2017年3月22日(水)8:50 靖国神社にて桜(ソメイヨシノ)の標本木を撮影
花言葉:「純潔、優れた美人」
第3回 リーダーシップのあり方
株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
青木 昌一
1.リーダーシップの本質とは
コンサルティングの仕事、とりわけ私のような企業の人事制度設計をお手伝いするような仕事をやっていると、クライアントから理論値はこうなのだけど、どうしてもこういう風にしたいという要望を出されることがあります。
例えば、本来人事評価というのは個人の人格や業務外の出来事を反映させることはやるべきではありません。ところが中堅企業の経営者の中には地元の住民の方々を招いて盆踊りを主催するようなケースがあります。事務局として準備や運営をする社員は業務ですが、参加者として出席する社員はプライベートとして参加が推奨されるケースもあります。強制ではなく、会社の思いとしてみんなで地域への貢献をしたいという考え方です。直接的には会社の業績にこういった行動が寄与するケースは少ないかもしれません。しかし、その会社の経営者の方はそういう活動を通じて、地域の方々に地域の一員でありたいという会社の姿勢を知ってもらいたいとの思いがあるのです。
そういう場合、会社としては人事評価の際に盆踊りへの参加してくれた社員に人事評価の際に加算して評価してあげたいという話になるのです。
人事コンサルタントとしての正解は、もちろんそういった業務外のことを人事評価に反映させるべきではないということを主張すべきです。
しかし、私はそういう場合、経営者の方々の思いを十分に伺うようにしています。そして、そこに経営者の方々の熱い思いが詰まっていると感じた場合には、社員にとって一見理不尽に思えることでも、その思いを尊重させていただくケースもあるのです。
この姿勢は高井先生から学んだものです。高井先生はかつてリーダーシップの本質は「方向性を指し示すことである」と、教えてくださいました。ロジカルに理論値を追いかけるばかりではなく、経営者が考え抜いて出した方向性に大きなリスクがなければ多少遠回りになったとしても尊重すべきだ。その方向性を示せることがリーダーには大切な素養なのだと私は解釈するのです。
そして、そのリーダーシップに私は賭ける訳です。
2.人事評価とリーダーシップの関係
少し話が脱線しますが、人事評価ではオーソドックスには3つの大きな要素があると言われます。
ひとつは「業績」すなわち仕事の成果です。
ふたつ目に「能力」これは各人が持つ潜在的な力もしくは顕在化された力。近年は行動として示された力をコンピテンシーと呼ぶケースも多くなっています。
そして、最後が「勤務態度」。取り組み姿勢や情意とも呼ばれます。
組織の上の立場に立つ人ほど人事評価では「業績」が問われます。これはいくら能力があったとしても、それを発揮して業績につながらなければ意味がない。成果につながらなければ話にならないという発想です。
これに対してなぜ「能力」の評価が必要なのか。それは少しでも高い能力を発揮することを目指すことで、高いステージに上がってもらいたいという経営者の意思があるわけです。つまり社員の育成のためにこういう力を示し、評価をして処遇に反映するのです。これにより社員は少しでも高い能力を発揮するためにはどう行動すべきかについて理解を深めるのです。
取り組み姿勢は例えば社会や会社のルールを守れとか、仲間と協力して組織としての力を発揮したかといった基準になります。
これらの人事評価の要素の中で「業績」に準じて上位の立場の人に求められるのがリーダーシップです。その組織のリーダーがリーダーシップを発揮することによって組織の力は2倍、3倍に高められ、高い業績を上げる可能性が高くなるからです。
3.決断
話を戻しましょう。
「方向性を指し示す。」
文字にすると極めて簡単な言葉なのですが、このことがいかに難しいか。部下や後輩と一緒に仕事をし、多少なりともリーダーとしての役割を担ったことがある方はお分かりいただけると思います。
まず、方向性を決める必要がある。そのためには自分たちのやろうとしている仕事に対して客観的な評価ができなければなりません。多くの情報を集める必要もあります。ところが集まった情報はさまざまなことを物語ります。そうすると、どうすることが仕事の次の一手に最も資するのか、その次には何をしなければならないのか。様々な情報の中から取捨選択して自分なりの考えをまとめなければなりません。そこには様々な迷いが生じることは想像に難くありません。これで本当に良いのか?自分の単なる思い込みではないのか?結果が業績向上につながらなかったらどうしよう?
そんな迷いを断ち切り方向性が見定まったら、次は部下や後輩に伝えなければなりません。そのためにはどういう伝え方をするのか?何かの会議の席で発表するのか?小さなミーティングを重ねて少人数ごとに伝えるのか?
そういう迷いの中での決断が必要になるのです。
高井先生が長きにわたって多くの企業経営者の方から大きな支持を得続けておられるのは、、、、私の推測ですが、、、、「大丈夫。私がついている。」
こういう姿勢でいつも接しておられるからだと思うのです。
以上