弁護士の営業の最近のブログ記事

 

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2015年8月13日(木)7:52 中目黒公園にてキバナコスモスを撮影
花言葉:「野性的な美」

 

 

(9)気を付けるべきこと

弁護士間の競争が激しくなっている今の時代において、事務所でお客様の獲得のために、事実上の営業マンを雇うことも必要となってくるだろう。弁護士も待つだけではなく、積極的に営業活動を行わなくてならない時代になったのだ。

 

(10)ITツールを使った方法

私の事務所では、HPに加えて、Facebookでも情報を発信しているが、FacebookやTwitter等はHPなどへの入口に過ぎないため、HPへ誘導した後、どのようアプローチし、クロージングに持ち込むかの誘導経路の構築ができていなければ、顧客開拓にはつながらない。

これらのITツールには、有象無象があるが、事務所との関わりを検討されている方々が、事務所の素顔に触れ、事務所を知ることが出来るので、顧問先の開拓を目的とするならば、ある程度は有効だろう。しかし、ファーストアプローチとしては、「労多くして効少なし」と判断される場合が多い。しかし、時間が無駄かもしれないけれども、それでもやらなければならない。営業はコストだけでなく、心理学でもあるから、事務所内外を説得、納得させなければならないので、一般的に普及しているITツールも使わなければならないのである。

また、お客様が法律事務所を選ぶポイントは、”実績””安心感””面倒見の良さ”や”権威”、更には”名前が売れているか”であろうから、陰に陽に忙しいことをアピールするのも1つの手だろう。

ただし、昨今、コンプライアンス重視の傾向が強いため、ITツールの使い方は慎重に考える必要がある。単なる「情報」の発信ではなく、「事務所の内容を良く分かってもらえる情報」の発信が有用なのだ。

 

(11)後継者の育成

事務所を継続発展させていく上では、後継者の育成も重要となる。後継者を育成することは、事務所のさらなる発展にも繋がることとなる。反対に、後継者不在で自分の引退とともに事務所を閉めることになれば、往々にして信頼関係を築いてきたお客様に迷惑をかけることになる。お客様が、以前頼んでいた事件に絡んで再度問題が起き、その事件を担当した事務所がなくなったため当時の担当弁護士を訪ねたところ、「自分は引き継いでいないし、資料も残っていないため分からない。」と言われたという話は珍しくない。お客様と長く付き合い、安定したサービスを提供するためには、後継者を育成し、自分の引退後も事務所を存続させなければならない。ただ、後継者と前任者との考え方に相違があってはならない。考え方の相違があると、引継ぎ後、やはりお客様に迷惑をかけることになるからである。

後継者への引継ぎにあたっては、長期的に周到な計画をたてる必要がある。まず、後継者候補を選ぶことから始まるが、後継者選びのポイントは、事務所の方針や理念を十分に理解し、経営能力にも長けた人物を探すことである。次に、後継者を育成するにあたって、円滑に事業を承継するために、長期的な計画をたて、じっくりと育てることが肝要である。特に身内以外の勤務弁護士に引き継がせる場合には、お客様にとっては、「先代=後継者」とは見えず、知名度や信頼度が大幅に下がる可能性があることには十分に注意すべきである。後継者と十分意思疎通した上で事業内容や経営理念をじっくりと引き継いでいくことは勿論、経営のノウハウを養うために、早い段階から経営に参画させたり、弁護士業務のみならず他部署とのミーティング等に参加させたりすること等も必要となる。さらには、後継者一人では成り立たないため、引継ぎ後の体制を強化すべく、ブレーンの育成も重要課題となる。

自分よりも優秀な人物が後継者になれば、すこぶる幸せなことだ。ここで言う優秀とは、他の弁護士が憧れるような弁護士のことである。

 

 

おわりに

 

弁護士の営業は、時代の流れを意識しながら長期的な視点も含めて取り組まなければならない。今日のことだけを頑張っていても、弁護士事務所としては長続きしないだろう。今日のことだけではなく、明日のこと、来週のこと、来年のこと、5年、10年先を頭において営業に取り組まなければならない。一日単位の綿密な営業計画を立てても、計画どおりにいかないことが常であるが、時代の流れを意識した長期的な営業計画・目標を念頭におけば、それが指針となり、励みとなる。

目標があれば、それに向かって努力し邁進することができる。目標とは、人が情熱を傾けることのできる対象であり、また、困難にぶつかったような時に乗りきる勇気を与えてくれるものである。私は事務所を設立した当初、人事労務問題を専門としたグローバルな事務所にしようと決め、その目標を達成するために邁進してきた。

営業活動を続けても、すぐに効果はでないかもしれない。しかし、時間がかかっても、評価は後から必然的についてくるものであるから、途中で投げ出さない姿勢がなによりも大切である。

明けない夜はない。朝が来ると信じるからこそ、我々は苦境を切り抜けるための努力ができる。まさに「継続は力なり」なのである。

 

最後に、弁護士とは、文字通り人を弁護する者であるが、弁護される人がいて初めて成り立つ仕事である。即ち、弁護士は代理人であって当事者ではない。弁護士は、自力では十分に戦うことのできないお客様の代理人として、お客様の利益を保護するために法廷等に立つ。お客様は弁護士に自分の運命、問題の成り行きを委ねるしかない。弁護士は、勝っても負けても代理人に過ぎないが、しかし、お客様の運命を握っているということも肝に銘じておくべきである。そして、それだけに、弁護士はお客様に救いを与える存在でなければならない。

お客様が弁護士に相談する時点で、お客様自身では既に問題を解決できない深刻な事態に陥り、問題に悩まされるだけでなく精神的にも追い詰められた状況にあることが多いため、救いの存在としてお客様の心に安堵感を与えられなければならない。救いの存在となれるか否かで弁護士の真価が問われる。

 

どんな人であれ、結局、自分の力を発揮するということに尽きる。「自分の力」を発揮するとは、人としての力を発揮することであり、弁護士も、忍耐力や連帯心、向上心など人としての力を発揮しなければならない。人としての力を最大限に発揮しようとすれば、現状に満足することなく、自分の周りの変化に即対応する姿勢をもち、時代の流れに取り残されることなく進化していくことができるのではないだろうか。

 

弁護士は利他主義、つまり自己の利益より他人の利益を優先する考え方を持つ必要がある。それは、お客様の悩みに寄り添い、一緒に解決していくという気持ちがなければ、他人の利益を尊重することはできないからである。お客様との関係において、弁護士は常にこれを心しておかなければならない。

人は、どんな状況でも生きる意味を見つけ、内面的に成長するという心構えが必要だ。弁護士は、お客様との関係を通じて生きる意味を見つけ、内面的な成長を実現することができる。お客様に尽くすことで、私の後輩であるあなた方の、生まれてきたことの意味や弁護士としての役割を知ることとなるのである。

 

<新人弁護士道13訓>

1.         あすなろう、の思いを強くもって生きたい。

2.         心の中に、理想の自画像を刻みたい。

3.         この仕事は必ずやり遂げる、という確信を持ちたい。

4.         手当たり次第、書物を乱読したい。

5.         心で怒って笑みを絶やさぬ態度でありたい。

6.         より多くの信頼できる友人を持ちたい。

7.         エチュードを重ねるトレーニングをしたい。

8.         頼られる人間の魅力を研究したい。

9.         いつも到達目標を掲げたい。

10.       隣の仲間が敬礼してくれる日を夢見たい。

11.       後進が重宝がってくれる先輩になりたい。

12.       読む、聞く、覚える、考える習慣を忘れない。

13.       よその畑は荒らさないが、手をつなぎたい。

 

以上

 

 

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2015年8月10日(月)7:51 中目黒公園にて芙蓉を撮影
花言葉:「繊細な美」 

 

(4)他士業による紹介

弁護士が、他の弁護士を紹介することがある。特に、以前、相手方になった弁護士から紹介されることは嬉しいことだ。そのためには、常日頃正々堂々と弁護士活動をすることが基本である。勿論、相手方の弁護士は色々な主張をしてくるが、それをクリアして勝ち抜くという結果を示してこそ、相手方の弁護士からも信頼を得ることができる。それと共に、味方を増やすことも必要である。相手方にいる沢山の人を当方に心理的に動員できる、そういう弁護士が、相手側に推薦されるようなことになるのである。

弁護士に限らず、他の士業、たとえば公認会計士、税理士、司法書士、弁理士、行政書士等との繋がりも作らなければならない。弁護士も人脈を太くすることが大切である。

他士業の人とはとかく、縁が切れる可能性がある。それは、弁護士の世界も競争社会だから他士業の人がより優秀な弁護士に遭遇する可能性が充分あるからである。だから、弁護士が他士業の人に紹介してもらおうと思うならば、例えば年賀状を出すとか、暑中見舞いのお手紙を出すなどのほか、より実力を身につけてこれを喧伝したりして何らかの形で縁作りを強化することが弁護士として必要である

 

(5)海外進出

弁護士がグローバルな弁護活動をするためには、それぞれの国の民族性の特色を把握しておかなければならない。たとえば、中国は法治主義ではなく「人治主義」である。要するに、個人主義の延長線上に家族愛、仲間意識、地方保護主義があり、さらにこれらが合わさって人治主義に至っているのだ。だから、ことのほか人間関係を重視することが必要である。

また、中国の民族性の特色は「個人主義」である。孫文の言葉に「中国人は砂の民である。石にも、まして岩にもなり得ない民族である」とある。日本の契約書には「甲と乙は…この契約に定めのない事項が生じたとき、または、この契約各条項の解釈につき疑義が生じたときは、甲乙各誠意を以て協議し、解決する」等といった条項があるが、この条項は中国人には意味がない。中国人、中国企業との契約書が米国式に細大漏らさず規定されなければならないのは、「個人主義」に根差しているからだ。また、契約意識がそもそも日本とは違う。日本では、契約締結とは権利と義務とを確定する作業であるが、中国では、権利と義務の限界を確認する、つまり権利を極大化し義務を極小化する作業となる。

このように、民族意識の異なる外国人を相手に弁護士業務を行う際には、その国それぞれの民族性の違いをもしっかりと認識しなければならないのである。弁護士の本職は法的問題の解決だが、グローバル化社会においては「相互に民族性を理解することこそがトラブルを避ける上で不可欠」とお客様にも理解していただくことが大切である。そして、海外における営業活動でも、会食の場をこまめに設けるなど人間関係を重視することは必須である。

社会経済が着々とグローバル化している中で、弁護士だけがドメスティックではどうしようもない。弁護士もグローバル化しなければならないが、その第1の視点は、日本人は集団主義であって外国人は個人主義という民族性の違いに気が付かなければならない。日本人の弁護士は世界の弁護士と互角に勝負できないといわれているきらいがあるが、それは日本人の弁護士がドメスティックにこだわっているからであろう。

 

(6)講演からお客様を募る方法

講演の終了時には、拍手喝采で終わることが必要である。なぜなら、そのような反応が得られるということは、聴講者の的を射た講演をしたことの証明となるからである。講演後の拍手がまばらだったり、盛り上がらなかったら失敗だと思うべきである。

単に講演をするのではなく、営業としてその後につなげるための、二の矢、三の矢等々を準備することが必要となる。

 

私が講演に関して心がけていることの具体的な内容は、以下の通りである。

①   持続する努力を怠らないようにすることが大切だが、そのためにもセミナーを開催して、プレゼンスを高めることが大切である。そういう趣旨で講演会等を継続開催すること。

②   講演(小セミナーを含む)は、少なくとも春夏秋冬年4回行うようにする。これは営業活動としてやるものであるから、出席者が悩んでいたり、疑問に思っていたり、分からないところにお答えするのが常である。したがって、講演に先立って、先にアンケートをとることが肝要だ。これが一の矢である。

③   ニの矢は、出席者にお礼状を出し、講演を聞いても分からなかったところを確認することだ。第二弾のアンケートを取るのである。そして分からなかったことに親切に回答するのだ。

④   三の矢は、もう一度講演なり小セミナーを開催することだ。そうすると、話を聞きたいというファンが自ずと決まってくるだろう。

⑤   四の矢は懇談会を開くことだ。一度だけ講演会を聴いたからといってお客様になるわけではないのだから…。

⑥   小セミナーの方は、日ごろから接触して問題を抱えているという企業の担当者を中心にして行うのだから、顧客の確保の確立は高いだろう。勿論こういう講演会は、すでに顧問になっている担当者をお招きするのが定着性を高めるのに寄与する。

⑦   何はともあれ、講演するということは、自分が学ばせていただくという気持ちを意識し続けることが必要である。

 

(7)講演以外にも、お客様やお客様候補と触れ合う機会が必要

講演以外にも、昼食会を開くなどしてお客様やお客様の候補となる人々と触れ合う機会を設けることは必要だろう。弁護士としての当方の人柄を知ってもらうためである。

講演では、通常講師が一方的に話をするが、会食会であれば、相互に本音で話すことが可能であるからだ。

そして忘れてはならないのが、会食会後にお礼状を出すことである。この手間を省いては、広がるべき縁も広がらないのだ

 

(8)常に情報発信を心がける

・事務所報等

ご縁を大切にしてこそ、成果は上がる。私はご縁を大切にするいろはの「い」として、お礼状を書いている。2番目は、縁が続くように定期的に当方のニュースを発信するようにした。それが私や事務所の弁護士、また親しくしている方々のコラムを掲載している事務所報である。

縁については、いろいろな格言があるが、それを紹介していきたいと思う。

縁に関して私が特に大事にしているのは、柳生家家訓(柳生宗矩による)の「小才は縁に逢って縁に気づかず、中才は縁に逢って縁を活かさず、大才は袖触れ合う他生の縁もこれを活かす」という言葉である。この中で特に、「袖触れ合う他生の縁もこれを活かす」の意味は事典によると、「道で知らない人と袖が触れ合うようなささいなできごとでも、単なる偶然ではなく前世からの因縁によるもの。だから、どんな出会いも大切にせよということ。」とされている。それほどに、縁とは大切にすべきものであり、私も縁を円とすべく、人と人とを引き合わせることを常に心がけているのである。

以上

 

 

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2015年7月30日(木)7:14 東京都芝公園にてひまわりを撮影
花言葉:「崇拝、熱愛」 

 

社会が激しく変動する中で新しい時代に対応するには、「アイデア力」がなければ生き残ることはできない。言い換えれば、「発想の自在さ」ということだ。発想の自在さは、これまでの経験などに基づくこともあり人によって差があるが、往々にして単なる思い付きから始まるもので、本能によるものである。ただ、この思い付きを理論化しなければ、仕事として実行し得ない。つまりは、本能と理性を結合させるということだ。この力が「アイデア力」あり、以下(1)~(12)で述べるお客様の開拓にも繋がっていくのである。

 

(1)人脈の広げ方

人体図を見ると、血液が体全体をめぐっている血脈が存在する。この血脈は何によって流れているのかというと、心臓ではなく脳にある自律神経である。生まれたときから血液は全身を回っているのであるが、人間が血液を意識するのは、心臓の鼓動を感ずる時であり、手首の脈に指を当てて拍動を感ずる時である。この時に血液が全身に回っている瞬間を意識するが、それとは正反対に死の時は心肺が停止する。これは、先程述べたように、血液の流れを促している脳の自律神経が止まるということなのである。医者に、折々胸に聴診器を当てて鼓動を確認したり、脈診をしてもらったりすることがあるが、それは全身に血液がめぐっていることを意識するということが健康を保つ秘訣だからであり、血液を感じることは、本当に「生」を意識することができる。

さて、これを人との繋がりである人脈の形成に置き換えてみると、本来人間は生まれた時からたくさんの人に囲まれて生きている。しかし、人脈とは、誰しもが本来的に生まれ持っている人とのつながりや絆を意識して、それを活動させていくことで生まれるものなのだ。

「人間関係を深めていくのは畑を耕すのと同じである。畑において、何度も鍬や鋤を入れて耕していく作業は、一回やればそれで終わりという性質のものではなく、何度も何度も、繰り返し鍬や鋤を打ち込むことによって、盤根錯節(物事が複雑に入り組んで解決し難いこと)した木の根っこやら石やらを取り除いて深く掘り、土壌を柔らかくしていくものである。作物を作付けできる状態を保ち続けるためには、定期的に何度も何度も耕していく必要がある。

  そしてこれは人間関係においても同じで、一回会えばそれでおしまい、というものではなく、繰り返しの接触を心がけ、関係性を深く堀っていくことこそが肝要である。」これは、私の親しくしているあるビジネスパーソンの言葉である。人脈とは、地層が積み重なるように、あるいは年輪が刻まれていくのと同じように、長期間、時間をかけて、それこそ一生をかけて形成する、その人物の 生態系、「生きること」そのものであると思う。

そして、人脈を勝ち得るために人に人脈をつないでもらうには、まず自分の人脈を紹介することから始めなければならない。よく、他人の人脈ばかりあてにして、自分の人脈は教えない人がいるが、このような人はケチな人、こすっからい人と評価され、結果的に人脈が増えないこととなる。自分の人脈を教えるということは、結局は他人のために寄与するということである。相手がお客様であり、人脈を教えることでお客様の営業活動に資すれば、それが「顧客満足」に繋がることとなるだろう。

 

オリンピックをみていると、日本の選手は全員周りの人に「支えられて戦った」とか「勝利した」とコメントする。弁護士も同じく周りの人に支えられないといけない。しかし、支えてもらうことを期待するのではなくて、自分自身を磨かなくてはならないということである。血と汗と涙の結晶を求めてこそ、光り輝き、皆さんが応援してくださるのだ。

また、弁護士は自分の営業だけに関心を持つのではなくて、お客様の営業のことを思いやらなければ真の営業とはいえず、成果に繋がらない。ギブアンドテイクの世界であり良く言えば支え合い、絆の世界なのだから。

 

(2)友人、知人等の紹介

知人・友人の紹介で仕事を受けた場合、一番困るのは敗訴等、結果が思わしくなかった時である。知人・友人は紹介した責任から、面子がつぶれたと思い、また、こちら側は後味が悪く感じ、知人・友人関係が崩れてしまって修復できないことがある。知人・友人関係がその後に破綻することを予測しないで、軽率に仕事を引き受けると、長年培った関係が破綻に瀕してしまいかねないのである。だから、知人・友人からの紹介案件については、よく吟味してから引き受けるかどうかを検討しなければならない。

また、親族から紹介されて弁護士として案件を引き受けることがあるが、友人・知人から引き受ける時よりも慎重にならなければならない。特に、依頼者側は勝利するものと思っており、親族であるということから甘えもあって、敗訴した場合の反動が通常よりもきつくなる。敗訴によって親族関係が破綻するということもよくあることである。

恩師などのどうしても断りきれない人から仕事の依頼を受けた時には、正当な評価は期待できないであろう。そして、敗訴が濃厚な場合には、いよいよ引き受けることが難しくなる。そんな時には、親しい弁護士に依頼して共同受任することが一番良いであろう。一人で引き受けて敗訴してしまっては、面目が立たないからである。

 

(3) セカンドオピニオン、サードオピニオン

セカンドオピニオンという言葉は、医療診断の世界の言葉で、専門・聖域領域とされてきた医師の権威主義的・独占的判断への疑問を解消するひとつの手立てとして生まれたそうだ。患者側がもつ一種の医師不信のように受け取られがちだが、現在では、医学の専門分野の細分化が進んだ結果、医師の側もセカンドオピニオンを望むようになってきたそうである。私は、弁護士にもセカンドオピニオンが求められる時代になったということを10年ほど前から意識している。法律の細分化・専門化にともない弁護士も専門化が進み、特定の分野で高い見解・見識を示さないと、クライアントから信頼を得られない状況になってきたからである。たとえば、私はメンタルヘルス関連の案件を処理するにあたって産業医のみならず専門医である精神科医等の助言も極めて大切にしてきたが、いただいた医師の意見に敬意を払うことはいうまでもない。弁護士としての判断だけではいかんともしがたい状況ゆえに、専門家の力を借りているのだから当然であろう。

  医師や弁護士など専門的職業人の世界に限らず、ひろくビジネスの世界でも、同じことがいえるが、自分が専門の分野の新しい知識や情報を吸収することが重要なのはもちろんだが、それだけでは足りず、セカンドオピニオンをお願いできる人との縁を大切にすることも必要である

ただし、誤解してはいけないのは、肝心なのは、「自分自身の勉強」と「自分はファーストオピニオンである自覚」である。ファーストオピニオンという言葉はあまり使われないが、あくまで最初に下す判断の正確さ、適切さを確認するためにセカンドオピニオンがある。言いかえれば、セカンドオピニオンとは、ファーストオピニオンを充実させるためのものであるということだ。

なお、セカンドオピニオンの意見でも足りないと思った時には、さらにサードオピニオンを求めるのもよいだろう。複数の意見を比較検討して、自分なりの判断を下すことが大切だ。いずれにせよ、最も危険なことは、自己過信・自信過剰であるということである

 

以上

 

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2015年6月15日(月)東京都目黒区中目黒公園にて撮影
チョコレートコスモス
花言葉:「恋の終わり」 

 

 (5)証人尋問

証人尋問の準備は大変である。相手側の書面も証拠資料も読み、もちろん当方の書面、証拠資料も読むのだが、大事なことは相手の答弁を予測することである。もちろん、予測した内容通りに証言が行われるわけではない。だからこそ、相手側の証人の内容をいくつも考えることが必要となる。そのためには、複眼的な視点から検討する必要がある。加えて、決定的証拠をもって、すなわち書証をもって粉砕する準備も必要である。となると、予め想定問答を作り、それも2通り、3通りと準備しておくことが大切である。

 

私の実感としては、反対尋問よりも主尋問の方がはるかに難しい。主尋問は、相手側の反対尋問を予測しなくてはいけない、すなわち攻撃が相手に移るので、よほど準備をしていないと対処できない。準備の大切さは証人尋問において一番意識されなければいけないことである。客観的資料、物証、書証の収集が大切である。証言内容に直接関連した事柄だけでなく、間接的に関連する事柄、背景事情の検証もすべきである。些末な事項も手を緩めると、それが証拠となって思わぬ結果を招くこともあるので、適宜当方の証人で潰しておくなどの気配りが必要である。大局観と事実を踏まえた緻密な構想がマッチングしなければ、証人尋問は成功しない。

 

そして、当該事件の核心について、簡明直截に反対尋問することが大切であり、事実を詳細に語ること、論理的に構成すること、情感をこめる技術も要求される。

 

(6)詞は飛び、書は残る

裁判では、弁護士は自分の証拠を裏付ける証拠を提出しなければ勝訴できず、責任を果たすことはできない。証拠は主に証言と書証(書面になった証拠)であるが、証拠価値は書証が証言に勝ると評価される。

古来のヨーロッパの格言「詞は飛び、書は残る」にある通り、書面の効果は抜群である。特に、事実が発生した時点で作成された書面の証拠価値が最も高い。そうであるからこそ、弁護士はお客様の主張を鵜呑みにしてはならず、自らも証拠集めに熱心でなければならない。あらゆる資料を点検し、有用な資料を探し出すのである。弁護士に取って、関係書面を見つけ出した時の嬉しさは何にも代えがたい。そしてこの過程は、お客様その他関係者の主張の真意を検証する過程でもある。裁判は、「書証で勝ち、書証に負ける」ものであることを忘れてはならない。

 

(7)下見

下見とは、ある事をする前に予め見ておくことを言う。例えば、集団で登山をするとき、リーダーたる者は下見をしなければならないと言われる。これは、安全を確認し、登山を成功させるためである。弁護士も同様である。証人尋問があれば、事前に実際の流れを想定してロールプレイングを行うことで、成功の確率を高めることができる。講演であれば、リハーサルが必要となる。ロールプレイングとは、実際の仕事上の場面を設定し、そこでの役割を演じることで実務上のポイントを体得する訓練法であるが、実際の流れを想定して疑似体験をすることで、ある事が実際に起こったときに適切に対応できるような経験を積むことと近い効果があると言われる。このように、実際に目で見たり、体を動かしてみたりすることは、物事を成功させるための必須条件なのである。

必要最大限に準備することが必要である。お客様の意向に沿って事案を解決するためには、時間が許す限りの必要最大限の準備が欠かせない。なぜ、必要十分ではなく必要最大限の準備が必要かといえば、必要十分では想定外の事態が起こった時に対応し切れないからである。必要最大限とは、あらゆる事態を想定して、それぞれの対応を寝ても覚めても考え続けるということだ。これで十分だろうと考えることは、自らの限界を設けていることに他ならない。予想は時として裏切られるものであり、お客様の利益を第一に優先するのであれば、弁護士は、書面にしても、尋問や答弁の準備にしても、必要最大限の準備を目指さなければならないのである。

 

(8)人を見て法を説け

弁護士が、お客様、裁判官、相手方、相手方の弁護士と対するときに、性善説あるいは性悪説のどちらをもって、即ち人の本性を善・悪どちらと捉えて対すべきであろうか。

まず、お客様に対しては、弁護士はお客様と信頼関係を築くことが何より重要なことである。しかし、お客様には各々事情があり、正直な胸の内全てを弁護士に話しているとは限らない。弁護士には、何が事実で何が事実ではないかを見極める力が求められる。要するに、性善説、性悪説を超えたところでお客様を見つめなければならない。

次に、裁判官に対してであるが、憲法76条3項「裁判官は、その良心に従ひ」という文言に表される通り、良心をもって法廷で判断を下す存在である。だからといって、裁判官の「善」の部分が、生来生まれ持ったものなのか、努力によって後天的に身に付けたものかを一概に判断することは困難だが、裁判官の「良心」は善であると考えて、裁判官の人間性に訴えかけるような主張を心がけるべきであろう。

最後に、相手方および相手方弁護士は、当方を打ち負かそうとしている存在であるため、性悪説的に捉え、相応の準備と対応を心がけるべきであろう。

弁護士としては、相手によって善・悪の前提をかえ、事実を見極めていくことが大切である。それが、人を見て法を説け!ということである。

 

(9)弁論

次に弁論の重要性を指摘していこうと思う。日本の裁判所では、従来、書面の提出で弁論をすることが圧倒的に多かった。しかし最近では弁論が大変重要な役割を訴訟において果たすようになった。そうなると弁護士は当意即妙な表現で対応しなければならない。要するにこれは、弁論の直前の状況を踏まえて、臨機応変に弁論をしなければならないということだ。それは弁護士の日常的な知識や知恵によっても生まれるものだ。書面によって弁論に代えるということは実は易しいことである。なぜならばいろいろな参考書籍を見ながら、そして資料を見ながら書けば足りるからだ。しかし、先程話したように弁論が重要視されると、直前までの状況を十分反映した、当該訴訟等の終結にあたってふさわしい話をしなければならなくなるのだ。

 

最後に、いかなる訴訟であれ、精神・原理といったものを正面から語らずして、即ち錦の御旗を掲げずして、決定的な勝利を得ることはあり得ないのである。小手先の技術論ばかりでなく、企業のよって立つ精神・原理・方針といったものを、大胆かつ率直に語るべきであるということを、念頭において裁判に臨むことが弁護士に要求される。

 

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(1)2015年5月20日(水)東京タワー下にてペチュニアを撮影(花言葉:心の安らぎ)
(2)2015年5月22日(金)芝公園にてセイヨウキンシバイを撮影(花言葉:悲しみを止める)
(3)2015年6月6日(土)東京都北区豊島7丁目にてガクアジサイを撮影(花言葉:謙虚)

 

(1)大義名分

訴訟等を受任した場合、ことに相談案件を受任した場合、大義名分書を作成することが勝ち抜く基礎である。これを、企業のリストラのケースで説明してみよう。

私は1963年に弁護士になって間もない頃から企業のリストラ問題に取り組んできており、正確な数は不明だが既に1,000件以上担当したと言う者もいる。こうした中で私が必要に迫られ独自に編み出した知恵と工夫の産物が、リストラにあたっての「大義名分」を確立するという手法である。裁判所は、整理解雇が解雇権の濫用とならないか判断する基準のひとつとして「整理解雇の必要性」を挙げるが、私が考案した「大義名分」は、必要性のみならず企業の存続と再興をも重視する点において、一段と質が高くオリジナリティがあると言ってよいだろう。なぜなら、「必要性」は単に現下の人員削減の必要性を示せば足るが、「大義名分」とは、リストラをしても従業員らの士気を極力損なわないよう、具体的に企業の再生・再興を図るにはリストラしかないことを強調し、そのうえで未来志向の理念を確立することだからである

そこで、「大義名分書」の作成にあたっては、リストラの断行が経営者としての義務であるという強い意識を持ちながら、人員削減の必要性をデジタルな資料により説得的に論じたうえで、加えて、企業が「未来に生きる」ための目的意識をも明示し、リストラによって社会的ニーズに応える企業として存続・再興し得ることを明らかすることに重点を置く。このように「大義名分」はリストラが企業の未来を切り拓く手法であることを明らかにし、大方の従業員の納得を得る手続を進めることであるから、「大義名分」を構築できない経営者では企業再建は不可能と断じても過言ではない。

理想を言えば、企業の将来を考えるこうした作業は経営悪化に陥って初めて行なうのではなく、折に触れ経営に関する情報公開を行い、従業員の意識を共有させる機会を適宜与える必要がある。そして、事業の発展のために何をすべきか、仕事の仕方を変えることで売上げを伸ばせるのではないか、自らの技能・技術を磨くために何をすべきか等々について常に上司と部下がコミュニケーションを取り続ける手法を編み出すのである。

こうした考え方の基本は、あらゆる事案に応用できるのである。

 

(2)敗訴確実な事件を引き受けない

顧問会社等を除いては、極力、敗訴確実な事件を引き受けないことである。また、勝訴の可能性のあった事件において敗訴したときは、すすんで依頼者に代理人辞任を申し出ることである。もちろん、これはそれなりに勇気がいることであるが、しかし自分自身の責任感を全うする上において、極めて重要なことである。辞任すればよいという安易な態度で訴訟に臨めば、弁護士としての評価などは初めから得られるものではない。一方、精一杯行ったが敗訴し、辞任を申し出たとき、依頼者から再任されれば、これに勝る喜びはなく、弁護士として、依頼者から真の信頼を得たこととなる。

また、法廷の傍聴は、弁護士としてできるだけお客様に求めるべきである。弁護士のなかには、法廷の傍聴を断ったり拒んだりする弁護士もいる。しかし、お客様が傍聴を望むのは当然であり、ここに弁護士とお客様の間に不信が生まれる所以がある。お客様は傍聴を拒否されれば、「自分の前では大言壮語しているが、裁判官や相手側の弁護士の前では小さくなっているのではないか…。」と疑うのである。私は、お客様にはできるだけ傍聴してほしいとお願いしている。傍聴結果につき、お客様に、裁判官に、あるいは相手方の弁護士にどういう影響を与えたのかも説明する。それを分かりやすく展開できれば、お客様は納得し、弁護士も評価されるだろう。

 

(3)コミットメント(必達目標)

明確なコミットメントが提示できる弁護士は、優秀な弁護士である。

弁護士である以上、お客様に「勝ち筋ですか?負け筋ですか?」とよく聞かれるが、そのときに一定の見通しを語ることができると言うことは重要である。事件を引き受けた当初は、「お話を聞いた限りでは勝ち筋でしょう」と言うことができるし、負け筋の時は「まあまあ難しい」と言うことができる。

そして、何回か相手の意見を聞いているうちに、勝ち筋か負け筋かがはっきりと分かるようになる。だから、勝ち筋なら「勝ち筋である」と言わざるを得なくなるし、負け筋であると判明すれば「努力してみるが、難しい」とはっきり伝えることになる。これが、コミットメントということである。

ところが、暗に相違して勝ち筋だと思っていたが、負けるという結果になってしまうことがある。そのとき、裁判官を非難したりして取り繕うのが弁護士の一般的な手口であるが、それはあまり誉められたものではない。お客様に約束したこと、コミットメントが実現しなかったときは、率直に弁護士は謝るべきであるだろうし、辞意を表明すべきであろう。そういう弁護士が、潔い弁護士として評価されていくのである。

 

(4)駆け引き

駆け引きとは、辞典では「相手の出方や状況に応じて、自分に有利になるように事を運ぶこと」と解釈されているが、さらに言えば、相手に勝利感を与えることである。要するに、当方の妥結点を意識しつつ、それ以外の箇所を相手に譲ることを通じて、上手く和解に持っていくという手段である。

ところが、お客様が駆け引きは不要だといって断るケースが多々ある。そうなると、弁護士の腕が発揮できない場合が多い。だから、妥決点を予めお客様に教えておくことが大切である。優秀な弁護士とは、妥決点をできるだけ早く見極める才能がある弁護士である。裁判は80%が和解で終わることが現実である。そもそも、交渉ごとは話し合いだから、裁判が和解で終わることは普通である。だからこそ、駆け引きはどのような場合でも交渉の基本なのである。駆け引きは、相手方に和解に対する満足感を与える手段としても必要である。引き出す、勝ち取るといったところに、満足感が生まれてくるのである。

また、ある時は、相手方の出方を見るために駆け引きをする。例えば、和解の時に相手方の考えを探るため、当方が相手方にとって妥決点と考えているところを切り下げたうえで提案する。そして、相手方がそれに反論してくれば、相手方の出方が分かるということである。ところが、相手方の求める妥決点を読み違えると、相手方は当方の提案を見てあまりにも掛け離れているということで和解を断念しかねない。こう見てくると、和解においては自分の妥決点を考えるとともに相手方の妥決点を的確に予測しなければならない。そうしてこそ、駆け引きが成功するのである。そして、タイミングが肝要である。具体的には裁判長の顔色を見て「和解をしてはどうか」と言い出しそうなときが好機である。このタイミングを逸すれば、まとまるべき和解も不調に終わる。

裁判においては、例えば決定的証拠を持っている時は、それが当方の手の内にあることを示唆しないで主張するのである。相手方はそれを読み切れないまま自分の一方的な主張のみを展開することになるが、そういう時は決定的証拠を持っているから、相手方の主張を徹底的に粉砕することができる。これも駆け引きの1つである。反対に、当方に有利な証拠がなく不利な証拠ばかりの時には、駆け引きはどうしたら良いのだろうか。不利な証拠ばかりの時は、とぼけて強気の主張ばかりすることがある。しかし、結局は証拠がないから敗訴してしまう。相手方がこちらの状況を的確に把握せず、こちらの強気の主張に幻惑されて後退する時もあるが、それは非常に稀なケースで、一種の博打である。だから、そういった時は強気の主張をしないで、有体にいえば、早く和解を勧めることである。もちろん、当方に不利ではあるが、敗訴するよりましである。それが駆け引きというものである。ある程度までは譲歩をしても、予め決めておいた枠を超えて譲歩をしてはならないのである。和解条件は、多角的な検討を経た上で提示し、和解を契機として、その延長線上にお客様に資する諸施策を、たゆみなく着実に打ち出していくことが肝要である。

以上

 

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2015年5月9日(土)12:30
長野県北佐久郡軽井沢町にてヤエヤマブキを撮影
花言葉:「気品」 

 

 

(1)日頃からの営業活動の重要性

恒常的に仕事を維持するためには、日頃からの営業活動が重要である。営業ができない弁護士は、独立した事務所を経営することはできないだろう。

弁護士の営業活動は、不特定多数による広告活動よりも、第三者に評価してもらい、その人に推薦してもらう方が、客観性を帯び、信頼性が高まり、効果的である。それゆえ、お客様は、弁護士にとって、最大の営業マン、宣伝マンだということを忘れてはならないのである。また、人脈をつないでもらうばかりではなく、自分の人脈もお客様に紹介し、ギブ&テイクの関係が成り立つようにすることもポイントである。

また、弁護士は専門的職業人であるがゆえに、自らの専門性、信頼性について、一部の人だけではなく、広く世評を勝ち得なければならない。

世間で評価されないときもあろうが、それを乗り越えるだけの不断の努力をしなければならない。単に広告だけ大々的にうっていても大きな営業効果は得られないであろう。

では、世評を勝ち得るためには何が必要かといえば、まずは地道な講演活動、執筆活動であろう。これにより世評を得ることができれば、既存のお客様は、安心してその弁護士を他の方に推薦できるようになる。そして、何より重要なことは、営業活動は、繰り返し継続的、持続的に行わなければならないということだ。例えば、講演は毎週1回やらないと新規のお客様の獲得にはつながらない。セミナー会社の講演であれ、あるいは個別企業の講演であれ、毎週1回行わないと営業効果は出ないのだ。本も同様である。6ヶ月に1冊書かないと営業活動にはならないし、少なくとも3冊は出さないと本を出しているという世評は得られない。日比谷パーク法律事務所代表弁護士 久保利英明先生は、昭和46年の弁護士登録から平成24年5月までの41年間に、62冊の書籍の刊行に携わってこられた。この62冊目のご著書を贈呈いただいた際に、「これから、エイジシューターならぬエイジライターを目指します。年齢と同数の書籍を刊行する覚悟です。年2冊としても72歳になるまでかかります。年1冊では永久に追いつきません」とのレターをいただいた。久保利先生の書籍刊行に対する熱意にふれ、何事も継続性、持続性が力の源泉なのであるということを再認識した次第である。

 

①講演活動

講演活動においては、自分が作成した資料、自分の執筆した書籍に沿った講演をすることで、一貫性をもち、専門性、信頼性をもたなければならない。雑談のような一過性の話をしても意味がない。また、何よりも、迫力のある講演を意識する必要がある。ぼそぼそと話しているだけでは、新たにお客様を獲得することは難しいだろう。お客様が弁護士の講演を聴講する際には、話の内容はもとより、弁護士の人柄や姿勢、熱心さなどに関心を持つという。弁護士は常に考課されているということを強く意識しなければならないのである。

また、管理職研修等、お客様である企業が主催する講演の依頼を受けることがあるが、その講演のテーマを選ぶ際は、企業が望んでいるテーマを選ぶことが大切だ。まずは、企業の希望を確認してから講演しなければならない。そして、企業の研修は、毎年のごとく継続して行われるから、講師として引き続き、依頼されれば引き受けるという姿勢でいなくてはならない。リピートするということが大事である。そのためには、依頼した企業の満足度だけでなく、その研修を聴講した人たちの満足度も高くなくてはならない。そして、10年、20年とリピートして講師を引き受けられれば嬉しい限りである。なぜなら、それは、その研修での講義が、企業と聴講生の琴線に触れたことになるからである(なお、管理職研修等の講師に選ばれるということは、管理職は非組合員であるので、企業の在り方を説く一端を弁護士が担うということであり、非常に重要なポジションに就かせていただいたということでもある)。

 

②執筆活動

本を出版することは、非常に時間がかかるのでそれによるロスは大きいものの、専門家としての信用を得るためには必須といえる。本を出版することは、自分の精進・勉強の成果を定期的に発表し、「十分な専門知識を持っていて、信頼できる人物」「じっくりと課題に取り組む姿勢」を世間にアピールできる最良の手段であるのだ。執筆活動は将来の大きな財産となるのだから、産みの苦しさを乗り越えて取り組んでほしい。

そして書籍の広告、宣伝は、弁護士の営業活動に大きな効果をもたらすだろう。執筆によりネームバリューが上がることで、講演の依頼や、取材を受ける機会も増えてくるだろう。そして、講演、取材、執筆が増えることで、更に、講演、取材、執筆の依頼が増えるという好循環で、ネームバリューの強化につながり、新規・大手のお客様の開拓につながるだろう。ただし、まずは第一歩からである。事務所と関連のある出版社や雑誌社に、地道な営業活動を続けていくことである。

 

 

(2)書籍を出版する際に気を付けるべき点

弁護士の出版した書籍の内容が自分の問題解決に直に役立つだろうと考えるお客様がいる。そのような場合に、お客様の抱える問題が複雑であり書籍に載っている案件と細部少し異なっていても、書籍に書いてある内容が一般論としてお客様の問題の内容と同じように見えることがあるが、詳細を聞いてみると、肝心なところが違っていて、お客様の問題の答えをその書籍では解決できないことが往々にしてあるものだ。弁護士として、勉強して書籍を出版するのは良いが、それを読んだお客様の問題解決が上手くいかなかった場合には、お客様の責任による判断ミスか、著者である弁護士の判断ミスであるかが、はっきりしないという場合も起こり得る。

このようにトラブルを招かないように、出版する際には、例えば本の冒頭に「この本は具体的な事案について語っているのであり、一般論について語っているわけではないので、読者の方の抱えている問題と一致しない場合もあります」という注意書きを入れるなど、推敲に推敲を重ねて、慎重に行わなければならないのである。

 

 

(3)新聞社からの取材

新聞記事の解説欄に弁護士の名前が登場すると、信頼のある弁護士という評価になるのは言うまでもない。ところが、新聞記事というのは、弁護士の解説の部分も新聞記者が書くため、とかく誤解を招く表現になっていることがある。だから、新聞記事に載る前に、原稿ができたらチェックする必要があることは言うまでもない。さらに、私は、取材を受ける前に取材テーマを十分に勉強して、書面化するようにしている。新聞記者が質問するのはどこか、必ずしも事前にはっきりと分かるわけではないが、下準備をしっかりして話をすれば、誤解は少なくなる。事前に勉強して書面化したメモを、取材後に相手の記者に渡せば、齟齬が生じる確率はさらに減るだろう。

 

最後に、初めに述べたように営業は継続なので一度会っただけで成立することは、まずありえない。二の矢、三の矢、四の矢、五の矢と続けていかなければならない。例えば、書籍を出版したり、雑誌に取り上げてもらったりしても、そこで終わりではない。書籍であれば、書評などで紹介してくれそうな方にお送りする、また、書籍や雑誌をつながりのある方々にお送りして次につなげる、といったことが必要である。書評で取上げられることは、第三者に評価されるということであり、客観性が担保されるので、良いことである。

常に次の手を考えて行動しなければ、営業の成果は上がらないのである。

 

以上

 

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2015年4月12日(日)16:37 東京都港区南麻布三丁目にてハボタンを撮影
花言葉「利益」 

 

(1)弁護士報酬

このブログの第1回目で述べたように、いまは弁護士人口が増えていることや長引く経済不況により費用を適正な額に抑えようとする企業の動向からして、弁護士はお客様から厳しい目で選別される立場にある。企業の大きな案件では、複数の法律事務所にプレゼンをさせて、どこに依頼するか決めることも珍しくないという。弁護士が、お客様とあらかじめ報酬についての規定を定めないまま受任することは、まずあり得ない。見積書も必須であろう。

ただ、ここで重要なのは、お客様は単に安ければ依頼するのではなく、価格に見合ったより良いリーガルサービスを受けられるかどうかという視点で法律事務所・弁護士を評価しているということである。

弁護士間・法律事務所間の競争が激しくなっている現状では、見積書にしたがってお客様にお支払いいただいていても、クライアントから「コストが高いから弁護士を変更したい」と要望がくることも多いだろう。このようなお客様の要望を受け入れるべきなのだろうか。弁護士といえども価格競争を無視した仕事はできないが、その一方で、自らを卑下するような安売りをする必要はない。自分の能力と仕事の成果に見合う価格を堂々と主張し、交渉すればよいのである。そして交渉の結果、不調となれば弁護士も辞退すべきと観念しなければならない。

顧問契約が解約されるということは、依頼者が弁護士を自由に選べるようになり、弁護士が非正規要員になるということでもある。その結果として報酬が少なくなることは、必然である。

 

(2)資料の取り扱い

また、お客様から契約解除の申し出を受けたとき、弁護士がお客様に証拠などの関連書類を返却しないことがあるが、これは正しいことではない。委任契約終了時には、受任者は受け取ったものを引き渡さなければならない義務がある(民法646条)。また、依頼者から資料の返還を求められているにもかかわらず、弁護士の過誤によりその所在が不明になり、資料の発見や返却の連絡までに著しく長期の時間が経過していることは、それ自体弁護士として依頼者の信頼を裏切る行為であり、加えて、資料の返還請求等に真摯に対応せずに長時間放置したことは弁護士倫理に違反するものであるとして、弁護士法56条の「弁護士の品位を失うべき非行」に該当するとした裁判例がある(東京高裁平成15年3月26日判決判時1825号58頁)。日頃から、お客様からお預かりした資料等が散逸しないよう、細心の注意を払わなければならない。

 

(3)その他のトラブル

お客様からお金を貸すよう頼まれた場合、債務の保証を依頼された場合、親族の就職保証人になるよう頼まれた場合、断ることはお客様を失うことになりかねないが、弁護士はお金を貸したり保証人を引き受けたりしてよいのだろうか。

これについては、弁護士職務基本規程に依頼者との金銭貸借等に関する規定がある(第25条「弁護士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸借をし、又は自己の債務について依頼者に保証を依頼し、若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。」)。

この規定の趣旨は、債権債務(金銭)関係が生じると、お客様との間に力関係が生じて、公平・公正な業務が出来なくなる可能性が生じるためであると説明されている。

関連する例としては、弁護士が借入金債務の弁済についての折衝の依頼を受け合意を成立させたが、依頼者が弁済を怠ったことによる債権者からの執拗な請求を免れるために依頼者の債務を保証する念書を作成したという事案で、さらに弁護士は保証債務を履行せず、その後の訴訟上の和解による履行も怠ったことが、弁護士職務基本規程第25条等に違反し、さらに後者の行為は著しく信義に反するものでありいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当するとして懲戒処分を受けた例がある(平成22年6月1日日本弁護士連合会 懲戒処分の公告)。

また、若い法務部員が、「仕事を回すからキックバックをください」、極端な場合には「キックバック分を加算して請求してください」と弁護士に要求してくる例もあるそうだが、これにはどのように対応するべきだろうか。弁護士法第72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申し立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と規定している。つまり、法務部員が、キックバックを受ける目的で、弁護士と依頼者との委任関係等の成立のために、紹介等の便宜を図ることは、同条に違反する可能性があることを伝えたうえで、断らなければならない。

 

(4)弁護士とクライアントとのトラブルについての例

弁護士とクライアントの信頼関係が損なわれると、両者のトラブルは裁判沙汰にまでなることもある。刑事事件としては、弁護士によるクライアントの金員の詐取・横領、民事事件としては弁護士の説明義務違反が代表例であろう。

弁護士とお客様との間のトラブルで一番多いのは、お客様が弁護士報酬を支払わないというケースである。適正な報酬を得るため、報酬体系やルール、期限など、受任する前にきちんと説明し理解を得ておくことが不可欠であることはいうまでもない。

また、弁護士に対するクレームは不誠実型、単純ミス型、技能不足型の3種類がある。一番多いのは「不誠実型」だ。たとえば、着手金を受け取ったのになかなか弁護士がとりかからないケース等である。現代はスピードが問われる時代だから、クレームも当然である。「単純ミス型」は、仕事について決められた期限があるにもかかわらず、弁護士が忘れてしまう場合などがそれにあたる。

しかし、弁護士が最も意識するべきは「技能不足型」の弁護過誤である。法律が次々と改正され新法や特別法が成立し、解釈も進化するなかで、弁護士が新たな法の存在を知らずに弁護活動をし、まさに無知により失敗を招くケースである。専門的職業人は一度公的資格をとったからと言って、決して安泰ではなく、「生涯勉強第一」でなければならないのである。

以下、比較的最近の事例を挙げてみる。事例を知っておくことが、トラブルを未然に防止する一つの有効な手段である。

 

【民事事件】

① 弁護士報酬未払いについての裁判例(東京地裁平成2年3月2日判決)

 

  • 依頼者は、訴外H社に対する地代増額請求訴訟(本件訴訟)を弁護士に訴訟委任した。H社との和解が成立し、弁護士の委任事務が全て終了したが、依頼者が、弁護士が催告した弁護士報酬を支払わないため、弁護士が訴訟委任契約に基づく謝金支払をもとめ依頼者を提訴し、依頼者は、弁護士の弁護過誤に基づく損害賠償請求を反訴した。
  • 裁判所は、依頼者との間の訴訟委任契約には明示的に謝礼支払約定が存しなかったと認定したが、「弁護士と訴訟依頼者との間の訴訟委任契約は、特別の事情のないかぎり、右明示の約定がなくても相当の謝金を支払うべき旨の暗黙の合意がある有償委任契約と解すべきである」とし、この場合の謝金額は、「訴額、依頼者の得た経済的利益、事件の性質及び難易度、紛争解決に要した労力及び弁護士報酬規定等諸般の事情を斟酌して算定するべきである」と判断した。
  • 結論として、本件訴訟の和解による依頼者の経済的利益に対する謝金標準額(当時の東京弁護士会弁護士報酬規定に基づく)を算定すると865万6544円であるが、解決に長期間を要していること、依頼者が弁護士に説得されたこともあって応じた和解内容(H社の区画整理事業に対する協力条項の挿入および現状有姿返還)については、結局、和解成立後に数回の地権者会議を通しての自らの努力により従来の主張通り区画整理事業を施行することなく原状回復のうえでの賃貸土地の返還の目的を達したこと等諸般の事情を斟酌し、謝金額を800万円と算定した。

 

 

② 弁護士の説明義務違反が認められた裁判例(鹿児島地裁名瀬支部平成21年10月30日判決)

  • 債務整理を受任した弁護士が、事件を辞任するに当たっては、事前に事件処理の状況及びその結果、並びに辞任による不利益を依頼者に十分に説明することが一般的に期待されるにもかかわらず、それらの説明を怠ったとして、債権者から訴訟を提起されたことによって被った精神的損害等を内容とする依頼者からの損害賠償請求が認容された事例。
  • 債務整理を受任した公設事務所所長の弁護士が一方的に辞任通知を債権者に送付したため依頼者が債権者に突然訴訟を提起されて給料の差押えを受けた場合において、弁護士は説明義務に違反し依頼者に精神的苦痛を与えたとして、依頼者から弁護士に対してなされた慰謝料請求が認容された事例(過失相殺2割)。

 

③ 弁護士の委任契約に基づく債務不履行責任が認められた裁判例(東京地裁平成21年3月25日判決)

  • 民事訴訟の提起・追行を受任した弁護士が、提訴までに約7年間という通常必要な合理的期間を超えている場合には、特別な事情がないかぎり、依頼者に対して債務不履行責任を負う。
  • 弁護士が土地明渡請求訴訟の提起を受任してから、訴えを提起するまで約7年を経過している場合に、弁護士に債務不履行責任(慰謝料請求)が認められた事例。

 

【刑事事件】

① 詐欺事案で懲役3年の判決が言い渡された裁判例(大阪地方裁判所平成21年7月16日判決)

  • 著名な刑事弁護士であった被告人が、刑事事件の相談のため被告人のもとを訪れた被害者に対し、事件をうまく処理するために、被害者が管理している現金をしばらくの間被告人の下で預かり、確実に保管した上返還する旨の嘘を述べて、被害者から9,000万円をだまし取った詐欺の事案について、同現金は成功報酬の担保として受け取ったものであったとの弁護人の主張を認めず、懲役3年の判決が言い渡された事例。

 

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2015年3月28日(土)8:01
東京都目黒区中目黒公園にて桜を撮影
花言葉「こころの美しさ、精神の美」 

 

 

 

(8)相性

 

依頼者、相手方の弁護士、さらには裁判官との間で弁護士が求められる資質としては、これまで述べたようにたくさんのことがあるが、結局、一番大切なのは実は相性である。要するに、「馬が合う」ということだ。「馬が合う」とは、理知的な面だけではなく匂いや香りなど本能的な面でもある。「馬が合う」「一目惚れ」という関係性とは反対に、「癪に障る」「苛立つ」という関係性もある。「反りが合わない」ということだが、刀の反りが鞘に合わないという由来から、気心が合わないという意味でもある。どちらも、論理で説明できるものではなく、感情に支配されるものであるため、「馬が合う」ことは困難であるようにも思われる。

しかし、相性が合わない時でもそれを克服する方法がある。それは、包容力を発揮することである。さらにいえば、包容力が狭いほど、相手との相性も合わせづらくなるのではないだろうか。相手にどの程度の包容力を発揮すべきかについては、小生は相手の性格を見て判断することにしている。例えば、短気な人と接するときには、格別に包容力をもって接することを心がけている。そうでなければ、相手の態度を和ませることはできないであろう。

また、相性は、個人のもつ性質だけでなくその時の状況にも左右されることを心しておかなければならない。そのためにも、包容力が広いほど有利になる。つまりは、人格、識見、手腕、力量を磨くことは勿論のこと、どのような状況であっても対応できる幅を広げるためにも多芸・多趣味であり、それらを通して色々な人や世代と交流することが求められるのである

 

(9)その他

 

企業の女性に評価されない弁護士は、よい弁護士とはいえない。たとえば、企業の受付の女性に威張り散らしている弁護士などは論外であるが、もっと積極的な意味で、一般の商品開発やサービスにおいて女性の感性にマッチすることがヒットの条件とされるのと同様に、リーガルサービスも女性の感性に好まれる弁護士のほうが、経験則上、多くのお客様を獲得していると思う。女性は爽やかさ、楽しさを好み、それと同時に経済観念も発達していることが多い。こうした厳しい消費者の眼から選ばれた弁護士は、結果として優秀な弁護士であるのだろう。

また、直接、担当者以外の人に評価されない弁護士もよい弁護士とはいえないだろう。それはなぜだろうか。答えは、そういう場合、担当者にはおもねったりしながら、直接担当者でない人には横柄な態度になる人が多いからだ。

しかし、人の評価というものは、往々にして自分の知らないところでなされることが多い。例えば世間話のような場でもなされる。したがって、自分の評価を上げたいと思ったら、全ての人に感じよく接することが必要なのである

 

 

 

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2015年3月15日(日)7:00 東京都港区南麻布1丁目にて
アケボノアセビを撮影
花言葉:「犠牲」「献身」「清純な心」 

 

 

(5)本音を引き出す

本音を引き出すということは大変難しいことである。その手法として、小生は「裏を返す」ことを意識している。これは、逆の見方をする、あるいは本当の言葉(本音)を言うという意味であるが、弁護士にとって、お客様からこの本音を引き出すことは、問題解決を望ましい形で実現するうえで欠かせない。

そこで、いかにお客様から「裏を返す」言葉を引き出すかであるが、最も重要なことは弁護士とお客様の間で継続的な信頼関係を築くことである。初めてお客様に会う時にはお互い緊張しているため素顔を見せず、上辺のみの通り一遍のやりとりに終わり、お客様が本音を吐露することは少ないであろう。だが、2度3度と、心が打ち解けてきて少し本音が多くなるものである。即ち、関係を重ねるごとに親近感が増し、本音を打ち明けられるようになるものであるが、これは心理学においても提唱されている効果である。「単純接触効果」と呼ばれるが、何度も見たり聞いたり繰り返し接すると、次第に良い感情が起こるようになり好感度や印象が高まるというものである。

だから弁護士も、お客様から本音を引き出すためには繰り返し、少なくとも2度は会わなければならないのである。これは、弁護士として仕事をするうえで重要なことである。メールでのやり取りは「会った」ことにはならない。メールは上辺だけの付き合いだからである。

また、食事をすることも、打ち解けるためには有効な方法だろう。その際、お酒が入れば尚良い。リラックスして本音で語り合えるようになるからだ。

 

(6)説明責任

弁護士は、お客様から常に説明を求められるため、これに正確かつ的確に回答すべき責任がある。

この説明責任を果たすためには、十分な情報を持ち、その中から必要な情報を的確に選別し、分かり易く説明しなければならない。お客様にとっては、的確な回答が得られる弁護士こそ、信頼を寄せられる弁護士なのである。情報化社会においては特に、多くの情報の中からお客様にとって必要な情報を選び出し、過不足のない論理を構築し、分かり易く説明することのできる弁護士こそ、大衆の支持と信頼を集めることができるのである。説明責任は、企業経営にとってもコンプライアンスが叫ばれる中で重要な位置を占めるため、企業が「説明責任」を果たす場面において、企業の事情を理解している弁護士は大いに貢献できるであろう。

また、依頼者に報告書を出す、あるいは、依頼者になろうとする人に報告書を出す時には、人、物、金、という順序で報告を出すことが一番妥当である。つまり、何をおいても、担当者の人の問題、相手の人の問題、関係者の人の問題を論ずることが、一番解決への近道になるということである。

もちろん、案件の単純さや複雑さを書くことも大切だ。しかし、それ以前に人の問題を書くことである。そして、物の問題、すなわち事実関係をはっきりさせることである。その上でお金の問題も書くことである。報告書においては絶えずそれを意識していくことが重要である。

そして忘れがちなのは、時間との問題である。時は金なりと言うが、金の問題には、所要時間など時間の問題も報告すべきだということである(小生は、人、物、金だけではなくて、情報、信用、組織、規約、帳簿に関して触れることにしている)。

 

(7)アフターケア

「アフターケア」とは、相談案件や訴訟案件などが一定の解決をみたあと、その後滞りがないかを確認することである。滞りがあった場合には、担当弁護士は事情を熟知しているため、迅速な解決が期待できるという、新規の弁護士とは異なる大きなメリットがある。

弁護士が、滞りがあるかどうかを確認することでお客様のことを気に掛けているということがお客様に伝わる。即ち、アフターケアはお客様に関心を持ち続けていることを伝えるメッセージなのである。このメッセージによって、お客様は安堵するのである。そのことが、実はお客様に弁護士としての自分の名前を引き続き覚えて貰えるということに繋がる。アフターケアは、お客様との間で生まれたご縁を大切にし、関係を育てていくことであり、営業にとって欠かすことのできない要素である。

 

 

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※()内は花言葉
<上段>2015年1月28日(水)14:36 港区赤坂1丁目にて撮影
水仙(私のもとへ帰って)とプリムラ(永続する愛情)
<下段左>2015年1月28日(水)14:37 港区赤坂1丁目にて撮影
バラ(魅惑)
<下段右>2015年2月1日(日)7:38 渋谷区代々木5丁目にて撮影
ジャノメエリカ(博愛)

 

お客様は困っていること、分からないこと、気掛かりなこと、を必ず持ち合わせている。それらを聴いて、解を与える、方向性を提示するのも説明責任の一つである。誰しも完全無欠なことはないのであるから、不利益なことを早く話してもらい、そうすることで、防御・攻撃方法がより進化する、すなわちお客様にプラスになるということである。そして、それによってお客様が納得する、安堵する、ストレスが軽減する。これが、弁護士の仕事として大切なことである。

弁護士はお客様のために働かねばならない。しかし、顧客の立場だけを考えて弁護士は活動してはならない。弁護士は法的な立場から顧客の利益を考えるものである。即ち、弁護士はリーガルマインドがあってはじめて、弁護士たる仕事ができる。お客様のためにとは、「自分自身のリーガルマインドに沿って対処すること」である。

現代社会はリスクに満ちている。特に企業は、多くのリスクを抱えているのが必定で、これらの緻密な分析・検討なくしては経営が成り立たない。企業から依頼を受けた弁護士は、多かれ少なかれビジネス上の判断にも関わりを持たざるを得ない。しかし、リスクを考えて何事も違法と言いがちな弁護士が多い。リスクを取らない弁護士が多いということである。それはそれで、弁護士として存在する意味はあるが、お客様にとっては満足できない弁護士である。弁護士はリスクがあるのかを見極め、そのリスクを乗り越える工夫をしなければならないということである。それは、取れるリスクと取れないリスクを分別するということでもある。取れるリスクとは、状況を変化させて今あるリスクを失くすために、新しい条件を設定するなり、リカバリーショットを打つなりすることである。お客様は法的トラブルをかかえているが、弁護士がリスクを回避することのみに汲々としていては、お客様の発展はない。リスクを取ってこそ今以上に有利な立場になるからである。これを取らないということは、クライアントの満足を得られない。弁護士に依頼するからには今以上に優位に立ちたいというのがお客様の心理だから、リスクを取らない弁護士はそれに応えられないということである。故渡辺美智雄氏は官僚を前に「大事(だいじ)は『七分の道理、三分の無理』で成る。君たちは道理を徹底的に追求しろ」と檄を飛ばした。弁護士も、無理と思える現実のなかにも価値観の変容を察知する鋭敏な感覚を磨き、お客様のためにリスクを乗り越える気概を持つべきである。

「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるが、大きな危険を冒すほど大きな利益が期待できるという意味である。「ノーリスク・ノーリターン」では、競争には勝てない。なぜなら、リスクのない競争はあり得ないので、リスクをとらないのであればそもそも競争の場に上がってすらいない。競争社会の中で生き残っていこうと考えるのであれば、リスクを冒すのは、いわば当然のことだ。例えば、訴訟において敗訴しそうな時に依頼者に和解を促すのも、それに当たる。そして、依頼者が和解の勧めを受けなかったとしても、最終的には弁護士の信用を強めることとなるだろう。リスクを冒すときには、苦渋の決断を迫られることもあるが、闘いなくして進歩はあり得ず、競争社会で生き残ることもできない。ところが、今の若い世代は、ノーリスクを志向しているように思えてならない。昨今の大学生の就職活動の状況にも反映されているように思う。ノーリスク・ノーリターンでは、進歩も展望もないのであるが、ノーリスクを望めば、その進歩も展望もないというリスクがあることのパラドックスに気付いていないのである。

 

 

 

 

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