当社では、休職中の社員が復帰する際に、業務を行わせずに勤務に慣れてもらう「試し出勤制度」を導入し、期間中の状態を見て復帰可否を判断しています。「試し出勤制度」は原則2週間で、同期間中も休職期間のカウントが進む仕組みです。今般、ある休職者から「試し出勤を全うしないと復帰できないのであれば、実質的に休職期間が2週間分短いのと同じになるため、休職開始時に期待していた休職期間と比べて不利になる」という意見が出てきました。このような当社の規定に問題はないか、ご教示願います。

「試し出勤制度」において休職期間のカウントを進めるという規定自体に問題はない。ただし、実態として債務の本旨に従った労務の提供は行わせず、簡易な作業に限定するといった配慮が必要である。

1.試し出勤制度について

近時、メンタルヘルスの不調により休職する労働者が増加していることが指摘されています。

そして、メンタルヘルスの不調により休職していた労働者が復職を申し出た場合、その回復の程度が他の疾病と比較して判断し難い面があることから、企業としては労働者に対する安全配慮義務の観点において、当該労働者の病状が復職可能な程度に回復しているかを慎重に判断する必要があります。

そこで、復職の可否を判断するために、休職期間中に、本来の業務とは異なる軽易な作業に従事させるといった試し出勤(「リハビリ出社・出勤」「トライアル出社」「ならし勤務」など名称はさまざまです)を行う事例があり、ご質問のケースのように、休職期間中に試し出勤を行うことを休職に関する規定の中に設けて制度化している企業も多くなってきています。

この点、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月公表、平成21年3月および平成24年7月改訂)において、試し出勤制度について、“社内制度として、正式な職場復帰決定の前に、試し出勤制度等を設けると、より早い段階で職場復帰の試みを開始することができ、休業している労働者の不安の緩和に寄与するとともに、労働者自身が自分自身および職場の状況を確認しながら、復帰の準備を行うことができる”とされており、試し出勤制度を設けることが推奨されています。

なお、上記手引きでは、試し出勤制度の例として、以下のものが挙げられています。

①模擬出勤:職場復帰前に、通常の勤務時間と同様な時間帯において、短時間または通常の勤務時間で、デイケア等で模擬的な軽作業やグループミーティング等を行ったり、図書館などで時間を過ごす。

②通勤訓練:職場復帰前に、労働者の自宅から職場の近くまで通常の出勤経路で移動を行い、そのまままたは職場付近で一定時間を過ごした後に帰宅する。

③試し出勤:職場復帰前に、職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する。

もっとも、この試し出勤制度は、法令等によりその設置が企業に義務づけられているものではないため、試し出勤を制度化する場合、原則として、その内容等は企業の合理的な裁量に委ねられているといえます。

したがって、ご質問のような「原則2週間で、同期間中も休職期間のカウントが進む仕組み」、すなわち、休職期間中に試し出勤を行うことになる「試し出勤制度」の規定も、この規定自体が直ちに無効となることはないと解されます。

 

2.休職期間中に試し出勤を行う際の留意点

それでは、ご質問の休職期間中に試し出勤を実施することで、実質的に休職期間が2週間短くなるので休職期間が不利となるとの主張(試し出勤をした期間について休職期間を延長すべきとの主張)については、どのように考えるべきでしょうか。

この点、Y社に総合職として入社した後、双極性障害に罹患し、平成19年4月24日以降の休職(休職満了日は平成22年1月23日)を命じられたXが、平成21年11月ごろまでにY社に復職を申し入れたため、休職期間中の平成21年11月30日からトライアル出社を開始し、トライアル出社により復職の可否を判断することになったが(Y社では、トライアル出社の具体的な手続き・方法等を定めた規定は存在しないが、人事部長等によって構成される健康管理委員会において、その都度、実施の可否・条件等を決定する取り扱いをしていた)、復職が認められず、平成22年1月23日をもって休職期間満了により退職となった裁判例があります(伊藤忠商事事件 東京地裁平25.1.31判決 労経速2185号3ページ)。

この裁判例の事案では、休職期間中にトライアル出社を行った期間について休職期間を延長する必要があるか、ということは直接の争点になっていませんが、「本件トライアル出社期間中に原告に与えられた業務は、精神的負荷の小さい調査・資料作成が中心であって、対人折衝等の複雑な調整等を要するものではなかった」と判示されていることからすれば、トライアル出社においてY社が実施した業務は、債務の本旨に従った労務の提供とは認められないため、休職期間中に実施したとしても、それに対して休職期間の延長といった特段の措置を行う必要はないということが前提とされていると解されます。

以上からすれば、休職期間中に試し出勤を実施する場合であっても、業務とは到底いえないような軽微な作業を実施するようなケースであればもとより、ある程度負荷のかかる業務であったとしても、それが債務の本旨に従った労務の提供とはいえない程度のものであれば、休職期間を延長するといった措置までは不要であるといえるでしょう。

もっとも、債務の本旨に従った労務の提供とはいえない業務を行わせる場合であっても、労働基準法11条の労働には該当するとして、最低賃金法に基づく最低賃金額相当の賃金支払い義務を負う可能性もあるため、休職期間中に実施する試し出勤において、休職者に対して特に無給で何らかの作業をさせるのであれば、指揮命令をせず、業務性が極めて低い作業に限定するといった配慮が必要となる可能性があります。

以上

労務行政研究所「労政時報」第3967号166頁掲載「相談室Q&A」(帯刀康一)より転載