を「官二代」といいます。そして関係や背景がなくて、どんなに努力しても下積みから脱することができない人たちのことを「窮二代」といいます。
社会の安定には、その社会の「流動性」が欠かせません。つまりどんなに貧しくとも、努力すれば報われて上に這い上がる「チャネル」が開かれているということが必要です。そして教育はそのもっとも強力な「チャネル」であることは間違いありません。開放改革35年、目覚ましい発展を遂げた中国ですが、ここへきて「階層格差の固定化」が問題視されてきています。これから教育という「チャネル」はどうなっていくのでしょうか。気にかかりますね。
以上
【連載エッセイ】「はり入門 ― 針? 鍼?」
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科顧問ツチヤ診療所 所長 土屋喬様
<高井伸夫曰く、「名文です。土屋喬先生のご講義も検討いたしますので、ご関心のある方は弊所までご連絡ください」>
1 「ハリ」の話
● 鍼[意味](名)はり。古くは、石の鍼を用いて、人体の治療点を刺激し・・・。この説はよく用いられるが、正確ではない。「金」+「咸(≒感。強いショック)」で、皮膚に強い刺激を与えるはりのこと。咸は、戊(ほこ)と口を合わせた会意文字。つまり、刃物をもって口を封ずるの意。「黙れ! 騒ぐと刺すぞ!」すなわち、患者の苦痛を封じ込める道具が鍼である。
※「薬石効なく……」という時の石は、鍼の事をいい、古代において鍼は砭石(へんせき)という「いしばり」を用い、故に「薬石効なく……」とは、薬も鍼も効かなかった、との意とされている。が、砭の乏は、正の字の上下が反対の形。正(征の原字で、まっすぐ進むこと)とは意味も反対で、押さえて進むを止めるの意味《字源》。すなわち、砭又は砭石とは、腫れもの等押さえて切開する「いしばり」のことで、現在でいうところの、メスに相当すると思われる。
● 針[意味](名)はり。皮膚や布地などを縫うための、尖った道具。縫い針。鍼。
● 十[意味]とう。[解字]全部を一本に集めて、一単位とすること。一印示すもの。針の旁の部分のこと。 土屋註:どちらかというとおおむね、方向を示す道具か?例:方針、指針、長針、短針、針路等。
2 「穴(ツボ)」の話
● 穴(けつ=ツボ)とは、体内の気が体表出てくる処・・・?
「・・・上古聖人、論理人形、列別蔵府、瑞絡經脈、會通六号。各從其經、氣穴所發、各有處名・・・」 (かつて古(いにしえ)には、聖人は人身の五臓六腑の、それぞれの繋がりを、系統立てて理路整然と説明された。人身の各器官を連絡する主要幹線經脈(※2)、そしてそれぞれ繋ぐ經(※1)、体内の気が体表に出現する穴〈駅名?〉があって、意味する所の名称(駅名?〉がそれぞれつけられているのである。)
※1 經 經の字は糸と巠よりなる。巠の下部は、糸巻きを表し、上部は縦糸を張る上枠を意味する。
※2 脈(a)、脉(b) (a)も(b)も右側はいずれも、水流が細く分枝する様を表す。したがって經脈とは、人の生命を保持するための、必要な諸要素を縦方向に通暢させる幹線管といえよう。
3 「経路」の話
● 絡[意味]①(動)まとう、からむ、からます。引っかけてつなぐ。糸を糸車の枠に引っかける。②(動)つなぐ、つながる。横につなぐ。線と線、または点と点の間をつなぐ。
いわゆる、經絡と称せられるものは、直接又は間接的(絡脈等を介して)に五臓六腑はもとより、骨筋、皮膚等、生体を構成する一切の部分と、上下、左右、前後に連絡する幹線のようなものであって、人体の深いところを上下に貫通する幹線を經脈といい、浅い所を横につなぐ幹線を絡脈といえよう。ここで、經脈に関する雷公と黄帝の興味深いエピソードがあるので紹介しよう。
「經脈十二者、伏行分肉間……深而不見。諸脈之浮而常見者、皆絡脈也」(十二の經脈は、深く分肉の間に割り込んで走行しているため、体の表面には現れていない、したがって諸脈が浮いて見えるのは、皆絡脈である。)
「雷公曰。何以知經脈之與絡脈異也」(雷公がお尋ねするに、「何をもって經脈と絡脈の違いを知ることが出来るのでしょうか」)と。
「黄帝曰。經脈者、常不可見也。其虚實也以氣口知之。脈之見者皆絡脈也」(黄帝がお答えするに「經脈は常には見ることができない。其の虚実は寸口の脈(寸口とは、手首内側拇指の下、撓骨動脈の拍動が明瞭に触知される部位で、別名、脈口とも称せられる)を按ずることによって解る。脈が体表に現れるのは皆絡脈である」)と。
次回は「鍼灸治療の可能性を探る」の予定です。
以上
【髙井伸夫の愚論凡説】
「拡大均衡を旨とする『アベノミク』は大失敗に終わる!」 弁護士 髙井伸夫
私は人事・労務問題を専門とする経営側の弁護士として、50年ほど活動してきた。経営不振に陥った企業から依頼されたリストラ案件は、正確にカウントしたことはないが、おそらく1000件以上になるだろう。こうした経験からすると、組織・企業がリストラに取り組むときに、すべての経営者は「縮小均衡」をめざすといっても過言ではない。これまで、リストラにあたって「拡大均衡」を目指した経営者には、ただの一人も出会ったことがない。
経営者は、企業にとっての「死」である倒産から逃れるために、乾坤一擲の真剣勝負をかけてリストラを敢行するが、組織をあげて危機感を共有して火事場の馬鹿力を発揮しなければ、最悪の事態は回避できない。全社員が危機を間近にして一丸となり、心を一つに合わせることこそ、リストラを成功させ経営危機を乗り切る大きなカギなのである。
厳しい状況から脱出するには、異常事態であることを体感し、異常事態にふさわしい対処をする必要がある。そのために、経営者は「縮小均衡」を基本方針としていることを組織全体に浸透させて、危機感を着実に醸成させるのである。その前提として、経営者も責任をとり、構成員全体に平等感・公平感を浸透させる必要があることはいうまでもない。経営責任の明確化なくして、新しい前向きの新体制をつくることはできない。
いわゆる「アベノミクス」は、成長戦略などを旨とする「拡大均衡」を打ち出しているが、リストラの場面ではまったくあり得ないことだ。アベノミクスの第二の矢は「財政政策」だが、税収の保証がないのにどうやって成長戦略を実現するのか。財政の心構えの基本は「入るを量りて出ずるを為す(制す)」だというが、アベノミクスは、この基本を無視・軽視している。支出を先に決めてから、それに必要な収入を得ようという考え方は、打ち出の小槌でもないかぎり不可能である。
縮小均衡の時代でも成長は必要だが、それまでの概念を完全に覆す革命的なものでなければ意味がない。既得権益(=多くの場合、富裕層)を完全に否定するインパクトが必要である。そうでなければ、縮小均衡の中での成長戦略たりえない。山中伸弥京都大学教授が研究・発見した「iPS細胞」は、革命的研究であり、縮小均衡の時代にも、十分に急成長の見込める価値あるものである。
また、戦後の外圧による農地改革に匹敵する農業革命が打ち出されれば、すばらしいことだ。しかし、そういう気運は盛り上がっていない。日本には真の意味での農業政策は存在せず、日本のそれはあくまでも「集票政策」であるからだろう。補助金政策は、その最たるものである。
安倍晋三首相もそのブレインも、自らの失敗に気付いていない。アベノミクスは、結局は、から騒ぎ・大失敗に終わり、国民に計り知れない多大な損害をもたらすであろう。
以上
【ティータイム】 弁護士 帯刀康一
昨今、企業法務において予防法務の重要性が増しているといわれています。
予防法務の具体的内容は多岐にわたりますが、その理念については、ニューヨーク・ヤンキースのイチロー選手の「プロ野球選手は、けがをしてから治す人がほとんどです。しかし、大切なのはけがをしないように普段から調整することです。けがをしてからでは遅いのです。」という言葉が非常に参考になります。
イチロー選手の真の凄さは、実は、けがをすることなくおよそ20年という長期間、高いパフォーマンスを保ちながら試合に出続けていることにあると思います。
複雑化する現代の法環境において、企業が永続的に発展していくためには、けが(大けが)をしないために日頃何をしておくかが重要になってきています。
以上
【北京だより(34)】「海外高校生による日本語スピーチコンテスト その2」
NPO法人エデュケーション ガーディアンシップ グループ
JSA中国事務局 佐久間徹様
5月25日に「第4回全国高校生日本語スピーチコンテスト 北京決勝大会」が開催され、在中国日本国大使館、国際交流基金北京日本文化センターや中国日本商会などの後援のほか、多くの皆様にご協力をいただいた。
コンテストには四つの地区大会で優秀な成績を収めた高校生21名が出場し、「夢、空想ではない」というテーマのもと、日頃の勉強の成果を披露した。それぞれの思いを込めて発表した3分のスピーチは、230名を超える観覧者に届けられた。
また、スピーチ後の審査員との日本語による質疑応答では、どの選手もしっかりと質問を聞き取り、落ち着いて答えていた。中には笑いを誘うものもあり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
コンテスト後、「ゴルフをやっているより、よっぽど有意義な時間だった」「他の科目と並行して勉強していることを考えると、大学生以上のレベルである」など、関係者からいくつかのご感想をいただいた。
日本語のレベルはもちろんのこと、スピーチの内容や質問に対する答えでも、観覧された方々を驚かせたようだった。
当コンテストで最優秀賞に輝いた二名は7月21日に行われる国際大会の「第18回海外高校生による日本語スピーチコンテスト(主催:NPO法人エデュケーションガーディアンシップグループ:EGG)」に中国代表として参加する。
国際大会には毎年世界の約15の国と地域の高校生が参加する。今年は中国代表の四連覇がなるか、乞うご期待として本稿の結びとしたい。
以上
【上海だより(35)】「上海凱阿の呟き その2」
滋慶投資諮詢(上海)有限公司特別顧問 上海和僑会顧問 浅地安雄様
中国に長くかかわると、率直なところ「国家とは?」「資本主義とは?」というナイーブな想いに捉われるようになる。政治体制がどうであれ、市場体制を経済基盤として競合・成長を図り、富の再分配をもって国民の幸福を実現していく、というのが近代国家たる存在合理性である。しかしグローバリジェーション深化の中、マクロ(政治)とミクロ(経済)の分断化が起きているのが現在の世界各国の現状である。
昨年11月に、習近平体制が発足し、経済の減速や大気汚染などの環境問題、食品の安全性、官僚の腐敗汚職問題などこれまで沈潜していた多くの課題が爆風のように噴きだしてきた感がある。これらは改革開放後の成長最優先による「中国社会の荒廃と疲れと驕り」であることは明らかだ。
しかし、発足時から習総書記は、先進国からのモデルの取り込みを薄め、過去の歴史に国のあるべき政治スタイルを求め、それらを含めて「中華の復興」と唱えている。
現在の中国は、「唯一中国共産党を修練・シンクタンク母体とする政経一体型官僚主導国家」で、戦後の飛躍的成長を基に先進国入りした日本を模した「大陸型・多民族・多言語の実験型人造国家」でもある。マーケテイングに例えると、ヒト・モノ・カネ・情報の壮大なる垂直統合の結果、「中国共産党というブランド」を確立し、「中共王朝」なるものを打ち立てたのである。
しかし、「愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ」とビスマルク(一九世紀末ドイツ帝国宰相)が言うように、今や世界を必要としないという過剰なプライドは、知識・価値ネットワーク型社会(水平分業型社会)の到来に、国民との不幸な乖離をもたらすことは想像にかたくない。
以上
【事務所行事報告】
・新刊本のご案内
岡芹健夫単著『取締役の教科書 これだけは知っておきたい法律知識』(経団連出版)が刊行されました。同封物①をご覧ください。
また、岡芹健夫共著『経営側弁護士による精選労働判例集 第三集』(労働新聞社)も刊行されました。
・改訂本のご案内
千種秀夫・髙井伸夫・岡芹健夫・宮里邦雄共著『改訂版 労使の視点で読む最高裁重要労働判例』(経営書院)が刊行されました。同封物②をご覧ください。
・第16回 人事・労務実務セミナーのご報告
第16回セミナーが5月28日(金)に開催され、岡芹健夫弁護士が「解雇と不当労働行為」について講演しました。次回は8月開催の予定です。
・共催セミナーのご案内
弊所は、株式会社日本人事総研と共催で、「待ったなし!経営者に求められる人事・労務対策」を開催しています。詳細は、弊所ホームページをご覧ください。
・「判例・事例から見えてくる労務対策セミナー」開講のお知らせ
この度、判例や事例の解説を主としたセミナーを開講しました。第3回は、9月12日(木)に米倉圭一郎弁護士が講演予定です。詳細は8月上旬頃よりご案内申し上げます。弊所ホームページをご覧ください。
・NPO法人キャリア権推進ネットワークのご案内
この四月に発足したNPO法人キャリア権推進ネットワークでは、引き続き会員の募集を行っています。社会貢献活動として、ぜひ入会をご検討ください。
・懇談会のご報告
①6月22日髙井ブログ連載「花」の有志の方々(於:中国飯店「富麗華」)②7月19日髙井の76歳の誕生日をお祝いくださった方々(於:プライベートサロン「7PIANO」)、をお招きした懇親会を開催し、親睦を深めました(その他の会合については、髙井ブログ『無用の用』〈http://www.law-pro.jp/weblog/〉をご覧ください)。懇親会の人選は皆さまのご趣味をも念頭に置いています。ご出席のご意向があれば他の人に誇るご趣味を三つ程度メールにてご申告ください。
・上海代表処活動報告
会長弁護士髙井伸夫らが、3月21日から2日間来滬し、上海司法局、日本総領事館他関係先を訪問し率直な意見交換を行いました。3月22日の夜には、弊処主催セミナー終了後、同会長弁護士と40数名の参加者を交えて盛大な懇親会を開催しました。
5月13日(月)、弊処東城聡首席代表が、東京で「日中間の契約の諸問題」と「個人情報保護制度」に関するセミナーを開催し、時宜を得たテーマで参加者の好評を得ました。
・北京代表処活動報告
会長弁護士髙井伸夫らが、3月19日から2日間来燕し、北京市司法局や日本大使館ほか関係先を訪問し、意見交換を行いました。日中関係が軋む中、率直な意見交換は相互理解を深めるうえで大いに役立ったと感じました。
最近、労働契約解除に関する受任案件が増加しています。外資の投資環境が徐々に変化していることを感じさせられます。
・夏季休業のお知らせ
平成25年8月15日(木)、16日(金)は一斉休業日となります。
以上
経営法務情報「Management Law Letter」は、顧問会社及び弊所のお客様に無料にて配布しております。
ご質問等ございましたら、下記までご連絡下さいますようお願い申し上げます。
問合わせ先担当:齊木(さいき)
tel 03-3230-2331