第2.パワハラ防止に関する措置義務の具体的内容(各論)

2.「4.(2)相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」

(1)パワハラ防止指針の内容

(2)相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。

    イ 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
    (相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
    ① 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
    ② 相談に対応するための制度を設けること。
    ③ 外部の機関に相談への対応を委託すること。
    ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワーハラスメントが生じるおそれがある場合等が考えられる。
    (相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
    ① 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
    ② 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
    ③ 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

 
(2)中業企業として最低限やっておくこと

ア.やるべきこと

  事業主としては、相談窓口を設定したうえで、パワハラに関する相談に適切に対応できるような体制を整備しておく必要があります。

  法律事務所にハラスメント相談窓口を委嘱できないのであれば、自社内に相談窓口を設定して、相談窓口の担当者を決定しておき、担当窓口の担当者に対して、セカンドハラスメントを引き起こさないように研修を行っておくことは必須となります。

  それ以外にどこまで、どのような整備をしておくかは各社の実情に応じて決定していくことになります。

 
イ.行政のリーフレット等の活用

  相談窓口の運用に関する留意点や成功事例などは、「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」の34~37頁において詳述されています。また、相談窓口の担当者のためのチェックリストや、相談内容を書き込む相談記録票なども同マニュアル72~74頁において掲載されているため、参考にして頂くことをお薦めします。

 

  なお、2019年11月に株式会社労務行政よりパワハラ防止法に関する書籍「1冊でわかる!改正早わかりシリーズ『パワハラ防止の実務対応』」を出版させて頂きましたので、パワハラ防止法についてより詳細に知りたい方は、そちらもお読み頂けますとより理解が深まると思います。類書との比較でいえば、「業務指導とパワハラの線引き」に関する考え方について非常に厚く記述・説明しており、特に、人事・労務を担当している方々はもちろんのこと、経営者・管理職の方々も読んで頂ければ、どのような言動がパワハラとなるのか、パワハラにならないためにはどこに留意しておけばよいのかがお分かり頂ける内容となっていると思います。

  さらに、パワハラ防止に関する措置義務の内容が示されているパワハラ防止指針についても、『労政時報』(第3992号 2020年4月24日発行)に掲載された「パワハラ指針を踏まえた企業における実務対応と留意点」という記事にて解説していますので、併せてご参照頂けますと幸いです。

以上

                             文責:弁護士 帯刀康一

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