2018年3月アーカイブ

第3回 初めての司会

 

 

こんにちは。朝倉千恵子です。

 

ある年、高井伸夫先生から記念行事の司会依頼をいただきました。

 

その舞台は、毎年恒例で年末に、

高井・岡芹法律事務所が主催している大事なイベントです。

 

当日、会場には400名近い方々が集まっていました。

 

その時は、41回目の年末講演会。

ということは、41年間続けているということです。

 

参加者のほとんどが、60歳を超えている、人生の大先輩方ばかり。

有名企業の顧問、相談役、現役社長様がたくさんご参加されていました。

 

その時私は50歳。

司会を務めるのは初めてのことでした。

 

自社主催とは全く違うプレッシャーを感じ、緊張して数日間眠れませんでした。

 

「選んでくださった高井先生の期待に応えなくては、恩返しをしなくては。」

などと、主役ではないにも関わらず、会場の誰よりも緊張していました。

 

人前に立って話をする仕事をしているにも関わらず、

実は私は、今も昔も、とても緊張する性質で、ものすごくビビりなのです。

小心者で臆病だからこそ、それを見せないように必死に努力してきました。

 

結婚式のスピーチも胃が痛くなるほど緊張します。

当然ながら、初司会もとてもドキドキしていました。

 

恐怖で逃げ出したくなる自分を奮い立たせながら、

「未熟であっても今できる最善を尽くすのだ」と、持てる全てをぶつける覚悟で挑みました。

 

その一回はその場のみ、やり直しなどできない。

 

だからこそ一回一回が真剣勝負。

真剣勝負で全力投球することこそが、

司会を任せてくださった高井先生の想いに応える方法だと思い取り組みました。

 

私の全力投球が伝わったのか、会場にいらっしゃる方々からは

 

「司会、いいね。元気だね。」と言っていただきました。

 

正直に申し上げると、決して上手な司会ができたとは言えませんでした。

とはいえ全力で取り組むことで、こうしてお褒めの言葉をいただくことができ、

後に、たくさんの課題に気付くこともできました。

 

もっと抑揚を出して

もっと感情を込めて

もっとアドリブを入れて・・・

 

あれやこれもできたのではと後悔や反省も尽きませんが、

未来のための改善点が見つかったことも含めて、やはりいい経験ができたと思います。

 

人間は最初から完璧などない

経験を積み、反省し、繰り返し練習を重ねだんだんうまくなっていく。

 

場数を踏み、くり返し実践することの重要性を、身をもって学んだ一日でした。

 

実は最初に、この司会のお話が来たとき、私はお断りしようと思っていました。

高井先生には自分の得意分野で恩返しがしたいと申し出たのです。

 

「司会はプロの人がいます。私は未経験であり、

もっともっと上手なプロの司会者に任せたほうがいいのでは・・・」と。

 

ところが、高井先生からは、

「司会は朝倉さんにお任せします。

今までもプロの司会を依頼したことはありません」とのお答えが。

 

そのとき初めて分かりました。

 

先生は、プロの司会者を探しているわけではない。

私を皆に紹介しようと考えてくださっているんだ。

 

きっと、私にその役割を任せることで、顧問先の方々に

こんな人もいるんだとTアップするきっかけを作ってくださろうとしているんだ、

と気づきました。

 

私の予想は的中しました。

 

当日、高井先生は体調が優れない中、

講演会の最初から最後まで最前列でご参加されていました。

 

主催者を代表とする挨拶では、立ちっぱなしで30分以上もお話をなさっており、

会場の全員がビックリするほどの元気なお姿を見せてくださいました。

 

実はこの時、進行時間を大幅に超え、

第二部の開始時間もゆうに過ぎていました。

 

そんな中、先生は、

「事務所のPRもしなきゃね・・・」

とおっしゃいながら、最後に私のことを皆の前で語ってくださいました。

 

時間も押しており、きっと司会までの紹介はないと思っていました。

にも関わらず、先生は

「今回司会をお引き受けくださった朝倉さんは・・・」と話始め、

 

「たゆまぬ努力とチャレンジの人。

かの有名な地獄の特訓でトップの成績を上げた営業の天才。

 

創設8年の会社ではあるが、企業研修のリピートはこのご時世になんと95%。

この実績からもいかに満足度の高いセミナーを提供しているのかが

おわかりいただけると思います。

 

女性限定の「トップセールスレディ育成塾」も行っており、

その受講生は1400名を超えている。

 

どのような事業体であろうと、販売即経営の姿勢が大事。

 

ぜひ、社員教育で悩まれている方は、

株式会社新規開拓に相談されてみてはいかがでしょうか?」

と、しっかりPRしてくださいました。

 

私は、その時

高井先生との出逢いから今日までを振り返り、

本当にありがたいな・・・と心底思いました。

 

「お宅の社員は無能・・・」とまで言い放たれた方が、

それから6、7年が経ち、

弁護士の先生方に「新規開拓の社員の方々から意見を聞きなさい、学びなさい」と

言ってくださるようになりました。

 

胸が詰まりそうになりました。

 

高井先生は、確実に成長したわが社の社員を認めてくださっている。

努力を認めてくださっている。

 

とても嬉しいお言葉でした。

 

苦手意識のあった司会にチャレンジする機会を頂いたことで、

貴重な出逢いをたくさんいただくことができ、ビジネスチャンスも生まれました。

 

まさに、「向き不向きより前向き」!

私が信条としていることを実践できた機会でした。

 

そして、もう一つ。

講演会が始まる前にご挨拶にいった際、先生は一言、こう仰いました。

「謙虚にね・・・」

 

高井先生のこの一言があったからこそ、

この日頂いたたくさんの貴重な出逢いを、

ご縁としてつなげることができたのかもしれません。

 

驕らず、謙虚に。

 

今も、そしてきっとこれから先もずっと、私の胸に深くしみ込んでいるお言葉です。

 

株式会社新規開拓
代表取締役社長 朝倉千恵子

 

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平成29年11月9日 第2回中小企業と企業統治セミナー 開催報告①

 

はじめに

 

週刊『労働新聞』において連載された「経営・人事担当者向け 中小の企業統治論(全11回)」を契機として「中小企業と企業統治」と題したセミナーを昨年6月に開催したことは、以前本ブログでもご報告いたしましたが(http://www.law-pro.jp/weblog/2017/12/post-316.html)、同セミナーがご好評をいただきましたため、去る11月9日(木)に同テーマで第2回目のセミナーを開催いたしました。

 

第1回目と同様、今回も連載の執筆陣にご出向いただき、参加者の皆様から高い評価を頂戴しましたので、本ブログで2回に亘りセミナーの概要をご報告いたします。

 

企業統治の問題は、東芝事件以降、大企業を中心に盛んに論じられていますが、間もなく中小企業にとっても他人事ではなくなるでしょう。

日本の人口は100年後には現在の3分の1に減少すると言われています。これに伴い、当然、企業の数も減っていくことが予想されますが、そこで企業統治の行き届いていない企業があれば、企業の規模は大きくなくてもその存在は目に付くようになり、ひいては日本企業全体の足を引っ張るような事態に陥ることが懸念されるからです。

 

以上のように、企業統治は、日本の中小企業の未来にとって大変重要なテーマですので、

本稿をご覧いただいた皆様にご関心をお持ちいただけるようになれば幸いでございます。

 

平成30年1月 会長弁護士 高井 伸夫

 

 

【講演概要】

〈第1部〉

「外国から見た日本の中小企業と企業統治」

(講師:一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 ブルース・アロンソン 氏)

 

多くのデータを元に、前半は、国際的な観点から見た中小企業の企業統治の総論、後半には日本の中小企業に焦点を絞ったお話をして頂きました。

 

1 中小企業の企業統治の総論

 

(1)なぜ中小企業のコーポレート・ガバナンスの議論はほとんどされていないのか?~4つの理由~

①中小企業の多様性・日本には共通の定義が存在しない

②大企業のような複雑なコーポレート・ガバナンス体制を持つ必要性はあるのかという議論

③コーポレート・ガバナンスの法律などは大企業向け

④コーポレート・ガバナンスの議論はオーナー企業に適用しにくい

 

(2)中小企業における企業統治の重要性

 

・大企業の場合は監視制度の強化

・中小企業の場合は、営業効率やパフォーマンスの改善

・中小企業でも、従業員、債権者、顧客などの様々な利害関係者(ステークホルダー)の利害の調整が必要

・中小企業の事業の拡大・複雑化

 

(3)上場企業と非公開の中小企業の企業統治

 

(4)中小企業にとってハードルが高い企業統治の環境

 

・上場企業のコーポレート・ガバナンスの基準が厳しくなっている

・中小企業はそうした基準の直接適用がなく、またそれに従おうとしない

・一方で、社外取締役の導入などの新しいベストプラクティスへの期待は?

・ヨーロッパでは中小企業向けの簡単なコーポレート・ガバナンスコードがあるが、日米には存在しない

 

(5)中小企業における主要な課題

 

・組織的経営・・・

一企業の意思決定構造・過程を確実に規則化すること(個々の事案について異なる対応をしない) 例:取締役会の機能化、正常化

・統治構造・過程の進化

・企業の事業環境変更に伴う企業の統治構造・過程の進化は自然に起こることではない

・ニーズに合わせて適切な統治構造・過程を維持するために、事前に計画を立てておくべき

 

2 日本の中小企業における企業統治向上への挑戦

 

(1)日本の中小企業の概要と特徴

 

・中小企業の数は減少している

・大企業に比べ生産性、投資、売り上げ、収益性などが低いが、

・一部(全体の10%-30%程度)は大企業の平均を上回る

・日本政府の支援もある

・ベンチャー企業の経済的な影響が小さい

・過半数は大企業の下請け

・開業は少ないが、中小企業は長く存続する

 

(2)急速に変化する環境

 

・日本の国内市場の収縮、日本社会の高齢化、従業員の確保が困難で終身雇用制度も維持しにくい状態になっていること、経営者の高齢化、下請け企業の割合の低下、グローバル化、技術の進歩など

 

(3)変化に対応するために、どのような企業統治を考えるべきか?

 

・「守り」に相当する監視に関する議論(不祥事を防ぐための監視制度〔内部統制〕)が多いが、より戦略的、長期的な意思決定を行う「攻め」の側面の方が実は重要

・すなわち、企業の構想、過程(意思決定)についてルール化すること(組織的経営)が重要

・取締役会の機能化・正常化がポイント

・大企業より高い業績をあげている一部の中小企業は、そうした組織的経営を持っていることが多い

・取締役会のない中小企業でも、計画や議論を行うための非公式な委員会設置が考えられる

 

⇒ 特定の個人(経営者)が事業環境の複雑かつ急速な変化に対応しにくい時代になっているが(例:海外の貿易や投資を維持・拡大するために必要な情報、人材、組織を持っているか?)、事前計画によって事業のチャンスやリスクをより明確に識別でき、事業拡大や持続的な成長に必要なリスクを取るだけの自信が生まれる

 

(4)海外貿易および投資とそのリスク

 

(5)経営後継者の問題

 

・経営者の高齢化(1995年では47歳が最多で、2015年では66歳)

・若い経営者の方が適切なリスク・テークに積極的

 

(6)企業統治と従業員(およびその他の関係者)の一体性

 

・中小企業の組織的経営は重要であるが、結局最も重要なのは「人」(従業員及び経営者)

・コーポレート・ガバナンス向上を積極的に使う(経営者とほかのステークホルダーの一体性や、従業員にモチベーションを与えること)

(例:情報開示の改善・・・一方的義務ではない情報開示を含め、従業員やその他のステークホルダーのみに開示するようにする)

 

(7)経営者の重要性

 

・企業のキーパーソンは、最終的には経営者

・取締役会が効果的に機能するかどうかは経営者次第

・一人で行う意思決定より、組織的経営構造の中での意思決定の方が、長期的な成功を導くことになる

・中小企業のコーポレート・ガバナンスの最大のポイントは経営者である

 

以上

 

(第2回企業統治セミナー開催報告②へ続く)

 

 

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  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第33回目です。
  • 第33回目は、NPO法人信州まちづくり研究会 副理事長・事務局安江高亮様です。

 


 

■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第33回)■ ■ ■ 

NPO法人信州まちづくり研究会
副理事長・事務局  安江 高亮 様 
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[NPO法人信州まちづくり研究会 副理事長・事務局

安江高亮様 プロフィール]

1962(昭和37)年、長野工業高等学校土木科卒業。父 の建設会社 三矢工業株式会社に入社。1984(昭和 59)年、長野県北佐久郡立科町の姉妹都市オレゴン市 を代表団と共に訪問。ポートランド市とオレゴン市の“まちづ くり”にショックを受ける。平成元年に父より代表取締役社 長を引き継ぐ。

1990(平成2)年、ニューヴィレッジプラン (新しい暮らしの提案)を発表し、経営の主目標にすることを 宣言。「オレゴン市との友好町民の会」結成。パートナーシ ャフト経営研究会に入会し、篠田雄二郎教授と大須賀発蔵師の指導を受けドイツに研修訪問。1992(平成4年)、“まちづく り”開発第1号フォレストヒルズ牟礼(むれ)発売。1997(平成9年)、 『サステイナブル・コミュニティ』(川村健一、小門裕幸共著)を読み傾注する。川村氏のコー ディネイトで、カリフォルニア州デービス市の「ヴィレッジ・ホ ームズ」やデンマークのエコヴィレッジ「モンクスゴー」を視察。

2001(平成13年)、NPO法人信州まちづくり研 究会設立(発起人代表、現在副理事長)。2008(平成20)年、“まちづくり”事業不振の責任をと り、会社を営業譲渡し辞任。以後“農楽”をしながら「田舎 暮らしコミュニティ」創りを画策。

2014(平成26年)、「スマート・テロワール・農村消滅論からの大転換」(松尾雅彦著学芸出版社)を読み、取組開始。

(写真は安江高亮様)

安江様

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安江様より 『私の思想と理念と行動』をご紹介いたします。

高校時代にロシア文学、特にトルストイの「戦争と平和」、ドストエフスキーの「罪と罰」を愛読した。トルストイの人物より大きな時代の流れを見る歴史観、「罪と罰」の殺人に対する多様な見方が価値観の土台になっている気がする。

高校で土木を勉強し、建設業を続ける中で、公共事業とは何か、住宅を造る、街を造るとは何かを考え続けていた。そこに「サステイナブル・コミュニティ」(川村健一・小門裕幸著 学芸出版社)が現れ、本当の”まちづくり”を知り、理想の”まちづくり”に取り組んだ。建設業の仕事は、”まちづくり”だという使命感を強固にした。公共事業を金儲けの具にしてはいけないと考えた。しかし、理想を追いすぎて経営に失敗し、引責辞任に「追い込まれた。しかし、”まちづくり”開発した県内6箇所の住宅地は21世紀のモデルとなると自負している。

 ”まちづくり”を社会に広める目的で平成13年にNPO法人信州まちづくり研究会を発起人代表として設立した。活発に海外視察を行い研修を重ねたが、バブルの崩壊、建設業界の崩壊に伴い、活動は縮小した。平成20年に三矢の代表取締役を引責辞任し、意気消沈し、NPOを解散しようかと考えていた時、「スマート・テロワール・農村消滅論からの大転換」(松尾雅彦著学芸出版社)を読んで、新しい”まちづくり”の目標を見つけた。自給圏(スマート・テロワール)構想しか地方創生の策はないだろうというのが現在である。

 

 

[今回のインタビュアーは以下の通りです]

  • Farm めぐる 代表 吉田典生様
  • 高井伸夫 

(取材日 2017年12月9日(土)於:いっとう(蓼科牛レストラン))

 


高井

立科の農業生産は、何ですか。

 

安江様

生産量が多いのは、やはりお米です。次は、リンゴです。20年ぐらい前までは、畜産が長野県でトップクラスだったんですよ。ところが、もうほとんどの方が辞めて、今かろうじて、数軒が残っているだけになりました。

リンゴについては、ほとんどが生食用出荷ですが、品質には定評があるので、贈答用が多いです。10年ほど前から、「たてしなップル」が中心になって、立科産のリンゴを使って加工品を製造・販売しています。付加価値を大きくするので素晴らしいことだと思います。リンゴで作ったお酒のシードル、それからワイン、フルーツケーキ、ジュース等を販売しているんですよ。たてしなップルの特徴は、原材料のリンゴの品質に拘っていることです。特に栄養ドリンク「林檎美人」は最高の品質だと思います。アンテナショップもありますから、先生、ぜひシードルを飲んでみてください。美味しいですよ。

高井

他に将来性がある特産品はありますか。

 

安江様

特産品ということについて、今、“農業”っていいますと、日本で一番まずいなと思うのは、特殊なものを作って高く売ろうというのが基本になっていることです。これはおかしいのではと感じています。大事なことは、コモディティー商品というか、一般に住民が普通に食べるものが地元で作られて、しかも良品であることが大切だと思うんですね。それが評判になって他所から食べに来ていただくという。

ところが、今はそうなっていなくて、例えば、畜産は衰退していますが、“手作りハム”を作っている会社がありますが、その人たちが作ってるものは地元の人の口に入りづらい。どうしても価格が高くなってしまうからです。家畜に高い輸入餌を食べさせているので、安くならないのです。これは非常に不自然な形の農業なんですが、現状では仕方ありません。やはり、地域の皆さんが誇りを持っておいしく食べられるものを、ほどほどの値段で、基本的にはナショナルブランドよりは安く作れる、食べられる状況を作り出す必要があります。私が事務局を務めているNPOでは、そのために2年前から、自給圏(スマート・テロワール)(注)をつくろうという活動を進めています。

自給圏(スマート・テロワール)(注):地域内でのできる限りの自給を目指す地域単位のこと。

 

高井

今食べているのは、“蓼科牛”ですが、これについてはどうですか。

 

安江様

蓼科牛は、コシヒカリのサイレージ飼料(青い稲を刻んで袋詰にし乳酸発酵させたもの)と輸入飼料で育てられています。この状況は日本中どこでも同じだと思います。ただ、本当の意味で蓼科牛と言えるためには飼料を自給できる体制を作る必要があります。例えば、フランスのボルドーで作っているワインの原料であるブドウが全て輸入品だとしたら、世界中の人が買うでしょうか。ボルドーではそんなことをしていないと思いますが、現状の日本では、そういったことが許容されています。国産のワインと言いつつも、原料であるブドウジュースや濃縮ジュース、粉末を輸入して日本で発酵させたら「国産」と言えるんです。それが法律的に許されています。もちろん、自分で作って自分で醸造しているところもありますが全体から見れば、ごく一部です。でも、本当は、それがたくさん重なることによって、産地形成ができて循環型になりますよね。

 

畜産業の話に戻りますが、畜産業の振興はスマート・テロワール構想の中核的課題のひとつなんです。循環型に畜産業が欠かせない一番大きな理由は、日本人が肉を食べる量が多いことが上げられます。重量で、お米の約2~3倍の肉を食べているんですよ。農水省の統計ですが、お米が、約年間60キロ、それに対して、肉は年間150キロ食べています。その肉のほとんど、8~9割を輸入に頼っています。これを基本的に変えなければなりません。

また、畜産があることによって、堆肥ができるでしょう。その堆肥を畑に入れることによって、いい作物もできるし、全体が循環する。今は、残念ながらその堆肥がお荷物になってしまっているんです。ちゃんと処理をしていないので、臭いから嫌われて、捨て場がないという問題もあります。つい最近、この地区で何十年もため込んだ堆肥が、去年の台風でドンと崩れまして、すごい被害を出したんですよ。日本では牛の糞尿が循環していないんですよ。しかも社会問題にもなったりして、畜産業が敬遠されて、嫌われてしまって、結局、どんどん衰退しています。これはものすごく不自然です。これでは食の循環というのは成り立たないんですよ。

 

高井

蓼科牛の飼料を全て立科町で賄うのは難しいのでしょうか。

 

安江様

現状ではほとんど不可能です。広々とした大きな畑が大量に必要ですが、ほとんどありません。田んぼの耕作放棄地が問題になっていますが、『スマート・テロワール : 農村消滅論からの大転換』を執筆した松尾雅彦さん(注)は、田んぼの土手を崩し、一枚の大きな畑にして穀物を作る、あるいは牧草地にすることを提唱しています。我々もそう思います。そして、その畑で、小麦、大豆、トウモロコシといった畜産の餌、飼料を作るべきと考えています。

松尾雅彦さん(注):元カルビー株式会社代表取締役。2018年2月12日にご逝去されました。

 

高井

安江様は、地方創生の策として自給圏(スマート・テロワール)構想を提唱しておられますが、具体策、そのメリットと課題、行政(国)への働きかけをどう模索するかについて教えてください。

 

安江様

具体策として、第一着手点(ホップ)を約5年としています。その5年で地域の食の実態を調べ、「実証展示圃」で反収増ラインを検証します。また、「30年ビジョン(未来像)と農村計画書の描出」及び、先進地(ヨーロッパ)視察、農地のゾーニング計画、地域内循環モデルを策定し、営農実現計画を考えています。

次の第二の手(ステップ)として、プロトタイプ(注:お手本)で経済性を検証するのに約10年としています。この10年では「互酬経済の承認」、これは加工場のリーダーシップが要でしょう。その他にも、水田を畑地に転換し、水利と灌漑の改修を行い、地域住民・農家・水利組合・土地改良組合などの賛同を得ていく。また、「美食革命」を起こし、地域の特性を持った美味しさを作り出す。食の誇りは地域の人々の意欲を高めると考えています。

 

高井

プロトタイプ、お手本になる自給圏の広さはどのくらいでしょうか。

 

安江様

モデルとなる自給圏の規模は、10ヘクタール〜20ヘクタール規模で考えています。第三の手(ジャンプ)では、いよいよ自給圏内全面展開・都市部への攻略をします。自給率目標は、自給圏内50%超+国内他地域産20%=70%を目標としています。海外から30%です。スマート・テロワール構想のメリットは、何といっても、地域が活性化し、人口増加に転じること、そして、日本で一番遅れている農業を科学することにより、文明国になれることです。

 

高井

農業を科学するとはどういうことでしょうか。

 

安江様

農業を科学するとは、農業に関する情報を求め、研究し、科学的に取り組むことです。農業、畜産業を基盤に食料自給率をアップすることで、地方創生のモデルケースを作る。日本人は、創造は苦手のようですが、全国で1つ、2つモデルができ、それを理解し良いことと判れば、真似るのは上手ですからあっという間に広まるでしょう。山形県では、プロトタイプの農場が来年からスタートしますが、他はまだまだです。私は、自治体の長や担当課に働きかけていますが、相槌を打つだけで、全く動きません。恐らく、理解できない=理解しようとしない=本も買わない、これは票に結びつかないことが原因でしょう。もちろん私の力不足もあるかもしれません。この面では阿部長野県知事はすばらしいです。松尾雅彦さんを、昨年(注:2016年)「食の地消地産アドバイザー」に委嘱し、農政部に実証試験を指示し、予算をつけ5年計画で開始してくれました。

現在の戦略は、世論を高めることです。そのために一般社団法人「東信自給圏をつくる会」をつくる計画です。世論を高めれば政治は寄ってきます。もう一つは、ミニスマート・テロワールを実際に作って見せることです。具体策の第二にあるプロトタイプがそれです。

 

高井

自給圏(スマート・テロワール)構想を実践していて、いちばんの障害は、ずばり行政でしょうか。

 

安江様

行政というか、農業の本家本元であるJAと農業会議(注)が全く興味を示さないことです。唯一山形県では山形大学農学部と山形県農業会議が主導しておりますが、他は、悲しいことに、勉強する気持ちがないとしか言いようがありません。農業界全般に農業を科学する気持ちが見られません。今の農地法改革によって、新しい方針が出されました。集約と、後継者養成が大きな柱になっていて、その集約だけは確かにやっているんです。ですが、ビジョンがないんです。ただ「俺は辞める」っていう農地を引き受けているだけなんです。そして、残念ながら多くの農業会議はその次元に留まっています。

農業会議(注):都道府県農業会議は市町村に設置された農業委員会の上部団体。都道府県ごとに組織されている。市町村の農業委員長により県単位で構成されている。

 

高井

ところで、吉田さんは、国税庁から“脱サラ”して、なぜ農業を始められたんですか。

 

吉田

私は国税に入る前に長野に農業のバイトに来ていて、農業の「気持ち良さ」というのを感じ、いずれやりたいなと思っていました。いったん国税に入庁したんですが、いずれ農業をやるにしても、若いほうがいいなと思って10年で切り替えました。32歳で辞めて、自分で始めたのが34歳です。その間は研修したりしていました。追随してくる後輩はいませんが、新たに農業をやりたいという人は受け入れて、育てるっていうことを、これからやっていかなきゃいけないなと思っています。といっても、まだ私も、始めて6年しかたっていませんので、そんな人に教えられるほどの知見があるわけでもありませんが。

 

高井

吉田さんのような若い力は頼もしいですね。安江様の大きな夢は何ですか。

 

安江様

日本が世界のモデルとなる文明国になることです。文明国というのは、福澤諭吉が『現代語訳・文明論の概略(福沢諭吉著齋藤孝訳ちくま文庫)』中で述べている文明国であり、自己流に表現させていただくと、自律性、向上性、合理(真理探求)性、審美・文化性、徳性を備えた国だと思います。

現在の日本はどう見てもまだ半開だと思います。日本はその気になれば、文明国になれると思っています。ポテンシャルはあると思うので、スイッチがはいれば実現すると思います。自給圏(スマート・テロワール)構想の実現がそのスイッチになれれば最高です。

 

 

<ご参考>
「文明論の概略」から「第三段階文明国とは」より引用します。
「自然界の事物を法則としてとらえる一方で、その世界の中で、自ら積極的に活動し、人間の気風としては活発で古い習慣にとらわれず、自分で自分を支配して他人の恩恵や権威に頼らない。自身で徳を修め、知性を発達させ、過去をむやみに持ち上げず現場にも満足しない。小さなところで満足せず、将来の大きな成果を目指して、進むことはあっても退くことはなく、達成することがあってもそこに止まることはない。・・・」

 

 

以上

 

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<イッピン> 八幡馬―青森県八戸市

 

 

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小生の執務室に馬をかたどった華やかな置物がある。八戸の民芸品「八幡馬」だ。

見ていて飽くことなく、大切にしている。700年の歴史をもち、三春駒(福島県郡山市)、木下駒(宮城県仙台市)と並び日本三駒の一つに数えられるこの馬は、当地では結婚祝いや新築祝い、七五三に重宝されてきたそうだ。

 

作者は四代目大久保直次郎氏。鉈一本で仕上げる「鉈削り」の伝統技法を受け継ぎ、50年にわたり伝統的八幡馬を制作しておられるただ一人の方である。

氏のことを知ったのは、日本経済新聞文化面の記事であった。生涯作り続けると仰るそのお心と「八幡馬」の素朴な美しさに魅かれた。

実際手にとってみると、魂のこもった像であることがありありと伝わってくる。どっしりとして勇壮、しかし気品があり、うつくしい。これが1キロもある大きな鉈一本で切り出されたとは、とその技に驚くばかりであった。

 

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実は、この「八幡馬」は、明治の代より八戸市郊外の櫛引八幡宮の祭典のとき、その境内だけで売られるものである。二頭の八幡馬は、当地の寿司の名店、八戸重兵衛の女将でいらした旧知の伊藤孝子氏のお世話になり、晴れて小生のもとにやってきた。ご縁がまた新たな縁につながったことに感謝している。

 

大久保氏のご息女が、お勤めを辞して八幡馬の制作を始められたとのこと。八戸の風土に根ざし、当地の生活様式とともに伝承されてきた伝統ある「八幡馬」が、こうして人と人をつなぎ、地域と地域をつなぎ、これからも普遍的な価値をもって氏の精神とともに受け継がれていくのだろうと思う。

 

「目標は死ぬまで作るということ」と語る大久保氏にいつかお目にかかり、氏の手になる「イッピン」を前に、様々なお話をうかがいたいと願っている。

 

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  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第32回目です。
  • 第32回目は、株式会社旅武者 代表取締役山口和也様です。

 


 

■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第32回)■ ■ ■ 

株式会社旅武者 
代表取締役 山口和也様 
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[株式会社旅武者 代表取締役 山口和也様 プロフィール]

早稲田大学大学院 商学部 専門職学位課程(MBA)卒 (TOP10% Distinguished Student)
大学時代、ニュージーランドに1年間留学。外資系医療機器&医薬品メーカーの社長室に入社後、2004から2006年にかけ、日本人として初めて米国本社に派遣。
プロのマーケターとして活躍。世界各国の担当者と共に各市場に合わせた製品上市戦略策定を担当。帰国後はAsia Pacific & Japanの地域において、海外を含めた各社との事業アライアンスを担当する事業開発(Business Development)に従事。2011年 Asia Pacific&Japan地域にてMVP獲得。

2013年 早稲田大学大学院専門職学位課程ビジネス専攻(早稲田大学ビジネススクール)にて「海外新興国ベトナムにおける実店舗を用いた研修ビジネスの成功要因に関する研究」との論文を書き武者修行プログラムをスタートさせる。
株式会社旅武者 https://tabimusha.com

 

[今回のインタビュアーは以下の通りです]

  • 高井伸夫 
  • 上智大学 学生 平井志歩さん(弊所元アルバイト) 

山口和也様と高井

写真左が山口和也様、右が高井伸夫 取材日撮影

(取材日:11月13日(月) 於;日本工業倶楽部会館2階ラウンジ)


 

高井

御社の海外インターンシッププログラムの特徴を教えてください。

 

山口様

ひとことで言ってしまうと、このプログラムは、“海外”とか“インターン”と言うよりも、どちらかというと、本気の大人が本気で学生に向き合うというプログラムなんです。

学生を学生扱いしない。経験の差があるため完全に対等にとまではいきませんが、徹底的に「全ては学生のために」というゴールに対してファシリテーターが裸で学生に向き合ういうのがこのプログラムの一番のコアバリューです。

そして、プログラムのゴールは、学生が「自分が定めた将来的なゴールに向けて何が必要かを考え、それを自ら達成すること」ができる能力『自走式エンジン』を搭載すること。色んなことに気が付き、自分自身で自分の人生を設定できるようになってほしいなという想いがあります。 

それが一番の特徴ですが、インターンの内容では、インターン先の実店舗を弊社が直接運営しているという点に独自性があります。このインターンは、ベトナムの世界遺産都市ホイアンにて、1ターム15日間に実店舗で、学生が自分で新規事業を作るというテーマでやっています。オーナーが別にいると、その方の意向があって自由にできませんが、自社で店舗を持っているので、学生が色んな新規事業にチャレンジ可能なんです。自由度が高い、なんでもできるというのが特徴的だと思います。

 

高井

特徴は、主体的に考えて、問題を作って、それの解を求める努力をするということ、これは文科省の最近の教育スタンスともマッチしますね。御社のインターンシップを経て学生が“自走式エンジンを搭載する”と表現されていますが、“自走式エンジン”という言葉は山口様がお考えになられたんでしょうか。

 

山口様

“自走式エンジン”という言葉は私が作った造語です。今の時代は、与えられた質問に答えるだけではなく、自分で答えを作れないと、この不確実が高い世界では淘汰されてしまいます。グローバル人材、これは「どういう状況下でも結果を出し、社会に価値を創造できる人材」と弊社では定義していますが、日本の若者がそうなれるように、という想いを込めています。また、日本の多くの若者が、グローバル人材になって社会への価値創造が自分の力でできるようになれば日本は変わると思っています。

 

高井

学生がインターンをする実店舗は、どのくらいの規模ですか。

 

山口様

広さは様々ですね。大きいところもあれば小さいところもあります。ホイアンのインターン先として、8店舗あります。お土産屋さんとレストラン、洋服屋さん、アパレルショップ、マッサージ屋さん、ワインバー、英語学校、日本語学校、ライフキャリアスクールがあります。英語学校には現在ベトナム人の生徒が約200人、日本語学校には生徒が60人くらいいます。学生は、これら8店舗の中から1店舗選んで、例えばレストランで新しいメニューを作ってみるとか、お土産屋さんで新しいお土産を作ってみるとか、そういうふうに自分で新しいことを考えて、実際にお客さんに提供するというところまでを経験します。

 

高井

平井さんはどこで研修を受けたのですか。

 

平井

私は、ライフキャリアスクールというところです。ベトナムの方に新たな“教育”を創るということで、立ち上げたばかりの状態だったので何も決まっておらず、事業を0から体験することができました。

 

高井

この事業を4年前に始められたそうですが、今までどれくらいの学生が参加されたのでしょうか。参加する学生は年々増えていますか。

 

山口様

全国から学生が参加してくれるようになり、今までに参加した学生は1550人になりました。参加者は回を追うごとに増えており、初めは4人でしたが、4人から10人、50人、56人、101人、202人、333人、374人と増えて今回(注:2017年夏)は454人で、累計は1559人です。

時期は大学生の休み期間、春休みの2月3月、それから夏休みの8月9月、そして年末年始にも実施します。

プログラムを受ける期間をタームと呼んでいますが、1つのタームに前回(注:2017年夏)は平均28名ほど参加しました。夏は16タームやって全体では454人。今回の春(注:2018年春)も16ターム開催するので、最高で480人が参加予定です。

 

高井

男女比はどれくらいですか。

 

山口様

男女比はほぼ半々です。

 

高井

参加した学生同士の同窓会のような集まりはあるのですか。

 

山口様

会社が主催する集まりとしては、年に1度東京で年次総会を開催しています。インターンに参加した学生は全国各地にいますので、全員が集まることは難しいですが、この会には300人くらいが参加しています。

 

高井

インターンへの参加費は30万円程度かかるようですが、事業として採算は取れているのですか。

 

山口様

実はこのビジネス自体3年やってずっと赤字でした。1000人参加する体制ができて、4年目でやっと黒字転換する見込みです。

例えば、企業研修を同じベトナムでやる場合、だいたい相場が5泊6日くらいで50万円くらいします。そういう点でいえば格安ですが、学生相手のビジネスなので、たくさんもらうわけにはいきません。ファシリテーターを1つのタームに4~5人配置する費用も掛かりますし、またベトナムの8店舗の維持費もかかりますから、ぎりぎりのラインだと思っています。

 

高井

赤字が続いても、よく続けていらっしゃいますね。

 

山口様

私は早稲田大学の大学院の修士論文でこのプログラムのことを書きました。「海外新興国ベトナムにおける実店舗を用いた研修ビジネスの成功要因に関する研究」という論文ですが、この通りに進めていまして、内容自体は修論に合わせて順当に進んでいるんですよ。とりあえず、修論で書いた通り5年で毎年1000人が参加する体制というのがやっと今年1年前倒しで作れたので、そういう意味では感無量です。

 

高井

店舗を増やす予定はありますか。

 

山口様

今のところ考えておりません。この武者修行プログラムをやるために8店舗を運営しているので、やむを得ず運営できなくなった店舗がある場合のみ新たに作るという感じで、それ以外はそのまま8店舗を維持しようかなと思っています。オートバイ屋をやらないかとか、ホテルをやらないか、とか色々あるんですけれど、お店で儲けようというよりは、日本から来る学生に対して、面白い、魅力的だという店舗が、色々な種類あった方がいいだろうなと思っています。インターンは職業経験ですから、レストランをやりたい人もいれば、学校をやりたい人もいるし、そういう風に、色々やれるようにしています。

 

高井

日本人の学生が内向きだと言いますが、このプログラムに参加される学生に特徴はありますか。

 

山口様

そうですね、やる気のある学生が多いです。また、このプログラムに参加した後で、留学をする学生が多いです。

 

高井

プログラムの卒業生で、あなたのイベントに参加して卒業生自身の成果につながった人はどんな例がありますか。

 

山口様

何を成果と呼ぶかにもよるかと思いますが、分かりやすい例であれば、いわゆる外資コンサルに内定したとか、日本の官僚になったとかでしょうか。その他にも起業した卒業生も何人かいます。

 

高井

ベトナムに生活の拠点移した人もいるのですか。

 

山口様

ベトナムに生活の拠点を移した人もいます。入社した企業から派遣されてホーチミンで150席のレストランをオープンさせた例もあります。あとは、武者修行プログラム参加後に、再度ベトナムに行って、弊社の日本語学校で日本語教師をしたり、英語学校のマーケティングを担当したり、洋服屋さんで店長をしたり・・・というケースも増えてます。

 

高井

ベトナム以外の国でこのプログラムを展開する予定はありますか。

 

山口様

そうですね。具体的な国などは、今、色々と考えているところで、来年度くらいに決めようと思っています。また将来的にはこの「武者修行プログラム」のノウハウを大学や企業などに様々な形で提供し、世界中で活躍できる人材を輩出していきたいと考えています。日本の若者がグローバル人材になり、自分で社会への価値創造ができるようになることで、日本の将来に貢献していきたいと本気で考えています。「今、話題のリーダー(大企業幹部、ベンチャー経営者、NPO代表理事等々)はみな武者修行プログラム出身者だよね」「武者修行プログラムできてから、日本って変わったよね」と言われるようなそんな野望を持っています。

 

以上 

 

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2018年1月25日、愛知県安城市にある、ニチバン株式会社の先端技術棟の竣工式が行われ、出席いたしました。神事が滞りなく終わり同社名誉会長 小林幸雄様と小生がご挨拶をいたしました。

 

以下当日式典に出席された皆様へお配りした小生からご挨拶文を転記させていただきます。

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式典でご挨拶する高井

ニチバン「先端技術棟」竣工にあたって、ひとことお祝い申し上げます。

「先端技術棟」の竣工、まことにおめでとうございます。

1967年(昭和42年)1月に稼働した安城工場は、「ニチバン」の主力商品のひとつであるセロテープ®等の製造を担ってきたとのことですが、その安城工場が、今日(こんにち)、操業51年目に新たな歴史を刻み始めている現場にお招きいただき、感無量でございます。

安城工場も、まさに「ニチバン」と苦楽をともにしてきた生き証人であると思います。 

 

私は、長年にわたり、ニチバンの法律顧問を務めさせていただいてきております。この間、もっとも強く記憶に残っておりますのは、倒産の危機に瀕したニチバンの再建に1976年(昭和51年)より手腕を大いにふるわれた小林幸雄会長(当時)を支え、関係者の皆さんとともに、組合との紛争の解決に全力をあげたことです。

会社再建のために労使協調を願いつつ諸施策を実行された小林会長のもと、裁判では負けに負けましたが、1979年(昭和54年)6月7日の東京地方裁判所・渡邊壯裁判長による決定は特に印象深く、裁判官が会社の経営方針に理解を示したものでした。裁判で30回以上の反対尋問をおこなった佐藤組合委員長とのやり取りも真摯なもので、これらはのちの会社再建を予見させるものでした。

 

労使問題で一時は苦境に立ったニチバンの見事な再建は、経営陣のリーダーシップのもと志ある社員の皆さんが一丸となり、堅実経営に徹してきたからこそであると思います。

そして、今般は社会の流れをとらえてメディカル事業生産拠点を再編され、安城事業所に、医薬品専門工場と研究所を新設されるという新たなステージを迎えられています。ここに、みなさんの長年の努力の結晶として安城事業所が更なる飛躍を遂げる基盤ができたのです。

思えば、ニチバンでもっとも論理的な方々が集まっているのは安城事業所でしょう。安城事業所の「先端技術棟」が次の時代への飛躍を確実にするにために、「地域の大学」、たとえば豊橋技術科学大学などと提携し、あるいは本日「ご来臨のお取引先・金融機関」とも、より強固な提携をして地盤を固め、「イノベーション」を図って新製品の開発と生産の拠点になることを期待します。

 

すでに私たちの社会で大きな存在感を示しはじめたAIですが、2030年には、人間のように自律的に考えて意思決定をする「汎用AI」が実現し、2045年には、現在の平均的労働者のほとんどが代替可能になるそうです。そして、厳しい予測によれば、残るのは1割ほどの、「クリエイティブ」「マネジメント」「ホスピタリティ」の3分野に携わる人々であるという説さえあるといいます。

ニチバン、という堅実で先見性のある企業と従業員の皆さんが、AIと共存共栄して成長を続けるべく、安城事業所の現在の200人ほどの従業員数が、医薬品専門工場および研究所の誕生に伴い、300人体制となり、大きな人的資源を得るにふさわしい「新製品開発」に邁進していただきたいというのが、私からの率直なお願いです。

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式典を途中退席いたしました後は、株式会社ファッズの本社を訪問いたしました。

同社は三河を中心に「新時代」「備長扇屋」の2つのブランドを主軸に、大型飲食店のロードサイド(注:幹線道路など通行量の多い道路の沿線)を中心とした店舗展開をしている飲食店です。同社代表取締役社長の佐野直史様に本社をご案内いただきました。佐野様がオフィスに戻られると、社員の皆様がごく自然に大きな声で「お疲れ様」「ご苦労様」といった挨拶をされました。社長をはじめ社員の皆さんが、元気いっぱいお仕事をしておられ、活気にあふれたオフィスでした。

佐野様と高井

(写真左は佐野直史様、右が高井)

その後は、株式会社エイチ・アイ・エスが経営を引き継いだ、蒲郡にあるラグーナテンボスにお邪魔いたしました。

小生は、昨年(2017年)5月23日にハウステンボスを訪問しておりますが、(詳細は、こちらをご参照ください「ハウステンボス訪問記」)ラグーナテンボスは、ハウステンボスと同様、「変なホテル」も併設され、さながら姉妹施設のようでした。ラグーナテンボスへの来場者数は、現在年間85万人だそうです。四期連続黒字で、皆様大変張り切ってお仕事をしておられ、 入場者100万人を目指しておられるとのことでございます。ホテルに温泉など、豪華な施設もあり、敷地の大きさから、年間来場者数が200万人~300万人程度でも十分受け入れ可能と感じました。ラグーナテンボスがある蒲郡市の人口は約8万人(注:2015年)だそうですが、隣の岡崎市は約38万人(注:2015年)とお聞きしました。テーマパークが発展するか否かは、一企業のみならず、行政の責任者による話題作りが重要です。小生は、名古屋市の出身で、少年時代には、蒲郡に海水浴に行った思い出もあるため、行政と企業が一体となって蒲郡が再生されることを願わずにはいられません。

変なホテルにて

(ラグーナテンボスの変なホテルにて撮影)

 

見学後は、株式会社ラグーナテンボス 執行役員 管理本部長 倉田恵太様、総務部付きグループリーダー 三浦和博様はじめ管理職の皆様に豊橋駅まで送りいただきました。

 

温泉地は活況ですかと尋ねると、三谷温泉はとても元気ですとのお返事がありましたから、蒲郡市は、まだまだ発展の余地があるかと思います。

 

そんなことで、1月25日は、珍しく会社を3社訪問いたしました。

 

以上

 

 

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20180305IMG_3893.JPG

2018年12月30日(土)7:31 芝公園にてシロタエギクを撮影
花言葉:「穏やか」

 

 

<働き方改革> 第4回 株式会社グリーンハウス

 

今回は、株式会社グリーンハウス様に伺い、萩原貴子取締役、樋口道雄理事・人事総務部人事労政グループ部長に取材を行いました。

グリーンハウスは、オフィス・工場・学校・ヘルスケア施設での食事提供を受託するフードサービス企業。ほとんどの場合、営業所長が一定の管理責任者であり調理責任者でもあります。フードサービスは一般的に長時間労働のイメージがついてまわる業界ですが、そのイメージを覆す働き方改革への積極的な取り組みについてお話していただきました。

 

1 働き方改革プロジェクトのスタート

 

グリーンハウスでは、昨年7月に、全体プロジェクト責任者の下に3名の役員がそれぞれ自分の所管の部署を中心に改革をしていくために体制を整え、全社を挙げたプロジェクトとして働き方改革をスタートさせました。

プロジェクトの大きな目的は、当然「働き方の改革」ということになりますが、それを達成するために、短期の目標と中長期の目標を設定し、この両方を視野に入れながら推進していく予定とのこと。

具体的には、短期の目標は、人材不足により引き起こされる長時間労働の削減、中長期の目標は、働き方改革宣言を発して働き方改革をどのように進めていくかを全社に周知することとしています。

短期の目標を達成するために、まずは週2回のノー残業デーをスタートさせたそうです。

*参考)「GHG働き方改革 企業宣言(ウエルネスプログラム)」を制定http://www.greenhouse.co.jp/topics/2018/180221.pdf

 

2 ワークスケジュールの見直し

生産性向上のために、ワークスケジュールの見直しにも着手しました。

従来、営業所長自身が長時間労働ありきのワークスケジュールを組んでいましたが、これを見直し、自ら一手に仕事を引き受けるのではなく、負担を分散することを心がけるようになったといいます。また、一つ一つの工程に無駄がないかを日常的に確認するという見直し作業も実践しています。

このような作業は一見地道ですが、全体としての総労働時間の削減のためには避けて通れないものといえるでしょう。

 

3 労働時間ではなく仕事のプロセスと成果の評価を

グリーンハウスでは、単に長い時間働くことを『頑張っている』と評価するのではなく、これまで行ってきた業績(いわゆる売上げ)と成果がどれだけ上がっているかということを一義的に評価するというシステムをより明確にしていこうとしています。

これは、評価項目に業績評価と行動評価という項目を作成し、業績評価では結果を、行動評価では業績の結果を出すためにどういう行動をするのかということを、本人と上司で事前に確認して目標設定をしたうえで、設定したその行動自体ができたか、できたその行動が結果にどう影響を及ぼしているかによって評価を行うシステムです。

この評価システムの肝は、目標を設定する段階で、評価者側、上司側がいかに適切な指導をしているかという点にあります。

これと並行して、「長時間労働」を行っている社員には「働くこと」の意識を変えていくような働きかけを行っているそうで、その一例が、営業の責任者による率先した働き方改革プロジェクトへの賛意の表明とのことです。


4 女性の地位向上

同社はまた、女性社員の比率が高く、その力をもっと活かしたいという思いから、4年程前から人材の発掘と登用、育成といったことを推進し、女性役職者を増やしていく試みを行っています。女性役員比率を20%、部長職比率を25%以上、マネージャー比率を30%以上とすることを目標としています。現時点では、それぞれ達成率が半分程度ですが、各職場において積極的に女性管理職候補者の発掘、育成、登用の動きが定着しつつあるそうです。将来的には、女性だけではなく外国人社員の活躍も広がっていくことが期待されるため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する活動は今後も重要だと認識しているといいます。

 

5 健康経営への取り組み

①従来からの活動

グリーンハウスの健康経営に対する取り組みは10年以上も前に始まっていて、現在も社内で様々なプロジェクトが進んでいます。特に「歩いて健康プラスワン」というウォーキング推奨プロジェクトは人気で、チームを組んで競い、毎年優秀なチームを表彰しているとのことです。

また、4,000人以上在籍しているという65歳以上の従業員について、体力面から業務負荷や労働時間の管理を徹底しているそうです。


②健康経営・ダイバーシティ推進室

昨年春に萩原取締役が「チーフヘルスオフィサー(CHO)」という健康経営推進の責任者として任命され、それを遂行するための組織として「健康経営・ダイバーシティ推進室」が設置されました。

もともとグリーンハウスはお客様に健康的な食事を提供することを業とする会社であるため、健康促進に関しては、ビジネスとして長年培ったノウハウを蓄積していた。このノウハウを社員に対しても積極的に活かしていこうということで、昨年オフィシャルな形で組織化したのがこの組織です。

今までプロジェクトとして動いていた健康経営に関する活動を、健康経営・ダイバーシティ推進室ができてからは、全社を組織化した定常的な活動として定着を進めています。例えば、毎週フロア全体で行う会社全体朝礼の際に、月1回程度の頻度で、オフィスで働く人たちのための手軽にできるストレッチの紹介などをして、従業員の健康意識を高めるよう努めているそうです。

また、健康経営・ダイバーシティ推進室のメンバーがメールマガジンで季節ごとの注意事項や健康に関するちょっとした情報を発信するという形で、ヘルスリテラシーを上げるための情報発信を継続して行っています。

この活動には、グリーンハウスが開発した「あすけん」という会員180万人に増加中の食事管理アプリも大いに役立っているといいます。「あすけん」を利用したダイエットプログラムにチャレンジする人を社員から募集し、管理栄養士の指導のもと実践したり、上述の「歩いて健康プラスワン」参加者に「あすけん」に登録してもらい、これを利用して歩数の管理を行ったりしているそうです。


③広がる活動

さらにグリーンハウスは、受託する企業等の健康経営を食を通してサポートしており、2014年には「第3回 健康寿命をのばそう!アワード」で厚生労働省健康局長優良賞を受賞しました。「Kenko企業会」という民間団体の創立メンバーでもあるそうです。同団体には、今現在60社程の会社が所属していて、メンバーで「禁煙取り組み」、「食事による健康管理」等、色々なテーマを決めて分科会を作り、勉強会を開催して互いに啓発し合っており、社内外に活動の幅を更に広げているとのことです。

 

6 まとめ

取材前は「フードサービス業界において働き方改革は本当に達成しうるのか?」という疑問を持っていましたが、萩原様と樋口様のお話を伺うと、地道かつ着実な努力により、問題を一つずつクリアし、確かな改革を行うのだという強い意志を感じました。

グリーンハウス様にはぜひフードサービス業界の先頭に立ち、同社が目標としている働き方改革を達成していただきたいと思います。

以上

 

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