平成29年11月9日 第2回中小企業と企業統治セミナー 開催報告①

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平成29年11月9日 第2回中小企業と企業統治セミナー 開催報告①

 

はじめに

 

週刊『労働新聞』において連載された「経営・人事担当者向け 中小の企業統治論(全11回)」を契機として「中小企業と企業統治」と題したセミナーを昨年6月に開催したことは、以前本ブログでもご報告いたしましたが(http://www.law-pro.jp/weblog/2017/12/post-316.html)、同セミナーがご好評をいただきましたため、去る11月9日(木)に同テーマで第2回目のセミナーを開催いたしました。

 

第1回目と同様、今回も連載の執筆陣にご出向いただき、参加者の皆様から高い評価を頂戴しましたので、本ブログで2回に亘りセミナーの概要をご報告いたします。

 

企業統治の問題は、東芝事件以降、大企業を中心に盛んに論じられていますが、間もなく中小企業にとっても他人事ではなくなるでしょう。

日本の人口は100年後には現在の3分の1に減少すると言われています。これに伴い、当然、企業の数も減っていくことが予想されますが、そこで企業統治の行き届いていない企業があれば、企業の規模は大きくなくてもその存在は目に付くようになり、ひいては日本企業全体の足を引っ張るような事態に陥ることが懸念されるからです。

 

以上のように、企業統治は、日本の中小企業の未来にとって大変重要なテーマですので、

本稿をご覧いただいた皆様にご関心をお持ちいただけるようになれば幸いでございます。

 

平成30年1月 会長弁護士 高井 伸夫

 

 

【講演概要】

〈第1部〉

「外国から見た日本の中小企業と企業統治」

(講師:一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 ブルース・アロンソン 氏)

 

多くのデータを元に、前半は、国際的な観点から見た中小企業の企業統治の総論、後半には日本の中小企業に焦点を絞ったお話をして頂きました。

 

1 中小企業の企業統治の総論

 

(1)なぜ中小企業のコーポレート・ガバナンスの議論はほとんどされていないのか?~4つの理由~

①中小企業の多様性・日本には共通の定義が存在しない

②大企業のような複雑なコーポレート・ガバナンス体制を持つ必要性はあるのかという議論

③コーポレート・ガバナンスの法律などは大企業向け

④コーポレート・ガバナンスの議論はオーナー企業に適用しにくい

 

(2)中小企業における企業統治の重要性

 

・大企業の場合は監視制度の強化

・中小企業の場合は、営業効率やパフォーマンスの改善

・中小企業でも、従業員、債権者、顧客などの様々な利害関係者(ステークホルダー)の利害の調整が必要

・中小企業の事業の拡大・複雑化

 

(3)上場企業と非公開の中小企業の企業統治

 

(4)中小企業にとってハードルが高い企業統治の環境

 

・上場企業のコーポレート・ガバナンスの基準が厳しくなっている

・中小企業はそうした基準の直接適用がなく、またそれに従おうとしない

・一方で、社外取締役の導入などの新しいベストプラクティスへの期待は?

・ヨーロッパでは中小企業向けの簡単なコーポレート・ガバナンスコードがあるが、日米には存在しない

 

(5)中小企業における主要な課題

 

・組織的経営・・・

一企業の意思決定構造・過程を確実に規則化すること(個々の事案について異なる対応をしない) 例:取締役会の機能化、正常化

・統治構造・過程の進化

・企業の事業環境変更に伴う企業の統治構造・過程の進化は自然に起こることではない

・ニーズに合わせて適切な統治構造・過程を維持するために、事前に計画を立てておくべき

 

2 日本の中小企業における企業統治向上への挑戦

 

(1)日本の中小企業の概要と特徴

 

・中小企業の数は減少している

・大企業に比べ生産性、投資、売り上げ、収益性などが低いが、

・一部(全体の10%-30%程度)は大企業の平均を上回る

・日本政府の支援もある

・ベンチャー企業の経済的な影響が小さい

・過半数は大企業の下請け

・開業は少ないが、中小企業は長く存続する

 

(2)急速に変化する環境

 

・日本の国内市場の収縮、日本社会の高齢化、従業員の確保が困難で終身雇用制度も維持しにくい状態になっていること、経営者の高齢化、下請け企業の割合の低下、グローバル化、技術の進歩など

 

(3)変化に対応するために、どのような企業統治を考えるべきか?

 

・「守り」に相当する監視に関する議論(不祥事を防ぐための監視制度〔内部統制〕)が多いが、より戦略的、長期的な意思決定を行う「攻め」の側面の方が実は重要

・すなわち、企業の構想、過程(意思決定)についてルール化すること(組織的経営)が重要

・取締役会の機能化・正常化がポイント

・大企業より高い業績をあげている一部の中小企業は、そうした組織的経営を持っていることが多い

・取締役会のない中小企業でも、計画や議論を行うための非公式な委員会設置が考えられる

 

⇒ 特定の個人(経営者)が事業環境の複雑かつ急速な変化に対応しにくい時代になっているが(例:海外の貿易や投資を維持・拡大するために必要な情報、人材、組織を持っているか?)、事前計画によって事業のチャンスやリスクをより明確に識別でき、事業拡大や持続的な成長に必要なリスクを取るだけの自信が生まれる

 

(4)海外貿易および投資とそのリスク

 

(5)経営後継者の問題

 

・経営者の高齢化(1995年では47歳が最多で、2015年では66歳)

・若い経営者の方が適切なリスク・テークに積極的

 

(6)企業統治と従業員(およびその他の関係者)の一体性

 

・中小企業の組織的経営は重要であるが、結局最も重要なのは「人」(従業員及び経営者)

・コーポレート・ガバナンス向上を積極的に使う(経営者とほかのステークホルダーの一体性や、従業員にモチベーションを与えること)

(例:情報開示の改善・・・一方的義務ではない情報開示を含め、従業員やその他のステークホルダーのみに開示するようにする)

 

(7)経営者の重要性

 

・企業のキーパーソンは、最終的には経営者

・取締役会が効果的に機能するかどうかは経営者次第

・一人で行う意思決定より、組織的経営構造の中での意思決定の方が、長期的な成功を導くことになる

・中小企業のコーポレート・ガバナンスの最大のポイントは経営者である

 

以上

 

(第2回企業統治セミナー開催報告②へ続く)

 

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