合同労組の特性と対処

前々稿でも述べましたが、合同労組は、企業に不満を有する従業員個人が、その不満を抱くに至った会社からの人事措置(解雇、賃下げ、降格、配転、残業代未払い等)を受けた後になって、駆け込み的に加入することで会社と接触するに至ることが多々あります。こうした場合、企業側としては、唐突に、初対面の合同労組の面々より、当該従業員の合同労組への加入と合同労組(つまりは当該従業員)の要求、更には団体交渉の申し入れを受けることとなり、多くの場合、まさに「寝耳に水」という事態となります。

こうした事態において、労働組合への対応に慣れていない企業は、往々にして、言われるがままに応じなければならないと即断し(合同労組からの団体交渉申し入れの書面にも、企業にこのような即断をさせることを狙ってか、団体交渉申し入れを受けなければ労働組合法違反になるといった警告を付記しているものが多いです)、その団体交渉の申入書に記載している日時、場所、団交事項について、特に異を唱えることなく応諾してしまいがちです。多くの場合、合同労組は、自らが有利に交渉し使用者に準備の期間を与えまいとして、団体交渉の日時については短日時(1週間、あるいは数日など)を指定し、場所については、自らの組合活動を他の従業員にもアピールすべく、会社事業場か、あるいは交渉をホームグランドで行おうとして組合事務所を指定してくることが多いです。こうした合同労組の最初の指定を安易に応諾してしまうと、会社としては最初から悪条件下で交渉を行うことを強いられます。

そもそも、企業、即ち労働契約上の使用者は、労働組合(合同労組もこれに入る)と誠実に団体交渉を行う義務を有しますが(労組法7条)、これは、いついかなる時でも、あるいはどのような項目についても、使用者が労働組合からの団体交渉を拒むことができないわけではなく、使用者たる会社としては、あくまで「不誠実」にならない範囲で、労働組合からの要求に対して「交渉」に応じれば法的に問題ありません。そこで、仮に団体交渉を受けるとしても、 団体交渉の日時については、交渉の準備ができる時間的余裕を持った日時を再提案すべきです(筆者の経験では、多くの場合、概ね2週間から1ヶ月程度が通常と思われます)。場所についても、交渉に集中し、かつ合同労組側のホームグランドをさける意味でも、第三者の施設(貸会議室など)を提示するのが適切です。

また、団体交渉における合同労組側の人数が無限定の場合、大人数でおしかけ威圧的な団体交渉を行ってくる場合もあるので、会社側の要請として人数を限定することを提示するのも妥当です(これも、7~8名程度であれば、不誠実との批判は受けないと思われます)。