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2017年4月22日(土)7:17 中目黒公園にてネモフィラを撮影
花言葉:「どこでも成功、可憐」

 

 

第23回 資本主義からの脱皮の第一歩(上)
(平成28年11月28日)
 

 

 

本連載は残り2回となった。人事・労務問題を専門とする立場から些か企業の実情を知る者として、仕事が生活の糧を得るためだけの手段ではなく、自分らしさを発揮できる生きがいであってほしいという願いを込めて書いてきたが、昨今の社会情勢をみると、私たちは従来の思考方法が通用しない歴史の転換点にいると思わざるを得ない。

 

世界も日本も経済は縮小均衡状態であり、どの分野においても垂直思考から水平思考へと切り替わっているのだ。そして、数年来の世界的テーマである格差問題は、マスコミ全員の予想を全く覆す米国大統領を誕生させる要因ともなり、日本でも解決の糸口を見出せない。日本経済の衰退を、成長へと向かわせる起爆剤があるとも思えない。さらには、AIやロボットの進化は私たちの生活を便利にする一方で、近未来の20年後には日本の労働力人口の約49%はこれらで代替可能となるという試算もあり、労働者はテクノロジーとの競争・共存共栄に対応できなければ失職しかねない。加えて、情報化時代はさらに進み、価値ある情報を得られる環境と能力を持つか否かで境遇が大きく変わる情報格差の問題も生じてくる。こうした新たな社会を迎えつつある現実を正面から受け止め、私なりの方向性を提案したい。

 

経済面だけに単純に着目して共産主義と資本主義の短所を挙げるとすれば、共産主義(=計画経済)は、努力の有無や程度にかかわらず賃金が同じであれば努力しない方が得となってしまった点で社会の停滞を招き、失敗に終わった。資本主義(=自由競争・自由経済)は、努力をすればそれに見合う成果を得られる可能性があるとはいえ、資本のある者に有利なシステムであることから、格差が拡大再生産されている点で、失敗を経験しているといって良い。

 

資本主義の下でも格差の弊害を縮減できるような、次の時代への過渡的方途として私が提唱するのは、計画経済と自由経済の利点を合わせて機能させる仕組みである。すなわち、計画経済の面では、ベーシックインカム(以下BI)等により、政府が全国民に公平に最低限の生活を保障する。そのうえで、自由経済の面を加味して、努力すればその分の報酬が得られるようにするのである。BIの長所は、支給を受けても、さらに収入を得たい者は自由に活動できる点である。生きる上での一定の安心が得られるため、たとえ起業で失敗をしても生きるか死ぬかという切羽詰まった状況に追い込まれずに済む。脱サラからの起業もしやすくなり、再チャレンジが可能な社会になるだろう。AI社会での失職者対策にもなる。

 

ただ、BIの財源を問題視する見解もある。日本の財政が破綻すると世界的に大きな影響を及ぼすので、慎重に検討する必要がある。緻密で専門的な議論はできないが、国の支出の一定部分を財源に充てる方向で検討すれば良いのではないだろうか。私案としては、まず大義名分を確立したうえで、ODA等の海外援助(2015年のODA支出総額は1兆8327億円〔16年4月時点の為替レート〕)を現在の半分以下に減らし、次に国内では、社会保障関係費=約32兆円(16年度予算)の一部を財源に充てる。BIは、国による支給であるので理論的には公助であるが、基盤となる精神は共助であるといえる。過度な自由競争がもたらした社会のひずみは、博愛の精神で助け合って是正するしかないのである。

 

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