「労使の視点で読む 最高裁重要労働判例」産労総合研究所(共著)
著者 高井伸夫、千種秀夫(共著)
出版社 産労総合研究所
初版発行日 2010年5月
サイズ 46判
ページ数 300頁
ISBN 978-86326-067-2 C2032

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※ 本書の第1版 第1刷発行分に誤りがございます。
お手数をお掛け致しますが、詳しくは「正誤表」でご確認ください。

内容紹介

本書は、「労働判例」916号(2006年9月1日号)~951号(2008年4月1日号)に隔号掲載された連載「最高裁労働判例の歩みと展望」がもとになっている。この度の単行本化のために、当時の原稿に大幅な加筆補正を施し、さらに昨2009年末に出された「パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件」最高裁判決(最二小平21.12.18判決、本書159頁参照)も加えて、1冊に取りまとめたものである。

この連載の企画は、私が千種秀夫先生と宮里邦雄先生に予め構想をご相談し、ご快諾頂いたうえで、2005年9月に「労働判例」飯田穣一郎編集長(当時)に提案の手紙をお出ししたことから実現し、飯田氏の定年退職後は、現在の石田克平編集長に引き継がれた。

私がなぜこうした構想を得たかといえば、最高裁労働判例が十分に蓄積され総点検すべき時期にきていると日頃から感じ、それらを労使でともに見直す作業を行うことによって、学者の解説とは別の角度から、労働法実務に些かなりとも裨益するのではないかと考えたからである。労働判例のとらえ方については、「発刊によせて」としてご執筆頂いた東京大学大学院法学政治学研究科教授荒木尚志先生の論稿「労働判例の意義・機能と立法の時代の労働法」及び巻末にある各執筆者の論稿を参照されたい。
人口減少によって消費が目減りし、その結果、産業全体が衰退・斜陽化し、働く場・雇用の場も失われ、賃金ダウン・個人所得の低下が進んでいるというのが、今の日本が直面する新たな問題状況である。そこに新しい複雑な労使問題が登場すれば、新しい労働法理を創出・構築して解決に当たらなければならない。そして、こうした課題を克服するためには、従来の最高裁判所の考え方を今まで以上に、より詳細・緻密に分析する必要があるだろう。まさに、温故知新が本書の眼目なのである。

社会の様々な事象のひとつである労働事件が、労働側と使用者側からどのようにとらえられ、労働法の発展にどのように寄与してきたか、そして今後の労働判例の展望はどうなのか、労使の視点を念頭に、生きた勉強の材料を読者に提供できれば幸いである。

なお、本書刊行にあたって、ご多忙の中を巻頭の「発刊によせて」のご執筆を快くお引き受けくださった荒木尚志先生、統計資料の確認等煩雑な業務を担ってくださった編集委員野沢和男氏、連載時からご担当頂き単行本化への架橋をしてくださった「労働判例」編集長石田克平氏に心から感謝申し上げ、当事務所秘書宮本雅子さんの格別なご協力を得たことを付記する。

目次

まえがき 髙井伸夫

  • 略語一覧
  • 発刊によせて 労働判例の意義・機能と立法の時代の労働法 荒木尚志

最高裁労働判例の歩みと展望 最高裁重要労働判例21選

  • 労働側からの視点・宮里邦雄
  • 使用者側からの視点・髙井伸夫
  • コメント・千種秀夫
  1. 労働基準法上の労働者 藤沢労基署長事件
  2. 労働時間概念 三菱重工業長崎造船所事件
  3. 時間外労働義務 日立製作所武蔵工場事件
  4. 過労自殺 電通事件
  5. 配転 東亜ペイント事件
  6. 出向 新日本製鐵事件
  7. 私傷病休職者の職場配置 片山組事件
  8. 産後休業等と賞与算定の際の出勤率 東朋学園事件
  9. 長期年次有給休暇の指定と時季変更権 時事通信社事件
  10. 整理解雇 あさひ保育園事件
  11. 有期労働契約の雇止め 日立メディコ事件
  12. 偽装請負と黙示の雇用契約の成否 パナソニックプラズマディスプレイ事件
  13. 懲戒事由の追加 山口観光事件
  14. 就業規則の周知義務 フジ興産事件
  15. 就業規則による労働条件の不利益変更 みちのく銀行事件
  16. 労働組合法上の使用者 朝日放送事件
  17. 労働組合法上の労働者 中日放送管弦楽団事件
  18. 組合併存下の中立保持義務 日産自動車事件
  19. 労働協約の書面性要件 都南自動車教習所事件
  20. 労働協約の規範的効力 朝日火災海上保険事件
  21. 労働委員会による救済命令制度の意義 第二鳩タクシー事件

社会の動向と労働判例の変遷・役割

  • 労働判例の意義と役割およびその限界 宮里邦雄
  • 賢者の下す感動を与える労働判例 髙井伸夫
  • 労働判例の変遷と発展 千種秀夫

<資料>図表(各事件の係争期間と社会の動き)

あとがき 宮里邦雄

著者紹介