1.アウティングとは?

  アウティングについては、法律上の定義がある訳ではありませんが、敢えて定義するとすれば、「本人の同意なしに、本人がオープンにしていないその性的指向・性自認などを正当な理由なく第三者に開示すること、および開示を強制すること」と定義することができます。

  これは、例えば、職場の同僚Yさんから、「まだ誰にも言わないで欲しいんだけど、私はレズビアンだからパートナーはいるんだけど、法律上の婚姻関係を結ぶことはできないんだ。」などと相談されたXさんが、次の日に、Yさんの了承を得ていないにもかかわらず、Xさん及びYさんが勤務する職場の他の同僚に、Yさんがレズビアンであることを公表してしまうというようなことが該当します。

  近時は、このアウティングが問題となった訴訟も提起され、判決にまで至るというような事例も実際に起きています。

 

2.アウティングとパワハラ防止指針

  パワハラ防止指針では、「2 職場におけるパワーハラスメントの内容(7)ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)」の類型で、職場のパワハラに該当するケース、該当しないケースとして以下の事例が記載されたうえで、「この点,プライバシー保護の観点から,…(略)…(※性的指向・性自認等に関する)機微な個人情報を暴露することのないよう,労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である」(※以下は筆者にて加筆)とされました。

【該当すると考えられる例】
「労働者の性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報について,当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」
【該当しないと考えられる例】
「労働者の了解を得て,当該労働者の性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報について,必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し, 配慮を促すこと」

  したがって、事業主としては、職場における従業員の性的指向・性自認に関する情報の取扱いに留意すると共に、従業員に対して事業主への性的指向・性自認の開示を強制するようなことがないように留意し、また、アウティングがパワハラになる可能性があることなどについて社内研修などを通じて従業員に周知していくことが必要とされます。

  なお、前回コラムに引き続き、職場におけるSOGIハラ、アウティングに関する対応については、労務事情(令和2年9月1日号 No.1410 株式会社産労総合研究所)において、「パワハラ防止法・パワハラ防止指針を踏まえた『職場のSOGIハラ』『アウティング』防止に関する措置義務の留意点」という記事にて解説をしていますので、併せてご参照頂けますと幸いです。

以上

                             文責:弁護士 帯刀康一

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