存続こそ企業の社会的責任の最近のブログ記事

 

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2012年6月26日(火)朝7:10
東京都千代田区北の丸公園にてガーデニアを撮影
花言葉:「わたしは幸せもの」 

 

 

(前回6月22日[金]付記事「存続こそ企業の社会的責任(前半)」の続きです。前回の記事からご覧ください。)

 

<当事務所報「Management Law Letter 2009新緑号」
(2009年4月発行)の巻頭言よりほぼそのまま転載>

 

 

【存続こそ企業の社会的責任】

では、企業の最大の社会的責任とは何か。それは極めて単純であるが、前述のとおり「企業の存続を図る」ことにこそ根本があると言ってよい。

近時、企業の社会的責任論・社会貢献論において華やかに取り上げられる環境問題や企業倫理の問題などよりも、まず企業に期待される根本は、存続すること自体なのである。企業は、存続できなければ営利活動・慈善活動等いかなる活動もなし得ないばかりか、雇用の場たり得なくなってしまう。

特に、現在のような出口の見えない長びく不況のときには、企業の存続を維持し、社会的存在としての責務を果たし続けるために、生き残りと再興を掛けてリストラ・雇用調整・賃金ダウン等を断行することこそが、最も重要な経営課題として浮上する。経営が悪化した企業がリストラを行なうとき、あたかも人員削減が非道な行為であり社会的責任に反するかのように報道する向きもあるが、それは偏った見方である。企業が存続しなければ、より多くの雇用の場が喪失されてしまうことに気付かなければならない。

業績の悪化した企業はほとんどの場合労働力の過剰に陥っているので、原則として人員削減の方法でしか生き残ることはできない。迅速で果敢なリストラ・人員削減策の実行こそが、企業の存続を保障するといってよいだろう。働く者に冷たい言辞に聞こえるかもしれないが、実はこれが厳然たる事実であることを自覚して経営者はこの難局に取り組まなければ、企業の存続という社会的責任を果たせなくなる。企業の存続が雇用の維持に繋がり、雇用の維持こそが働く者の生計を支え、人間の尊厳を保持することに資することを経営者は改めて肝に銘じなければならない。

 

 

【「大義名分」の重要性】

私は1963年に弁護士になって間もなくの頃から企業のリストラ問題に取り組んできており、正確な数は不明だが既に1000件以上担当したと言う者もいる。こうした中で、私が必要に迫られ独自に編み出した知恵と工夫の産物が、リストラにあたっての「大義名分」を確立するという手法である。

裁判所は、整理解雇が解雇権の濫用とならないか判断する基準のひとつとして「人員削減の必要性」を挙げるが、私が考案した「大義名分」は、必要性のみならず企業の存続と再興をも重視する点において一段と質が高く、オリジナリティがあると言ってよいだろう。なぜなら、「必要性」は単に現下の人員削減の必要性を示せば済むが、「大義名分」とは、リストラをしても従業員らの士気を極力損なわないよう、具体的に企業の再生・再興を図るにはリストラしかないことを強調し、そのうえで未来志向の理念を確立することだからである。

そこで、「大義名分書」の作成にあたっては、リストラの断行が経営者としての義務であるという強い意識を持ちながら、人員削減の必要性をデジタルな資料により説得的に論じたうえで、加えて企業が「未来に生きる」ための目的意識をも明示し、リストラによって社会的ニーズに応える企業として存続・再興し得ることを明らかすることに重点を置く。このように、「大義名分」はリストラが企業の未来を切り拓く手法であることを明らかにし、大方の従業員の納得を得る手続を進めることであるから、「大義名分」を構築できない経営者では企業再建は不可能と断じても過言ではない。

理想を言えば、企業の将来を考えるこうした作業は経営悪化に陥って初めて行うのではなく、折に触れ経営に関する情報公開を行い、従業員の意識の中に埋め込んでおく必要がある。具体的には、事業の発展のため何をすべきか、仕事の仕方を変えることで売上げを伸ばせるのではないか、自らの技能・技術を磨くために何をすべきか等々について常に上司と部下がコミュニケーションを取り続ける手法を編み出すのである。

明けない夜はない。朝が来ると信じるからこそ、我々は苦境を切り抜けるための努力ができる。経営者は、夜の深さの中にこそ朝日のきらめきの予兆があることを、自らの言葉で語れるように日頃から心掛けなければならないのである。

 

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2012年6月17日(日)12:35
東京都千代田区 千鳥ヶ淵交差点付近にて紫陽花を撮影

 

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<当事務所報「Management Law Letter 2009新緑号」
(2009年4月発行)の巻頭言よりほぼそのまま転載>

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【企業という存在】

 

企業とは、物の生産・商品の販売・サービスの提供等によって利益を上げることを目的とする組織であり、消費者・需要者は商品やサービスに満足すれば契約に基づいて企業等に対価を支払う。こうした一連の企業活動は日常的なことであり、会社法や商法が規定されていることからも所与の事実と認識されているだろうが、経済の担い手としての企業の存在が社会で許されている根本的な所以について、最高裁は憲法との関係で次のように述べている。

 

すなわち、「会社は…自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実存なのである」「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである」(「八幡製鉄事件」最大判昭45・6・24)とし、法人たる私企業も憲法上の権利義務の主体であることを明言し、さらに「憲法は…22条、29条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し…」(「三菱樹脂本採用拒否事件」最大判昭48・12・12)とし、企業の経済活動が憲法上保障されていることを指摘しているのである。

 

 

【企業の存続】

 

企業一般は、おしなべて多数の人間によって構成される協働体であり、大きな組織である。そのため、企業には株主・取引先・消費者のみならず労働者等の多数の利害関係人がいるのであり、企業は社会において単なる個人を超えた存在であって、私的存在とは言えないほどの意義を持っている(鈴木竹雄・竹内昭夫著『会社法』(有斐閣、1982年刊)参照)。そして、今では全就業者に占める雇用者の割合は86.5%に達し(総務省2009年1月発表統計※)、その比率が30年連続で上昇し続けている“雇用社会”であることからすれば、企業が存続し続けること自体が雇用の場の確保となり、人心を安定させることにもつながると言えるのである。

※なお、総務省2012年1月発表統計では、全就業者に占める雇用者の割合は87.7%にまで達している(岩手県、宮城県及び福島県を除く全国・9地域別結果)。

 

【企業の社会的責任】

 

このように、企業は憲法上も社会的実存として存在が認められ、また実際上も人心および社会の安定のために存続することが大いに期待されている。

そして、企業は社会的実存であるがゆえに社会的責任を負う。なぜなら、個人は社会の一員として当然に社会的な責任を負うし、憲法の条文上も、憲法で保障されている自由および権利は「濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」(憲法12条)と規定していることから、多数の人間の協働体として活動している法人たる企業となれば大組織であり、社会に対する影響力も大きく、個人よりも格段大きな社会的責任を負うからである。ましてや、企業には経営の自由があるだけに、その責任は一層重大であり、「公共の福祉」についてもより真剣に考えなければならないことになる。

これについてはドラッカーも、「企業と社会は、企業の経営の健全性について共通の利害を有する。企業の経営の失敗は国民経済を害し、ひいては社会の安定を害する。社会は、優れた経営陣だけが実現することのできる価格政策、雇用、人事、マネジメントを必要とする」とし、企業が社会の安定と発展にいかに大きな役割を担っているか強く指摘している(『企業とは何か』第10章参照)。

 

(次回に続く)

 

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