「仕事人のための接待学」第4回1998年5月4日日本経済新聞(夕刊)掲載

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「仕事人のための接待学」第4回 高井伸夫

 「飲食」の本質とは

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年5月4日掲載

 

結婚披露宴では、一通りのあいさつと乾杯が済んだ後は宴席となる。これには一体、どんな意味があるのだろうか。

結婚は三三九度の杯で始まるが、それは同じ杯でお酒を酌み交わし、終生を誓い合うという象徴的な儀式だ。披露宴も招かれた客が待合室でお茶を飲んだり、アルコール類を飲んだりすることから始まる。お茶を飲むことがどんな意味を持っているのか。

聖書の有名な場面に「最後の晩餐(ばんさん)」がある。キリストと十二人の弟子たちが、共にワインを飲み、共に食する。ここでもまた、飲食の場を信頼関係を確認する儀式としており、飲食を共にすることが人間関係、信頼関係の基礎であることを暗示しているのである。

古(いにしえ)においては、毒味をして、同じものを飲んで、お互いに信頼し合う関係を確認していたのであろう。

中国の宴席では、まず、主・客の杯になみなみと酒が満たされ、主が底の一滴まで飲み干し、再び注がれた酒を一同で「乾杯」し、これの繰り返しで宴いよいよたけなわとなるが、これも「この酒には毒など入っておりません。安心して召上がり下さい」といった意味がこめられていると思われる。

このような接待の意味するところからすると、例えばゴルフ接待の場合、ゴルフだけを共にして別れたのでは、接待の意味が半減してしまう。ゴルフの後、飲食を共にすることで、感動も接待の効果も倍加し、心を許し合うことに近付く。感動を共にする。すなわち共感こそが接待の本当の目的であると言ってよい。

さて、決定的な共感・共振を得るには、人間味という醍醐味(だいごみ)を味わうこと、味わわせることが必要である。それは自分をさらけだしてより本音で語り合うということであろう。そして談笑するに至ることが必要だ。それには接待を予習してかからなければならない。

接待に先立ち、相手方企業または本人の業績・経歴・当面の関心事・趣味・嗜好(しこう)について情報を仕入れ、接待の場を盛り上げる焦点合わせをすることがまず肝要である。

統一ある刺激は、数少なくとも、散漫な数多い刺激に勝るという原理原則が接待でも機能する。この予習の成果をTPO、アドリブで生かしていけば、より多くの本当の感動を相手に与えることができる。接待の場においても「理動」「智動」ではなく「感動」という熟語あるのみであることを忘れてはならない。

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