第2.パワハラ防止に関する措置義務の具体的内容(各論)

 3.「4.(3) 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」

(1)パワハラ防止指針の内容

(3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない。

    イ 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
    (事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)
    ① 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
    ② 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第30 条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
    ロ イにより、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
    (措置を適正に行っていると認められる例)
    ① 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
    ② 法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
    ハ イにより、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
    (措置を適正に行っていると認められる例)
    ① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるパワーハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
    ② 法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。
    ニ 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
    なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
    (再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
    ① 職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針及び職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
    ② 労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

 

(2)中業企業として最低限やっておくこと

ア.やるべきこと

  職場のパワハラは、職場内でのコミュニケーションが上手くいっていないことが原因で起きているケースもあることから、労働関係の紛争のなかでも、職場内での解決に馴染みやすい紛争類型と解されます。

  しかし、労働者からパワハラの申告がなされたにもかかわらず、申告自体が長期間放置されていたり、調査が公平になされなければ、労働者が事業主にパワハラの申告を行うことを差し控え、問題の解決が外部機関との折衝などに委ねられた結果、職場のパワハラ問題の解決に、必要以上の労力と時間、コストがかかってしまう可能性があります。

  したがって、職場のパワハラを職場内で解決するためにも、事業主に対してパワハラの申告がなされた場合、事業主は適切かつ迅速な事後対応を行う必要があります。

  その第一歩として、まずは適正かつ迅速な調査を実施することが必要になります。そして、調査の過程であっても、被害者保護が必要と判断される場合は、被害者に対する配慮を実施し、パワハラが認定された場合には、正式に、被害者保護としてどのような配慮が必要かの検討を行わなければなりません。

  調査の結果、行為者がパワハラを行ったと認定された場合、行為者に対しては、各社の懲戒処分に関する規定に当てはめ、また過去の事案の処分内容との均衡を考慮しながら、適正な処分を決定していくことになります。

  さらに、同様の事態を招くことを防ぐために、再発防止策を講じることも必要です。

  当職は、パワハラの再発防止のための研修も多数実施しておりますので、ご興味がおありの方は是非お問い合わせ頂ければと存じます。

 
イ.行政のリーフレット等の活用

  適正かつ迅速な調査の具体的方法や留意点については、「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」の36~38頁に、被害者への配慮や行為者への処分については、同マニュアルの39~45頁に詳述されています。

  さらに、再発防止策としてどのような取組を行うのがよいのかという点については、同マニュアルの50~51頁を参考にして頂ければと思います。

 

  なお、2019年11月に株式会社労務行政よりパワハラ防止法に関する書籍「1冊でわかる!改正早わかりシリーズ『パワハラ防止の実務対応』」を出版させて頂きましたので、パワハラ防止法についてより詳細に知りたい方は、そちらもお読み頂けますとより理解が深まると思います。類書との比較でいえば、「業務指導とパワハラの線引き」に関する考え方について非常に厚く記述・説明しており、特に、人事・労務を担当している方々はもちろんのこと、経営者・管理職の方々も読んで頂ければ、どのような言動がパワハラとなるのか、パワハラにならないためにはどこに留意しておけばよいのかがお分かり頂ける内容となっていると思います。

  さらに、パワハラ防止に関する措置義務の内容が示されているパワハラ防止指針についても、『労政時報』(第3992号 2020年4月24日発行)に掲載された「パワハラ指針を踏まえた企業における実務対応と留意点」という記事にて解説していますので、併せてご参照頂けますと幸いです。

以上

                             文責:弁護士 帯刀康一

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