(2012年2月~2012年5月)
1.「清潔生産促進法」(全人代常務委)(主席令第54号)
(2月29日改訂、7月1日施行)
2.「海洋観測予報管理条例」(国務院常務委)(国務院令第615号)
(2月15日公布、6月1日施行)
3.「特許標識登記弁法」(知識産権局)(同局令第63号)
(3月8日公布、5月1日施行)
4.「特許実施強制許可弁法」(知識産権局)(同局令第64号)
(3月15日公布、5月1日施行)
5.「刑事訴訟法」(全人代)(主席令第55号)
(3月14日改訂、2013年1月1日施行)
6.「農業植物品種命名規定」(農業部)(同部令第2号)
(3月14日公布、4月15日施行)
7.「校車安全管理条例」(国務院)(国務院令第617号)
(4月5日公布、即日施行)
8.「女性従業員労働保護特別規定」(国務院)(国務院令第619号)
(4月28日公布、即日施行)
9.「財務部門監督弁法」(財務部)(同部令第69号)
(3月2日公布、5月1日施行)
10.「証券発行と受託販売管理弁法」(証券監督管理委)(同委令第78号)
(5月11日公布、5月18日施行)
【最近の判例と注目事件から-中国法院網―(http://www.chinacourt.org/index.shtml):6月】
【北京春秋】北京での部屋探し 北京代表処首席代表弁護士 萩原大吾
【閑話休題】地溝油と薄煕来失脚事件 東京中国室顧問 千葉勝茂
【中国経済失速の予兆と再びの景気刺激策】 東京中国室顧問 千葉勝茂
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【巻頭言】~大国中国の目指す道~ 会長弁護士 高井伸夫
私は5月9日に75歳を迎えた。思えば、大学に入学した1956年に中国に興味を持ってから既に46年になる。初めて中国の大地に一歩を印したのは1985年、今から27年前のことである。東京貿易産業の伊澤己代治氏の要請で、北京大学で「日米安保条約後の日本の法秩序~法律制度の変遷をめぐって~」と題して講演を行った。今や中国は、2010年、日本を抜き世界第2位のGDP大国になったが、当時の北京の街の静謐な佇まいを知る者としては、将に隔世の感を禁じ得ない。今年は日中国交正常化40周年であるが、1978年に、中国が「改革・開放政策」に舵を切って以来34年、誰が今日の繁栄を予想し得たであろうか。1989年6月4日、所謂「六四事件」の政治的風波を乗り切り、「先富論」を掲げて今日の繁栄に導いた中国の指導者の努力は良とするが、一方で官僚腐敗、所得格差、自然破壊等は不可逆的に拡大しており、これにいかに対処して行くかは、次期第五世代指導者の極めて重大な任務である。
さて、先だって「中国が変える世界秩序」(日本経済評論社:関志雄、朱建栄、日本経済研究センター、清華大学国情研究センター胡鞍鋼著)を興味深く読んだ。胡鞍鋼論文は大国となった中国の目指す方向を明示している。同論文は、’20世紀の中国に「千年来の大きな変化」が起きた’とし、今後の中国の世界への貢献を三大貢献と要約し、第一は世界経済成長への貢献、第二は世界貿易拡大への貢献、第三は世界の発展、具体的に全人類の発展への貢献、であるとする。そして今後30年間で世界の為に更に三つの貢献をするとして、知識面の貢献、グリーン経済への貢献、文化面の貢献を上げる。殊に文化面の貢献では、’西側の所謂「普遍的価値観」の長期に亘る独占に対する挑戦でもある’とする。グローバル化の流れの中で、「一栄倶栄、一損倶損」(一つ繁栄すれば全て繁栄し、一つ損すれば全て損する)との世界同舟の観点から中国の発展こそが世界にチャンスをもたらすとする。そして、終始一貫して「中国貢献論」を貫き「中国脅威論」に積極的に答えるべしと結ぶ。然りながら、昨今の、中国の、世界の海洋・資源・土地、そして宇宙にまで手を伸ばす囲い込みの動きは、多少の違和感を禁じ得ないのは筆者一人であろうか?本書のタイトルにある「中国が(世界を)変える」とは、正に、「世界秩序へ挑戦」とも受け取れないこともないのは杞憂であろうか?孫子の兵法にある、「兵は詭道なり」が筆者の危惧であることを祈るのみである。
【東京春秋】外国人採用の手引き 東京中国室弁護士 五十嵐充
平成23年10月末時点における日本での外国人労働者のうち、中国籍労働者の占める割合は、43.3%です(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」)。人口減少に伴い、外国人労働者は日本にとって不可欠な労働力となってきています。このような状況のなか、改正された出入国管理及び難民認定法(以下、「改正入管法」という。)が平成24年7月9日に施行されました。同法施行に伴って、企業が外国人を雇用する際の確認方法にも変更がありました。
外国人は、改正入管法で定められている在留資格の範囲内において、日本での活動が認められます。
改正入管法では、従来の外国人登録証明書に代わり在留カードが発行され、在留カードの表面に「就労制限の有無」を記載する欄を設けました。これにより、基本的には、在留カードの有無や在留カード表面の「就労制限の有無」記載欄を確認すれば、在留外国人が就労できるかどうかの判別ができるようになりました。
外国人を雇用したところ、不当就労であることが判明した場合、雇用者が在留カードを確認しない過失が認められるときには、3年以下の懲役、300万円以下の罰金を科されることがあります。外国人を雇い入れる際には、不当就労とならないように、在留カードの有無及び同カード表面の「就労制限の有無」記載欄をしっかりと確認するようにしてください。
法改正を機に、外国人労働者の採用活動について、改めて注意を喚起していただければと思います。
【最近の法令から】
(2012年2月~2012年5月)
1.「清潔生産促進法」(全人代常務委)(主席令第54号)
(2月29日改訂、7月1日施行)
2.「海洋観測予報管理条例」(国務院常務委)(国務院令第615号)
(2月15日公布、6月1日施行)
3.「特許標識登記弁法」(知識産権局)(同局令第63号)
(3月8日公布、5月1日施行)
4.「特許実施強制許可弁法」(知識産権局)(同局令第64号)
(3月15日公布、5月1日施行)
5.「刑事訴訟法」(全人代)(主席令第55号)
(3月14日改訂、2013年1月1日施行)
6.「農業植物品種命名規定」(農業部)(同部令第2号)
(3月14日公布、4月15日施行)
7.「校車安全管理条例」(国務院)(国務院令第617号)
(4月5日公布、即日施行)
8.「女性従業員労働保護特別規定」(国務院)(国務院令第619号)
(4月28日公布、即日施行)
9.「財務部門監督弁法」(財務部)(同部令第69号)
(3月2日公布、5月1日施行)
10.「証券発行と受託販売管理弁法」(証券監督管理委)(同委令第78号)
(5月11日公布、5月18日施行)
【最近の判例と注目事件から-中国法院網―(http://www.chinacourt.org/index.shtml):6月】
【北京春秋】北京での部屋探し 北京代表処首席代表弁護士 萩原大吾
先日、北京に来てしばらくした駐在員の友人が、ホテルから引越すことになり、その部屋探しに付き合うことになりました。普通、日系企業の駐在員は、日本語対応ができる不動産屋さんを尋ね、日本人用ともいうべき物件に案内されることが多いようです。このような物件は、セキュリティがかなり重視されており、周辺に日本料理店が多いなど便利ですが、1LDKで月額20万円近くするなど賃料が現地相場と比較して2倍以上と高額な場合が多く、また、契約書上も借り手に過度に不利な条項が置かれているものが散見されます。
私の友人は、日系駐在員が多く住む物件ではなく、現地の人が多いマンションに住みたいということで、町中の一般の不動産屋さんを尋ねました。
以前と比べればかなり改善されましたが、応対も比較的ざっくばらんな感じで、物件に関しても、聞いたことにのみ回答してくれるといった感じです。”省エネ対応”とでもいうのが当たっているかもしれません。
2件の不動産屋さんを梯子し、合計4、5件の物件を見た後で、A物件とB物件の2件に絞りました。
私の友人が一番気に入ったB物件は、内装等の出来が非常によかったのですが、バスタブがありませんでした。中国の人は、最近こそ変わってきているようですが、もともとバスタブを使用する習慣がなく、バスタブがある物件は例外的です。北京の冬は、マイナス20度近くになることもあり、夏はともかく冬はお風呂に入りたいところです。
そこで、最終的に第二候補であるA物件に決め、契約手続きを進めるべく不動産屋さんへと戻りました。この時は、まもなく起きるトラブルを知る由もありませんでした。 次号に続きます。
【閑話休題】地溝油と薄煕来失脚事件 東京中国室顧問 千葉勝茂
1930年代、上海に遊んだ詩人の金子光晴は、著書の中で「中国人とは、人間にはどれだけのことが出来るかという経験を、こころならずも極限まで究めさせられた民族のようだ」(資生堂のキャッチコピー’25歳はお肌の曲がり角’を書いたのは同氏である)と述べている。中国では、凡そ考えつく限りの悪質な事件は枚挙に暇がない。仏山での2歳女児轢き逃げ事件で通行人がこれを横目に見て誰も助けなかった事案(尤もこれは、ある交通事故で老人を助けたら、その老人から’こいつが犯人だ!’と言われ濡れ衣を着せられたことから、触らぬ神に祟り無しとばかりに通り過ぎたと言う理由もあるのだが…)、「地溝油」と称して、ドブに捨てられて使用済み油を掬い上げ、これを再加工して食用油として販売していた事案、更には「痩肉精」(塩酸クエンブテロール)なる有毒な飼料添加物を使用して豚肉の赤身を増す等、「地溝油」同様食の安全を脅かしている事案、或いは大学の構内で車を運転していて、女子学生を轢き殺し、未だ命があると見るや、戻って再度轢いて殺し、公安(警察)が来るや、’俺の親父は李剛だ!’(この犯人の父親が同地の公安の最高幹部であった、つまり、殺人さえ公安の権力で揉み消せると言う実態の反映なのだが…)と叫んだ事案、又、中国人が好む豚の耳の煮物を「人造豚耳」としてゼラチンとプラスティックで製造して販売していた事案等々である。最近耳目をそばだてた事件に「重慶市共産党委員会薄煕来書記失脚」がある。薄煕来氏は格差拡大を怨嗟する庶民を見て、毛沢東回帰を唱導し(唱紅)同時に猖獗を極める黒社会を壊滅に追い込む(打黒)施策を行った。この「唱紅」と「打黒」は一般市民の拍手喝采を浴びたのであるが、それもこれも今秋の指導部交代時に9人の常務委員会の一員になるべく大向こうを唸らせるPR手段であったと解説されている。又、谷開来夫人には、夫の1000億円とも言われる資産の海外移転で相談役だった英国人実業家を毒殺した疑いも浮上した。薄煕来氏の権力への異常なまでの上昇志向、谷開来夫人の底知れない強欲も、目的の為には手段を選ばないと言う意味で、前述の諸事案と何処かで共通してはいないだろうか。毛沢東も鄧小平も中国人の強欲的性格の本質を根本的に理解していた。それ故に前者は常に階級闘争を唱導して既得権層の固定化を破壊し続け、後者はその欲望を解き放って改革・開放を牽引し今日の繁栄に導いた。然し、中国人にとって果たしてどちらが良かったのか、そして、冒頭の金子光晴は現在の中国を如何に表現するのであろうか?
【上海春秋】理論と実務 上海代表処首席代表弁護士 東城聡
日本、米国、中国など幾つかの国に関する法務を行ってきた経験上、一国内で完結する実務よりも、多国間の関係に関連する実務の方が、条約や多国間の法律の影響を受けるため、理論や原則に反した形で実務が行われているケースが多いと感じます。
先日、ある日本国内の手続に使用するため、中国の公証人に中国国内の事実関係に関して公正証書を作成してもらったときにそのことを実感しました。
原則論からいえば、当該公正証書はあくまで(日本から見て)外国書に過ぎず、中国の外務省にあたる組織及び在中の日本領事館に、当該公正証書は、中国の公文書であるという認証をしてもらう必要があります。これは中国が「外国公文書の認証を不要とする条約」を批准していないためです。
現に中国は、日本の公文書に対して、中国国内の会社設立や裁判手続などの正式な手続で使用する場合、日本の外務省及び在日中国領事館の認証を求めています。この手続が非常に煩雑であるため、中国現地法人に係る中国国内の訴訟において、苦労されている日本の法務関係の方も多いと思います。
しかし、中国においては、各地方自治体の外務省にあたる事務を行う外事弁公室及び在中日本領事館(少なくとも上海)は、日本の外交文書の認証手続を行っておらず、そのような権限もないと公言しています。つまり、中国が「外国公文書の認証を不要とする条約」を批准していないがため、日本の公文書を中国で使用する場合、認証手続が必要となるにも拘らず、中国の公文書を日本で使用する場合には認証手続きが不要(正しくは認証を実際にしてくれる機関がないため、実現できない)となっているという、奇妙な状況が生まれています。中国が上記条約を早期に批准し、司法手続において外国公文書を使用する際の負担が軽減されるようになることを希望して止みません。
【中国経済失速の予兆と再びの景気刺激策】東京中国室顧問 千葉勝茂
国家統計局は、1~3月の実質国内生産(GDP)の速報値を、前年同期比+8.1%と発表した。昨年の第4四半期の+8.9%を下回り、5四半期連続で伸びが減速したことになる。3月の全人代で、世界経済の先行き不透明感から「保八」(経済成長率8%の確保)を断念し、’12年の成長率目標を+7.5%に下方修正して3カ月、中国の全輸出入額3兆6421億㌦(’11年国家統計局公表)の内、5672億㌦、約16%を占める第1の貿易相手国であるEUと2位の米国の経済的停滞は中国にとり極めて甚大な影響を受けざるを得ない。アジア開銀(ADB)の莊建上級エコノミストは、4~6月の第2四半期には7.5%に近づく公算が大きいと述べている。中国政府は景気の梃子入れ策として、消費市場拡大の為、批判のあった高速鉄道建設の再加速で約4千億元(約5兆1300億円)の投資、又、’08年のリーマンショック時に実施した「家電下郷」「以旧換新」等の再現を狙い、カラーテレビ、空調、冷蔵庫、洗濯機、電気温水器の5品目に対して総額265億元(約3400億円)、小型車の購入に60億元(約770億円)の補助金政策を採ろうとしている。昨年、中国はギリシャ政府との間でピレウス港のコンテナー埠頭の使用権を34億ユーロで獲得、同時に新たな岸壁の建設や埠頭の改良に7億㌦の投資を約束している。ヨーロッパから北アフリカに跨る地域の玄関口として投資を決めた中国であるが、果たしてこの行方は?
【李茂生の日本考現学:第十五回】~中国の「核心的利益」~
「核心的利益」とは、英語の’core interests’を翻訳しただけの生煮えの訳語であり、メディアが意図的にそうしているのか、一般国民にその切迫感は伝わっていない。実際には、「主権的権益」或いは「非譲渡的権益」とでも訳すべき語感であって、’絶対譲れないぞ!’と云う主張なのである。過日、BSの某討論番組で現外務副大臣と元外務官僚の外交評論家が、’5月初旬の日中韓首脳会談で、温家宝総理が尖閣列島(中国語名:釣魚島)の帰属問題で、野田総理に「核心的利益」と強く発言したのは、今は権力移行期であり、その混乱から、外に目を向けさせる必要があるからである。従而、総理も毅然と反論したことでもあり、’日本はどんと構えていれば良い’とお互い頷いていたが、これは誠に日本的な以心伝心を地で行く意見であり、この人達は外交官として失格である。意見があれば相手にどんな思惑があれ、堂々と反論し万一に備え対処するのが世界の常識である。日下公人著「闘え、日本人 外交とは『見えない戦争』である」を引くまでもなく、マキャベリ的或いは孫子的「詐術・権謀術数」に不慣れな日本人は、世界の趨勢が混沌とし流動化しているグローバル時代の到来下、摧兵法の序の序としての本質をもっと知っても良いのではないか。尤も、だからこそ異国人にとっての日本は、誠に住み心地の良い国でもあるのだが…。
以上