当社では、現在、有給休暇は一日単位で付与しているのですが、当社従業員の多くが、半日の休暇が取得できれば、との希望を有しています。 この点で、当社としては、このような希望を認めなくてはならないのでしょうか。また、これが1時間、2時間単位だったらどうなるのでしょうか。

1 年次有給休暇の半日単位の付与

  労働基準法39条に規定される年次有給休暇制度(以下、「年休」といいます。)の目的は、労働者の心身疲労を回復させ、休息をとる権利を確保することにあるため、年休の半日単位の付与について、行政解釈は、かつて「年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、それ以下に分割して与えることはできない。」としており(昭和24年7月7日基収1428号)、半日単位で年休を付与することはできないと解されていました。

しかし、昭和63年の労基法改正に伴い、行政解釈が変更され.「法第39条に規定する年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。」(昭和63年 3月14日基発150号)とされ、使用者が認めれば.半日単位で年休を付与することも可能であるとされました。

この点については、平成20年改正労基法(平成22年4月1日施行)においても、「年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているところであるが、この取扱いに変更はないものであること。」(平成21年5月29日基発0529001号)とされ、使用者が認めた場合に限り、半日単位での年休付与が可能であることが明確にされています。

このように、半日単位の年休の付与は使用者の義務ではなく、あくまでも使用者が認めた場合に限り、従業員は半日単位の年休を取得できるに過ぎません。

したがって、貴社の従業員の多くが半日単位の年休の取得を希望しているからといって、貴社が従業員らの希望を認めなければならないものではありません。

仮に、貴社が従業員の希望を受け入れて、半日単位の年休の付与を認める場合は、その取扱いを明確化するために、就業規則において、希望する従業員には半日単位の年休を付与すること、半日の定義を午前・午後とするのか、所定労働時間を按分して時刻を定めるのか、半日単位の年休を付与する際の限度日数等を規定する必要がありますので、これらの点にご留意いただければと思います。

 

 2 年次有給休暇の時間単位付与

  従来、時間単位で年休を付与することは認められていませんでしたが、平成20年改正労基法において、仕事と生活の調和を図る観点から、労使協定の締結を条件として、年5日以内に限り時間単位で年休を付与することが可能となりました(労基法39条4項、労基則24条の4)。

もっとも、時間単位の年休制度を導入するには、あくまでも労使協定の締結が必要であるため、使用者には、従業員に対して時間単位の年休を付与する義務はありません。

したがって、貴社の従業員の多くが1時間、2時間単位の年休の取得を希望しているからといって、労使協定を締結しない限りは、貴社は時間単位の年休の取得を認める必要はありません。

なお、仮に労使協定を締結し、時間単位年休制度を導入する場合、①時間単位年休の対象労働者の範囲、②時間単位年休の日数、③時間単位年休1日の時間数、④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数、について労使協定において定める必要があります。

また、行政通達では、労使協定の締結によって時間単位年休を実施する場合には、時間単位年休に関する事項を、「休暇」(労基法89条1号)として就業規則に記載する必要があるとされていますので(平成21年5月29日基発0529001号)、労使協定を締結するだけでなく、就業規則にも記載すべきものであることに注意が必要です。

仮に、従業員からの求めに応じて、半日単位の年休制度、または時間単位の年休制度の導入を検討する場合、導入する必要性の有無、導入した場合の労務管理の複雑化といった事情を考慮し、慎重に検討する必要があります。

なお、いったん導入してから、再度廃止することは、就業規則の不利益変更として難しい場合が多いことは、留意しておいたほうがよいでしょう。

以上

民事法研究会刊『現代型問題社員対策の手引』(第4版)髙井・岡芹法律事務所編

125頁以下より一部修正のうえ転載