豪雨による土砂崩れで公共交通機関が全面的に運休し、数日間出社できない社員が複数発生しました。後日、対象者のうち希望者は年次有給休暇(以下、年休)扱い、その他の者は欠勤扱いとしました。

 ところで、当社では、賞与の支給に際して、考課結果などから算定された賞与額に出勤率を乗じて支給する定めがあります。このケースの場合、年休扱いと欠勤扱いで賞与額の算定(出勤率)に違いが出ても問題ないでしょうか。②

1 賞与の性格(前回からの続き)

賞与は、前回述べたような多面的な性格を有し、原則として支給額が変わり得るものであるために、就業規則において賞与の制度を設けるとしても、その制度内容は、個々の企業ごとにその支給条件、決定方法、査定方法等が規定されます。

また、公序良俗や労働法の強行法規に反しない限り、企業としてはその制度内容を自由に決定し得ることとなります。

さらにいえば、実務上、賞与の規定内容として、「具体額は支給対象期間における会社業績、従業員の業績を勘案して、会社が決定する」とされていることが多いですが、そうした会社業績や従業員の業績の勘案も、それが恣意的であり従業員間で不公平なものであることや、あるいは不公正(例えば、組合員を意識して差別するなど。これは労働組合法7条1号の組合員への不利益取り扱いとして労働法の上でも違法です)なものでなければ、法的には許容されるということとなります。

なお、実務における賞与の中には、「月例給〇ヵ月分」といったように具体額を規定している場合もあります。これは、前回(1月18日掲載分を貼付をお願いします)紹介した行政通達に照らせば、厳密な意味で賞与とするかは疑問な部分もありますが、原則として月に1度支払うべきとされている月例給との違いは看過されるべきではありません。

少なくとも、支給の有無あるいは加減につき想定されるような事情(典型的には就業規則の規定)があれば、やはり、一定程度の会社側の裁量が認められると考えられます。

 

(次回に続く)

労務行政研究所「労務行政」第3884号120頁掲載「相談室Q&A」(岡芹健夫)の中ほど3分の1部分を一部修正のうえ転載

 

以上