【巻頭言】~第18期中央委員会第3回総会~ 会長弁護士 高井伸夫
【中国でのビジネストラブルに備える契約書の作成⑤】 東京中国室弁護士 高 亮
【法律改正情報】
「中華人民共和国消費者権益保護法」(全人代常委会2013年10月25日公布、2014年3月15日施行)
「中華人民共和国旅行法」(全人代常委会2013年4月25日公布、2013年10月1日施行)
「外国人出入国管理条例」(国務院2013年7月12日公布、2013年9月1日施行)
「労務派遣行政許可実施弁法」(人力資源・社会保障部2013年6月20日公布、2013年7月1日施行)
【中国は今・・・ 最大の環境問題は水】~ 東京中国室 顧問 千葉 勝茂
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【巻頭言】~第18期中央委員会第3回総会~ 会長弁護士 高井伸夫
習近平指導部による最初の共産党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)が本年1月9日から11月12日まで開催された。司法体制改革の行方に絞っていえば、総会後に発表されたコミュニケで以下の通り述べられている。即ち、‘法治中国の建設では、司法体制改革を深化させ、公正、高効率で、権威ある社会主義司法制度作りを急ぎ、人民の権利・利益を守らなければならない。憲法・法律の権威を守り、行政・法執行体制の改革を深化させ、裁判権、検察権の法に基づく独立した公正な行使を確保し、司法権力運用の仕組みを整え、人権の司法による保障制度を充実させるべきだ’と。‘裁判権、検察権の独立した公正を確保’とある通り、これは地方であればあるほど有力者が、地元の党委員会等を通じ裁判の審理や判決に強引に介入する例が後を絶たないという意味でもある。司法と謂えども党の指導下に置かれている中国では、政治改革が先行しなければ司法の独立は難しいというのが大方の意見である。
一方で、弊北京代表処の萩原大吾弁護士が内陸部の地方での裁判の立会いで経験したように、必ずしも地方保護主義的な判断に偏らない裁判官の訴訟指揮を目撃し、中国の司法機関への信頼が高まった(「国際貿易」11月19日号「今日の話題」より)としているのは希望の萌芽といえるのかもしれない。然し、一昨年、当時の全人代呉邦国委員長は、演説の中で「5個不搞」、即ち、中国は多党制、私有化、両院制、連邦制と共に、三権分立も行わないと宣言している。とすると、司法の独立を謳った3中総会との整合性をいかに執ろうとしているのであろうか?
以上
【中国でのビジネストラブルに備える契約書の作成⑤】東京中国室 弁護士 高 亮
前回の中国情報では、法人との契約締結における代表権限の確認についてお伝えしましたが、雇用契約をはじめ、個人が相手方になる契約を締結される場合にも、契約当事者が本人であるか、身元確認を行って頂く必要があります。
中国において、個人の身元確認を行うには、16歳以上のほぼ全国民が所持している公安局発行の「居民身分証」の提示を求めることが一般的です。
居民身分証には、氏名、性別、民族、生年月日、常住戸籍所在地の住所、公民の身分番号、本人の写真、証明書の有効期間および発行機関が記載されており(中華人民共和国住民身分証法第3条)、身分番号は、国民一人一人個別の終生変わらない番号とされておりますので、居民身分証の原本の提示を受け、それが真正なものであることを確認した上で、契約書にも身分番号を記載し、場合によっては居民身分証の写しを添付して頂くことが、契約当事者の確認を行う上で有用であると存じます。
以上
【中国に進出する際の主な企業形態について】
1979年の中外合資経営企業法を皮切りに、外資企業法、中外合作経営企業法が制定され、いわゆる中国の三資企業法が形成され、外資企業及び中国経済の発展に寄与してきました。
この約30年の間において中国は顕著な経済発展を遂げましたが、ハイテク製品製造、生産技術等の分野については未成熟な段階にあると言わざるを得ません。
経済発展に伴う市民収入の増加により、食品の安全や日々の生活に関する人々の関心も高まり、日用品をはじめ、例えば化粧品や電気製品は日本・韓国・アメリカ、車はドイツ・日本・アメリカ・韓国、ミルクや果物等はカナダ・ニュージーランド・オーストラリア等からの輸入製品が人気を集めることになりました。このような巨大なマーケットに着眼し、現地法人化させる企業も増えてきました。周知のように、例えばアメリカ・韓国の携帯電話、ドイツの電機製品メーカー、日本の自動車メーカー、また、高いレベルのサービスを提供することを売りにしたコンビニエンスストアや飲食産業が進出し、現地法人化の成功を収めています。
機を同じくして、中国政府が新技術の誘致及び生産能率のアップ等を図るため、上海に自由貿易区域を設立し、外資の参入拡大、会社設立手続きの緩和、関税及び税金の優遇政策等を実施することになりました。将来は更に改革を進め、外資企業の設立や管理等について中国の内資企業と同等に扱うことを目指すとの報道もありました。これにより更にこれから数年にかけて更に整備された環境と市場による新規投資が増加し、外資企業の現地化が進むことが期待されます。
また、外資企業の中国での主な投資形態である三資企業について紹介させていただきます。
「中外合資経営企業」とは、中国投資者と外国投資者が中外合資経営企業法に基づき、会社を設立し、中外合資経営企業法及び定款の規定に基づき会社を管理、運営する企業です。このような企業に対しては、行政機関の審査許可の判断基準が明確で、実務的にも合資経営の形式が確定しております。例えば、中国側が資金と技術を望み、外国投資者側が販売ルート確保と生産コスト低減を望む場合、会社形態が法律上はっきり規定されているので双方はよりスムーズに合意に達することが可能です。但し、会社の方針及び支配権については、意見の不一致及び紛争が起こりやすいため、設立時に、投資比率、取締役会の議決規定、持ち分譲渡等について慎重に設定する必要があります。
「中外合作経営企業」とは、中国投資者と外国投資者が中外合作経営企業法に基づき、出資の方式及び条件、会社の管理、利益の分配、リスクの分担、解散時の財産の分配等について略々自由に合意することができ、かつ、設立の申請が他の外資企業より簡便な企業形態です。但し、法律の規定がはっきりしないが故に、実際の運用では予測できないリスクがあり、紛争になった場合の予見可能性が低いといえます。
「外資企業」とは、外資企業法に基づき、設立された外資独資企業です。外資企業において経営理念、支配権について争いがなく、外国投資者の意思が直ちに企業に伝わり実行されるメリットがある一方、販路の拡大、人材の育成・抜擢・定着等沢山の課題を独自で克服しなければならないデメリットがあります。通常、軌道に乗るまでには時間とコストがかかるといえます。
中国に進出を考えている企業は、上記事項を踏まえ、自社の資金、人材、販路等諸事情に照らし、慎重に進出形態を検討する必要があるでしょう。
以上
【法律改正情報】 <法律>1.「中華人民共和国消費者権益保護法」(全人代常委会2013年10月25日公布、2014年3月15日施行)
消費者権益保護法は1993年に制定されて以来、初めての改正を迎えた。消費者権益保護法は、消費者の適法な権益を保護し、社会経済秩序を維持・保護し、且つ社会主義市場経済の発展を促すことを目的として制定され、今回の改正に至るまで実質的な改正が行われていなかった。
主要な改正内容:
- 非対面取引に関する規定の追加。
- 個人情報の保護に関する規定の追加。
- 経営者の品質保証に対する責任の加重。
【法律改正情報】 <法律>2.「中華人民共和国旅行法」(全人代常委会2013年4月25日公布、2013年10月1日施行)
旅行に関する総合法規が制定されたのは中国では初めてである。「旅行法」は、10章111条で構成されており、総則・法的責任・附則のほか、旅行者、旅行企画・促進、旅行催行、旅行サービス契約、旅行の安全、監督・管理、旅行関連トラブルの処理など各種項目に関する規定が記載されている。
主要な内容:
- 旅行者保護の強化。同法は旅行者の権益保護という立場を重視しており、かなり明確に反映されている。
- 同法は、詐欺まがいの「赤字ツアー」、強制ショッピング、オプショナルツアー参加強制、観光地の入園料など、旅行業界で関心を集めている各種問題についても言及している。
【法律改正情報】 <行政法規>
1.「外国人出入国管理条例」(国務院2013年7月12日公布、2013年9月1日施行)
当該条例の施行に伴い、旧法の「外国人出入国管理法実施細則」は廃止された。当条例ではビザの種類を旧来の8種から12種に増やしている。各ビザの有効期間は最高5年(Q1・S1・X1)のものから180日以内の短期(Q2・S2・X2)のものと、ビザの種類ごとに異なる。
主要な変更:
- 従来のFビザの一部がMビザとなり、ビジネス目的での訪問のみを対象とするビザが新設された。
- 親族訪問を対象とするQビザの新設。
- 中国国内において就労・就学する外国人の親族を対象とした訪問ビザ、Sビザの新設。
- 高度人材を対象としたRビザの新設。
その他の留意点:
- 「三非」(不法入国、不法滞在、不法就労)と呼ばれる現象にも対応している。
- 指紋の採取。新条例の下では、長期滞在をする外国人が居留許可を公安局に申請する際に、公安局が指紋を採取し、保存することが可能となった。
【法律改正情報】 <部門規章>
1.「労務派遣行政許可実施弁法」(人力資源・社会保障部2013年6月20日公布、2013年7月1日施行)
労務派遣を規範するため、『中華人民共和国労働契約法』、『中華人民共和国行政許可法』等の法律に基づき、人力資源・社会保障部は『労務派遣行政許可実施弁法』を公布した。
- 労務派遣業務の経営は、法に従い所在地における許可管轄権を有する人力資源・社会保障行政部門(以下「許可機関」という)に行政許可を申請しなければならず、許可を得ない限り、如何なる「単位」も個人も労務派遣業務を経営してはならない。
- 労務派遣業務の経営を申請する「単位」は、その登録資本金が200万元を下回ってはならない。
- 労務派遣単位は『労務派遣経営許可証』を取得した後、適切に保管しなければならず、改竄、転売、賃貸、貸与、又はその他の形式で違法に譲渡してはならない。
- 当該弁法施行前に労務派遣業務を経営している「単位」は、当該弁法に基づき労務派遣行政許可を取得した後に、新たな労務派遣業務を経営することができる。
<中国は今…> ~最大の環境問題は水~ 千葉 勝茂
NIKKEIBUSINESS(2013/10/21)記事のタイトルである。記事によれば、中国の環境問題専門家に、最も深刻な問題は何かと問うと、異口同音に「水不足」と「水質汚染」を挙げるという。中国の年間水使用量は6000億m2、一人当たり使用量では約400m2で米国の1/4,日本人の約1/3である。集水域を持つ河川の数も50年代の5万から、今では2万3千に減少しているとのこと。同時にこの水資源への脅威が「水質汚染」である。中国地質学院が5年間を掛けて完成させた「華北平原地下水質汚染調査」によれば、浅層地下水の汚染は相当深刻で、汚染されていない地下水は55.87%に過ぎず、程度の差はあるが、汚染されている地下水は44.13%に達している。汚染物質は、砒素、鉛、水銀を主とした重金属及びPCB, ダイオキシン等の化合物である。水は再生可能であるが、生産はできない資源である。果たして中国は不可逆的な水資源問題を如何に解決していくのであろうか?
以上