ある採用内定者が、学生時代に望ましくないアルバイトをしていたことが発覚しました。取引先への信用確保の観点から、この内定を取り消したいところですが、同人はすでに他の内定先を辞退しています。こうした理由での採用内定取り消しは認められるでしょうか。

第2回の続き)

3 内定取消の可否

3 内定取消の可否
企業と学生との間で、(始期付き・解約権留保付きであっても)一旦「労働契約」が成立した以上は、これを解約しない限り企業と学生との間で労働契約が存在し続けることになります。そのため、企業は留保していた解約権を行使するという「内定取消」によって労働契約を解約することになるわけですが、第2回で取り上げた大日本印刷事件判決は、この「解約」の効力が有効と認められるためには、企業が採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる旨を判示しました(この「解約権留保の趣旨、目的」の内容として、同判決は、新卒者の採用に際してはその者の資質、性格、能力その他いわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨である旨を示しています)。
設問のケースでは、内定者の学生時代の「望ましくないアルバイト」が内定取消の原因となっていますが、アルバイトは採用内定よりも前の時点の事象ですから、企業は採用過程において、求職者である学生に対して学生時代の諸活動(就業経験を含む)の詳細について申告を求め、または端的に就業経験の具体的な内容を質問することによって、「望ましくないアルバイト」の存在を把握することは可能であったといえます。近時は採用面接における質問にも気を使いますが、求職者である学生に対して就業経験を質問することは、過去の就業経験を通じて現在どのような就労能力を培ってきたかを確認する意義もあることに鑑みれば、質問は可能と考えられます。また、企業にとって、取引先からの信用を確保することがそれほどに重要であるとすれば、企業に、取引先からの信用を損なう可能性がある事象について求職者に対して質問をすることを期待することは十分可能でしょう。
したがって、設問のケースでは、最高裁が示した要件の前段部分を満たさないと考えられるため、「アルバイト」に違法性あるいは反社会性等の重大な問題がある場合を除いて、内定取消を行った場合には、その効力が否定される可能性が高いといえます。
企業としては、まずは、内定者に対し、学生時代のアルバイトが原因で取引先の信用を損なうおそれがあること及び取引先の信用を損なった場合に会社が被るマイナス面をよく説明するなど交渉し、合意によって労働契約を解約する努力を行うことが妥当です。

企業と学生との間で、(始期付き・解約権留保付きであっても)一旦「労働契約」が成立した以上は、これを解約しない限り企業と学生との間で労働契約が存在し続けることになります。そのため、企業は留保していた解約権を行使するという「内定取消」によって労働契約を解約することになるわけですが、第2回で取り上げた大日本印刷事件判決は、この「解約」の効力が有効と認められるためには、企業が採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる旨を判示しました(この「解約権留保の趣旨、目的」の内容として、同判決は、新卒者の採用に際してはその者の資質、性格、能力その他いわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨である旨を示しています)。

設問のケースでは、内定者の学生時代の「望ましくないアルバイト」が内定取消の原因となっていますが、アルバイトは採用内定よりも前の時点の事象ですから、企業は採用過程において、求職者である学生に対して学生時代の諸活動(就業経験を含む)の詳細について申告を求め、または端的に就業経験の具体的な内容を質問することによって、「望ましくないアルバイト」の存在を把握することは可能であったといえます。近時は採用面接における質問にも気を使いますが、求職者である学生に対して就業経験を質問することは、過去の就業経験を通じて現在どのような就労能力を培ってきたかを確認する意義もあることに鑑みれば、質問は可能と考えられます。また、企業にとって、取引先からの信用を確保することがそれほどに重要であるとすれば、企業に、取引先からの信用を損なう可能性がある事象について求職者に対して質問をすることを期待することは十分可能でしょう。

したがって、設問のケースでは、最高裁が示した要件の前段部分を満たさないと考えられるため、「アルバイト」に違法性あるいは反社会性等の重大な問題がある場合を除いて、内定取消を行った場合には、その効力が否定される可能性が高いといえます。

企業としては、まずは、内定者に対し、学生時代のアルバイトが原因で取引先の信用を損なうおそれがあること及び取引先の信用を損なった場合に会社が被るマイナス面をよく説明するなど交渉し、合意によって労働契約を解約する努力を行うことが妥当です。

以上