当社の取締役(取締役として登記している支店長)が、会社で虚血性心疾患を発症し、死亡しました。心臓病などの持病はありませんが、倒れる前の半年間は出張が多く、月に平均100時間以上の残業をしていました。こうした取締役でも労災は認められるでしょうか。また、これまで残業代は支払っていませんでしたが、労災認定の結果いかんによっては同支払いが必要となるでしょうか。(後編)

(2014年10月1日コラム「過重労働により心疾患で死亡した場合、取締役でも労災として認められるか(前編)」はこちら)

3.労災認定基準

ご質問のケースで取締役が「労働者」と認められた場合、次に、虚血性心疾患による死亡が業務に起因するものであったといえるか(業務起因性の有無)が判断されることになります。

この判断基準としては、厚生労働省から「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」(平13.12.12 基発1063)が公表されており、これによれば、業務起因性は、①発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したことの有無、②発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において、特に過重な業務に就労したことの有無、③発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したことの有無によって決定されます。

ご相談のケースでは上記③が問題になりますが、上記認定基準では上記③について、発症前1カ月におおむね100時間または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる、とされていますので、当該取締役が「労働者」であると認められた場合には、労災認定がなされる可能性は高いといえます。

 

4.残業代支払い

仮にご質問のケースで労災認定がなされたとすれば、当該取締役は労災保険上の「労働者」と認められたことになりますが、そのことと、取締役に対して残業代を支払うべきであったか、ということとは別問題です。取締役が労災保険法上の「労働者」であるとしても、労働基準法上の「監督若しくは管理の地位にある者」(同法41条2号)に該当することは十分あり得ると考えられるからです。

したがって、労災認定がなされたことから直ちに残業代支払いの義務が生じることはありません。むしろ、仮に労災認定がなされた場合には、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求に備えることが重要であると思われます。

こちらの記事は、株式会社労務行政 https://www.rosei.jp/ 2013年12月27日発行 労政時報本誌 3859号 118頁に掲載された原稿を転載しています。

以上