ある採用内定者が、学生時代に望ましくないアルバイトをしていたことが発覚しました。取引先への信用確保の観点から、この内定を取り消したいところですが、同人はすでに他の内定先を辞退しています。こうした理由での採用内定取り消しは認められるでしょうか。

1 「望ましくないアルバイト」

テレビ局の女子アナウンサーとして内定を得ていた学生が、過去にクラブでアルバイトをしていたことを理由に内定を取り消されたことを不服として民事訴訟を提起したことが、大きく報道されたことがありました。

企業が学生に対して内定を出した後、想定外の事象から内定を取り消す必要を生じる事案は珍しいことではありません。

この場合、「望ましくないアルバイト」の具体的な内容が問題となりますが、アルバイトの内容が、例えば、学生が主体的に違法行為や反社会的行為を行うものであったような場合には、採用内定の法的性質にかかわらず、有効に内定を取り消すことができる可能性は高いものと考えられます。しかし、アルバイトの内容がそこまでのレベルに達していない場合には、内定取消が無効と判断される事態を想定しておく必要があります。

第2回に続く)

労務行政研究所「労務行政」第3883号132頁掲載「相談室Q&A」(小池啓介)の前半部分に加筆補正のうえ転載