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「仕事人のための接待学」第8回 高井伸夫

ゲストの居心地配慮

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年6月1日掲載

 

 女性を接待するくらい難しいものはない。なんといっても、ゲストである女性に居心地の悪い思いをさせないことが必要である。

 女性の接待は、相手を褒(ほ)めて相手の気分を良くさせるような雰囲気があったほうがいいだろう。相手に苦言を呈したり、何らかの関係がある事項について批評するような言葉は禁句だ。繁盛している店の大将や女将(おかみ)に聞けば、その営業の秘けつは女性に好かれることだと必ず答える。

 実際の接待では、まず、メンバーの組み合わせが重要である。一対一での夜の席は気まずい。三、四人となれば、お互いに気楽である。時間帯も、夕食時より昼食時の方がよいだろう。昼食時の方が仕事の一部というイメージがあり、女性に好ましい印象を与えるからである。

 やむを得ず夜の会食となった場合も、会社の終わる時間、会社からの距離、自宅への道程といったことを念頭に置く必要がある。

 また、お酒が入ると仕事の話をしにくい雰囲気になりがちである。仕事の話がある場合は、食事前の三十分くらいをそれにあてることが望ましい。店の選び方も、靴を脱ぐ場所を避けるなど、配慮が必要だ。

 女性だけ、または男性だけに通じるような話題は避けた方がよい。また、女性の身上について質問するのは、セクハラとして嫌われる可能性さえある。

 例えば、男性がよく用いる「お若いですね」という言葉があるが、それは決して褒め言葉ではない。「お若いですね」と言われると「いいえ、若作りなんですよ」と答える女性が多い。本当に若い人には言わない言葉なのだということを分かっていない男性が実は多いのである。

 砕けた話になる場だからこそ、話題の選択には心しなければならない。こうした場面ではやはり、企業の問題、公の問題が無難だ。

 女性の接待にあたって用意する効果的なプレゼントとしては、花、ワイン、ケーキなどがある。例えば花を贈る時にメッセージを添えるなど、いずれもセンスがあってお洒落(しゃれ)なものである。

 しかし、女性への接待は男性以上に効果があるものではない。女性は正直なのである。このスピードの時代に接待してもらって、単におだてられてよい気持ちになるだけに時間を費やす女性は少なくなった。

 女性にとって意味ある接待は用件があってのものだという。単に「飲んで・食べて・騒いで」という接待は好まれず、違和感を抱かれるケースすら多い。

 

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