会社の中に、その言動が明らかにおかしく、メンタルの不調が疑われる従業員がいます。そこで、会社より、専門医(精神科医)の受診を勧めているのですが、「私を気ちがいだと言うんですか」などと言って、受診に応じてくれません。どうすればよいでしょうか。

使用者(会社)は労働者に対して、労働契約上の安全配慮義務を負っています(労契法5条)。ですので、設問のように、メンタルヘルスの不調なり何らかの疾患が疑われる者に対しては、その状況に適した種類の医師、たとえば設問のようなメンタルヘルスの不調が疑われるような状況では精神科医の受診を勧めることは、むしろ、安全配慮義務の一環として会社の行うべき義務と考えられます。

ただし、メンタルヘルスの不調は、通常の病気と異なる側面があることは否定できず、精神科医の受診を命じることはプライバシー侵害のおそれが大きいという側面もあります(名古屋地判平成18・1・18労判918号65頁・富士電気E&C事件)。従いまして、その従業員に専門医への受診を命じることは最終的には可能としても、極力、従業員のプライバシーに配慮することが肝要と考えます。たとえば、なるだけ「命令」ではなく「要請」といった形で行い、それでも従業員が肯んじ得ず、かつ、その従業員の状況(病状)に好転がみられない、といった段階に至って、「命令」を出す、という配慮が必要でしょう。

以上