1.はじめに

  前回のコラムでは、フランチャイジーの第三者に対する行為の責任をフランチャイザーが負担するケースの1つとして、名板貸しの責任(商法14条[旧商法23条])を説明しました。

http://law-pro.jp/2015/11/91.html

  今回は、もう一つのケースとして、フランチャイジーの第三者に対する行為についてフランチャイザーが「不法行為責任(民法709条、715条[使用者責任]、719条[共同不法行為責任])」を負うケースを説明します。

 

2.不法行為責任(民法709条、715条[使用者責任]、719条[共同不法行為責任])
不法行為に関する条文は以下のとおりです。

2.不法行為責任(民法709条、715条[使用者責任]、719条[共同不法行為責任])

不法行為に関する条文は以下のとおりです。

民法709条(不法行為による損害賠償) 

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 

 民法7151項(使用者等の責任) 

「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」 

 民法719条(共同不法行為者の責任) 

「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれに者がその損害を加えたか知ることができないときも、同様とする。」 

 

  不法行為責任(民法709条)とは、第三者の権利を故意過失により侵害した者が自らの行為によって生じた損害を賠償する責任を指します。また、使用者責任(民法715条)とは、不法行為を行った者を事業のために使用する者が被用者の不法行為によって生じた損害を賠償する責任を指します(なお、共同不法行為者の責任[民法719条]は、かみ砕いて説明すれば、この709条の不法行為を共同で行った場合に適用されるものです)。

  例えばフランチャイジーの店舗において従業員が誤ってお客さんに怪我をさせてしまったケースを考えてみます。このケースにおいては、不法行為を行った主体は「従業員」であり、その従業員の使用者はフランチャイジーです。したがって、不法行為責任を負うのは、行為主体である従業員であり、使用者責任を負うのはフランチャイジーであって、原則としてフランチャイザーまで責任を負うことはありません。

  しかし、例えばフランチャイザーが「ある事業のために他人を使用する者」、フランチャイジーまたはフランチャイジーの従業員が「被用者」と評価されてしまうような場合には、フランチャイジーまたはフランチャイジーの従業員が第三者に対して損害を生じさせたときであっても、例外的にフランチャイザーも不法行為責任(民法715条)を負担する可能性があります。

 

3.フランチャイザーの不法行為責任

  この点に関し、フランチャイザーの不法行為責任・使用者責任(民法709条、715条)が認められた裁判例として、大阪高裁平成13年7月31日判決(判時1764号64頁)があります。

  当該事案は、フランチャイジーが経営するコンビニエンスストアの店内で、顧客が濡れていた床で滑り転倒し、腕を負傷したところ、当該顧客がフランチャイザーに対して、①顧客に対する安全配慮義務、管理義務違反(民法709条)、②フランチャイジーの従業員に対する安全指導、管理義務違反(民法709条)、③使用者責任(民法715条)、の3つの理由に基づく損害賠償請求をした事案です。

  そして、当該事案では裁判所は以下のような点を考慮して、最終的に①については否定したものの、②及び③を理由としてフランチャイザーの不法行為責任・使用者責任(民法709条、715条)を認定しました。

<①について>

  この主張は、フランチャイザー自身が、フランチャイジーの経営する店舗の床が滑らない状態を保持する義務まで負うことを前提に、フランチャイザーがその義務を怠った点を不法行為と指摘するものでした。しかし、裁判所は、以下のとおり、この主張を退け、フランチャイザーの不法行為責任を否定しています。

◆ 「本件店舗側は、顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、水拭きをした後に乾拭きをするなど、床が滑らないような状態を保つ義務を負っていた」とした上で、当該義務を尽くしていなかった店舗側の不法行為責任を認定しています。

◆ しかし、「本件店舗を経営するフランチャイジーと、フランチャイザーである被控訴人とは別法人であることが認められるところ、具体的に乾拭きする等の上記義務を負うのは本件店舗の経営主体たるフランチャイジーであって、被控訴人(注:フランチャイザー)ではない」として、フランチャイザーの安全配慮義務、管理義務違反を否定しています。

<②について>

  この主張は、フランチャイザーが、フランチャイジーまたはその従業員に対して、店舗の床を滑らない状態に保持するように指導する義務を負うことを前提に、フランチャイザーがその指導義務を怠った点を不法行為と指摘するものでした。裁判所は、以下のとおり、この主張を受け入れ、フランチャイザーの不法行為責任を肯定しています。

◆ フランチャイズ・システムの特徴である、商号の付与や継続的な経営指導、技術援助を挙げた上で、そのことを理由として、「被控訴人(注:フランチャイザー)は、本件店舗の経営主体たるフランチャイジー、又はフランチャイジーを通してその従業員に対し、顧客の安全確保のために、本件のような場合には、モップによる水拭き後、乾拭きするなど、顧客が滑って転んだりすることのないように床の状態を保つよう指導する義務があったというべきである。(中略)被控訴人がこの義務に反していることは明らかであるから、被控訴人はこの点について不法行為責任を負わなければならない」として、②の義務違反を認めています。

<③について>

◆ ③の主張について、裁判所は判決書の本文において明確に判断をしていませんが、なお書きといった形式で、「被控訴人は、控訴人の主張する使用者責任も負うものと解される」と判断しています。


4.フランチャイザーの不法行為責任を回避するための工夫

  上記裁判例は、フランチャイジーが経営する店舗に関する直接の安全配慮義務や管理維持義務についてフランチャイザーが負担するものではないと判断しています(上記①)。

しかし、フランチャイザーにはフランチャイジー及びその従業員に対して、フランチャイジー店舗に関する安全指導やその監督義務があるとし、本件フランチャイジー店舗内の事故に関してフランチャイザーにこれらの指導義務違反があると認定する(上記②)とともに、使用者責任までも認めています(上記③)。

  本来はフランチャイザーとは別個独立の経営主体であるフランチャイジーが経営する店舗内で起きた事故について、直接の経営主ではないフランチャイザーにもその責任があると認められたことが本事案のポイントと言えます。

特に、③については、フランチャイザーとフランチャイジーは別個独立した経営主体であり、フランチャイジーがフランチャイザーに対し労務を提供しているわけではない以上、本来的には、使用者責任(民715条)の要件である「使用関係」にはなじまず、本件でフランチャイザーに使用者責任が認められたことはややイレギュラーな結論であったともいえます。

もっとも、民法715条における「使用関係」とは、必ずしも雇用契約を前提とするものではなく、実質的な指揮監督の関係の有無を基準に判断されるものと考えられており、例えば本件のようにフランチャイジーの店舗に統一的な床材が使用され、フランチャイザーからフランチャイジーに対して同一のモップや水切りなどが支給され、さらにはフランチャイザーが同店舗の清掃状況まで管理しているといった事情に鑑みれば、本件においてフランチャイザーとフランチャイジーとの間に実質的な指揮監督関係があったと判断されたことは必ずしも不当とまでは言いにくい面も存在します。

  フランチャイザーとしては、統一的なブランドイメージを図る上で、フランチャイジーを管理、拘束している部分が少なからずありますが、かかる管理・拘束部分に関連するところでフランチャイジーが第三者に損害を与えた場合には、フランチャイザー自らにも責任が及ぶ可能性もあります。したがって、フランチャイザーは、フランチャイジーに対して指導をする上で、特に管理、拘束部分が強いところについては、その可能性を十分に注意していただいた上で、指導する必要があると思われます。

 

文責 大村剛史弁護士

以上