中国で労働契約書を作成する場合の注意点について教えてください。

中国では、労働契約書に記載しなければならない事項(以下「必要的記載事項」といいます。)が法定されている点は前回のコラムでお伝えしたとおりです。

2015年12月9日掲載 五十嵐充弁護士執筆「弁護士コラム」

では、このような必要的記載事項が記載されていない場合、労働契約書の法的効力はどうなるのでしょうか。

まず、作成した労働契約書に法定の必要的記載事項(中国労働法19条、中国労働契約法17条)の記載がなかった場合、それによって直ちに労働契約全体が無効となるわけではないと考えられています。

もっとも、法定の必要的記載事項が欠けている点について、政府労働行政管理部門から是正を命じられ、これにより労働者に損害を与えた場合は、その労働者に損害賠償責任を負うことになります(中国労働契約法81条)。

また、労働報酬及び労働条件に関する規定が不明確であり、それによって労使間で紛争となった場合、両者で協議を行うことができ、協議が不調に終わった場合は原則として労働協約の規定を適用することとされています。そして、労働協約の締結もない等の場合、最終的には国の関係規定を適用する旨定められています(中国労働契約法18条)。

以上より、中国における労働契約書作成にあたっては必要的記載事項に漏れがないか、必要的記載事項の内容が明確に記載されているかという点に注意する必要があります。

なお、労働契約書に法定事項さえ記載すれば十分かといえば、必ずしもそうではありません。労働者との間で無用なトラブルを避けるために法定事由以外も会社として必要と考える事項(以下「任意的記載事項」という。)を予め約定しておくことが重要となります。中国労働契約法17条では、このような任意的記載事項の例として「試用期間、訓練、秘密保持、補充保険、福利待遇など」を列挙しています。

他方、労働契約において「使用者が自らの法定責任を免除し、又は労働者の権利を排除した」場合、または労働契約が「法律、行政法規の強制規定に違反している」場合、労働契約の全部または一部が無効となり、使用者に過失が認められれば労働者に対する損害賠償責任を負うことになります(中国労働契約法86条、26条)。

以上、労働契約書の作成にあたっては会社の権益を最大限保護できるようその内容を工夫する必要はありますが、その内容によっては労働契約書が無効となり、かつ、損害賠賠償責任まで負うリスクがある点に注意が必要です。

以上