中国で労働契約書を作成する場合、勤務内容や就業場所はどのように記載すれば良いでしょうか。注意点があれば教えてください。また日本との違いも教えてください。

  中国では、労働契約締結にあたって労働契約書の作成が義務付けられており、その中に「勤務内容及び勤務地」を記載することが必要となります(中国労働法19条、中国労働契約法10条、同17条)。この点については別のコラムにてご説明したとおりです(労働契約書の作成義務については、下記〔1〕を参照。労働契約書の必要的記載事項については、下記〔2〕を参照)。

〔1〕<2015年4月28日掲載 五十嵐充弁護士執筆「弁護士コラム」>

  http://law-pro.jp/2015/04/post-414.html

〔2〕<2015年12月9日掲載 同「弁護士コラム」>

  http://law-pro.jp/2015/12/post-464.html

  また、労働契約締結にあたって書面で「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」を提示する必要がある点では日本の労働法と同じと言えます(日本労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)。

  しかしながら、中国では、日本と異なり、労働者の配置転換に関する使用者の裁量は原則として制限されている点に注意が必要です。

  すなわち、中国では、労働契約書に記載された「勤務内容」や「就業場所」を変更する場合、原則として労働契約の変更と扱われ、労使間で合意が必要であると考えられています。したがって、例えば就業場所を「北京市朝陽区建国路93号院万達広場3号楼1908室(注:当事務所北京代表処所在地です。)」などと就業場所の具体的な住所を書き入れてしまうと、極端な場合、会社移転の際にも契約の変更が必要となってしまいかねません。

この点は、日本では労働条件通知書記載の就業場所や勤務内容はあくまで雇入れ時のものであって、特別な合意等がない限り使用者はその記載内容に制限されず配置転換が可能であると考えられていることと大きく異なり注意が必要です。

一方、中国において、労働契約書中に「会社は、労働者の勤務内容や就業場所について、業務上の必要に応じて配置転換を命じることができる。従業員は正当な理由がなければこれを拒むことはできない。」などと記載する場合、その規定は無効と判断される可能性があります(中国労働契約法26条1項2号)。

そこで、実務上は、勤務内容や就業場所を抽象的に記載することや複数列挙するなど工夫する必要があります。例えば、勤務内容であれば、「当初の業務内容は管理部門とするが、必要に応じて、総務部門、営業部門、管理部門のいずれかとする」などと記載することがありますし、就業場所であれば、実務上、例えば「北京市にある会社の経営場所」などと記載することがあります。

なお、「勤務内容」に関連して、労働者の職責、業務量、業務の品質水準、求める業務成績、勤務考課等について予め約定しておくことで、能力不足を理由とした労働契約の解除(中国労働契約法39条1項、3項、同40条2項)をめぐる労働紛争のリスクを低減することができます。

以上