「AIと私たち」

第1回 AIの歴史~フィクションから現実へ~

 

今やすっかり日常に浸透した「AI(人工知能)」。街ですれ違う人がごく自然に「AI」と口にしているのを耳にする。

私が本格的に(といっても素人の域を出ないが)AIについて勉強を始めたのは2015年の春頃。研究者を除けば日本でAIに関心を持つ人間は限られていた。しかしそれでも日々、新聞各紙面の後ろの方に小さな関連記事を見つけられており、「AI時代」の到来を感じた私は、より早く、多くの方にAIを身近に感じ、考えていただく機会となることを願い、各所のお力を借りながら幾度もセミナーを開催し、自らの論稿や著作でも取り上げてきた。

多くの人々にとってAIが別世界のことではなくなった今、ひとまずのものとして、自らの学んだ足跡を発信していく。

 

2016年3月、我が国におけるAIの一般認知度が急激に上がった。Google DeepMindのAI「アルファ碁」が韓国のトッププロ棋士・李世乭(イ・セドル)を打ち破り、「AIが人間を超えた」とメディアが連日大々的に取り上げたためである。「AIとは」という特集が各所で組まれ、家電、スマートフォン、会計・経理ソフト、コミュニケーションロボットなど、実はすでにごく身近に浸透していたAIが、ついに日の目を浴びることとなった。

 

「コンピューター」「ロボット」「AI」の三者、特に昨今「ロボット」と「AI」は混同されがちだが、コンピューターは人間の操作を受けて処理を行う電子計算機にすぎない。代表例がパソコンだ。このコンピューターに人間同様の知能を実現させたものがAI(artificial intelligence)である。これに対し、ロボットとは、人間がコンピューターを操作して行うような処理を、自身で自動的に実行できる機械である。簡単にいえば、人間の心や頭脳(ソフトウェア)を機械化したコンピューターがAI、コンピューターを操作する身体(ハードウェア)を機械化したものがロボットと言えよう。

今の日本人の多くは幼少期から鉄腕アトム(手塚治虫)やドラえもん(藤子・F・不二雄)といった「心を持ち人間を助けるロボット」と共に育った。「ロボット」と聞けば彼らを思い浮かべる人が少なくないはずだ。では現実のロボットはどうであろうか。一昔前までは製造業における産業用ロボットが主流であり、日本は長年「ロボット大国」としてその技術力を世界に誇ってきた。しかし、昨今の高齢化や人口減少に伴い、医療や介護、サービス業といった非製造業でのロボット需要が高まり、搬送作業や介護の負担を減らす装着型ロボット、コミュニケーション型ロボットなどその種類は多岐にわたるようになった。それはAIの発達と共にあったと言っても過言ではない。AIとロボットが組み合わさったことで、フィクションの中のロボットが次々と現実化しているのが今の世界である。

 

さて、AIの歴史は意外にも長い。古代の神話や伝説などに起源し、中世の錬金術やホムンクルス、ゴーレムを経て、19世紀には人造人間や思考機械というアイデアに発展。メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」やカレル・チャペックの戯曲「R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)」が発表された。

AIが「科学」として研究され始めたのは1940年代。以来、AI研究はブームと「冬」の繰り返しだった。1956年に学問分野として確立された際は第1次AIブームが巻き起こったものの、高まりすぎた期待に応えられず、1970年代には一転「冬の時代」となり、批判と資金縮小に晒された。1980年代になると第2次AIブームが到来、日本政府や企業も500億円以上の資金をAI研究に注ぎ込んだが、80年代末には再び投資が撤収された。

こうした中、1997年に米IBMが開発したスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が、当時のチェスの世界チャンピオンに勝利した。これが現在の第3次AIブームのきっかけとなり、世界は本格的なAI時代へと向かうのである。

 

まとめ

・AIは人間の心と頭脳を機械化したコンピューター

・AIとロボットの融合がフィクションを現実化

・ブームと冬を繰り返し、ついに「AI時代」へ

 

(第1回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

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