合同労組の法的意味と特性

前稿で述べたように、「合同労組」とは、多くの場合、一定の地域に亘って労働者を組織する「一般労組」の性格を有しますが、この労働組合の特色としては、組織を主導する者が企業の従業員ではないため、労使交渉の基盤(職場の共通認識、いわゆる「社内の常識」などと言われるものなど)が希薄な場合が多いところです。合同労組の関与する労使紛争には、前稿で述べた駆け込み式労組案件が多々見られますが、これは、労働者全体において組合組織率が低下している上に、元々労働組合に組織されることの少ない中小企業の労働者、あるいは有期間雇用者、パート、派遣労働者等といった非正規労働者が(因みに非正規労働者の全労働者における割合は、平成元年には19.1%であったが、平成26年には37.4%となっています。)、自己に不利益が及んだ場合、合同労組に駆け込むことが大きな要因となっています。

この合同労組は、企業と交渉するにあたり、その企業に就業していない者が主導するところより、果たして労組法上の労働組合に該当するのか(駆け込んだ労働者個人を代理する立場に過ぎないのではないか)、という疑問も生じうるところですが、少なくとも現時点の裁判所の裁判例、労働委員会の命令例を見る限り、一般論として合同労組について労組法上の労働組合に該当しないとされることはないのが実情です。尚、労働組合法上の労働組合に該当するための要件とされている「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図る」目的(労組法2条)については、そこでいう「労働条件」とは会社の労働者全体のことを配慮すべきではないかという疑問もしばしば呈されていますが、労組法はそこまで要求しているわけではなく、当該労働者個人だけの「労働条件」の維持改善の目的であっても、労組法上の法適合組合性には影響はないとされているところです(もっとも、個人的には、本来の労組法の理念に合致するものであるか否かは、立法論としては議論があるところだとは思います)。

 

(平成25年7月1日付「労働新聞」・連載「どう向き合う!-合同労組対応の基本原則-」第1回(岡芹健夫)後半要旨を加筆補正のうえ転載)