2016年11月アーカイブ

IMG_2469.JPG

2016年11月12日(土)7:29 目黒区青葉台3にて菊を撮影
花言葉:「破れた恋」

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第1回

 

1.はじめに

昨今テレビや新聞を毎日賑わせている「人工知能(AI)」。人工知能が私たちの生活に及ぼす影響は甚大であり、今まさに大きな注目点です。その進化の速度は凄まじく、未来の話と思っていては取り残されてしまう。

より多くの方々にこの問題を身近に感じ、また考えていただく機会となることを願い、今年4月~6月、「週刊 労働新聞」において連載「人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~(全12回)」を企画した。僭越ながら私は最終回を担当させていただき、「AIの発展に備える」ことの重要性を多少なりとも啓蒙させていただいたつもりである。

 

さて、この連載は私を含め5名で執筆したのだが、このうち、ユカイ工学株式会社 代表 青木俊介氏と、株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長 藤井薫氏の2名を講師にお招きし、去る10月12日に、連合会館(千代田区)において、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」を開催した。企業におけるAIの活用状況や人間とAIのこれからの付き合い方についてお話しいただき、大盛況のうちに幕を閉じた。

当日の来場者数は80名の満員御礼となり、ありがたくも定員超過のためご来場をお断りする方が生じる事態となった。開催後の参加者アンケートには、次回の開催を望まれる声が少なくなく、世間のAIへの注目度が高まっていることの証左であろう。

これからますますAIに関する議論は加熱し、いかなる企業・個人においても大なり小なり影響を受けざるを得ない。この問題について少しでも多くの方にお考えいただくべく、私は今後も鋭意活動してゆく所存である。その一つとして、このブログで、今回のセミナーの概要を、講師の方のご感想を含めご紹介していく予定である。ご一読いただき、AIへの関心を深めていただく機会となれば幸いである。

高井・岡芹法律事務所 会長弁護士   高井 伸夫

 


2.講演概要

◎第1部 センサデータの活用で始まった、AIを活用した職場環境改善

(講師:青木 俊介 氏(ユカイ工学株式会社 代表))

センサを活用して私たちの労働環境からビッグデータを作り出し、AIを活用して職場環境改善に役立てるサービスが始まっている。各企業の取り組み事例をご紹介いただきながら、今後AIが職場環境改善にどう利用されていくかについて解説いただいた。

 

【主な内容】

●センサを活用した労働環境計測の事例

●デバイスの例

●AIによる分析を活用した職場環境改善事例

●人事分野におけるセンサデータを活用した最新のサービス内容の紹介 など

 

◎第2部 今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~

(講師:藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長))

今なぜ、人事がAIに向き合う必要があるのか?変化のキーワード、利活用の方向性、活用に向けた2つの壁、人間がやるべきことをベースにお話しいただいた。

人智を超える新たな力であるAIが、どう人事や企業組織を変えるのか?講師が人事プロフェッショナルやAIの先端研究者の方々との対話の中から掴んだ視座から「AI×人事が拓く未来」について語っていただいた。

 

【主な内容】

●変化のキーワードからみる

1.不可逆な経営環境GDP

2.サービス経済化

3.KKDからKDDへ

●人事における利活用の方向性

●2つのAの壁

1.A〇〇〇〇なくしてA〇〇〇〇なし

2.A〇〇〇〇よりA〇〇〇〇

●人間がやるべきこと

 

※次回は、セミナー当日の私からのご挨拶をご紹介し、AIと人間の違い、人間がAIより優れていることについて考える。

 

 

この記事にコメントをする
IMG_2467.JPG

2016年11月12日(土)7:26 目黒区青葉台3にてプリンセス・ドゥ・モナコを撮影
花言葉:「淑やか、温かい心」 


 

第17回人材グローバル化(3)
(2008年10月20日) 

 

 

孫文(1866~1925)は著作『三民主義』の中で「中国人はひとにぎりの砂である」との論説を紹介している。つまり、乾いた砂粒は独立していて決してくっつかず、石にも、まして岩にもなり得ない。

一方、わが国では聖徳太子の「十七条憲法」(604年伝)1条が「以和爲貴(和を以って貴しとなす)」とし、国家君が代が「さざれ石の岩の巌となりて苔のむすまで」と謳うように、「和」「協調」が何より重んじられてきた。これらは国民性・民族性の違いと言うほかはなく、互いの特徴として認め合うしかない。日本人の中にはとかく「中国人に騙された、裏切られた」と嘆きあるいは怒る者もいるが、それは違う。基本的に、個人主義と集団主義の相克に過ぎないのである。そして、残念ながら世界では日本だけが集団主義であると言っても過言ではなく、個人主義は中国のみならず諸外国にほぼ共通する文化である。即ち、日本は万世一系の天皇のもとに「和」や「集団」を重んじる風土が形成されたが、諸外国の王朝・政府は革命で覆ることが半ば当然であり、人民は「公」を信頼し得ないとして個人主義とならざるを得なかったのである。そのため、日本は自らを変質させなければ、グローバル化対応を果たせないという宿命を負っている。

個人主義の内容を分かりやすくいえば、「権利の極大化・義務の極小化・責任転嫁」と表現できる。個人主義の国では、誰もが自らの利益を絶えず追求する“常在戦場”の精神に基づき、権利を可能な限り小さくし、いかに責任を負わないようにするかが行動基準になる。したがって、日常的買い物でも値段を高めに吹っかけ(権利の極大化)、買い手はそれを値切ることが義務なのである(義務の極小化)。

また、日本の契約書は「この契約に定めのない事項が生じたとき、又は、この契約各条項の解釈につき疑義の生じたときは、信義誠実の原則に基づいて協議・解決する」旨の条項を置いているが、中国ではこうした曖昧な文言は意味をなさない。中国人・中国企業との契約は、アメリカ的に細大漏らさず規定しなければ、彼らにとって信義誠実の原則=「権利の極大化・義務の極小化・責任転嫁」の行動原理に基づき対応され、当方は想定外の損害を受ける。

 

書面が必要な労働契約

これらを、日本人の感覚のみをもって中国を「とんでもない国!」と批判すること自体が、世界を知らない平和ボケ以外のなにものでもない。「衣食住足りて礼節を知る」(管子)というが、新興国の礼節に関する部分は、国民の一人ひとりが豊かになり国際的地位が高まることによって初めて備わっていくものなのである。それを興隆期に求めても、ないものねだりというほかはない。現地人のいささか気になる行為等をも包容する姿勢こそ大切である。

労働契約の面でも、中国の労働契約法10条は、労働契約締結の際に書面を取り交わさなければならない旨定めているが、これは前述の民族性に基礎を置くものである。日本では徐々に書面化が進んでいるとはいえ、口頭でも労働契約は成立し得る。

また、人事労務との関連で言うと、集団主義である日本は基本的には集団管理でよいが、個人主義である中国では大衆の統御が極めて困難であり、個人管理を徹底しなければならない。これが中国の人事労務の一番のコツである。それゆえ、中国人の就業規則が日本のような曖昧な文言では実効性がなく、微細に亘り規定する必要がある。例えば、規律違反に対する罰金規定では、対象となる行為と金額が具体的かつ詳細に列挙されているのが一般なのである。

なお、個人主義の人事管理の弊害の一つは、部下に自分より能力のある者を迎えたがらず、迎えたとなると功績を貶め、“足を引っ張る”傾向がある。このことを念頭に置いて人事管理を進めなければならないこともまた、個人主義の国民に対する態度として極めて肝要である。

 

国外追放や入国拒否も

こうした彼我の様々な差異を理解し、現地でも日本国内でも国籍に拘らない働きのできる人材を得るためには、①ダイバーシティの理解、②柔軟な価値観、③人権を重んじる振る舞いを念頭においたグローバル教育が重要となる。異なった考え方・思い方・感じ方・価値観を持つ多様な人材が交流する中で、発展的かつ創造的な成果が生み出されるのである。多様性の概念=ダイバーシティ(diversity)は、企業の現場でも業績の向上につながるものとして評価されている。

香港の地下鉄工事(1975年)を請け負った日本の建設会社担当者の当時の経験談を紹介しよう。この工事は英国人・広東人・韓国人・日本人の4つの異なる民族が協力して完成した。始めはお互いの言葉が通じなかったため摩擦もなかったが、少しずつ言葉が分かりはじめコミュニケーションが可能になってくるとケンカがみられるようになり、人間関係上の葛藤が凄まじかったという。しかし、彼らはケンカや衝突を経ることによって相互理解を深め工事は安全に進んだ。

①日本企業は人を見抜く目利きとなることを心掛け、ダイバーシティ概念を理解できる人材を見出し、教育・評価し、海外に派遣することが第一に肝要である。②そしてそれには、価値観において硬直的な人物は不適であり、フレキシブルな思考を展開できる人材が必要である。特に、日本から派遣するトップおよびナンバー2には、国内で成功した人よりも、多様な文化に喜んで対応できる人を選ぶべきである。

さらに、これらの大前提とも言えるのが、③現地の国民の人権を重んじる日本人派遣員の意識・姿勢・振る舞い、つまり人間としての真摯さである。例えば、中国の日本人派遣員の中には、国外追放を命じられる者や再入国を拒否される者もいる。それは現地の反政府的団体に関与した等の政治的理由だけでなく、現地女性とふしだらな行為に及んだことを理由とするビジネスマンの例も非常に多い。そのような人物を擁する企業に属する者が、中国の人権問題を云々すること自体、論外である。

グローバル化の意義を深く理解し、人権を尊重する所作・振る舞いを身に付けさせることは、グローバル化対応教育の重要な一章なのである。

また、グローバル化教育は日本人だけでなく現地人に対しても重要であり、上記①~③は彼らにも同様に求められる。そして、日本での定期的・継続的な研修や、日本と現地で人材交流(転勤・出向・出張等)を行い、人の往来を実行することも教育効果が大きい。さらに、日本本社で海外子会社などを統括する部門の長やスタッフ・サポート部隊に、海外から優秀なスタッフを招致し実をあげるとともに、将来の海外子会社の幹部候補として育成することも取り組むべき課題であろう。

グローバル化を図るには、尖兵としての日本人派遣員は、現地人に対する教育的役割を一層強調しなければならないのである。

 

*****************************************************************************************************************

『去る10月12日に、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、
特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」
を開催致しました。次回よりAI特別セミナーの概要、および講師の方のご感想を全5回に分けてご紹介致します。

去る10月12日に、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」を開催致しました。

次回よりAI特別セミナーの概要、および講師の方のご感想を全5回に分けてご紹介致します。

*****************************************************************************************************************


 

この記事にコメントをする
2016111704.jpg

右上から時計回りに 全て2016年10月29日(土)に撮影
10:33 グラジオラス 花言葉:「用心、思い出」
10:49 ハマユウ 花言葉:「清潔、どこか遠くへ」
11:12 ケイトウ 花言葉:「おしゃれ、風変わり」


 

~株式会社新規開拓代表取締役社長朝倉千恵子様が韓国ソウル大学で日本を代表してご講演されました~

 

兼ねてより親しくさせていただいている、株式会社新規開拓代表取締役社長朝倉千恵子様が、この10月25日に、韓国のソウル大学にて、日本の女性経営者で初めて、「日本で活躍する女性社長、成功の条件 ~ 勝ち残る企業・人財の条件 ~」というテーマで講演された。

今回、このような機会を作って下さったのは、朝倉様が主宰している卒業生2,000名を超える女性限定の塾「トップセールスレディ育成塾」の34期生である木下良美様よりご縁をいただいた株式会社ユナイテッド・ブックス 代表取締役社長 神澤 享裕様とのこと。

神澤様は、韓国で20年以上ビジネスを続けてきており、ビジネス誌の出版会社としてはナンバー1だそうで、全ての出版を合わせても、韓国で5本の指に入る業績を誇られるという。

今年の2月、神澤様との会食時に、朝倉様より「韓国で講演をやりたい」旨お伝えしたところ、その後、韓国国内で奔走して下さり、ソウル大学 大学院 教授 金 顯哲様をご紹介いただき、講演が実現したとのことだ。

神澤様曰く、「韓国は元々儒教の国であり、礼儀礼節をとても重んじている国。本来大切にしてきた礼儀礼節が、家庭から崩れていってしまっているような現状がある」とのことだが、このことも講演実現の背景にあるに違いない。笑いあり、感動あり、訓練ありの講演会に終わったそうだ。

更には、今から遡ること約10年前、朝倉様は、講談社より自身の著作を韓国語に翻訳出版されていたことも、今回ソウル大学での講演実現を後押ししたに違いない。

朝倉様は2011年11月中国(上海)での講演にて、「礼儀礼節に国境はない」と感じられたそうですが、今回のご登壇も、正に国境を越えたソウル大学の皆様に、「礼儀礼節が如何に大切なのか」を伝える良い機会になったということでしょう。

こういった国際貢献活動をする企業が増えることが今後の日本にとっておおいに必要なのではないでしょうか。同社及び朝倉様の今後の活躍を応援したいと思います。

参考:株式会社新規開拓 朝倉様のブログ「10月25日(火)ソウル大学大学院 講演会」

http://s.ameblo.jp/shinkikaitaku-asakura/entry-12213903520.html

 

~草間彌生氏の平成28年度文化勲章受章ニュースに際して思い出したこと~

 

私はずいぶん以前に、草間彌生氏に直接お会いしたことがある。

今ほど有名になられる前であったが、当時、マネジャーの高桑君と一緒に事務所に来所され(1989年12月)51枚の版画を購入した。その後も時たま個展の案内状をいただいたが、それ以来お付き合いはないので、全く私の世界からは遠い人になってしまっている。

当時の草間さんの絵を見ると、内なる欲求を絵にぶつけていたような気がしてならない。購入した作品のうちの何枚かは私の友人のご子息やご令嬢の結婚のお祝いとしてお贈りした。大変価値の高い美術品が、数点、私の手許を離れたことになるが、私がまだ美術品に十分目覚めていない時に購入した作品だったので、当時は惜しむ気持ちはなかったのである。

本年10月28日付けのニュースで、草間氏が文化勲章を受章されたと聞き、心からのお祝いの気持ちを抱くとともに、昔のことを思い出した次第である。私にとっての大ニュースであった。

 

以上

 

 

この記事にコメントをする

IMG_2452.JPG

2016年10月29日(土)10:51 白浜野島崎にて撮影

 

 

第16回人材グローバル化(2)
(2008年10月13日) 

 


今回は小生が中国での実体験に基づいて、現地の情報収集の重要性を指摘する観点から感じていることを述べてみたい。

 

まず群れから飛び出す

前回、日本人の群れたがる習性を批判的に紹介したが、日本人には「群れざるを得ない」事情がある事も否めない。なぜなら、日本人は欧米では人種的に差別され、中国等アジアでは対抗意識を抱かれるため、それらに伍していくためには自己防衛的な意味で集団の力で活動せざるを得ないのである。この点、米国に「日本人村」がなくなったのは、ひとつの進化であるといってよい。日本人は個々が切磋琢磨した結果、有能であると認知されてきたからこそ、集団になる意味が薄れ、「村」がなくなった。一方、韓国人村や中国人村はまだ存在するのであり、彼らは未だ日本人ほど認知されていないということになる。

しかし、いかに自らを守るために「群れざるを得ない」側面があったとしても、勇気をもってそこから飛び出し現地の人々と積極的に交わらなければ、更なる成長を遂げることはできない。例えば中国で日本人幹部だけで経営方針を決めたり、人事労務問題を処理すること自体、現地の人々に違和感・不信の念を持たれ信頼を得られない。その結果、士気の低下や労働生産性の低下をもたらすのである。

私が上海で主催している勉強会「上海高井倶楽部」は、非営利の相互扶助組織で、日中のビジネスの架け橋たらんとして2002年11月に立ち上げたものである。会員は在上海の日本企業百数十社だけでなく、多くの中国人にも会員や理事としてご参加いただいている。日本人が中国人との真の信頼関係を作り上げるためには、おごりや慢心を捨て、謙虚に中国人に学ぶ姿勢を持つことが重要であるし、また、日本人だけでは結局「群れる」ことになり会の発展性がないからである。こうした交流の仕組みを作り、現地の人々との交わりを日本人に体験してもらう「場」を提供することも、この会の趣旨である。会の費用は私の事務所がいくらか負担するボランティア組織であるが、日本人が「群れる」ことを回避するための、現地社会に対する貢献活動のひとつである。

現地の人々と交流すると彼らから大いに尊敬され、いろいろな重要な情報を得ることが可能となるものだが、これは実際に体験してみなければ分からない。現地の人との交流は心掛けひとつで容易に実行できるグローバル化の第一歩なのである。

コミュニケーション能力というと、「TOEFLのスコア××点以上」という話になりがちであるが、人間同士の交流は、まずは相手に好意好感を持ってもらう人間性を表現することから始まることを忘れてはならない。

相手に好感を持ってもらえるほどの語学力とは、単なる挨拶や日常会話レベルでは不十分で、電話で当意即妙の会話をして笑いを誘うことができる程度の能力をいう。中国人と自然に交わり、冗談をいい合い、雑談・歓談することによって互いの心の絆は強くなっていくのである。現地の企業内で日本人だけで固まっていては、どうしても現地の人とコミュニケーションの本質である意思疎通を欠き、全社一体となって企業活動を展開するような経営の一体感の形成ができなくなってしまう。

中国人は個人主義であるがゆえにとかく情報を公開せず、社会的には透明性が低い。こうした、事実を隠し正確に伝えないという中国社会の傾向からすると、情報の希薄化・途絶化は企業活動にとって極めてリスキーな状態をもたらすことになる。

 

日本総領事館に足運ぶ

さて、内販を進めるに当たってはクライアントに好意好感を持ってもらうことが必要だが、とりわけ政府の要職の方にそうした感情を抱いてもらうことが肝要であり、そのことが従業員や企業を取り巻く利害関係者に、安心感・安堵感を与えることにつながる。十分なコミュニケーション能力が必要となる。

現地の人々との交流を深めて現地に溶け込むことに加え、さらには政治的背景を築くことは、日本人企業として非常に重要なことである。特に新興国には民主主義が十分に発達していないところがあるから、現地政府の人と親しくなって交際し、こちらを理解してもらい、政治的背景を築くことが重要である。

それは何も難しいことではなく、例えば現地政府の行う講演会等に出席し、名刺を交換し、御礼状を出すというささやかなことが端緒となる。より効果的なのは、質問をして適切な回答を得た場合に感謝の意を表すべく御礼状を出すことである。さらに折に触れ懇談会の席を設けてごく少人数でお話を聞くことになれば、現地政府との間で理解が深まり好感を持ってもらえるようになる。中国で日本企業が日本人だけで経営し、中国人や地方政府と交流する機会を得ようと努力しないならば、結局は中国人従業員の信頼を得られない。

また、情報という観点からいえば、現地の日本総領事館等政府機関の重要性も見逃してはならない。実際に足を運ぶ人はなぜか少ない。前述の「上海高井倶楽部」では、総領事館等の方にも折りに触れ勉強会にご出講いただく等の活動も行っており、会員から好評を博している。

以上のように、私がグローバル化のための留意点として現地で特に実感している①日本人同士で群れないこと、②真の意味でのコミュニケーション能力を磨く、③現地における政府関係者との交流の重要性、という3テーマを中国において日本企業が疎かにしていると、次の3つのリスクが発生するだろう。

 

人事労務情報が途絶も

第1に、中国人からの人事労務上・経営上の肝心な情報が希薄化ないし途絶化する。その結果、経営が日常的に様々な危険にさらされ脆弱になる。第2に現地の人の積極的な協力が得られず、企業内で一体感の形成ができない。経営者にコミュニケーション能力がなく、現地政府の理解を得ていないということ自体が、中国人のビジネスマン・労働者に潜在的不安感を抱かせることに繋がるからである。第3にその結果として労働者の定着率が悪くなり、積極的な協力が得られず、結局は生産性が上がらないという結果を招く。

(社)日本能率協会(JMA)の報告書「中国における日系企業の経営のあり方」(2008年4月)の調査結果によれば、上海の日経企業にとって現在の最も重要な経営課題は「優秀な中国人幹部の採用、定着と育成」(100%)であり、人材マネジメントの最も重要な課題は「優秀な人材の採用・定着」(80%)であるという。つまり中国における企業経営はリーダーシップ・マネジメントにかかっているということである。

何はともあれ、日本企業が海外に進出し、現地化に成功して現地で確かな経営を行うためには、現地の正確な情報収集が何よりも必要である。要するに、彼を知って初めて、市場・ビジネス戦場でフルに企業の能力を発揮できるからである。

 

 

この記事にコメントをする
  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第5回目です。
  • 今回のゲストは、諸戸林業株式会社 環境林業部 取締役 御代川彰徳 様です。

 

■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第5回) ■ ■ ■
諸戸林業株式会社
環境林業部 取締役 御代川彰徳 様
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


[諸戸林業株式会社 環境林業部取締役 御代川彰徳 様とのご縁について]

昭和31年(1956年)に父に連れられて渋谷の南平台の諸戸精文氏を訪ねたことがある。山林王の1人であったが、その時からすでに木材の将来性をおおいに危惧されていた。小生の父は三重県桑名郡古浜村の生まれだが、諸戸精文氏は三重県桑名市において山林業を営んでいたので面識を得て、仕事を父が頂いていたのではないかと思う。そんな縁があってか、小生は父に連れられて南平台のお屋敷にお邪魔したのだろう。

その後、修習時代に弁護士修習の指導教官であった小川保男先生に師事したことによって林業への理解を深めた。小川保男先生はかつて林野庁に勤務されていて山林のことにも詳しかったのである。そして小川先生は山林に関するエッセイを書いておられて、それを本にまとめられていた。小川先生によって小生も山林のことについてさらにいささかの知識を得たのである。その後、小生は農業に関してエッセイ等を書いたが、山林については全く触れることができなかった。ところが、今年になって、ひょんなことから諸戸精文氏のことを思い出して諸戸林業を訪れることになったのである。諸戸精文氏はすでに鬼籍の人であったが、現在は諸戸清光氏が5代目社長であった。諸戸精文氏は2代前の社長で、諸戸林業3代目社長であったのである。

山林の実情を聞こうと思い会社に手紙を出したところ、御代川彰徳様が指名されて私の対談に応じてくださったのである。御代川氏との対談は諸戸林業の丹沢の山林事務所で1時間ほど行ったが、大変すばらしい人柄の良い方で闊達に話してくださった。

最後に話が終わってから「BOSCO」という名のキャンプ場を見せてもらった。そこはまさに千客万来であって、諸戸林業にとっては、利用されたお客様に金銭的に山林の手入れを支えて頂いていることになる重要な部門だということだった。

 

諸戸林業:三重県亀山市、津市、名張市、神奈川県秦野市、静岡県加茂郡南伊豆町、松崎町に山林を保有
http://www.moroto.co.jp/group_list/moroto_forest.html 

諸戸林業丹沢事務所

写真は、諸戸林業丹沢の山林事務所2016年9月11日撮影

【今回のインタビュアーは以下の通りです】

  • 弁護士 髙井伸夫
  • 高木光彦庶務・ドライバー

(取材日 2016年9月11日10時~11時 於:諸戸林業丹沢の山林事務所)

 


 

高井

丹沢の諸戸山林は今、従業員は御代川さんを入れて3名だそうです。山から木を切り出す場合も含めて総員何名ですか?

 

御代川様

10名です。丹沢に3名、キャンプ場に1名、後はアルバイト5~6名で、他に三重県中津の山に1名です。

他に製材所が在りそこに3名、販売メインの担当者が1名です。確かに、人を多く採用し、生産力を上げればそれだけ売り上げは上がるかもしれません。しかし、木材が値下がりしている今の状況で、多量の木を切り出してしまっていいのか、先代が植えた大切な木をそのような売り方でいいのかという考えのもとに、できるだけ人員を最低限に配置しています。

 

高井

御社の本社はどこですか?

 

御代川様

三重県桑名市です。東京支社は丸の内です。弊社は森林認証制度を取得しています。SGECはきちんと管理されている山という事の認証機関です。

※SGECとは
一定の基準等を基に適切な森林経営や持続可能な森林経営が行われている森林及び経営組織などを認証している機関です。

 

高井

僕は3代目の諸戸精文さんにお会いしたことがあります。諸戸氏はその時はもう60歳か70歳くらいでした。

 

御代川様

後ろに写真があります。今の社長は5代目で清光氏です。4代目は現在会長の精孝氏です。

 

高井

江戸時代の写真もありますね。こちらは丹沢事務所の写真ですね。

 

御代川様

この丹沢山林を取得したのが明治29年です。当時は荒廃した雑木林だったそうです。その時代は木を燃やして燃料にしていたから、それを切りながら、一気に木を植えるように地(じ)拵(ごしら)えしていきました。

植林に着手したのは明治31年です。植林にあたり紀州産の檜(ひのき)の苗木を採用しました。

船で大磯港か二宮港まで、そこから馬車あるいは馬の背に乗せて運び、更に山道は馬の背に乗せたり、人が持ったりしながらヤビツ峠を越えて運搬したと言われています。植林も結構山の上の方まで植えられています。

植える場所も考えられています。杉と言うのは水を好むので沢沿いに植えているんです。広葉樹は養分が下に落ちていくということで、欅(けやき)などを尾根沿いに残したようです。中間部に檜を植えて、沢沿いに杉を植えているというわけです。

 

高井

『諸戸百年檜』とはどういう木ですか?

 

御代川様

この丹沢山林は900haで、樹種はだいたい檜が80%、杉が20%です。実は諸戸の100年の木はそんなに太くなくて、直径40cm弱くらいです。

木を植えるところから密度管理をしています。木の成長を抑えることで、年輪の密に詰まった高品質な木が育つからです。今は1haあたり2500本くらいの密度ですね。2500本は密植とは言いません。諸戸は通常8000本で間引きするのですが、それもあまりしませんでした。

もうひとつの理由は木が真っ直ぐに伸びることです。空間があいてしまうと木が光のある方へ伸びてしまいます。だから、真上の方にだけ光が当たるように適度な密度に調整しているのです。

 

高井

どこに卸しているのですか。直接販売もしているのですか?

 

御代川様

うちは販売経路も持っています。建築材料としては、住宅から公共施設、寺社仏閣など幅広くご使用いただいています。販売先は有名なところも多いです。直接、消費者に販売するようにしていますが、実際は原木市場や工務店、問屋にも出しています。

寺社仏閣に使用されていると言いましたが、実は有名な文化財になると、110年の木でもまだ若いと言われてしまいます。最低でも150年の木が求められます。

 

高井

将来性のある事業所はどこになるのですか?

 

御代川様

将来性と言いますか、実は林業は今なかなか厳しくて、本業だけですと成り立たないのが現状です。キャンプ場事業や別部門でゴルフ場事業も行っています。林業部門はキャンプ場事業で補っている部分もあります。

もちろん補助金もあります。しかし、補助金には将来性がありません。私たちの目指しているのは補助金がなくなっても、山を維持できる体制を作ることです。

 

高井

キャンプ場はいかがですか?

 

御代川様

はい、順調です。しかし、キャンプ場運営は黒字を追うためだけではありません。山をより良くしていくためという目的もあります。

キャンプ場のご利用を通して、お客様に自然や山のすばらしさを感じてリフレッシュして頂き、その対価として利用料を頂いて、その収益をもとに山を更に良くしていく。間接的にお客様に山林の手入れを支えて頂いている、山へ投資して頂いている、というように考えています。

キャンプ場はこの丹沢山林の諸戸の森内にあります。これからお連れする「BOSCOオートキャンプ場」は、なるべく地形をそのまま活かすよう作られていて、都心近郊にありながら自然が豊かなエリアです。BOSCOはイタリア語で「小さい森」という意味です。

お客様には食材だけ用意して頂いて、後はレンタルでバーベキューなどを楽しんで頂けます。キッチンは温水が出ますし、トイレはウォシュレットが完備されていて女性にも人気です。昆虫採集もできますよ。カブトムシは標高が高いので無理ですが、ミヤマクワガタが採れます。

今、キャンプブームでお客様も大勢いらっしゃっていますし、CM撮影などに使って頂いています。最近の某カレーのCMの背景はここなんですよ。

 

高井

林業は、木の値段はどんどん下がってしまっているのに、人件費は逆に上がっているのが厳しいところですね。

 

御代川様

そうなんですよね。諸戸の木は高い評価を頂いており、いくらか高価ではあります。ただ、高いと言っても、やはり市場の動向に引きずられて価格は落ちてきています。

 

高井

次にね、宮大工はどれくらいいるんですか?

 

御代川様

実はそんなにはいないです。私たちは社寺への販売もしているので、その繋がりで何名かはお付き合いさせて頂いています。

それから、地元の方々、ここでしたら秦野市近辺の棟梁達を大切にしています。以前、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」の大工部門でチャンピオンになった方もいますよ。今、製材に関わる方も技術の継承に苦しんでいるようです。

 

高木

木を植えるというのは、何年先まで考えて計画立てているんですか?

 

御代川様

先代の方々の考え方がすばらしく、当時は皆さん、あまりそういうことは考えてなかったと思うのですが。100年先を見据えて、どういう作業をしたらよいか、など考えて完成図のようなものを描かれていたと思います。

諸戸家は初代から代々、山を売るなと言われてきていますので、それを守っていきたいと思っております。そのためにも、未来へ山を残すような設計をするべきで、私たちも模索中です。

 

以上

 

 

この記事にコメントをする
IMG_2417.JPG

2016年10月23日(日)8:07 港区麻布十番1にてカランコエを撮影
花言葉:「幸福を告げる、おおらかな心」



第15回 人材グローバル化(1)
(2008年10月6日) 

 

 

アジア各国のグローバル化が猛スピードで進むいま、日本に時間的余裕はない―。高井伸夫弁護士は、欧米人と比べ人種的に劣位に立つ日本人がグローバル化を成し遂げるには、世界にはない繊細な商品、サービスを提供し続けることが不可欠とした。

 

私は弁護士として1973年に独立して東京に事務所を構えたが、さらに99年には中国上海、06年には北京にも事務所を開設し、ほとんど毎月中国に出張している。海外にも拠点を置くようになって一層強く感じているのが、グローバル化に視点を置く人材が、致命的に不足しているということである。

一般に、グローバル化における基本的要件・留意点は、①人材の多様性の許容・異文化への理解、②語学力を含むコミュニケーション能力の獲得と経営の現地化、③人事労務業務のグローバル対応―等々と言われている。

しかし、この問題は、そもそも日本人に「多様化」ができるかどうかという大前提から議論を始めなければならないと私は常々考えている。なぜなら、日本人は、国土が島国であるという地理的位置、単一の民族でひとつの言語を用いていること、そして連綿たる歴史や文化等を背景に、集団的かつ排他的行動をとりがちで、同一性価値観から脱皮しにくくなっている。これに天皇制や鎖国的心情からくる「妙な優越感と劣等感からくる変な自信」がないまぜになり、日本人は残念ながら集団主義であり、どうしても異なった価値観・思考・態度をなかなか容認しない。

 

劣位におかれる日本人

近世の歴史をみれば、明治以降、政治・軍事・経済面では西洋に拡大したが、日本人一般の世界はまだ本質的には西洋にまで至っていない。言葉・歴史・文化なども世界的な目で見るようになっていない。グローバル時代といえども、日本人伝来の価値観・視野は日本のままにとどまっている。シンガポール、インド、マレーシアなど旧植民地国の視野が広がっているのと対照的だ。このように、日本人は、グローバル化を図っても現地人に溶け込んで仕事をすることが得手ではないと思われる。

加えて日本人は黄色人種であるがゆえに現地化できない宿命を背負った民族でもある。グローバル化にはコミュニケーション能力が絶対的に必要で、日本人がこの点それほど劣っているわけではなく、この人種的問題こそ日本人が多様化や現地化を推進できない大きなハンディと思われてならない。

つまり、中国・ベトナム・インド等アジア各国で私がいつも痛感するのは、白人の如何ともし難い優位性である。アジアの人々では口ではいかに欧米人を悪しざまに言おうとも、実際には白人を崇拝し最大件の敬意を表し、服する。そして、日本人はアジアでは白人に対して劣位な立場に置かれるのが常である。アジア各国の人々は日本人に対する対抗意識を持ちがちで、ひどい者は反日感情を持つに至り、さらには日本人を屈服させようとする意欲すら持つ。黄色人種である日本人は現地の人が服する存在ではなく、それゆえに企業経営の実態を現地人に委ね得ず、真の意味で企業経営の現地化ができない。

こうしたアジアの人々の「白人崇拝の心理」及び「黄色人種である日本人に対する対抗心」の根本原因は何だろうか。ひとつは人種差別的な意味ではなく、欧米文化を享受する場においては、欧米人が生来有している彫刻的な美しさや雰囲気が、アジア人よりもカッコよくてさまになると感じられることが深層心理にあるからだろう。例えばジーンズの着こなしの違いやラスベガスとマカオのカジノでの光景の違いを見ても、如何ともし難い。洋装は欧米人の体型に合うもので、音楽やバレエ・ダンス等彼ら自身が育んだ文化や娯楽は、彼らを堂々と立派に見せる。また、もはや実際上の国際語となっている英語を母国語としていあるいは母国語同様に用いている彼らに、仕事のうえで服する気持ちが働くことも自然の成り行きかもしれない。

このように、白人の優位性は是認してしまうが、同じ黄色人種である日本人には優位に立たれるのを忌避するアジアの人々の心理的なレベルの問題として、日本人にとって、グローバル化は容易ではないことを肝に銘じて、現地化等に取り組まなければならない。つまり、日本人が現地で尊敬を集めグローバル化に成功するためには、勤勉で正直でよく働くという資質、さらには精神性の高さをも訴えなければならない。さらに他の国では決して真似できないような繊細できめ細やかな特質を持った商品やサービスを、世界の市場に向けて提供し続けなければならない。

このようにグローバル化がいかに困難な事業であったとしても、日本企業にとってグローバル化は必然である。なぜなら、日本の社会は人口減により年々市場が縮小するのは不可避であり、人材も市場もグローバル規模で考えざるを得ない。

 

全人間性備えた行動を

グローバル化は、大企業だけでなく中小・零細・微粒子企業にとっても生き残りを続けるために絶対的に必要である。むしろ大企業に圧倒される小規模企業こそ、海外に活路を見出さなければならない。

そこで、グローバル化に適する人材を確保することが課題となるのだが、小規模企業は限られた経営資源の中で人材育成しなければならないことになるため、経営者自身がグローバル化の実体験者として、海外で生活し現地の状況をよく知ることが必要不可欠になる。

グローバル化するとなれば、企業は様々な国籍の人材を擁して様々な国に市場を求めざるを得ず、それを可能にするには、第1に、日本人経営者に多様な価値観を許容し尊ぶ姿勢がなければならない。まず、アジアの歴史から学ぶことだ。その成果としてリーダーシップもマネジメント力の発揮の仕方も良い方向に向かう。多様な価値観を持つ人材を統御していくのはそうした地道な努力なしには不可能である。アジア各国のグローバル化が猛スピードで進む今、日本には時間的余裕はあまりない。

それでは、こうした多様な価値観を生かしながら複雑な組織を率いるに当たって、リーダーに最も強く求められる資質は何か。良心と善意と人間性である。良心と善意に基づく行動は、国籍・民族問わず全ての人間を納得せしめるのである。

ハートワークが旨とする「真・善・美」、良心・善意・成長というキーワードは普遍的であるが、さらにその上位にあるヒューマンワークは、人間らしさを基調とし、全人間性・全人格をかけて「夢・愛・誠」を育み続ける働きであり、これこそが人類共通のものである。これらのキーワードで示される価値観基準で日本人が行動するようになれば、グローバル化において新たな展望が開けるであろう。

 

 

この記事にコメントをする

20161031コラージュ07.jpg

上から時計回りに
2016年10月16日(日)8:13 千代田区永田町2にて浜菊を撮影 花言葉:「逆境に立ち向かう」
2016年10月15日(土)16:15 上総中野駅にてブーゲンビリアを撮影 花言葉:「情熱」
2016年10月26日(水)14:04 千代田区二番町4にてパンジーを撮影 花言葉:「物思い」

 

 

第16回「エリートの抜擢とAI」
(平成28年4月25日) 

 

 

 

非正規労働者が雇用者の約4割を占める現状では、格差問題解消への取組みが叫ばれるのは当然である。しかし、社会の健全な発展のためには、格差問題だけに着目しては不十分であり、エリートの抜擢・育成が極めて重要であることを忘れてはならない。人間は競争社会に生きているのであり、競争こそが個人を磨き、組織の質を高めていくといっても過言ではない。

「人事の本質」とは、優秀な者を引き立てて、無能な者を排除するシステムということになるだろう。つまり、競争のなかでの抜擢と淘汰を繰り返し、ひとりで3人分の仕事をする人物への切替えを進めるのである。

本来、正社員は非正規社員と異なり、管理職候補・役員候補として採用された存在だが、有名大学出身者でも役員になれない者が多数いる。正社員は、抜擢の対象となるエリート社員と一般社員に二分され、年次を経るごとにその差異が明確になる。このプロセスでエリート社員はますます才能を開花させ、能力を高めていくのである。これが、人事のヒエラルキーの中で公然となっているのが官庁や裁判所の人事であるが、すべての職域でも行われていることである。

抜擢の基準は、まず人望を集める人間性があるかをみる。そして、知恵があるか、情感が豊かであるか、意思が明確かという「知・情・意」が基本となる。その上で、良心に従った先見性・判断力と勇気を発揮し、リーダーシップに溢れた人物かということになる。時代のリーダーを育成するには、なるべく早い時期から対象者の能力を見極め、選抜・抜擢を行う必要がある。リーダーシップは能力開発が難しい行動特性とされているため、若い頃からリーダーとして頭角を現している者を選抜・抜擢して、その中から候補者を選び出すのが効果的である。

ところで、リーダーシップとマネジメントの違いは何か。前者は未来を指向し、後者は現実を直視する力である。リーダーは組織の方向性と目標を創造し、果敢に実行する。マネージャーは与えられた目標を達成するために行動する。私の経験でいうと、マネジメント力だけの者は経営者にはなれず、リーダーシップを発揮できる者はマネジメント力も備え、経営者としての資質も有している。

抜擢された者が能力を発揮するには、働きやすい環境に置く配慮も重要である。先輩社員に指示しなければならない場面は非常に難しいが、前任者が補佐し、リーダーを先輩が邪魔しないような体制を構築しなければならない。

さて、新しい問題がある。近未来の社会ではAI(人工知能)が仕事の担い手として存在感を持ち、多くの職域で人間に勝るようになる。AIが人間を負かす現象が様ざまな場面で展開されていくのであるから、人間はAIに負けないよう精進することが求められる。とすれば、社会における競争はさらに激化せざるを得ない。

近未来のエリートは、AIとの協調を絶えず考えなければならず、エリートやリーダーに求められる「知・情・意」の質も、AIの存在を前提とするものに自ずと変化する。新たなエリート像・リーダー像の誕生である。これまで私は、企業・組織には同業他社から引き抜かれるような価値ある優秀人材が100人規模当たり3人はほしいと皆さんに話してきた。近未来には、この3人のなかにヒトが何人入るのか、働く者はまさに正念場を迎えるのである。

 

 

この記事にコメントをする

IMG_2421.JPG

2016年10月26日(月)8:28 千代田区三番町にてナデシコを撮影
花言葉:「大胆、純愛」

 

 

  • 話題のテーマについて各界で活躍されている人と対談をする一問一答形式のブログの第4回です。
  • 今回は、福山大学名誉教授大久保勲先生にお話をお伺いいたしました。

 


 

■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第4回)■ ■ ■

福山大学 名誉教授  
大久保 勲 先生 
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


[福山大学名誉教授 大久保勲先生 ご紹介プロフィール]

 
東京外国語大学中国語科卒。1961年東京銀行入行。1971年4月から3年1ヶ月日本日中覚書事務所駐北京事務所へ出向、1983年5月から3年2ヶ月東京銀行北京事務所長、1994年2月から再度東京銀行北京事務所長として赴任し、1996年4月の三菱銀行との合併で東京三菱銀行駐華総代表となり、1998年3月まで4年2ヶ月北京で勤務、合計10年5ヶ月の中国勤務をされた。2001年4月から2014年3月まで福山大学経済学部教授(09年から客員教授)をされ、その間2010年4月から4年間福山大学孔子学院長を兼務、現在は福山大学名誉教授、中国経済経営学会その他の日中関係学会、団体の顧問をされている。

大久保勲先生お写真

[今回のインタビュアーは 以下の通りです]

  • 高井伸夫 
  • 久佐賀義光様  

(対談は2016年8月16日に行いました。於:露山会館)

 

~大久保勲先生に聞く中国経済関係について~

 

高井

初めまして。大久保先生は福山大学の先生をされていたそうですね。今日は中国経済についていろいろとお話を聞きたいと思いますので宜しくお願いします。

 

大久保先生

初めまして、どうぞ宜しくお願いします。私は現在の三菱東京UFJ銀行の前身である東京銀行へ入行し、最初の10年間は全く普通の銀行マンでしたが、その後の30年間は中国関係一本で仕事をし、北京で通算3回、10年余の勤務をしました。その後は福山大学経済学部教授、客員教授として13年間中国経済等を担当し、経済学部長も4年間務めました。最後の4年間は、福山大学孔子学院長を兼務して、たいへんよい経験をしました。

 

高井

孔子学院とはどんな学校ですか。

 

大久保先生

孔子学院は中国の教育部(日本の文科省に相当)傘下の国家漢弁(HANBAN:教育部直属の事業単位のこと、HANBANとは漢弁の中国語読み)、孔子学院総部の指導の下、外国の大学が中国の大学の協力を得て運営する、海外への中国語教育の普及び中国文化のPRを行なっているもので、日本には14の孔子学院があります。最近の嫌中感の影響もあり、残念なことに日本の若者で中国語を学ぶ人が減少しており、中国への留学生が現在世界7位にまで落ち込んでいます。アメリカは中国と対立しつつも、毎年、劉延東副総理をトップに、米中人文交流ハイレベル協議を行い、長期的見地から双方の協力を強化しており、例えば、現在100万人の学生に中国語を学ばせたり、中国へ10万人の留学生を送り出す計画を進めています。

 

高井

大久保先生はどんな本を出されましたか。

 

大久保先生

1993年にジェトロの研究仲間で後に愛知大学教授となった今井理之氏と共編で亜紀書房から『中国経済Q&A100』を出版しました。これは台湾と韓国で翻訳も出されました。2004年に蒼蒼社から『人民元切り上げと中国経済』を、2005年に元中国大使館員の馬成三氏と共著で蒼蒼社から『2010年の中国経済』を出しました。その後は本を出していませんが、“21世紀中国総研”(www.21ccs.jp))という蒼蒼社の運営しているサイトに「大久保勲の人民元論壇」というコラムを持ち、51回ほど書いています。最近「”8・11相場改革“から一年――人民元対米ドル相場は上下に大きく変動して水準を徐々に下げる」と題して書きました。また、霞山会の「東亜」8月号に「人民元の問題点と今後の展望」と題する論文を書きました。

 

高井

大久保先生の中国経済のニュース・ソースは何処ですか。

 

大久保先生

いくつかの勉強会、定例講演会、シンポジウム等のほか、定期的なニュース・ソースは航空便で中国から取り寄せている「経済日報」と中国人民銀行サイト(www.pbc.gov.cn)及び「経済日報」のサイト「中国経済網」(www.ce.cn)です。

 

高井

私は3兆2千億米ドルの外貨準備を持つ金持ちの中国では経済崩壊など起こらないと思っています。大久保先生のご見解は如何ですか。

 

大久保先生

私は中国の状況を判断するのに、机の上の知識だけでなく、自ら中国を訪問し、また中国の役人や学者の話を出来るだけ多く直接聞くように努めています。私が初めて中国に駐在したのは1971年のことでした。日中覚書貿易事務所代表の岡崎嘉平太先生は、「君たちを北京に派遣するのは事務を執るためではない。中国の歴史を学び、中国の実情を知り、これから日本と中国はどのようにつき合ったらよいか、自分でよく考えなさい」と言われました。私たちは、何回も中国各地に出張しました。

中国は対外開放してからも、多くの困難に直面してきました。例えば、銀行の不良債権問題等です。そうした問題の解決に中国自身も努力しましたが、多くの外国の経済界の人たちや学者等も協力を惜しみませんでした。

まだまだ中国は、本当に多くの困難を抱えています。しかし、一年も欠かさず50年近く中国を見てきて、中国はどんな困難も克服できると確信するようになりました。

 

高井

IMFが建議した中国の企業債務と中国に債務危機が存在していないという理由を教えて下さい。

 

大久保先生

社会科学院学部委員で国家金融・発展実験室の理事長である李楊氏によれば、2015年末現在、中国の債務総額は168.48兆元で、全社会『レバレッジ率』(債務のGDPに対する比率)が249%となっています。住民部門が39.9%、金融部門が21%、政府部門が57.1%(地方融資の融資平台の債務17.7%を含む)、非金融企業131%で、国際比較すると非金融企業のレバレッジ率が高すぎる点が中国債務の問題です。この企業債務で国有企業部分の比率が65%に達しており、この国有企業の高い債務比率の解消が、中国債務問題のカギとなっています。

IMFは、いわゆる「第四条協議(※)」を終えて、中国の非金融企業の債務問題解決の重要性を提起しました。これは中国も十分認識していることであり、そのため特に年初来、鉄鋼業界と石炭採掘業界の過剰生産設備を減らすことに重点的に取り組んでいます。また、国有企業改革と債務処理問題は表裏一体をなすものです。

しかし、李揚氏も指摘するように、経済成長を促進しようとすれば、貸出増加が避けられず、レバレッジを減らすことと経済の安定成長保持の間の相応しい均衡点を探すことが重要になり、レバレッジを減らすためには、持久戦の構えが必要ということになります。実際に、過剰生産設備を減らすことについて、一部地方では鋼材価格が上昇しつつある中で、GDP成長をある程度犠牲にしてまで、設備解消をすることに逡巡したとのことです。

中国ではまだ債務危機は存在しないという理由として、流動性の高い資産で構成された主権資産(国の資産)の存在のほかに、中国の50%近い高い貯蓄率や外貨による対外債務が債務総額の3%以下であること、非金融企業の債務は、銀行融資が主体であること等が挙げられています。しかし、企業債務が銀行融資中心であることは、企業のリスクを銀行が主として負うことです。特に最近は、銀行の要注意先債権が増えている点が指摘されています。

高いレバレッジは必然的に高いリスクをもたらします。企業のレバレッジ率はとりわけ重視しなければならない。債務危機が存在しないと安心していることは出来ないと思います。

もし、企業の経済効率を高めることが出来なければ、そのレバレッジ率を引き下げることは出来ないわけです。レバレッジ率が高いのは主に国有企業であり、国有企業改革は待ったなしです。今年4月28日付けの英フィナンシャルタイムズ社説は、「最も衝撃の小さいシナリオでも、債務負担の軽減にまだ10年近くはかかるだろう」と書いています。

日本では概して中国経済に対して厳しい見方がされていますが、過剰設備の解消が進んでいること、第三次産業が発展していること、更に中国経済の量的質的発展が進んでいること等を見落としてはならないと思います。

 

※第4条協議:IMFが通常1年に1回、専門家でつくる代表団を各国に派遣し、現地の政府や中央銀行、ビジネス関係者から情報を収集して分析・審査し政策や経済運営等について助言を行っているが、IMF協定4条に基づくため「4条協議」と呼ばれる。

 

高井

ところで最近習近平総書記と李克強総理の不仲が取り上げられています。全人代の李克強の経済報告後に、習近平が拍手をせず、握手もしなかったことが日本のテレビで放映されましたが、実際はどうなのでしょうか。

 

大久保先生

先ず全人代の直前に習近平の辞任を求める公開書簡がネット上に出て、習近平が李克強を疑ったのでは、との見方があります。5月9日付け「人民日報」に、“権威人士中国経済を語る”が出ており、李克強首相批判が狙い、との見方もあります。

経済路線をめぐり対立激化、といえば大事に聞こえますが、いま中国経済は難しい時期にあり、習近平が中心の中央財経領導小組の主流派が考えるようには政策が必ずしも順調には実施されていないとの苛立ち、不満があるかもしれません。最近は、習近平は独裁批判を回避し、集団指導制を意識しているのではないか、毛沢東志向から鄧小平志向に回帰しているのではないか、との見方もあるようです。今後、十九回党大会の人事がどうなるかは、誰もが注目している点だと思います。

 

高井

いろいろとご説明をありがとうございました。ところで大久保先生は10年余、3度に渉って北京で勤務されましたが、一番思い出に残るお仕事は何でしょうか。

 

大久保先生

1971年12月20日に、元全日空社長で日中覚書貿易事務所代表の岡崎嘉平太先生を団長とする日中覚書貿易代表団が人民大会堂で周恩来総理にお会いした時、周総理は予め、どのような人が会見に出席するか承知しておられたようで、「この中に、銀行の人がおられますね」と言われました。私は最後列の席から恐る恐る手をあげました。「そんな末席にいないで、前にいらっしゃい」と言われ、中国側がすぐに私の座る席を作って下さったので、前に進み出ました。丁度スミソニアンの多角的通貨調整の直後でしたので、周総理は、人民元がいかに安定した通貨であるかを説明され、日中貿易を日本円と人民元で直接決済することを提案されました。覚書事務所職員として、私の重要なアサイメントの一つは日中貿易決済の円滑化であり、周総理のご提案は本当に願ってもないことでした。周総理から直接、財政金融関係のご質問をいただきましたが、勉強不足を痛感した会見でもありました。

当初、覚書事務所が中心になって準備しましたが、中国側が頭取の訪中を提案し、住友銀行浅井頭取、次に三和銀行の村野頭取を団長とするミッションが訪中して交渉を行い、そうした基礎の上に、1972年8月に東京銀行の原純夫頭取を団長とするミッションが訪中して合意に達し、円元決済が実施されることになりました。

 

高井

周恩来総理と直接お話をされたこと、そして円・元の固定相場を設定されたお仕事は真に素晴らしいことと感じ入りました。今後中国経済がどのように動いて行くかは日本にとっても非常に重要であり、今回のお話を参考としてウオッチして行きたいと存じます。今日はいろいろと貴重なお話を賜りありがとうございました.

以上

 

この記事にコメントをする

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

コメント欄に法律相談を書き込まないようお願い致します。

私のブログへのご意見・ご批評をお待ちしております。コメントは承認制とさせて頂いておりますが、基本的に掲載させて頂きたく存じますので、ご記名のうえご記入下さい。掲載不可の方はその旨ご記入下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

<   2016年11月   >
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

カテゴリ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
http://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成