第2.パワハラ防止に関する措置義務の具体的内容(各論)
4.「4.(4)(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置」
(1)パワハラ防止指針の内容
(1)から(3)までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければならない。
(相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例)
(不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
(2)中業企業として最低限やっておくこと
ア.やるべきこと
ここで事業主に求められていることは、相談窓口が積極的に活用されるようにするための対応をとること(申告者への不利益措置の禁止も規定に盛り込むこと)と、相談窓口の担当者等からの不用意な言動等により申告者に対する二次被害(セカンドハラスメント)が発生することを防止するための対応を講じておくことです。
今後、別の回のコラムでも解説しますが、性的指向・性自認といった機微情報の取扱いに留意することも指針に盛り込まれましたので、ハラスメント対応に関与する担当者は、今以上に個人情報やプライバシー権について留意しながらの対応を求められることになります。
このプライバシー等への対応が不十分であると、相談窓口が信頼されず、社内でのパワハラ問題の解決が困難となり、外部機関に紛争が持ち込まれた結果、解決までの時間と費用が嵩む可能性があり、また申告者自身との間でもトラブルとなる可能性を秘めていますので、十分な留意が必要となります。
イ.行政のリーフレット等の活用
「併せて講ずべき措置」に関する留意点については、厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」の28~29頁に記述されています。また、相談窓口担当者のためのチェックリストは、「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」の72頁に詳述されていますので参考にして頂ければと思います。
なお、2019年11月に株式会社労務行政よりパワハラ防止法に関する書籍「1冊でわかる!改正早わかりシリーズ『パワハラ防止の実務対応』」を出版させて頂きましたので、パワハラ防止法についてより詳細に知りたい方は、そちらもお読み頂けますとより理解が深まると思います。類書との比較でいえば、「業務指導とパワハラの線引き」に関する考え方について非常に厚く記述・説明しており、特に、人事・労務を担当している方々はもちろんのこと、経営者・管理職の方々も読んで頂ければ、どのような言動がパワハラとなるのか、パワハラにならないためにはどこに留意しておけばよいのかがお分かり頂ける内容となっていると思います。
さらに、パワハラ防止に関する措置義務の内容が示されているパワハラ防止指針についても、『労政時報』(第3992号 2020年4月24日発行)に掲載された「パワハラ指針を踏まえた企業における実務対応と留意点」という記事にて解説していますので、併せてご参照頂けますと幸いです。
以上
文責:弁護士 帯刀康一
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