高井先生言行手控えの最近のブログ記事

最終回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

FotorCreated4.jpg

2016年1月9日(土)14:43 熱海鶴吉にてブーゲンビリアの赤とピンクを撮影 
花言葉:「情熱、熱心」 

 

 

築地双六館 館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

インタビュー取材の最後に先生に10質問をさせていただき、即答いただいたことをご紹介します。

 

■髙井先生を読み解く10の質問

Q1:AIは弁護士業務を代替できるでしょうか?

A:いまのところできないと思います。なぜなら、「感性」「理性」「知性」「心性」を人間は備えていますが、いまのところ、AIはすべてを代替できる状況ではないと思うからです。

「感性」については、AIは、泣くことも、愛することもできないと思います。「理性」については、AIが備える可能性はあります。「知性」については、考えることはできても、考えぬくことの“ぬく”というところができないと思います。考えぬく=考えたうえにさらに新しいことを考えることは、できないと思います。「心性」については、もちろんできないと思います。

こうしたことから、AIは弁護士業務を代替できないと思いますが、代替できるようになったら、人間はAIに負けることになり、人間が退化することになります。

 

Q2:反対尋問のコツは何でしょうか?

A:相手方が答える内容を予測して、「石にも目がある」の言葉どおり、相手の欠点を見つける。要は、相手の答えを3つ~4つ想定して的確に予測することが反対尋問のコツです。

 

Q3:法律家に向かないのはどういう人でしょうか?

:バランス感覚がない人は法律家に向きません。正義とはいつもバランス感覚のうえに成り立つものです。正義心のない人は法律家に向かないのです。正義の中核をなすものは、バランス感覚です。

 

Q4:若者に薦める本、ベスト3は何でしょうか?

A:①いままで読んで一番よかったのは、藤沢周平の本です。藤沢周平の本であれば、どの本でもよいと思います。それぞれの感性・理性等の波長に合ったものを選ばなければならないと思います。

②第二に、現代では心理学の重要性がいよいよ増してきますので、心理学関係の本がよいと思います。「感性」の本としては、私としては、加藤諦三先生の本がよいと思います。

③第三に、歴史書がよいと思います。どの時代について読むのかは、本人の関心次第です。自分の関心のある時代について、一流の人が書いた歴史書を読むと一番よいと思います。

 

Q5:先生が、今、大学生ならば、どういう職業に就きたいと思われますか?

A:弁護士以外の職業についたことがないので、やはり弁護士の仕事をしたいです。弁護士が私の天職なのかもしれません。

 

Q6:今のままであれば、100年後の日本の人口は4000万人になります。今、何をすべきでしょうか?

A:日本人はもはや「絶滅危惧種」になってしまうと観念して、現実を受け入れて、対応する以外にないと思います。対応としては、教育機関を充実させる以外にありません。そして、世界に尊敬される誇りある日本人を育成・形成する以外にありません。

 

Q7:人材ビジネスの経営者に言いたいことベスト3は何でしょうか?

A:①第一に、未来産業への支援に積極的に取り組んでもらいたいと思います。

②第二に、グローバル化にそなえて、市民全体・社会全体に対する人材教育活動に取り組んでもらいたいと思います。

③第三に、これから精神障害者がどんどん増えていくので、経営者自身が精神障害者に理解をもって接しなければならないと思います。

 

Q8:日本人と中国人は何が一番異なるのでしょうか?

A:ひとことで表現すると、日本人は「集団主義」で、中国人は「個人主義」である点が一番異なると思います。簡単にいえば、集団主義は「バランス感覚」を旨とし、個人主義は「権利の極大化と義務の極小化」を旨とします。

 

Q9:歴史上一番尊敬するのは誰?理由は?

A:悩むところですが、ひとり挙げよということであれば、やはり徳川家康です。265年もの間(1603年~1868年)、幕府が続いたからです。

 

Q10:健康寿命を保つためにお奨めのことは?

A:運動することです。

 

 

2002年ネパール訪問旅行にて

●DSCF2853秀峰マチャプチャレ(6993m)アンアンプルなナ山群をバックに.JPG

 

 

 

 

 

秀峰マチャプチャレ(6993m)
アンサンプルな山群をバックに

 

DSCF2603民族ダンスの夜.jpg

 

 

 

 

 

 

民族ダンスの夜

 

この記事にコメントをする

第13回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_1099.JPG

平成27年12月24日(木)7:52 中目黒公園にてゼラニウムを撮影
花言葉:「男心、結婚相手」 

 

 

 

築地双六館 館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

②仕事・職業・労働市場について気になっていること

働く人が誇りを持てる社会に

いまの時代は、働いている人が、何か誇りを失っているような気がします。それは、わが国が世界的に貢献できることが少なくなってきたことによっていると思います。今後、ロボット・AI等が発達するにともなって、これらが労働現場に多く進出し、より一層仕事に誇りを持てない人が増えるでしょう。

誇りを失った労働観、あるいは職業観、あるいは仕事観というものを克服するには、やはり自分の担っている仕事、労働が、社会に貢献しているということを、若者の時代、すなわち幼児、あるいは児童・生徒・学生に徹底的に教え込むことが必要だと思います。そうしてこそ初めて日本人は誇りを持ち得ることになります。

要するに、自己実現ができないという現状のなかで誇りを持たせようとするのは無理なことで、自己実現のあり方の方向性を変えることです。それは、社会貢献あるいは自己実現に代えて、社会実現、世界実現という思想(すなわち、日本あるいは日本人が世界から尊敬される存在になり、世界に誇れるような成果を上げること、そして親日国がどんどん増えていくこと。そのような思想。)を植えこむことが大切だと思います。

 

注目される社会企業家

ビジネスを通じて社会問題の解決を目指す「社会企業家」が途上国や新興国支援で成果を挙げているという記事がありました(日経新聞2015年5月25日朝刊)。30代の若者が多いようです。米国の「大学生就職先ランキング(文系)」(図1)を見ると、教育支援NPO「ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)」が、グーグル、アップル、ウォルト・ディズニーらを抜いて1位になっています。

 

 

最終回前編② 図1.jpg

(図1)

 

TFAとはアメリカ合衆国のニューヨーク州に本部を置く教育NPOです。アメリカ国内の一流大学の学部卒業生を、教員免許の有無に拘わらず大学卒業から2年間、国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを実施しているそうです。5位のピースコープ(平和部隊)は、1961年にケネディ大統領により設立された政府主導の海外ボランティアプログラムの運営実施機関で、2年間アフリカや南米などに行って現地で英語や様々な技術を指導するというものです。

こうした志はまことにすばらしいもので、我々の世代とはまったく異なる価値観と行動力を持ちあわせている人材が米国や日本でも育ってきていることは、頼もしい限りです。この分野では、女性の活躍が目立つようにも感じます。「先進国では優秀な学生ほど社会性の高い仕事を好むなど、社会企業家の裾野は世界で広がっている」という野田稔教授(明治大学大学院)の言葉には、宜べなるかなという思いがします。国際貢献とビジネスを自然に融合させ、両方を成功させるには、真の意味での知性と教養が不可欠であると思います。

全寮制のインターナショナルスクールISAK発起人兼代表理事である小林りんさんも、広い意味で、日本を代表する社会企業家のおひとりであると、私は敬服しております。

 

 

③企業経営・経営者について気になっていること

新産業で攻めの経営を

日本の企業経営の多くは要するに「守りの経営」になっているのではないかと思います。もちろん日本の経済が落ち込んでいることに理由があることは言うまでもありません。企業経営・経営者にある「守りの意識」は、実は、日本の企業が成長性を失ったということに根本原因があります。

成長性を失った日本経済の現状を脱却するには、成長を取り戻す以外にないのであります。それには、新産業を起こすという方法が一番適当でしょう。ロボット、AI、航空機事業、宇宙事業というような新産業について、日本で必死に盛り上げる以外ないと思います。

ビジネスの主戦場が日本国内から世界へ移っているということも挙げられます。グローバル化ということです。さらに主戦場はインターネットという仮想空間にまで広がっています。経営者は、これを前提として対処していかなければならないと思います。ドメスティック、ローカルでとどまっていては発展性がないということです。

生産拠点および市場開拓の海外進出先の選定としては、親日国へ軸足を移すことが必要であると思います。日本の経営者は一般に臆病ですし覚悟がありませんから、まずは親日国ということが明確な国に日本企業の経営資源を移管するということです。もちろん親日国でなくても十分に対処できる可能性のある企業はたくさんありますが、何はともあれ親日国から始めることが大切でしょう。

ちなみに、『愛される日本~外交官に託された親日国からのメッセージを今すべての国民に贈る~』(日本戦略研究フォーラム編2012年ワニブックス)は、台湾、トルコ、インド、タイ、ブラジル、ベトナム、ミャンマーの大使経験者等が、それぞれの体験をもとに、日本が諸外国から愛され尊敬されている事実を語った本であり、「親日国との外交こそが日本にとって最大の資源である!」(同書より)と気づかされる良書です。たとえば、経済大国への道を邁進するインドの人々は、独立戦争を支援した日本への感謝を忘れていないこと、インド初代首相であったネルー氏による『娘に語る世界史』で語られる日露戦争に勝利した日本への賛辞がいまもインドの教科書で紹介されていることなど、ほとんどの日本人は知らないと思います。

 

厚労大臣としてなすべき施策

Q2:先生が仮に厚労大臣になったとしたら、真っ先に着手される施策ベスト5とその理由をご教示ください。

①女性の管理職の登用と教育

女性活躍推進法が成立し、301人以上の労働者を雇用する事業主は、本年4月1日までに、①自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動計画の策定・届出・社内周知・公表、③情報公表等を行うことになりました。いわゆるソフトロー(刑罰はないが、公表という形で制裁がある)であり、次世代法(次世代育成支援対策法)と同じ仕組みです。①の課題分析には、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率の4つの指標の把握が求められています。

私はとりわけ、女性管理職の登用と教育を推奨したいと思います。というのも、管理的職業従事者に占める女性の割合の国際比較をみるとアメリカ(43.1%)、フランス(39.4%)に比べ、日本(11.1%)は極めて低い水準にあります(図2)。

 

最終回前編② 図2.jpg

(図2)

 

そして、日本で女性管理職が少ない理由として企業側が挙げる断トツの1位は「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない(54.2%)」というものです(図3)。この回答にこそ課題解決の本質が見い出されます。一つは評価する側である企業自身の判断能力の問題です。公平公正な勤務環境や育成・評価制度の構築にいかほどの努力を払ってきたかということです。

 

 

最終回前編② 図3.jpg

(図3)

 

もう一つは、女性自身の昇進モチベーションの問題です。一般従業員の昇進を望まない理由の1位は、「仕事と家庭の両立が困難になる」というものです。これは、配偶者の支援なくしては実現しません。つまり、女性管理職を数多く誕生させるには、職場の上司や配偶者、つまり男性の理解と意思ある行動が不可欠ということです。女性の管理職の登用と教育の浸透を目指して、女性と男性の意識改革と実践行動のための研修プログラムの開発を厚労省、各企業、民間教育事業者が創意工夫をして行う必要があります。

国が行う(委託する)啓発プログラムやイベントは、とかく一方的で面白くない、その結果効果が上がらないというのが通り相場です。それは、教育する立場の者が教育されていないからなのです。教え方が鍛えられていないからです。学校の先生と塾の講師の違いはそこにあります。

霞が関の役人のファシリテート力、パフォーマンス力、コーチング力から鍛える必要があるでしょう。

 

 

②同一(価値)労働同一賃金の法定化

「同一(価値)労働同一賃金」の法定化をすすめるとともに、これを実践化する第一段階、第二段階、第三段階というステージを明確に作り、それを法定化するということを進めましょう。そうすれば、社会の格差問題は大幅に縮減すると思います。ただし、これには労働組合が大反対すると思いますので、そこをどう対処するかが問題です。「連合」事務局長に就任された逢見直人先生にお会いするときに、そのことをお話ししたいと思っています。

 

 

③労働市場のAI化に備えよ

ITの発達に次いで、ロボット・AIの登場という時代になってきました。そうすると、職業も仕事も、当然大幅に様変わりすることを前提として厚労省は対処すべきだと思います。もちろん労働市場も同様です。

例えば職業安定法の改正にあたっては、AI時代を見越して、50年後も通用する内容であることが求められます。職業紹介の定義自体の見直しや許可等の規制範囲を縮小し、結果責任を問う事後規制に移行するなどの対策が求められるところです。

 


④コーチング力の強化

労働政策のひとつとして、「コーチング」を積極的に導入したらどうでしょうか。本人に気づきを与えるということです。本人の発意で仕事にあたっていくようにすれば、真のキャリアアップになるということです。

若い人は礼儀作法がなっちゃいないことにも留意すべきです。これは家庭の問題でもありますが、家庭の教育力が低下しているいまの時代にあっては、若者の礼儀指導の一環として、おもに文部科学省が、道徳教育や礼儀指導を推し進めるべきであると思います。お仕着せにならないように、日本古来のお茶・お花・武道などを通じて精神を学ばせるとよいと思います。

 


⑤高校生の就職活動の規制改革も

高校生の就職活動には制約が多く、その結果、自由応募が主体の大学新卒に早々と切り替えたという経営者の声を多く聴きます。その制約事例の一つである新卒高校生の就職活動における「ひとり1社制」は直ちに廃止すべきです。1社落ちた後の次の会社はグンとレベルが落ちるといいます。時間的な機会損失です。

若者の職業選択の自由(憲法22条1項)の侵害にあたると言っても過言ではないでしょう。自由意志のないところに努力は生まれません。努力がなければ能力は向上せず、自発的な探求心も向上心も生まれません。そして、競争を罪悪視する体制からは、抜きん出た者は絶対に出現しません。この制度によって、たとえば、手に職を得て、日本の製造力を支えようとする人材が多数生まれる土壌が阻害されているとしたら、これは日本社会全体の大きな損失でもあるのです。

 

 

この記事にコメントをする

第12回 高井先生言行手控え

| コメント(0)
IMG_1047.JPG

2015年12月7日(月)7:32 中目黒公園にてスイートアリッサムを撮影
花言葉:「優美、美しさに優る価値」 

 

 

築地双六館 館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

■高井先生と「蝉しぐれ」

「いちめんの青い田圃は早朝の日射しをうけて赤らんでいるが、はるか遠くの青黒い村落の森と接するあたりには、まだ夜の名残の霧が残っていた。じっと動かない霧も、朝の光をうけてかすかに赤らんで見える。そしてこの早い時刻に、もう田圃を見回っている人間がいた。黒い人影は膝の上あたりまで稲に埋もれながら、ゆっくり遠ざかって行く。」

(藤沢周平「蝉しぐれ」より)

高井先生は、藤沢周平とりわけ、この蝉しぐれの描写が大好きであると伺いしました。この文章には、日本人の心の中にある自然の原風景があり、古代から連綿と続く人と自然のあり様がイメージ豊かに描かれています。

高井伸夫、1937年(昭和12年)三重県生まれ。先生の何かの文章に「子供の頃は、朝から晩まで自然のなかで遊んでいた」とありました。

豊かな自然の中で育った郷愁とその中にいる自分の存在のイメージが一定の湿度と温度で今日まで先生の中に保たれていたことがわかります。それは、1937年生まれという時代のアイデンティティーもあるもしれません。ちなみに、1937年生まれの方々は以下の通りです。塩野七生、養老孟司、庄司薫、出井伸之、河野洋平、浅井慎平、 加山雄三、伊東四郎、笑福亭仁鶴、平尾昌晃、森祇晶、コシノ ヒロコ、モンキー・パンチ、ロバータ・フラック、 ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン。。。

いつまでも、元気でかつ現世代に影響を与え続ける存在でいていただきたいと切に思います。

 

■人・仕事・経営、 私が、今、気になっていること

「高井先生言行手控え」は最終章を迎えました。前編として、「人・仕事・経営、 私が、今、気になっていること」のテーマでの先生へのインタビュー記事を2回に分けて、後編では、「高井先生を読み解く10の質問」として即答いただいたご回答をお届けいたします。「考え抜く知性」がここにあります。日本の労働市場の行く末に心悩ましているすべて方にお読みいただきたいと思います。

 

■非正規社員の増加が一番気掛かり

Q1:先生が今、大変、気になっていることを以下の観点でご教示ください。

①   働く人(求職者)について気になること

働く人に関して私がいまもっとも気になっているのは、非正規社員が増え続けているということです(図①)。
非正規が4割になったという厚労省統計(図②)が先日話題になっていましたが、非正規が5割を超えたら、格差問題は各世 代でますます深刻化し、社会の不安定感はさらに強まるのではないかと憂慮しています。それが社会不安(たとえば、残虐性の高い事件が多くなった、薬物関係の事件が頻発し低年齢化している、公務員・教師の事件が多くなった、農業人口が低下し続けている、離婚が増加している、メンタルヘルス疾患の問題が広がっている、うつ病患者が増加している等々)となり、日本社会の安全を阻害する要因になる可能性すらあると思います。

 

図①

正規雇用と非正規雇用労働者の推移.jpg厚生労働省 「非正規雇用の現状と課題」より作図


図②

正規非正規割合 .jpg

厚生労働省 平成26年「就業形態の多様化に関する総合実態調査」(平成27年11月4日発表)のデータより作図

 

・ 非正規が増えている要因はいろいろあると思いますが、第一に、社会の少子高齢化によって需要が減少している(市場が縮小している)にもかかわらず生産設備が削減されていないという状況のなかで、企業は競争社会にありますから、より良いものをより安くということになると、人件費を削減する以外にないということになります。

そうすると、企業は、正社員を雇えなくなり、非正規社員で間に合わせるということになります。そのため非正規社員がどんどん増えて、正社員がどんどん減るということになります。その結果、働く者、求職者の不公平感が強まるということになります。

付言しますと、日本企業は、人件費の安価な海外の進出先(新興国)には設備投資をして、最新の設備にして生産活動をしていますが、国内では設備投資をする余力がないために設備は更新されずにどんどん古くなっています。古い設備では生産性が劣るために、海外での最新設備での効率の良い生産よりも国内での生産が高くつくことなり、国内では人件費にしわ寄せがきます。その結果、今後、時間が経つにつれてますます非正規社員が増えることになります。

 

・日本で昔から 「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」という言葉があります。出典は『論語』の季氏篇です。「有國有家者、不患寡而患不均、不患貧而患不安。」国を有(たも)ち家を有(たも)つ者は、寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患え、貧しきを患えずして安からざるを患う〕が原典の意味合いですが、日本では、「結果の平等」と「機会の平等」の問題として語られてきました。

たまたま見つけた昭和6年(1931年)6月5日付け「大阪毎日新聞」の「官吏の減俸問題」を扱った論説記事にも、「貧しきを憂えず均しからざるを憂う、と古の賢人はいった。誠に人間心理を道破したものであって、現代社会の深憂はここにある。」と書かれています。この年の2年前に世界大恐慌が起こり、この年の9月に満州事変が起こりました。日本も世界全体も大不況のまっただ中にあった時期です。

非正規の増加は、この時代と同じ状況を招くかもしれません。格差が拡大し、不公平感がますます高まり、社会不安が日本の社会にどんどん強まってくるのです。それは、前述のとおり、日本の国としての安定性を失わしめることになります。

 

・ 非正規社員の増加による社会不安を克服する方策は「同一(価値)労働同一賃金」概念を法定することだと思います。法定化の結果、日本の労働者全体の賃金が全体的に低下することは不可避ですが、「貧しきを憂えず、均しからざるを憂う」という精神からいえば、「同一労働同一賃金」概念は、極めて理にかなった方策だと思います。ただし、これには労働組合が強く反対するでしょう。なぜならば日本の労働組合の大半は、正規社員で構成されているからです。

 

・ 非正規問題の次に気になるのは、女性管理職の少なさです。11月19日(木)の新聞で、世界経済フォーラムが発表した資料で、「男女平等ランキング」で日本は101位という記事がありました。

日本人の国民性だと思いますが、日本の女性は管理職になりたがらない傾向があります。それは周囲との軋轢を憂慮してのことです。女性は、目立ちたがりやになれないのが一般です。

それを克服するには、経営トップが、社内全体に対して、「残業・出張はしなくてよい」「結果を出してくれれば労働時間は問わない」ということを言い続けることです。そして、「あなたは過去◯◯という場面で成果を出してくれた」ということを強調し、あるいは「◯◯で業務改善してくれた」ということを言い続けることです。そして、「同僚もあなたを認めている」ということを言い切ることです。

また、女性が管理職になりたがらないのは、周囲との軋轢を憂慮するだけでなく、家庭のことを重んじて仕事のみに熱中できないこともあるのではないかと思います。

特に子育て中は時間の拘束を厭うという傾向が強いことは言うまでもありませんし、子育てが終わった頃に親の介護が始まるという巡り合わせもあります。共同体社会がほとんど崩れてしまった日本では、敢えて行政が共同体と同じ役割を果たす仕組みを作出して、女性への厚い支援をおこなわなければ、女性は安心して働くことはできないと思います。

 

・ 第三には、社会の多様性に応える土台作りの必要性を感じます。社会には、さまざまな生き方、さまざまな働き方のニーズがあります。多様性の時代です。多様性の時代にはそれぞれのニーズに応え、土台作りに真剣にならなければならないと思います。

その土台作りのひとつの方策としては、幼児・小学生・中学生の時代からキャリアというものを意識させ、これに向かって幼児・児童・生徒・学生が努力するシステムを構築することが重要であると思います。

具体的には、インターンシップ、エクスターンシップ等にはじまり、さまざまな過程が考えられます。遊び心も刺激するような、キッザニア等の施設で、子ども職業体験を充実させることも重要でしょう。これは厚労省としてすぐにでも取り組むべきことです。

 

・ ITからAIあるいはロボットやIOTという時代になってきますから、ヒトにしかできないことに注力することが、若いときから必要だと思います。それにはまずはAIやロボットに、若いとき、幼児・小学生・中学生の頃からなじむこと、そしてそれに慣れてそれを超えるという姿勢を貫くことが必要です。厚労省もAIやロボットに関する児童見学会を企業に義務付けることが必要でしょう。

 

・ 「世界でのビジネス競争」という時代になってきましたから、ソロバン勘定だけでは競争に勝てません。論語の世界ということです。「論語と算盤」(渋沢栄一)という言葉がありますが、論語、要するに「道義・道徳・道理」を教えこむことが必要です。そのためには企業の就業規則その他にそれを明示することも必要でしょう。

 

この記事にコメントをする

第11回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_0826.JPG

2015年10月31日(土)8:11 渋谷区広尾1にてネリネを撮影
花言葉:「また会う日を楽しみに、忍耐」 

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修 

 

 

■元横綱武蔵丸の取材手控え

高井先生の横綱対談第二弾は元横綱武蔵丸です。

※武蔵丸 光洋

第67代横綱。現在は年寄・武蔵川。得意手は、突き、押し、右四つ(かつては左四つ)。幕内成績:706勝267敗115休、幕内在位:73場所、優勝:12回、座右の銘:我慢して、努力すれば、人間絶対に成功できる。 ハワイ出身。高校時代はアメフトのディフェンスラインとして活躍し、プロ選手とし嘱望されていた。14年間で通算連続勝ち越し55場所(歴代1位)、外国出身力士最多の幕内706勝(引退当時、2014年1月場所2日目に白鵬が更新)外国出身力士最多優勝回数12回(引退当時。現在は白鵬が保持)などを記録した。

 

■一度も負け越しのない空前の力士

2013年12月7日に高井先生のお誘いで、武蔵川親方(元横綱武蔵丸)ご夫妻・部屋の4人の力士・マネージャー・金谷美術館鈴木理事長ご夫妻と食事会を行いました。実は高井先生と角界の親方を訪ねるのは、2002年二子山部屋の横綱貴乃花の稽古見学以来11年ぶりです。ゆえに、シリーズその②なのです。

平成23年2月、第57代横綱三重ノ海の引退に伴い、弟子である武蔵丸が武蔵川の名跡を継承、本年4月に新小岩に部屋を設立されました。武蔵川親方(武蔵丸)は幕内優勝12回、ハワイ出身で、現在は帰化し「武蔵丸光洋」が本名で現在42歳(当時)。人柄は温厚で明るく、とてもユーモアがおありで、日本と奥様を愛し、相撲を愛しておられます。現役時代は、アメフトの技術を応用した安定感のある突き押しを武器に、幕内時代は対戦相手を土俵際まで吹っ飛ばす事もあったほど。 入門前に痛めた怪我を除けば、大きな怪我も無く安定的な成績を残し、時代は貴乃花、若乃花、曙など実力者がひしめく中、14年間で通算連続勝ち越し55場所(歴代1位)などを記録しました。

特筆すべきは、初土俵から横綱昇進まで一度も休場が無く、また入幕から引退まで皆勤して負け越した場所が無いという空前絶後の記録です。あの若貴や曙ですら一回以上は皆勤での負け越しを経験しています。

お弟子さんはみな若く、一番上位の武蔵国(フィアマル ペニタニ君)でもまだ序二段です。女将さんは今はタレント&歌手の小錦のバックフラダンサーを務めていた方です。明るく、とても気遣いのある超美人の奥様です。高井先生が角界関係者のパーティーで女将さんを見て、「この人は面白い!」と直感して、親方ご夫妻との親交が始まったそうです。武蔵川親方は、いつものおとぼけキャラ丸出しで弟子にも優しく、自分の食事を度々弟子に分けておられました。武蔵平(森宗順平君)は、広島の広陵高校出身で甲子園に2度出場した投手です。残念ながら、肩を壊して角界入りしました。甲子園投手で相撲取りになった人はいないのではないでしょうか。頑張ってほしいものです。

 

■我慢して努力すれば必ず成功できる

高井先生と私が武蔵川親方に質問する形で楽しい会話が進みました。


Q:横綱になるには何が必要ですか?

A:すべてだよ。何か一つ欠けても横綱にはなれない。我慢して人間努力すれば、必ず成功できる。


Q:稽古では弟子に胸を貸しておられるのですか?

A:そう。 毎朝ぶつかり稽古やってるよ。弟子が少ない分、稽古の生産性が高いんだ。

Q:確か入幕以降、一度も負け越しがなかったと思いますが?

A:よく知ってるね。入門してからでも1度しか負け越していないよ。
横綱になった力士で、幕内以降全部勝ち越したのはボクだけよ。何回も優勝するより難しい。


Q:お酒を一番飲んだのはどれくらいですか?

A:ヘネシー16本だよ。現在は控えているけどね。お酒を飲むと筋肉が固くなり、翌朝の稽古に影響が出てしまう。

Q:食事は日に2回ですか?

A:そう。朝食べると稽古で全部吐いてしまう。特に、夏の名古屋場所の稽古は大変だ。朝食べていなくても吐いてしまう。
でもボクは一度も吐いたことがないよ。これも自慢。

Q:最近、ハワイ出身力士が少ないようですが?


A:外国人力士は各部屋に一人だけと制度が変わった。この影響が大きい。後は給料の価値の違い。
モンゴルでは1万円あれば、1年暮らしていける。入幕できなくても帰国すればリッチになれる。
ハワイではそうはいかない。


Q:以前アームレスリングの世界チャンピオンに勝ちましたよね?

A:そうそう。はじめてやったので、最初はこつがわからなかった。 2回やって1回勝った。
チャンピオンはそれまで無敗だったので驚いていたよ。一緒に世界を回らないかと言われたけど断った。

Q:吉田さん、後援会入ってよ。

A:わっ、わかりました・・・!

 

(がぶり寄りで親方の勝ち。後援会に入ることになりました。)

 

“まことに小さな部屋が開化期を迎えようとしています”(どっかで聞いたような・・・)

皆様、是非武蔵川部屋の応援をよろしくお願いします。詳しくはWEBで。

http://musashigawa.com/

シリーズ③は11年後の2024年です。私の郷土島根県の力士である隠岐の海が親方になった頃に、まだまだ元気溌剌であろう高井先生とご一緒に訪問したいと思います。

 

湯気が立ち汗が冷たい寒稽古(修)

 

(2014年1月13日 吉田)

 

■北の湖理事長のご冥福を祈ります

この原稿を書いている時に、北の湖理事長の訃報が飛び込んできました。

北の湖は私の1つ歳上であり、同時代を歩んできたことになります。横綱在位当時、子供が嫌いな物として「江川・ピーマン・北の湖」と言われるくらいに強い横綱でした。昭和56年の夏場所の千秋楽で大関の千代の富士が北の湖を破って14勝1敗で2度目の優勝を果たして横綱を掴んだシーンは今もよく覚えています。北の湖は、それ以降も2回優勝し、昭和60年両国国技館のお披露目のあった初場所で引退しました。

北の湖は、引退間際に「観客から、“頑張れ!”と言われて情けなかった」と述懐しいるほど、強かった横綱でした。北の湖理事長のご冥福をお祈りします

 

■力士の健康管理の問題

1980年から2002年までに亡くなった幕内経験力士100人の死亡時の平均年齢は63.6歳だったそうです。この値は2002年の日本人男子の平均寿命の78.07才より15才近く短命と言うことになります。力士の平均体重を下げるなどの施策で、内臓疾患と足腰や間接の怪我を抑制することが必要なのはないでしょうか。大相撲に多くの若者が入門し、両親も安心して子供を預けることができるようにするには、協会の現役及び退職力士の組織的継続的な健康マネジメントが求められます。これは力士のリクルーティング上の本質的な課題です。北の湖理事長が主張していた「土俵の充実」は「身体の充実」からにほかなりません。プロ野球やプロゴルフにはシニアの大会があります。大相撲も是非にと思うのですが、課題は多いようです。

 

 

武蔵丸②.jpg

 

 

 

 

 

 

(武蔵川親方と奥様)

武蔵丸①.jpg

 

 

 

 

 

 

 

(武蔵川部屋の皆さんと集合写真)

 

この記事にコメントをする

第10回 高井先生言行手控え

| コメント(0)
IMG_0517.JPG

2015年9月14日(月)7:46 中目黒公園にてトレニア(紫)とサルビア(赤)を撮影
花言葉:トレニア「温和、愛嬌」サルビア「尊敬、知恵」 

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修 

 

 

■二人の横綱の取材手控え

「髙井先生言行手控え」も残すところ3回になりました。これまでの些か堅い手控えから、先生との楽しい体験を紹介する手控えとして、先生と親しい二人の親方の取材を再録します。角界の頂点に立った元横綱の貴乃花と武蔵丸です。取材を通じて、横綱の素敵な人柄や厳しい稽古に裏打ちされた重みのある言葉に触れることができたことは一生の宝になりました。

今回は横綱貴乃花です。

 

※貴乃花 光司。第65代横綱。所属した相撲部屋は藤島部屋後に二子山部屋。現在は一代年寄・貴乃花で貴乃花部屋の師  匠。日本相撲協会理事(協会本部)で総合企画部長他。他にスポーツニッポン評論家(大相撲担当)。通算成績:794勝262敗201休 勝率.752、幕内最高優勝:22回、横綱在位:49場所(歴代4位)。2001年の5月場所で、14日目の大関武双山戦で巻き落としに敗れ右膝の半月板を損傷。出場が危ぶまれた千秋楽に強行出場。優勝決定戦では横綱武蔵丸を上手投げで豪快に下し、通算22回目の優勝を果たす。

小泉純一郎首相が、表彰式で内閣総理大臣杯を直接手渡し、「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!」と祝福したエピソードは有名。2003年 1月場所8日目限りで現役を引退。

本取材は2002年12月27日なので、横綱貴乃花が引退する直前の時期であったことになります。

 

■押されてもいいから自分の形を崩すな!

2002年の暮れも押し詰まった12月27日。高井先生のお誘いで二子山部屋の稽古風景を見学に参りました。日本の伝統文化に関心の高いネパーリアンシンガーのボビン君も一緒です。さて、高井先生と貴乃花の接点は何でしょう!気になりますよね。それはこういうことです。高井先生と貴乃花とは膝の治療先である某治療院の先輩患者と後輩患者の関係だそうです。こういう世界にも先輩後輩関係があるのかしらん?!しかし、それを有無を言わさず、力技で人間関係を築かれるのが高井先生の高井先生たる所以です。今では、横綱貴乃花が、尊敬の念を込めて「高井先生、高井先生!」と呼ぶ間柄で、ご夫妻同士のお付き合いとのことです。

 

さて、二子山部屋は、中野区の住宅街にありましたが、部屋の近くでゴミ回収車が火災を起こし消防車が来て消化作業中でした。このことは、後の横綱との会話に影響してくるのでした・・!早速、部屋の若い衆に招かれて稽古場に入りました。見学者は取材記者や部屋の馴染み、外国人家族など皆で20名くらいいました。その中に、乙武洋匡さんを見つけました。彼は大変身軽で、板の間をぴょんぴょんとジャンプして横綱に近づき、話し掛けていました。小生が助平心から「一緒に写真をとっていただけますか?」と乙武さんにお願いしたら、「ボクはいいですけど、ここは写真撮影禁止ですよぉ。」とたしなめられました。確かに「稽古中は私語と写真撮影は禁止」の看板がありました。乙武さん、大変失礼いたしました。

 

若い力士10数人くらいが、ぶつかり稽古や三番稽古をやる中で、貴乃花は静かに四股を踏み、鉄砲を繰り返しています。今日が稽古仕舞いなので、無理はしないのかなと思っていたところ、突然、しかしとても優しい声で貴乃花が「新堂(力士の名前)、押されてもいいから自分の形を崩すな!」と土俵上の若い力士新堂クンに声を掛けました。この瞬間、部屋の空気がピリッと引き締まりました。新堂クンは、次の申し合いでは、土俵際で踏ん張り抜いて相手を押し返していました。凄い!「押されてもいいから自分の形を崩すな!」・・・胸にじんと来る言葉でした。思えば、貴乃花の人生はこの言葉に象徴されているのではないでしょうか。マスコミに、ファンに、協会に、怪我に、種々の人間関係のトラブルに・・・押しまくられても自分の主張やペースを変えなかったので、今日の偉大な横綱があるのだと思います。この日稽古場には、先代貴乃花の二子山親方はおられず、実質的に貴乃花が部屋を取り仕切っていました。そうこうするうちに、貴乃花が土俵に上がり、ぶつかり稽古をはじめました。最初は若い力士に胸を貸し、ぶつかってきた相手に土俵間際まで押させ、相手を転がすという稽古です。相撲というのは、瞬発力を連続的に発揮して、相手の重心を崩すスポーツです。大きな身体の力士はすぐに息があがりますが、それを我慢して稽古をしなければ強くなれません。力士は皆ゼイゼイと喘ぎながら、髪を乱して相手にぶつかっていき、転がされます。最初は胸を貸していた貴乃花は、突然自らもぶつかり、転がされ、受身をし、背中に泥をつけていきました。横綱もこのような泥稽古をするものとは知りませんでした。誰も声を発することの出来ない緊張感で土俵が引き締まっていきました。

 

稽古が終わり、貴乃花からチャンコ鍋のお誘いがあり、2Fに上がりました。ちゃんこ鍋は若い力士がサーブしてくれます。まわし一枚の若い力士が汗をかき、髪を乱しながらも気を使ってくれる様は得もいえないタニマチ気分です。ちゃんこは、豚の出汁をベースに鰹や昆布出汁をまじえたとてもあっさりした味です。これに肉や野菜をたっぷりと入れて食べます。このほかにもキムチやサラダや鳥のから揚げや漬物などの大皿が並んでいますが、まあ、殆ど食べ切れません。

 

■④ちゃんこ鍋DSCF2925.JPGのサムネール画像

 

 

 

■“高貴”な会談!

我々がちゃんこを食べている間、お風呂上りの貴乃花は近くに座って、床山さんに丁寧に髪を梳いてもらっています。貴乃花が若い床山さんの方に話しかけました。

 

貴:お子さんは何歳?

床:5歳です。

貴:そうか。もう年長だ。可愛い頃だね。高井先生、この床山さんは先代からお世話になっています。この部屋には通勤して もらってるんですよ。本当にお世話になっています。

 

そこに、若い衆がフルーツスジュースとバナナを持ってきました。

 

貴:バナナは身体にいいんです。このジュースの賞味期限はいつ?賞味期限切れはダメだよ!

若:はい大丈夫です。来年3月末です。

 

やがて、井先生と横綱乃花の「高貴な会話」が始まりました。

 

貴:高井先生!HP拝見しましたよ。何かあったら、先生宜しくお願いしますよ。

高:ははは。今日、来るときに清掃車が燃えていて手間取ってしまった。遅くなってしまって。

貴:先生、電話いただいたら、若い衆が清掃車を片付けに参りましたのに。ハハ!

高:今日で稽古は仕舞いなの?

貴:はい。今日が土俵収めで、明日が綱打ち、元旦は新年会と挨拶周りで、2日から稽古です。

高:稽古は誰でも見られるの?常連さんはいるの?

貴:記者の常連はいますが、後は自分の友人くらい。基本的に関係者以外は禁止なんです。

小生飛び入り質問:横綱が新弟子の頃、東北かどこかの巡業先で、稽古の後に農業用水路に頭から飛び込んだのをNHKで見ました。長い髪が流れになびいてとても綺麗でした!

貴:覚えていますよ。田舎の用水路はとても綺麗ですからね。

高:マスコミの取材は多いでしょう?

貴:今、一切断っています。協会から依頼のあったNHKだけは受けましたが。

高:髪の毛を梳くと身体にいいみたいだね。

貴:お相撲さんは髪の毛は商売道具のようなものですから、毎日整えています。自分は髪の毛は固い方で、新弟子の頃は髪を梳かれると痛くて寝られないくらいでした。場所中もどんどん伸びて、大銀杏も毎日切って揃えていました。でも髪は、昔より少なくなったかな。先生、髪の毛が固い人は助平だそうです。冗談ですよ。ハハ。

高:怪我が大変だね。年6場所はきついんじゃないの?年4場所がいいんじゃない。

貴:そですね。若い人にとって年6場所は大変でしょうね。ところで、先生の法律事務所は上海に事務所があるんですね。

高:そうだよ。一度ご夫婦で遊びにおいでよ。大相撲上海場所なんてないのかな。

貴:上海は行ってみたいですね。今年は韓国場所が予定されています。

高:海外ではどこが好きなの?

貴:怪我の治療に行ったパリは大好きです。何度でも行きたいです。

高:一緒に写真を撮れますか?

貴:もちろんです。もう少しで髪が整いますから。少しお待ちください。

 

かくして、高貴な会話を終え、記念写真を撮ったのでありました。

 

■①貴乃花とともに.jpg

 

 

圧倒的に勝つことを義務付けられた横綱貴乃花は、ぶっきらぼうで不器用な人物ではないかと思っている方もあるでしょうが、さにあらず。気配りの細やかな、優しく、かつ責任感の強い好青年でありました。高井先生によれば、貴乃花の最も嫌いなのは「知ったかぶりをして、偉そうにする人間」だそうです。そのような人間は、国会にも、マスコミにも、実業界にも、横綱審議会にもたくさんいそうじゃないですか。横綱って本当につらいよ。先の横綱審議会の稽古総見の折に、稽古に参加しないで黙々と四股を踏む貴乃花を見て、境川元理事長が「稽古で負けても恥ずかしいことはないから参加しろ」と言ったそうです。寅さんじゃないけど、「それを言っちゃあおしまいよ!」というものです。大相撲のことを横綱の尊厳のことを一番深く考えているのが、横綱貴乃花です。今回の見学は、それを肌身で感じました。双葉山以来の最も神に近づいた横綱、それが貴乃花です。横綱があと何場所務めるかはわかりませんが、「ごちゃごちゃ言わんで、最期まで静かに静かに見守ることこそが大切なんだ」と、俄かタニマチ気分の小生は思うのでありました。

木枯らしを心に収め稽古仕舞い

 

(2003年1月13日 吉田)

 

■貴乃花の断髪式

2003年6月1日に行われた横綱貴乃花の断髪式に髙井先生ご夫妻とともに、参加させていただきました。奥様がお元気な頃であり、種々お気遣いをいただいたことを覚えています。

この時の横綱は30歳。目指すべき最高のキャリアアップを果たしたわけですが、満身創痍の凄まじいキャリア形成でした。髙井先生と共に、貴乃花のセカンドキャリアである親方としての成功を念じたのでありました。

 

■⑤DSCF3440 断髪式 緒方拳氏.JPG

 

■⑧DSCF3472断髪式 貴乃花奥様.JPG

 

 

 

 

この記事にコメントをする

第9回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_0280.JPG

2015年8月9日(日)15:17 紀尾井町6にてヘメロカリスを撮影
花言葉:「とりとめのない空想」

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

■共感を呼び起こすつ6つの方策

「人間関係の充実は労働契約上の要請である。労務管理を推進するにあたっては、婚姻法に見られる人格結合的要素である合意(納得)、相互協力、信頼、協働、扶助といった情況を、顕在化させることを目標の一つとしなければならない。それは企業構成員間の精神的結合をまって初めて可能となる。」とする髙井先生は、職場で共感を呼び起こすための6つの具体的な方策を述べておられます。

 

①挨拶を交わすこと

挨も拶も語源はピッタリくっつくことである。総じて、精神の共鳴、同心化、共感を求めることが挨拶の意味である。目を見る。声をかける、肩を叩く、握手するといった五感の触れ合いから情感の交流が始まり、信頼感が醸成される。この信頼感の本質は、信念、情熱、雄々しさ、悲壮感、正義感等であり、思いやりである。

 

②トップと管理職の意思統一

経営のトップと管理者、いわゆる使用者間において、一体感と意思統一が形成されていなければならない。さもなくば、企業構成員全体の精神的結合は求め得べくもない。

 

③社長は現場を回れ

組合のない企業あるいは労使がうまくいっている企業の共通の特徴の一つは、代表者が現場にたびたび姿を現していることである。従業員に声をかけ、相手の考えていることに同調するよう努め、担当する仕事のこと、部下自身や家族の健康のことなどを話題にすることが肝要である。

 

④褒め上手・叱り上手なれ

叱るより、褒めろと言われている。叱ること即ち邪心に対して牽制することが、むしろ気重で、歓迎されない傾向にある。褒めるだけでは、甘え、放縦、身勝手が蔓延る。競争力を強化していくためには、叱ることが人事労務管理の標語とならねばならない。叱りながら人間関係上の摩擦や軋轢に葛藤し、克服していくことで上司も部下も鍛えられるのである。

 

⑤管理者は人間的であれ

企業における人間らしさとは、怠惰ではなく、勤勉で直向きであることである。困難・危険に直面して真っ向勝負する上司こそが人間的である。

 

⑥業績アップが最良の策

企業における良好な人間関係を樹立するためには、企業は業績を上げることが最も肝要である。

 

■四半世紀前から派遣労働者の教育を提唱

ここで時事案件を入れたいと思います。去る9月11日、189回通常国会において「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、9月30日に施行されることになりました。労働者派遣法の改正については、労働市場に関わる多くの人が注目しており、髙井先生の論と併せて紹介したと思います。今回の改正の付帯決議も含めて詳細は厚労省のHP

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

をご覧いただくとして、平成5年(1993年)の本書にはこうあります。

「人材派遣はここ数年間20~30%の成長を続けているが、それは必然的に人材育成をないがしろにする傾向となっている。人材派遣業界は専門性を育む・育成する・教育するといったシステムをなおざりにしては業としての意味合いを欠くに至り、専ら単純なマンパワーの補給基地になるにとどまることになる。それは、人材派遣業あるいは派遣労働者の社会的評価を低めることにもなるであろう。(中略)派遣事業は派遣元企業がプロ中のプロ集団になる企業努力を怠らないこと、具体的には(……)

派遣労働者の質的向上に務めること、換言すれば有能極まりない派遣労働者にその将来ヴィジョンとしてコンサルタント等に従事し得る可能性を見出し得るとの希望を与えてこそ、その将来が保障されるといってよい。」

髙井先生は、使用者側に立つ労働法・労働問題の専門弁護士です。

そのお立場で、四半世紀も前から人材派遣業界に警鐘を鳴らし、派遣労働者の育成と評価の向上の大切さを説いておられたわけです。今回の法改正では、「専門性を育む・育成する・教育するといったシステム」の法制化を、派遣元・派遣先に派遣労働者のキャリアアップの措置・支援の実施を義務付けるという形で実現に至りました。

 

<改正労働者派遣法における派遣労働者のキャリアアップの措置>

 

①派遣元は

20150924図①.png

 

②派遣先は

20150924図②.png

 

③派遣労働者は

20150924図③.png

 

(以上は厚生労働省ホームページより抜粋)

 

派遣法が成立した1985年に派遣対象として認められていたのは、常用代替のおそれの少ない専門的知識等を必要とする13 業務のみでしたが、その後数回の改正を経て、1996年には26 業務にまで拡大され、

1999 年には建設・港湾・警備、製造業務などを除いて、派遣対象業務が原則自由化されていました。

この当時、先生は「安に居て危を思う」という春秋左氏伝の故事を引用し、「派遣業界は急成長の今こそ、規制緩和の要望だけではなく、労働市場の適正化のために何ができるかを考えなければならない。己の喉元に法律の切っ先を当て、派遣労働者のためにどのような規制をすべきかを提言すべきだ。世論を味方につけた主張でないと業界エゴとしか映らない。政治家はなんの役にも立たない。社会の成熟とはそういうものだ。」と力説しておられました。この洞察の鋭さを今日改めて感じるところです。

 

 

この記事にコメントをする

第8回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_0188.JPG

2015年8月2日(日)8時5分 東京都新宿区若葉2にてエボルブルスを撮影
花言葉:「清潔、清涼感」 

 

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

■協調的・結合的・人格発展的関係が労働契約の本質

 

前回より、髙井先生のご著書「企業経営と労務管理」の中から、名言・至言、寸鉄・箴言を選りすぐってご紹介しています。労働契約及び集団的労働関係の本質について、髙井先生が以下のように述べておられます。

 

最高裁判所は、富士重工事件(昭和52年12月13日判決)において、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労働提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」と説示している。これは、三菱樹脂事件において最高裁が示した、雇用関係が「単なる物理的労働力の提供の関係を超えて、一種の人間関係として相互信頼を要請する」(大法廷昭和48年12月12日判決)という実態論と軌を一にしたものと考えるべきだろう。(中略)私は労働契約を単に債権的な権利義務関係と見るならば、むしろ労働者の利益を制約することになること、換言すれば、労働契約の人格的な要素を承認してこそ組織法的な権利義務関係に労働契約関係が埋没する危険性を封じ、企業と労働者の利益の均衡が図れると同時に、より人間的な温かさのある関係が成立するものと考えるものである。契約を実効あるものとする上で、この人格的支配関係は対立的関係として規定されるべきではなく、協調的・結合的関係・人格発展的関係として規定されなければならないことは言うまでもないことである。労働裁判例においてしばしば「信頼関係」――相手を信じて頼ること――が論じられるが、この「信頼関係」こそが規範的に確立されなければならないのである。そして、この信頼関係は、命令する者において命令される者を陰日向なく保護する義務、命令される者において命令者の発する具体的なさらには抽象的な事柄に忠実に従う義務が確立されてこそ、円満に形成されるものである。

 

■職場の人間関係は労使コミュニケーションの重要事項

 

多くの労務問題の解決にあたってこられた髙井先生は、労働契約及び集団的労働関係の本質は、「信頼」「共感」にあると賢察され、数多くの著書の中で言及しておられます。このことは、厚生労働省の、『平成26年「労使コミュニケーション調査」』の結果にも表れています。

 

この調査は、労使間の意思の疎通を図るためにとられている方法、その運用状況等、事業所側の意識、労働者の意識等の実態を明らかにすることを目的に、5年ごとに行われています。

労使それぞれが重視するコミュニケーション事項(複数回答)として、

 

  • 事業所(企業)は、 「日常業務改善」75.3%が最も多く、 「作業環境改善」68.5%、 「職場の人間関係」65.1%など
  • 一方、労働者は、 「職場の人間関係」60.8%が最も多く、 「日常業務改善」51.7%、 「賃金、労働時間等労働条件」50.6%など

 

となっています。

 

今日においても、労働者は賃金などの労働条件以上に「職場の人間関係」を重視しています。それを個別雇用契約や就業規則上に、人間的な温かさをもって、表現することが人事部の役割であることがわかります。先生は、過去の書式をそのまま活用したりネット上のテンプレートをコピペするのではなく、脳漿を絞り出す思いで、真に協調的・結合的・人格発展的関係を書面化することの必要性を説いておられると思います。

 

■人格発展的関係

私は特に人格発展的関係性という言葉に惹かれます。これは、おそらく先生が独自で発想された造語ではないかと推察しています。私が、入社して3年目頃のことです。ROD(リクルート・オーガニゼーション・デベロップメントプログラム)という研修を上司(課長)が受講し、職場の部下に結果をフィードバックする場を設けられました。この研修とは、職場での日常行動について、自分自身(この場合は上司)の認識と、周囲からみた自分とのギャップから、仕事や周囲との関わりに表れる自分の特徴を把握し、行動を変えていこうというプログラムのことです。上司に対する部下のアンケートを踏まえ、通意性、要望性、信頼性、共感性の4つの指標が5点満点でデータ表示されます。この指標自体、奇しくも、髙井先生が強調する集団的労働関係の本質である信頼性と共感性を内包しています。さて、くだんの上司ですが、仕事はよく出来る人で、大変高いスコアでした。しかし、フィードバックの場では部下は今一つ不満げな顔つきでした。それは、フリースペースの助言欄に複数書かれた文章に反映されていました。要約すれば、「仕事の上だけではなく、人間的に成長したい。そのために幅広く指導してほしい。」というものでした。大卒や高卒の新入社員やアルバイトなど若い部下の組織の中で、この声を上司は驚きつつもしっかり受け止めて、こう言いました。「目標達成のためのビジネスライクのマネジメントのみならず、私に徳育も求めているのか。」と。人格発展的関係性を実践することは、現在からみれば、ハードルの高い日本的マネジメントですが、アングロサクソン系マネジメントに打ち勝つヒントがあるように思います。

ちなみに、先の4指標のうち管理者に最も必要とされるのは要望性です。要望性の強さは、いわゆるリクルート出身者の共通の因子であり、ある種の臭みでもあるとも言われています。

 

 

 

この記事にコメントをする

第7回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_0001.JPG

2015年6月28日(日)8:04
東京都千代田区三番町/東京家政学院中学校・高校前にて
キンギョソウを撮影
花言葉:『清純な心』

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

■髙井先生版「考えるヒント」

高井先生には四半世紀にわたって、種々のご指導をいただいて参りました。今回から、6回にわたって髙井先生が実際に話されたお言葉や著作の中から、名言・至言及び寸鉄・箴言を選りすぐってご紹介したいと思います。若い方はご存じないかもしれませんが、小林秀雄の昭和40年代のベストセラーに「考えるヒント」がありました。斬新な発想と徹底した思索で、多くの読者に新たな視点や発見を与えてきた永遠の名著です。広く深い洞察から地中に埋蔵された真理に焦点を当て、しなやかな感性と揺るぎない論理で掘削し、目的物に達する様は二人に共通するものではないかとかねてより思っていました。小林は、「当麻(たえま)」の中で世阿弥の美にふれて、こう書いています。「美しい『花』がある。『花』の美しさというものはない。」と。

 

髙井先生は、著書「企業経営と労務管理」の中で、こう書かれています。少し長いですが、引用いたします。

「労務担当者としての資質には、情感と精神のみずみずしさが求められる、情感とは心の青さを感ずると書くが、要するに他人のために本当に泣くことができるか否かということである。『感動』という言葉はあるが、『理動』とか『知動』という言葉は存在しない。言葉がないということはそのような事実が存在しないということなのである。これは人を動かす動因はロジックではなくしてセンシビリティであることを端的に示すものである。棟方志功は、『人が感動するのは青色ではなく青さである』 と言っている。まさに至言である。」と。

私は、誠に不遜ながら、先生の長年の言動を踏まえて、何とか髙井先生版「考えるヒント」を読者の皆様にお届けできないかと思いました。恥をさらしつつも、先生のブログに書き記すことが、先生の恩顧に報いる一つの方法になるのではないかという結論に達したわけです。

 

■美術鑑賞のコツ

先生は、美術についてご興味をお持ちで、かつて、「日経アート」にコラムを連載しておられました。抽象画、とりわけ、カンディンスキーを好んでおられます。その先生から、以前、このようなお話を伺いました。「多忙な中でも美術館に赴くことは大切なことです。時間のない中で、美を発見するにはコツがあります。館長から『あなたの最も好きな作品を差し上げます。』と言われたと仮定しましょう。先ずは、展示室の真ん中に立って、ピンと来た作品を一つ発見して下さい。そして、その作品の前に行って、じっくり鑑賞しましょう。他の作品は一切見てはいけません。そういう覚悟が必要です。こういう風にして、2、3の主だった作品が展示されている展示室をめぐり、その部屋ごとのお気に入りの作品を決め、その中から、今日のマイベストを選ぶのです。その作品はあなたの右脳に一生焼き付けられることでしょう。」まさに、名人技の鑑賞術です。小林秀雄は美の分析の無意味さを説きました。先生は美を比較検討するのではなく、感じ取ることの大切さを話しておられました。希代の文芸評論家と法律家の感性は、凡夫の及ぶところではないことがよくわかります。

 

■正々の旗 堂々の陣

15年前くらいのことです。私が仕事上の何かの案件について、先生に意見書をお願いしたことがあります。

その折の意見書の冒頭に、案件に臨む上での基本スタンスが述べられていました。それは「正正の旗、堂堂の陣の前では無理をするな」というものでした。孫子では、勝つことよりも、「どうしたら負けないか」を説いています。原文の現代語訳では「近きを以て遠きを待ち、万全を以て疲弊を待ち、自らを充足させて敵の不足を待つ、これを力を治むる者という。正正として旗の乱れざる敵を迎えること無く、堂堂として陣の崩れざる敵を撃つこと無し、これを変を治むる者という。」となっています。

「敵の体制に乱れがないうちは攻めてはいけない。」というご意見に従って事無きことを得たことは言うまでもありません。先生は種々の法律問題への対処にあたって、原理原則や基本スタンスを大切にされ、クライアントにそのことを最初に説明されます。技術論はその後のことです。大局観を得て、腹を据えることも相談者たるクライアント側のマナーでもあるわけです。

 

 

この記事にコメントをする

第6回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_5916.JPG

2015年5月17日(日)15:20
東京都千代田区清水谷公園にてガザニアを撮影
花言葉:「豪華」「栄光」 

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 


■詞は飛び書は残る

 

前回まで、1989年に行われた髙井先生のご講演「就職情報誌の現状と今後のあり方」からそのポイントを抜粋してご紹介してきました。髙井先生のお言葉には、求人情報提供事業の本質と果たすべき社会的役割について、厳しくも期待感に溢れた強いメッセージが込められています。現在、このご講演を記憶しているオーディエンスは殆どいないでしょう。

髙井先生は艱難辛苦の日々を忘れやすい凡夫のことを見通しておられ、7回にわたる講演を講演録としてまとめるよう当初からご指示がありました。先生がよくおっしゃる「詞は飛び、書は残る」の通りです。その結果、四半世経った今でも色褪せることのないコンテンツをネットを通じて広く共有できるようになりました。

 

 


■第一次「就職情報誌(求人メディア)の法規制」問題

本論とかけ離れない範囲で述べておかなければならないことがあります。それは、就職情報誌(求人メディア)の法規制」問題です。1980年台は、若年層の求人難時代を迎え、多くの求人情報誌紙が創刊されました。同時に、求人広告への苦情も増加し、社会問題化してきました。求人情報ビジネスを非難するマスコミ報道も見受けられるようになりました。

このような社会情勢の中で、1985年に社団法人全国求人情報誌協会(全求協)が設立されました。高井弁護士の指導により、協会設立から読者の苦情相談窓口の設置、倫理綱領・掲載基準の採択まで、わずか9箇月で行っています。業界の緊張感と切迫感が伝わってきます。これが求人広告の自主規制のはじまりです。一方で有効求人倍率は、1987年0.7倍、88年1.01倍、89年1.25倍、90年1.4倍、91年1.4倍・・・と急上昇を続けていました。求人広告件数は増え続け、苦情も増えるというスケールデメリットが生じ、遂には、1989年9月に堀内労働大臣が「就職情報誌の法規制について、労働省内で研究を進めており、この問題にはしっかりした対応が必要だ」との発言がありました。自主規制路線を必死で歩んできた全求協の危機感はピークに達しました。

 


■職安局長通達により、法規制でなく、自主規制に

この求人情報誌の法規制問題については、1990年11月に労働省が中央職業安定審議会に民間労働力需給制度小委員会(民需小委)」を設置し、検討を開始しました。1991年1月には、同委員会は全求協をはじめとする民間の求人情報提供事業者団体のヒアリングを行い、全求協は「自主規制が実効を上げており、法規制は不要である」旨の意見要望書を提出しました。その後、時間をかけて審議検討が行われ、1989年9月の堀内労働大臣の上記発言から6年後の1995年8月に労働省職業安定局長通達により、求人広告は法規制ではなく自主規制を継続していくことが確定しました。今日にも生きる重要な通達ですので、ここに全文を掲載いたします。

 

pdficon.png

 


平成7年8月 労働省職業安定局長通達「文書募集を行う事業主に対する適正化指導等について」(全文)

 

先の見出しに、“第一次” 「就職情報誌(求人メディア)の法規制」問題としたのは理由があります。今日、“第二次”ともいうべき法規制問題が出来(しゅったい)しているからである。この問題については改めて述べる機会があろうかと思います。

 

(つづく)

 

 

 

この記事にコメントをする

第5回 高井先生言行手控え

| コメント(0)

 

IMG_5794.JPG

2015年5月4日(月)東京都港区芝公園にて
芍薬を撮影(花言葉:「はじらい」)

 

 

 

第2回記事(2015年2月27日付記事)より、平成元年(1989年)、髙井先生の「就職情報誌の現状と今後のあり方」という演題でお話をいただいた折の講演録から、その示唆と洞察に富む提言を紹介しています。

 

■髙井先生との質疑応答

本講演の最後に、髙井先生と参加者との質疑応答が行われました。そのやりとりをご紹介します。

 

 


質問:
「就業規則と広告内容との整合性を検証することが必要である」とのことですが、営業の現実場面では就業規則の提示を嫌がる企業、それも大企業にありがちなのですが、どうしたらいいでしょうか。」

 


先生:
「私の事務所では、多くの企業から就業規則をいただきますが、“社外秘”と印刷されています。中小企業では就業規則と実態の乖離が目立つので提出をいやがることもあります。一方で、公共職業安定所や労働基準監督署は、職権で提出を求めることができます。正確な求人情報を求職者に提供するという目的は官民で共通であるわけですから、就業規則の提出について、求人広告を扱うすべての媒体が共同で労働省(当時)に問題提起を行うことが必要ではないでしょうか。」

 

 

■現場に行くことの重要性


質問:
「求人広告を制作しています。企業の魅力を伝える時に、『過度な誘致』にならないようにするには、どのようにしたらいいでしょうか?」

 

 


先生:
「あなたに本当にその気持ちがあるならば、広告制作担当者は社長室で社長に会わなければいけない。
その会社の職場に行き、その会社の空気を吸う。そこで初めて真摯な企業か、インチキな企業かを体感できます。デスクワークで、現場に行かないと、そこに美化があり、虚飾が入り込みます。魅力を伝えることに偏るとむしろ弊害が目立つことになります。客観的で正確な労働条件を基準にして、その上に如何に、知・情・意というソフトのオブラートをかけるか、そういうことが必要ではないでしょうか。」

 

 

 


質問:
「審査室は、どのように機能すればよろしいでしょうか?」

 


先生:
「どんな産業群でも、売上げを重視しがちです。その中で、どの程度に、どのように、どの時期に、審査室が機能していくのかを経営者とともに熟考し、事前審査の対象や事後審査の対象を明確にしながら進めていくことです。言うは易いが行うは難しです。求人広告というソフトウェアは、極めて優劣の判定が難しい世界です。
例えば、自動車の欠陥というのは極めてわかりやすい話で、動かなくなるという現象でわかります。ところが、求人広告の優劣というのはなかなかわかりにくい世界です。適否が判断し難い場合は、内部的な審査機能を充実させ、自らの良心に従って事業を運営し、誠意と努力、この一点に審査機能を集中させていかなければなりません。」

 

 

■社内制裁制度は創意工夫が必要

 


質問:
「社内制裁制度について詳しく教えて下さい。」

 


先生:
「一般的に営業上、不始末な行為をすると、例えば使い込みなどの場合は、懲戒解雇です。求人広告に関していえば、瑕疵のあるものを瑕疵のないような表示方法で売りつけて、当社の信用を毀損した。会社としては、キズのないものを売ろうと思っていたにもかかわらず、営業担当が、キズがあることに気づくべきであることに気づかないで、売りつけて当社の信用を傷つけた。こういう場合は、始末書つまり譴責です。制裁措置としては、この他に減給や出勤停止、ひどい場合には懲戒解雇になります。また、制裁措置は行為者本人だけではなく、監督責任も問います。行為者本人よりも軽度なものになりますが、管理職としての適格性を問われます。求人広告の営業・製作過程において瑕疵がある場合は、この制裁措置に創意工夫が必要です。求人広告を定期的にモニタリングして、不良な広告や違法な広告を見つけ出したり、苦情受付の広報を積極的に行うことが必要です。問題広告があれば、審査委員会で公平公正に懲罰を判断することが求められます。そして、一番大切なことは、原因を明らかにして対策を講じることです。求人広告の場合は、その殆どが求人者の情報提供がいい加減であったり、労基法の知識が不十分であることが多いと思います。そうなれば、労働条件の情報提供において、間違えやすいところを説明したり、労働関連法をわかりやすく説明するための啓発ツールの開発が必要になってきます。そこには大いに投資をすべきでしょう。皆さんが携わっておられる就職情報誌は社会的に多くの役割を担っていることを忘れてはいけません。」(講演終了)

 

 

20150527.JPG

 

※ 上記は、講演後に当審査室でまとめた「就職情報誌の8つの社会的な機能(1989年)」です。

 

(つづく)

 

 

 

 

この記事にコメントをする

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

コメント欄に法律相談を書き込まないようお願い致します。

私のブログへのご意見・ご批評をお待ちしております。コメントは承認制とさせて頂いておりますが、基本的に掲載させて頂きたく存じますので、ご記名のうえご記入下さい。掲載不可の方はその旨ご記入下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

<   2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
http://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成