以前から業務上のミスが多く、注意してもなかなか改善されない社員がおり、発達障害ではないかと疑っています。本人がそれを認識していない場合、病院で受診させたほうがよいでしょうか。あるいは、業務命令として専門医への受診を命じることは問題ですか。また、同僚とのコミュニケーションがうまくいかない原因とも考えられることから、周囲の理解・協力を得るために、職場でどのように説明・意識啓発をすればよいかも併せてご教示ください。

前回からの続き)

 

3 職場での意識啓発等

発達障害が原因で問題行動を起こしている社員への対応につき、職場内での理解・協力を得るための方策としての職場での説明・意識啓発については、一般論としては、症状の特性を理解し、感情的にならずに接するといったことが挙げられます。

しかし、発達障害にはさまざまな症状があるため、症状の特性を理解するには専門医等からアドバイスを受けることが必須といえます。

そこで、専門医に対して会社の業務内容、これまでのトラブルの内容などを説明した上で、専門医から本人の特性に応じた今後の対応方法等について具体的なアドバイスを受ける必要があり、そのアドバイスを踏まえて会社として説明・意識啓発の内容を策定していかざるを得ないところです。

なお、平成28(2016)年4月に施行された改正障害者雇用促進法では、同法が対象とする「障害者」の意義について、発達障害も精神障害に含まれる旨が明記されましたので(同法2条1号)、発達障害も同法の対象となることが明らかになりました。

そして、新設された同法36条の2から36条の4までの規定に基づいて、当該障害者からの申出により、事業主は雇用の分野について、障害の特性に配慮した必要な措置(以下、「合理的配慮」)を構ずる義務を負うとされていることから、発達障害の場合にも、当該労働者から申出があれば、会社として合理的配慮を提供する義務を負うことになります(ただし、当該措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除く)。

合理的配慮については、同法36条の5第1項の規定に基づいて指針が定められています。同指針別表に掲げる事例の「発達障害」の「採用後」の「場面」の項には、「本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。」と記載されていることにも留意してください。

 

 ※ 合理的配慮指針

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000082153.pdf

以上

 

労務行政研究所「労務行政」第3856号164頁掲載「相談室Q&A」(帯刀康一)の後半3分の1ほどに一部修正のうえ転載