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2017年5月28日(日)8:56 茨城県稲敷郡イーグルポイントにてヤマボウシを撮影
花言葉:「友情」

 

 

<働き方改革> 第2回 株式会社開倫塾~健康経営企業を目指して~

 

「働き方改革」連載第2回目です。いよいよ今回から、実際に企業の皆様が実践されている働き方改革を取り上げていきたいと思います。

今回は、私が日頃から親しくお付き合いをさせていただいている林明夫氏が代表取締役を務める株式会社開倫塾での取り組みについてご紹介致します。

 

1 85歳過ぎまで働ける職場作り

 

株式会社開倫塾は、栃木県で創立され、現在では群馬県、茨城県そして本年7月には東京の墨田区に進出し、その後、荒川区、足立区、葛飾区などでの展開を予定しています。同社は400人という従業員で、60校舎において6,500人もの生徒を受け入れていて、その売り上げ規模は15億円から16億円にも上ります。

 

開倫塾において、林氏が積極的に取り組んでいる「働き方改革」について伺ったところ、「85歳過ぎまで働ける職場作りを目指すことです」という回答がすぐに返ってきて、私は大変に感銘を受けました。林氏の掲げた目標は、現代の長寿化時代に即した素晴らしいものだと思います。

この構想の下では、定年後の従業員は時給制となり、例えば集団授業なら講義1コマにつき1,500円~2,000円、個別指導の場合は1,300円といった扱いになるそうです。

 

林氏は、自身が所属し、幹事を務める公益社団法人経済同友会(東京)で、高齢者の定義を65歳から75歳に繰り上げ、後期高齢者を75歳から85歳に繰り上げ、超後期高齢者を95歳以上とするという施策を積極的に提言し、注目を浴びているとのことです。

 

世間的にもこのような声は高まっていたのでしょう。最近、一般社団法人日本老年医学会では、ようやく75歳からを高齢者とする議論がなされるようになったとの記事を新聞でも目にしました。

林氏はここからさらに進んで、保険料について75歳までは3割負担、85歳までは2割負担、95歳以上は1割負担を原則とするということを提案しています。

 

林氏は、冒頭の「85歳過ぎまで働ける職場作り」という目標を達成するために、まずは労働日数や労働時間を短縮していくことを検討しているそうです。

この点、同社の小島雅子調査部長によると、これは特にホワイトカラーについて当てはまるとのことですが、日本人はITに関する知識が不足しており、加えてパソコンの操作技術が非常に低次元であるため、これを根本的に直さない限り、労働時間の短縮には繋がらないそうです。

したがって、パソコンの知識と操作方法の基礎を労働者が修得しさえすれば、生産性もおのずから上がっていくと小島氏は述べています。

小島氏は、また、Windows10などの新しいオペレーションシステムの導入を薦めています。それも一部の情報技術を専門とする従業員だけではなく、企業全体で導入し、研修を行うことを強く薦めています。

 

2 健康経営

 

内閣府が発表した「平成28年度版高齢社会白書」の中では、65歳以上の高齢者の実に4分の1近くが、現在、健康上の問題で、日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に影響があると回答しています。少子高齢化社会において高齢者雇用の需要は高まる一方ですが、健康問題を原因とする高齢者の仕事の能力の低下は、解決が困難な課題です。

開倫塾では「85歳以上まで働くことができる職場」を実現するために、2015年から「健康経営」という目標を掲げ、これに沿った経営をすべく全社を挙げて取り組んでいるそうです。

開倫塾のように今や「健康経営」を目標として掲げる企業は少なくありません。サントリーホールディングスの新浪剛史社長も、2017年5月29日のNHKの「おはよう日本」のインタビューで、「想像力豊かに新しいものをつくっていくためには、社員一人ずつが健康で、心の余裕があることが必要」と仰っていました。

林氏は、「健康経営」を実践するために、体制を一新したそうです。まず、従業員の健康を担保するには、健康診断を最大限活用するべきであると判断して、塾長室に健康経営企業推進室を設け、担当者を男性から女性に変更し、年齢性別を問わず全社員の健康状態に目が行き届くようにしました。そして、産業医を変更するとともに、定期健康診断を請け負う業者を変え、従来より充実したサービスが受けられるようになりました。

 

開倫塾での健康管理はこれだけに留まらず、歯の検診も健康診断と共に1学期ごとに1回ずつ年3回し、また、産業医や有識者による「健康ライフを考える会」と題する講演会を開催しています。

同講演会は、都度講師を変えるなど、立体的な講演となるよう力を入れて企画しているそうです。

 

また、体重が一定以上の人にメタボ検診を義務付けて、毎月1回産業医、もしくはかかりつけ医に受診することを促す「メタボ検診」の指示勧告書も出しています。

 

林氏によると、具体的な健康促進のために2017年度より、インフルエンザと帯状疱疹の予防接種に補助金を出す制度の導入も決定したとのことです。どの程度の補助金を増額するかは経営状況を勘案して決定するそうですが、同制度はパート従業員からの強い要望を受けて導入する方向で進めているとのこと、こういったところに従業員の声を丁寧に受け止める林氏の真摯な経営姿勢が表れていると思います。

 

さらに、認知症予防のための高齢者の公文式・脳のトレーニングを、その第一歩とすることも構想しているそうです。

先に述べた「平成28年度版高齢者白書」においても、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症患者であるとの調査結果が出ており、認知症予防が極めて急務である現在、林氏のこういった取組みは、実に的を射たものだといえるでしょう。

 

3 生きる目的を

 

また、林氏は、高齢者が社会の負担とならず、それどころか社会に貢献する存在になるためには、高齢者を含め全ての労働者自身がキャリアを大事にし、社会もまた労働者のキャリアを守る、つまりキャリア権の確立と労働者によるその行使が急務かつ必要不可欠と考え、トップ主導で開倫塾は「キャリア権推進企業」を宣言しました。私もこれには大いに賛同します。

 

労働観というものは、労働を苦役と見るか、あるいは価値ある物に対する取組みと見るかによって、全く異なるものになるでしょう。苦役と見るのであれば労働時間はより短い方が良いに決まっていますが、価値ある物と見る場合は、労働時間は必ずしも短い方が良いということにはなりません。

現在、働き方改革の推進において、労働時間規制派と労働時間反規制派は対立を続けていますが、両派の対立の根源は、このような、労働というものの捉え方にあるように思います。

労働者のキャリア権の確立と、労働者によるキャリア権の行使を実現すれば、労働時間規制への議論もまた変わったものとなっていくのではないでしょうか。

 

御木本幸吉は「長寿のためには生きる目的があることが必要だ」と言っています。長生きするためには、体のみならず心も健康でなければなりません。

日本全体が、健康長寿で働き続ける社会を目指すのであれば、まず個々人が生きる目的を持つことがその第一歩となるのだと思います。

以上

 

 

 

 

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