当社でいくつもの問題行為を起こしてきた社員を即日付で普通解雇することに決定しました。当日は、当該社員を当社の会議室に呼び出し、その場で普通解雇となったことを伝えるとともに解雇通知書と解雇予告手当の交付を行う予定ですが、当該社員が当社からの呼び出しに応じない可能性もあります。または、当社からの呼出しには応じるものの、解雇通知書と解雇予告手当の受取りを拒否する可能性もあります。これらの場合はどのようにしたらよいでしょうか。

1 解雇通知の方法

解雇通知は、使用者による解雇の意思表示ですので、労働者に到達しなければ解雇の効力は生じません(民法97条1項)。この「到達」とは、相手方が通常知ろうと思えばいつでも知ることができる状態となれば足り(我妻榮 有泉亨 清水誠 田山輝明 著『我妻・有泉コンメンタール民法[第8版] 総則・物権・債権』〔日本評論社、2022年〕216頁)、例えば、同居人が書類を受け取った時点、居住場所の住居の郵便受けに投函された時点でも「到達」が認められます。
そのため、解雇の通知方法は、相手方に到達していればよく、法的には口頭でもよいのですが、解雇の意思表示を確実に行うために、「解雇通知書」等の書面を交付することが多いです。もっとも、重要な話となるため、実際には労働者を呼び出して口頭で解雇を伝えつつ、解雇通知書を交付することもあります。

2 解雇予告手当の支払方法

使用者は、労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前までに予告をするか、予告をしない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法20条1項本文)。そのため、即日解雇をする場合は、30日分以上の平均賃金の解雇予告手当を支払う必要がありますが、通達(昭和23年3月17日基発464号)では解雇の申渡しと同時に支払うべきものとされています。
そのため、即日解雇の場合は、解雇日当日までに現金で解雇予告手当を用意しておき、解雇日当日に労働者を呼び出し、解雇を通知するとともに、現金で解雇予告手当を交付し、その場で領収書にサインをもらうことも多くみられます。

3 本設問の対応

本設問の会社のように、即日解雇をしようとする場合、事前に解雇通知書はもちろん、解雇予告手当を現金で準備しておく必要があります。もっとも、解雇に至るまでには会社と労働者が対立関係にあることも多いため、労働者が素直に会社からの呼出しに応じない場合や書類の受取りを拒否する場合もあります。

(1) 会社からの呼出しに応じない場合

解雇の通知が翌日以降となれば解雇日もずれますので、当日中に何らかの方法で解雇を通知する必要があります。そのため、解雇の意思表示が本人に到達したという証拠を残すために、例えば、メールやSNSのメッセージ機能(LINE等)等で当日中に解雇通知書の写真やスキャンしたデータを送付し、解雇通知書の原本はおって本人の自宅宛てに郵送することがよいでしょう。なお、会社のメールアドレスの場合、解雇日以降は本人がアクセスできなくなると思われますので、あらかじめ、私用のメールアドレスやSNS等での連絡手段も確認しておく必要があります。メール等での連絡がとれないのであれば、電話で即日解雇となった旨を伝え、おって自宅宛てに解雇通知書を郵送することも考えられますが、本人が電話に出ない可能性もありますし、最近は留守番電話機能がない携帯電話も多いです。その場合は、当日中に会社の担当者が本人の自宅に赴いて解雇通知書を郵便受けに投函すること等も考えられます。
また、解雇予告手当については、当日中に給与振込口座に振り込むことが最も確実だと思われます。なお、振込みが14時~15時頃をすぎると翌日扱いとなる銀行も多いため、会社からの呼出しに応じない可能性があるのであれば、口座振込をすることも見越して呼び出す時間を設定した方がよいと思われます。

(2) 会社からの呼出しには応じたが解雇通知書と解雇予告手当の受取りを拒否した場合

この場合、口頭での解雇通知は済ませているため、法的には解雇の意思表示は到達していますが、会社が本人に解雇を通知したことの証拠を残すため、(1)のケースと同様に、メール等で当日中に解雇通知書の写真やスキャンしたデータを送付し、解雇通知書の原本はおって本人の自宅宛てに郵送することがよいでしょう。
また、解雇予告手当についても、(1)のケースと同様に、当日中に給与振込口座に振り込むことが最も確実だと思われます。

 

以上