【巻頭言】~日中平和友好条約締結三十五周年~ 会長弁護士 高井伸夫
【法律改正情報】
1.「中華人民共和国証券投資基金法」の改正(全人代常委会) (2012年12月28日公布、2013年6月1日施行)
2.「中華人民共和国弁護士法」等法律の改正(全人代常委会) (2012年10月26日公布、2013年1月1日施行)
「パソコンソフトウェア保護条例」、「著作権法実施条例」、「情報ネット伝達権保護条例」の改正(国務院) (2013年1月30日公布、2013年3月1日施行)
1.「最高人民法院の労働報酬の支払拒否の刑事案件の法律の適用に関する幾つかの問題についての解釈」(最高人民法院) (2013年1月14日発布、2013年1月23日施行)
2.「最高人民法院の労働紛争案件の法律の適用に関する幾つかの問題についての解釈」(最高人民法院) (2012年12月31日発布、2013年2月1日施行)
1.「電子入札募集・入札弁法」(国家発展・改革委員会、商務部等) (2013年2月4日連合公布、2013年5月1日施行)
2.「商務部による外商投資企業に関わる持分出資に関する暫行規定」(商務部) (2012年9月21日公布、2012年10月22日施行)
「中華人民共和国特許法」の改正
【中国でのビジネストラブルに備える契約書の作成】 東京中国室弁護士 五十嵐充
【中国は今・・・】~中国の‘影の銀行’とは?~ 東京中国室 顧問 千葉 勝茂
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【巻頭言】~日中平和友好条約締結三十五周年~ 会長弁護士 高井伸夫
昨年12月20日、日中関係7団体主催による「木寺・丹羽新旧駐中国大使歓送迎会」の席上、中国の程永華駐日大使は、日中関係を「逆水行舟、不進則退」(逆水の行舟は、進まざれば則ち退く)と例えた。
その意味は、現在の逆風の中でも、努力を怠れば益々退歩して行く危機感を示したものであろう。
そして、3点の期待を示した。第1は現在の尖閣諸島問題(当然ながら、同大使は‘釣魚島’と表現)を適切に解決する、第2は中日協力の双贏(ウインウイン)の道を探る努力をする、第3は友好交流を堅持する、である。
昨年は日中国交回復四十周年の記念すべき年であるにもかかわらず、誠に慨嘆すべき事態となったのは慚愧に耐えない。
そして「政冷経寒‘交凍’」にまで至るのは一衣帯水を標榜してきた両国のあり方として正しいのであろうか?
1985年、北京大学の招きで初めて訪中し、「日米安保条約後の日本の経済発展~法律制度の変遷をめぐって~」との題で講演したが、当時の北京大学法学部教授諸氏との熱気の籠もった議論を忘れられない。
今年は日中平和友好条約締結35周年である。
1972年、毛沢東は訪中した田中角栄総理に向かって‘喧嘩は済みましたか?’と問い掛けた。
毛沢東には国益の衝突する交渉に喧嘩があって当然と思う度量があったのである。
中国人は「お前は大好きだが、日本人は嫌いだ」と言う人が多いと言う。
この解消には‘好きな’日本人を沢山増やせば良い理屈になる。
中国当局が、‘予測不能の事故発生懸念’との理由だけで、‘蜘蛛の糸’たる民間交流までをも閉じるとすれば誠に悲しい。
今年の日中交流が‘災い転じて福となす’劇的展開の年となることを願うや切である。
【法律改正情報】~法律
1.「中華人民共和国証券投資基金法」の改正(全人代常委会2012年12月28日公布、2013年6月1日施行)
第11期全国人民代表大会(全人代)常務委員会の第30回会議で、証券投資基金法改正草案を可決し、非公募基金を調整範内として基金投資者の権益保護を強化することに決定した。
2.「中華人民共和国弁護士法」等法律の改正(全人代常委会2012年10月26日公布、2013年1月1日施行)
第11期全国人民代表大会常務委員会の第29回会議が、昨年行った「刑事訴訟法」の改正に合わせ「中華人民共和国弁護士法」、「中華人民共和国未成年保護法」、「中華人民共和国国家賠償法」等、計7つの法律及び改正案を可決した。
「弁護士法」の主要な改正内容:
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弁護士の容疑者又は被告人の弁護人としての地位を明確にし、弁護士は刑事事件の捜査段階から事件の全段階に介入及び弁護意見を提供できること、そして初めて法律条文の形で弁護士が容疑者又は被告人の訴訟権利を守る義務を明確にした。
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弁護士の秘密保持内容を一層明確にした。
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捜査段階において弁護士に犯罪嫌疑がある場合、強制措置を取られる前に、捜査機関は直ちに当該弁護士の所属弁護士協会又は事務所に通告しなければならない。当改正は弁護士の執業権利と弁解権利を保護した。
【法律改正情報】~行政法規
「パソコンソフトウェア保護条例」、「著作権法実施条例」、「情報ネット伝達権保護条例」の改正(国務院2013年1月30日公布、2013年3月1日施行)
改正後の条例は三部とも行政処罰の罰金金額について調整した。特に現行の著作権法第48条の著作権侵害行為に関して罰金の上限を引上げ、元の5万元と10万元以下の罰金を20万元と25万元以下の罰金に調整した。
【法律改正情報】~司法解釈
1.「最高人民法院の労働報酬の支払拒否の刑事案件の法律の適用に関する幾つかの問題についての解釈」(最高人民法院2013年1月14日発布、2013年1月23日施行)
中国刑法第276条は労働報酬の支払拒否について定めている。その内容は、以下の通りである。「財産を移転、または隠匿する」等の方法により、労働者に「労働報酬」の支払いを拒否、又は支払う能力があるのに支払わない場合、その「金額」が大きくて、政府の「関係部署」の支払命令を受けてからも支払わないとき、3年以下の有期判決、又は拘役に処するとともに科料に処する。あるいは単独で科料に処する。「厳重な結果」をもたらしたとき、3年以上7年以下の有期判決にするとともに科料に処する。また、管理人及び直接責任者の刑事責任と本罪の刑事罰の軽減及び免除についても定めている。
だが、刑法第276条の要件は曖昧で実際の適用が難しかった。そこで今回の司法解釈はその適用要件について細かく規定することに至った。本司法解釈は9条から構成され、おもに、刑法第276条の「労働報酬」、「金額」、「財産を移転、隠匿する行為」、「政府関係部署」、「厳重な結果」の内容を列挙または、明確化させたものである。
2.「最高人民法院の労働紛争案件の法律の適用に関する幾つかの問題についての解釈」(最高人民法院2012年12月31日発布、2013年2月1日施行)
本解釈は15条から構成されており、ここにおいては、以下の内容を紹介する。
労働仲裁と労働訴訟の管轄について、当事者が労働仲裁の申し立てをしたところ、受理しない場合、人民法院に裁判の申請をしたとき、人民法院は、仲裁委員会が受理すべきと考えるとき、仲裁委員会に受理の通知を出す。にもかかわらず、受理しない場合、人民法院は訴えを受理しなければならない。
労働者の原因によらず、新しい会社で働くことになり、元使用者が経済補償金を支払っていない場合、労働者が使用者の過失(労働契約法第38条)により契約を解除、又は使用者が労働契約を解除、終止するとき、労働者が元使用者の下で勤務した期間を現在の使用者のところで勤務した期間に加算して経済補償金を請求することができる。何が「労働者の原因によらず、新しい会社で働くことになった場合」にあたるかについて4つの例を挙げている。
そのほかに重要な条文として労働契約終了後の競業避止期間中の賃金について明確な基準を設けた。上述犯罪の主体範囲及び単位犯罪に関する問題を明確にした。
【法律改正情報】~部門規章
1.「電子入札募集・入札弁法」(国家発展・改革委員会、商務部等2013年2月4日連合公布、2013年5月1日施行)
電子入札募集・入札活動を規範し、健全発展を促進するため、国家発展・改革委員会、商務部等8つの部署が「電子入札募集・入札弁法」を正式発表した。当弁法は調査研究から立法まで約六年間かかり、入札領域に重大な影響を与える。
弁法により、入札者が入札締切時間の前に入札書類の伝送提出を完成しなければならず、入札締切時間の前に入札書類の伝送が完成しない場合、入札書類の撤回と見なし、入札締切時間を超えて送達する入札書類に対して、電子入札募集・入札取引プラットフォームがそれを拒否しなければならないこと、電子入札募集・入札プラットフォームが入札者による送達の入札書類を受け取った途端に入札者に確認受取通知を即時に発行し、かつ入札書類を適切に保存すること、入札締切時間の前に、入札者による補充、改正又は撤回の入札書類以外、すべての単位と個人がそれを公開、ダウンロードしてはならないことを明らかにした。
また、弁法は電子開札が入札募集書類確定の時間に基づき、電子入札募集・入札プラットフォームの上に公開で行わなければならず、すべての入札者がオンラインで開札に参加すること、開札の際に電子入札募集・入札プラットフォームがすべての入札書類を自動的にダウンロードし、入札募集者と入札者を提示して入札募集書類が規定の方式に基づき時間通りにオンラインで公開されることを明確にした。
2.「商務部による外商投資企業に関わる持分出資に関する暫行規定」(商務部2012年9月21日公布、2012年10月22日施行)
主要な内容:投資の便利化の水準を高め、外国投資者が中国における投資を促進する為、外商投資に関する法律、「会社法」及び関連する行政法規の規定に基づいて、当規定が制定した。外国投資者が国内企業の持分を対価として、その他の投資者が保有する国内企業持分を交換取得するには、この規定に関連する持分出資条件、及び持分評価等に関連する規定を参照し、かつ、「外商投資企業の投資家の持分変更に係る若干の規定」及び「外国投資家による国内企業の買収に関する規定」等の規定を遵守しなければならない。
【法律改正情報】~草案
「中華人民共和国特許法」の改正
中国国家知的財産権局は「特許法」の改正を検討している。「特許法」は1984年に施行され、1992年、2000年、2008年各三回の改正を行った。今回の改正は特許運用の促進及び職務発明制度に関する規定の完全化を中心とする。
【法律改正情報につき 文:北京代表処 首席代表 萩原大吾、上海代表処 首席代表 東城 聡、上海代表処 安 炳燁】
中国でのビジネストラブルに備える契約書の作成② 東京中国室弁護士 五十嵐 充
契約書作成に当たって、契約当事者間の合意事項を確実に実行するために、不測の事態に備えた諸々の対応策を規定しても、その規定内容を契約相手に強制力を持って執行できなければ、その契約書は絵に描いた餅となってしまいます。
例えば、中国では、日中間には相互に裁判所の判決・決定を承認・執行する国際条約がないことから、日本の裁判所の判決内容を中国で強制執行することができません。他方、日本では、上記の通り日本の裁判所の判決が中国で執行できないことから、少なくとも中国の裁判所による財産法上の判決については、日本で強制執行することはできないとされています。(このような考え方を相互主義といいます。民訴法第118条・大阪高判平15・4・9)
中国で強制執行する可能性がある場合に、日本の裁判所を紛争解決機関として合意することが必ずしも適切ではないということに注意が必要です。
以上
<中国は今…> 中国の‘影の銀行’とは?東京中国室顧問 千葉 勝茂
ANZ銀行(オーストラリア・ニュージーランド銀行)が「大中華地域週間観察報告」で‘影の銀行’に関し報告している。‘影の銀行’とは地下銀行、信託商品及び商業銀行の財テク商品活動の3種と定義している。中国銀行の調査では、’11年5月末に地下銀行の規模は約3.38兆元とし、又、信託商品は’12年9月末現在、信託会社65社で6.3兆元の資産を保有、GDPの13%に相当、更に「国際通貨基金」(IMF)は’12年9月末時点での財テク商品は8~9兆元、GDPの17~19%相当とする。合計規模は17~18兆元だが、規模は急拡大し、’12年には30兆元、GDPの5割以上との情報もある。中小企業への正規銀行融資は約15%程度と、2倍以上の金利にも拘わらず‘影の銀行’に頼らざるを得ない実情がある。政府は‘影の銀行’のシステムのリスクを重視、根本的解決の必要性を指摘している。
以上