• 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第5回目です。
  • 今回のゲストは、諸戸林業株式会社 環境林業部 取締役 御代川彰徳 様です。

 

■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第5回) ■ ■ ■
諸戸林業株式会社
環境林業部 取締役 御代川彰徳 様
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[諸戸林業株式会社 環境林業部取締役 御代川彰徳 様とのご縁について]

昭和31年(1956年)に父に連れられて渋谷の南平台の諸戸精文氏を訪ねたことがある。山林王の1人であったが、その時からすでに木材の将来性をおおいに危惧されていた。小生の父は三重県桑名郡古浜村の生まれだが、諸戸精文氏は三重県桑名市において山林業を営んでいたので面識を得て、仕事を父が頂いていたのではないかと思う。そんな縁があってか、小生は父に連れられて南平台のお屋敷にお邪魔したのだろう。

その後、修習時代に弁護士修習の指導教官であった小川保男先生に師事したことによって林業への理解を深めた。小川保男先生はかつて林野庁に勤務されていて山林のことにも詳しかったのである。そして小川先生は山林に関するエッセイを書いておられて、それを本にまとめられていた。小川先生によって小生も山林のことについてさらにいささかの知識を得たのである。その後、小生は農業に関してエッセイ等を書いたが、山林については全く触れることができなかった。ところが、今年になって、ひょんなことから諸戸精文氏のことを思い出して諸戸林業を訪れることになったのである。諸戸精文氏はすでに鬼籍の人であったが、現在は諸戸清光氏が5代目社長であった。諸戸精文氏は2代前の社長で、諸戸林業3代目社長であったのである。

山林の実情を聞こうと思い会社に手紙を出したところ、御代川彰徳様が指名されて私の対談に応じてくださったのである。御代川氏との対談は諸戸林業の丹沢の山林事務所で1時間ほど行ったが、大変すばらしい人柄の良い方で闊達に話してくださった。

最後に話が終わってから「BOSCO」という名のキャンプ場を見せてもらった。そこはまさに千客万来であって、諸戸林業にとっては、利用されたお客様に金銭的に山林の手入れを支えて頂いていることになる重要な部門だということだった。

 

諸戸林業:三重県亀山市、津市、名張市、神奈川県秦野市、静岡県加茂郡南伊豆町、松崎町に山林を保有
http://www.moroto.co.jp/group_list/moroto_forest.html 

諸戸林業丹沢事務所

写真は、諸戸林業丹沢の山林事務所2016年9月11日撮影

【今回のインタビュアーは以下の通りです】

  • 弁護士 髙井伸夫
  • 高木光彦庶務・ドライバー

(取材日 2016年9月11日10時~11時 於:諸戸林業丹沢の山林事務所)

 


 

高井

丹沢の諸戸山林は今、従業員は御代川さんを入れて3名だそうです。山から木を切り出す場合も含めて総員何名ですか?

 

御代川様

10名です。丹沢に3名、キャンプ場に1名、後はアルバイト5~6名で、他に三重県中津の山に1名です。

他に製材所が在りそこに3名、販売メインの担当者が1名です。確かに、人を多く採用し、生産力を上げればそれだけ売り上げは上がるかもしれません。しかし、木材が値下がりしている今の状況で、多量の木を切り出してしまっていいのか、先代が植えた大切な木をそのような売り方でいいのかという考えのもとに、できるだけ人員を最低限に配置しています。

 

高井

御社の本社はどこですか?

 

御代川様

三重県桑名市です。東京支社は丸の内です。弊社は森林認証制度を取得しています。SGECはきちんと管理されている山という事の認証機関です。

※SGECとは
一定の基準等を基に適切な森林経営や持続可能な森林経営が行われている森林及び経営組織などを認証している機関です。

 

高井

僕は3代目の諸戸精文さんにお会いしたことがあります。諸戸氏はその時はもう60歳か70歳くらいでした。

 

御代川様

後ろに写真があります。今の社長は5代目で清光氏です。4代目は現在会長の精孝氏です。

 

高井

江戸時代の写真もありますね。こちらは丹沢事務所の写真ですね。

 

御代川様

この丹沢山林を取得したのが明治29年です。当時は荒廃した雑木林だったそうです。その時代は木を燃やして燃料にしていたから、それを切りながら、一気に木を植えるように地(じ)拵(ごしら)えしていきました。

植林に着手したのは明治31年です。植林にあたり紀州産の檜(ひのき)の苗木を採用しました。

船で大磯港か二宮港まで、そこから馬車あるいは馬の背に乗せて運び、更に山道は馬の背に乗せたり、人が持ったりしながらヤビツ峠を越えて運搬したと言われています。植林も結構山の上の方まで植えられています。

植える場所も考えられています。杉と言うのは水を好むので沢沿いに植えているんです。広葉樹は養分が下に落ちていくということで、欅(けやき)などを尾根沿いに残したようです。中間部に檜を植えて、沢沿いに杉を植えているというわけです。

 

高井

『諸戸百年檜』とはどういう木ですか?

 

御代川様

この丹沢山林は900haで、樹種はだいたい檜が80%、杉が20%です。実は諸戸の100年の木はそんなに太くなくて、直径40cm弱くらいです。

木を植えるところから密度管理をしています。木の成長を抑えることで、年輪の密に詰まった高品質な木が育つからです。今は1haあたり2500本くらいの密度ですね。2500本は密植とは言いません。諸戸は通常8000本で間引きするのですが、それもあまりしませんでした。

もうひとつの理由は木が真っ直ぐに伸びることです。空間があいてしまうと木が光のある方へ伸びてしまいます。だから、真上の方にだけ光が当たるように適度な密度に調整しているのです。

 

高井

どこに卸しているのですか。直接販売もしているのですか?

 

御代川様

うちは販売経路も持っています。建築材料としては、住宅から公共施設、寺社仏閣など幅広くご使用いただいています。販売先は有名なところも多いです。直接、消費者に販売するようにしていますが、実際は原木市場や工務店、問屋にも出しています。

寺社仏閣に使用されていると言いましたが、実は有名な文化財になると、110年の木でもまだ若いと言われてしまいます。最低でも150年の木が求められます。

 

高井

将来性のある事業所はどこになるのですか?

 

御代川様

将来性と言いますか、実は林業は今なかなか厳しくて、本業だけですと成り立たないのが現状です。キャンプ場事業や別部門でゴルフ場事業も行っています。林業部門はキャンプ場事業で補っている部分もあります。

もちろん補助金もあります。しかし、補助金には将来性がありません。私たちの目指しているのは補助金がなくなっても、山を維持できる体制を作ることです。

 

高井

キャンプ場はいかがですか?

 

御代川様

はい、順調です。しかし、キャンプ場運営は黒字を追うためだけではありません。山をより良くしていくためという目的もあります。

キャンプ場のご利用を通して、お客様に自然や山のすばらしさを感じてリフレッシュして頂き、その対価として利用料を頂いて、その収益をもとに山を更に良くしていく。間接的にお客様に山林の手入れを支えて頂いている、山へ投資して頂いている、というように考えています。

キャンプ場はこの丹沢山林の諸戸の森内にあります。これからお連れする「BOSCOオートキャンプ場」は、なるべく地形をそのまま活かすよう作られていて、都心近郊にありながら自然が豊かなエリアです。BOSCOはイタリア語で「小さい森」という意味です。

お客様には食材だけ用意して頂いて、後はレンタルでバーベキューなどを楽しんで頂けます。キッチンは温水が出ますし、トイレはウォシュレットが完備されていて女性にも人気です。昆虫採集もできますよ。カブトムシは標高が高いので無理ですが、ミヤマクワガタが採れます。

今、キャンプブームでお客様も大勢いらっしゃっていますし、CM撮影などに使って頂いています。最近の某カレーのCMの背景はここなんですよ。

 

高井

林業は、木の値段はどんどん下がってしまっているのに、人件費は逆に上がっているのが厳しいところですね。

 

御代川様

そうなんですよね。諸戸の木は高い評価を頂いており、いくらか高価ではあります。ただ、高いと言っても、やはり市場の動向に引きずられて価格は落ちてきています。

 

高井

次にね、宮大工はどれくらいいるんですか?

 

御代川様

実はそんなにはいないです。私たちは社寺への販売もしているので、その繋がりで何名かはお付き合いさせて頂いています。

それから、地元の方々、ここでしたら秦野市近辺の棟梁達を大切にしています。以前、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」の大工部門でチャンピオンになった方もいますよ。今、製材に関わる方も技術の継承に苦しんでいるようです。

 

高木

木を植えるというのは、何年先まで考えて計画立てているんですか?

 

御代川様

先代の方々の考え方がすばらしく、当時は皆さん、あまりそういうことは考えてなかったと思うのですが。100年先を見据えて、どういう作業をしたらよいか、など考えて完成図のようなものを描かれていたと思います。

諸戸家は初代から代々、山を売るなと言われてきていますので、それを守っていきたいと思っております。そのためにも、未来へ山を残すような設計をするべきで、私たちも模索中です。

 

以上

 

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