中国現地法人でナショナルスタッフを採用しています。固定期間労働契約(※注)を締結する場合、契約更新に関して注意すべきことはありますか?

(※注)中国では、いわゆる「有期労働契約」を「固定労働契約」といい、「労働契約の無期化」を「労働契約の無固定化」といいます。したがって、本稿では中国労働法の用語である「固定労働契約」及び「労働契約の無固定化」という表現を使用します。

中国では日本に先駆けて労働契約の無期化を法律で規定し、労働契約が無期化する要件を定めています。ただし、その要件は地域によって異なっており、現地法人の所在地に適用されるルールを確認する必要があります。

 

1.労働契約の無固定化

労働契約の無固定化は中国労働契約法14条2項で定められています。無固定化の条件は次のとおりです。

①次の各号に掲げる事由のいずれか1つに該当すること

・労働者の当該使用者における勤続年数が満10年以上である場合

・無固定期間労働契約を連続して2回締結し、かつ、労働者に労働契約法39条及び40条1号・2号に定める事由
がなく、労働契約を更新する場合

②労働者が労働契約更新若しくは締結を申し出たこと又はこれらに同意したこと

③労働者が固定期間労働契約を申し出ていないこと

なお、会社が雇用開始日から満1年以上労働契約書を作成していない場合、無固定労働契約を締結したものとみなされてしまいます(中国労働契約法14条3項)。

 

2.複数回の労働契約更新と無固定化

(1)上海市における労働契約更新の実務

上海市では、固定期間労働契約を2回連続で締結した後でも、2度目の労働契約は原則として契約期間満了によって終了すると考えられています。

そして、固定労働契約を2回連続で締結し、労使間の協議により3回目の労働契約を締結した場合、原則として中国労働契約法14条2項2号の契約更新回数の条件を満たすものと考えられています。

すなわち、上海市の運用は、労働契約を更新するか否かという問題と労働契約が更新された場合に契約期間が無固定化するか否かという問題を区別しています。

固定期間労働契約を2回連続で契約した場合に労働者の一方的な意思表示によって3度目の労働契約締結が強制されることはありません(「労働契約法」の適用における若干の問題に関する意見(上海市高級人民法院2009年3月3日公布)4(2)及び「労働契約法」の適用における若干の問題に関する意見(上海市高級人民法院2009年3月3日公布)4(4))。

したがって、労働契約が無固定化するのは、固定期間労働契約を2回連続で締結した後、更に当事者双方の合意によって「労働契約を更新する場合」です。

(2)北京市その他多くの都市の運用実態

北京市その他多くの都市では上記上海市とは異なる運用がされています(以下、代表して北京市の運用を紹介します)。

まず、「固定期間労働契約を2回連続して締結した場合」、会社は固定期間労働契約の締結又は労働契約の終了を選択する権利を有しないと考えられています。したがって、2度目の労働契約が期間満了するときに労働者が契約更新を望む場合、会社はこれを拒否することはできず、3度目の労働契約を締結することが強制されてしまいます。

さらに、その契約更新に際しては、労働者が期間の定めのある労働契約の締結を申し出た場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければなりません。

したがって、北京市では、上海市とは異なり、「固定期間労働契約を2回連続して締結した場合」、労働者の一方的な意思表示によって、労働契約の更新の効果が生じることになります。

以上より、北京市では、「固定期間労働契約を2回連続して締結した場合」に労働者が更なる契約更新を申し出たとき、原則として無固定期間労働契約が締結され、労働者が固定期間労働契約の締結を希望する場合に限ってのみ固定期間労働契約を締結することができます(北京市高級人民法院、北京市労働争議仲裁委員会の労働争議案件法律適用問題に関する研究会の会議紀要(2)34)。

 

3.労働契約無固定化の拒否事由

(1)労働者が固定期間労働契約を望む場合

労働者が固定期間労働契約の締結を望む場合、契約更新回数に関係なく、会社は常に固定期間労働契約を締結することができます。この場合、労働者から固定期間労働契約の締結を望む旨が記載された要望書を提出してもらうことが実務では一般的です。なお、労働契約無固定化の条件を満たす場合、原則として無固定労働契約を締結しなければならない点には注意が必要です。

(2)労働者が中国労働契約法39条及び同法40条1号・2号のいずれかに該当する場合

北京市その他多くの都市の運用では「固定労働契約を2回目連続で締結した後、労働者が契約更新を望む場合」、原則として労働契約が無固定に転換します。しかし、次の事由のいずれか1つに該当する場合、労働契約は無固定化されません(労働契約法第14条2項)。なお、労働者が固定期間労働契約を望む場合も労働契約が無固定化しないことは前述のとおりです。

①労働者が中国労働契約法第39条に該当する場合

中国労働契約法39条は即時解雇について規定した条文です。具体的な事由は以下のとおりです。

・試用期間において採用条件に符合しないことが証明された場合

・会社の規則制度に著しく違反した場合

・著しく職務を怠慢し、私利のために不正を行い、使用者に重大な損害を与えた場合

・同時に他の使用者と労働契約関係を確立し、本使用者の業務完成に重大な影響を与えた場合、又は本使用者が是正を求めてもこれを拒否した場合

②労働者が中国労働契約法第40条1号または2号に該当する場合

労働契約法40条1号・2号は通常解雇について規定した条文です。具体的な事由は以下のとおりです。

・私傷病による法定の病気休暇期間満了後に元の業務に従事できず、使用者が手配した他の業務にも従事できない場合

・業務に堪えることができず、研修又は職務調整を経ても、なお業務に堪えることができない場合

以上