1.リモートワークにおけるパワハラ調査

  あるリモートワークに関する調査において、「あなたは、『上司がテレワークの際に、会議で顔出しすることを強要する』ことについて、パワーハラスメントに該当すると思いますか。」と質問したところ[1]、「絶対に該当すると思う」「おそらく該当すると思う」と回答した20代が55.0%であったのに対し、「絶対に該当すると思う」「おそらく該当すると思う」と回答した50代が35.7%と、世代間で19.3%のギャップがあることが明らかになったそうです。

  それでは、新型コロナ禍においてリモートワークが推奨されているなかで、リモートワーク中に顔出しを要求することはパワハラに該当するのでしょうか。

  なお、このようなリモートワークに伴うハラスメントのことを「リモハラ」ともいうようです。

 

2.リモートワークにおける顔出しとパワハラ該当性

  この点については、職場で仕事をするときには顔を隠しながら仕事をしている訳ではないことなどからすれば、リモートワーク中に顔出しを要求したからといって、そのことが直ちにパワハラに該当することにはならないと思います。

  特に、会議や打合せの際であれば、顔を出すことによるコミュニケーションの円滑化という必要性が認められる場合もありますし、リモートワーク中に顔出しをしなくてよいという法的に保護される利益が直ちに認められるとも思えません。

  したがって、業務上何らの必要性がないにもかかわらず、従業員に対して無用なプレッシャーをかけてしまっているだけの顔出し要求であると評価されるような場合でない限りは、直ちにパワハラに該当するとはいえないのではないかと思われます。

以上

                             文責:弁護士 帯刀康一

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[1] 顔出しを「強要」するという場合の「強要」が、どのようなことをもって「強要」と表現されているのかが明らかではありませんが、「強要」というからには、リモートワーク時に全く顔出しの必要性がないにもかかわらず、顔出しを要求し、顔出しをしなかった場合は、人事上・事実上の不利益が課されるといった態様のことが想定されているものと思われます。