従業員の募集・採用に当たり、以下の点について教えてください。
① 求職者から収集してはいけない情報はありますか。
② 応募時に健康診断結果を提出させることはできますか。

1.質問①について

⑴ 職業安定法5条の4は、求職者等に個人情報の取扱いについて、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」と定めていることから、原則として、業務の目的の達成に必要のない情報を収集することはできません。

⑵ 職業安定法5条の4については、同法48条を受けて、指針(職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針。平成11年労働省告示第141号、最終改正:令和3年厚生労働省告示第162号)が策定されており、同指針において、以下のイ乃至ハの個人情報については、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合を除き、収集してはならないとされています。

【原則として収集が禁止される個人情報】

イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項

ロ 思想及び信条

ハ 労働組合への加入状況

⑶ 法違反については、職業安定法に基づく行政指導(48条の2)や改善命令等(48条の3)の対象となる場合があり、改善命令に違反した場合は、罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科せられる場合もあります(65条7号)。

⑷ なお、厚生労働省作成のサイト「公正な採用選考を目指して」で掲載されているパンフレット「公正な採用選考をめざして」において、「採用選考時に配慮すべき14事項」が挙げられていますので、そちらもご参照ください(上記サイト内に概略ページもございます)。

2.質問②について

⑴ 職業安定法5条の4は、上記のとおり、業務の目的の達成に必要のない情報の収集を禁止するにとどまり、業務の目的達成に必要な情報の収集までは禁じていません。

⑵ また、裁判例(B金融公庫(B型肝炎ウイルス感染検査)事件 東京地判平15.6.20労判854号5頁)も、採用過程において本人の同意なくB型肝炎ウイルス検査を行った事案において、「企業には、経済活動の自由の一環として、その営業のために労働者を雇用する採用の自由が保障されているから、採否の判断の資料を得るために、応募者に対する調査を行う自由が保障されているといえる。そして、労働契約は労働者に対し一定の労務提供を求めるものであるから、企業が、採用にあたり、労務提供を行い得る一定の身体的条件、能力を有するかを確認する目的で、応募者に対する健康診断を行うことは、予定される労務提供の内容に応じて、その必要性を肯定できる」として、労務提供を行い得る一定の身体的条件、能力を有するかを確認する目的での健康診断については、予定される労務提供の内容に応じて必要性が認められる旨判示しています(ただし、B型肝炎ウイルス感染について調査する必要性は原則として否定しました。)。

⑶ 以上のような法律及び裁判例からすると、募集業種・職種との関係で、応募者の適性や能力を判断するうえで必要かつ相当な範囲で健康診断結果を提出させることは問題ないと解されます。前掲「公正な採用選考をめざして」というパンフレットに記載されている「採用選考時に配慮すべき14事項」においても、「合理的・客観的に必要性が認められない選考採用時の健康診断の実施」が挙げられているにとどまります。

⑷ なお、前掲「公正な採用選考をめざして」というパンフレットにおいて、健康状態を確認する必要がある例として、㋐運送・配送業務で求人募集する際、失神等の発作が生じないかを確認する場合や、㋑食品関連会社の製造工程で、直接アレルギーのある食品に触れることによってアトピー性皮膚炎などの症状を発症することを未然に防止するため、製造工程で使用している食品に対するアレルギーを確認する場合が挙げられています。

以上