2016年5月アーカイブ

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2016年4月23日(土)13:44 熱海親水公園にてオステオスペルマムを撮影
花言葉:「無邪気、健やかな」 

 

 

株式会社開倫塾
代表取締役 林 明夫 

 

「仕事で人は成長する」

 

Q1:「仕事で人は成長する」という高井先生のお教えとはどのようなことでしょうか。

A:

(1)現代は知識が基盤になった「知識基盤社会」(knowledge-based society Knowledge Based Society,ナレッジ ベイスト ソサエティ)ですので、知識・情報・技術をうまく組み合わせて用いる能力が求められます。

 

(2)また、国境を越えてモノやサービス、お金、人が盛んに、激しく行き交う「グローバル社会」(Global Society)ですので、歴史・宗教・言語・習慣・風俗・思想・文化・価値観などが異なった「多様な集団で交流する能力」が求められます。

 

(3)更には、超少子高齢化、人口減少、国と地方の債務の巨大化、デフレによる大消費低迷、頻発する経済危機、台風や豪雨・大震災による歴史的な自然災害の頻発、気候変動、開発途上国における人口爆発、テロの恐怖、核兵器の存在など、人類や国家、地域社会が抱える課題が山積した「課題山積社会」ですので、「課題発見能力」「課題解決能力」とともに高い志を持ち続け「自律的に行動する能力」が求められます。

 

(4)仕事を通して製品やサービスを提供することの顧客・お客様にとっての意味・価値は、顧客・お客様の問題解決、突き詰めて考えれば、顧客にとっての価値を創造することにあります。

 

(5)そこで、

①「知識・情報・技術を相互作用的に用いる能力」

②「多様な集団で行動する能力」

③「自律的に行動する能力」

この現代社会の課題を解決する鍵となる3つの基本的能力は、顧客・お客様の問題解決、顧客にとっての価値を創造することを目指す仕事の場でこそ必要不可欠な能力といえます。

 

Q2:では、そのような能力をどのようにして身に着け、顧客の問題解決、顧客価値創造に貢献したらよいのでしょうか。

A:

(1)大いに学んで、成長する以外にありません。「仕事で人は成長する」という高井先生のお教えをよくかみしめ、顧客の問題解決、顧客価値創造のために、学び続ける以外にありません。

 

(2)例えば、私が、37年前に創業した開倫塾という学習塾では、顧客を塾生、保護者、地域社会と定義し、学校での成績向上と希望校入試合格のために学校で不足する教育を補う、徹底的に補うことを目指しております。

 

(3)その業務の第一は、授業による基本的な学習項目の「理解」(ああこれはこういうことなのかと、納得して腑に落ちる、よくわかること)です。

 

(4)開倫塾では、この授業における理解のために、毎回の授業の前には「授業の設計」を行い、その内容を授業の設計図「レッスンプラン」に書き込み、授業中に気付いたこと、授業後に授業を振り返り、反省して改善すべきと考えたことを、詳細にメモをし続けることを20年前から奨励しています。

 

(5)内容が練り上げられたわかりやすい授業は、塾生の理解の促進に極めて効果的です。顧客である塾生の「ここがよくわからない」という問題解決、顧客価値創造に直結します。

 

(6)このようにして作り上げたレッスンプランは、一人一人の先生にとっての「成長の記録」といえます。

 

Q3:このほかに「授業における理解」を促進する取り組み、先生として「仕事で人は成長する」取組みはありますか

A:

(1)開倫塾では、自分にとっての「教え方日本一」を目指すよう、すべての先生方に奨励しています。

 

(2)教育改革は、自分なりの教え方を工夫し、教え方日本一を目指す先生方が授業で熱心に教えることで成し遂げることができると考えます。

 

(3)この考えのもとに、開倫塾では、毎年5月の最終日曜日に、本社所在地であり、また、日本最古の学校、足利学校のある栃木県足利市において「全国模擬授業大会」を開催しています。「チョーク一本で教育改革を」を合言葉に、毎年、教え方日本一の先生と、教え方日本一の団体を選出し、表彰をさせていただいております。

 

(4)ちなみに、本年度「第11回全国模擬授業大会」は、5月29日(日)に足利工業大学付属高校をお借りし、午前10時から午後5時まで開催。

本年は、北海道から京都までの52名の腕に覚えのある先生方が出場し、36名の審査員と50余名の学生ボランティア審査員が審査に当たります。

英語・数学・国語・社会・理科の各教科で15分ずつ授業をし、教科ごとの予選を経て、各教科の優勝者5名が決勝戦に臨みます。

サイドイベントとして、各教科をすべて英語で授業する模擬授業大会も開催。今後、日本でも必要な英語による教科指導を奨励しています。

 

(5)この全国模擬授業大会は、年々参加者が増え、本年度は500名を超えると予想されています。また、全国各地でも同様の大会が開催され、本大会の審査委員長をお願いしている小川先生が塾長をお務めの愛知県野田塾では、6年前から「全国模擬授業大会IN名古屋」を盛大に開催。全国各地から参加者を得ております。

この「全国模擬授業大会」は、学習塾の先生のみならず、予備校、私立学校、大学、短大、専門学校の先生方にも少しずつですが知られ、留学生や公立学校の先生方にも参加いただくようになりました。

 

(6)授業の前に、レッスンプランに従って、一人で、また、同僚や先輩の先生方の前で行う模擬授業も、先生としての力量向上、先生としての成長に役立ちます。同時に、全国的な規模で、「教え方日本一を目指す」という同じ志を持つ先生方が集い、励まし合う「全国模擬授業大会」のような試みは、先生としての成長にとって最も役に立つ取り組みの一つと考えます。

 

Q4:学習塾以外で、「仕事で人は成長する」取り組みはありますか。

A:

(1)現在、顧問を仰せつかり、2004年から2010年まで社外取締役を務めた、栃木県宇都宮市に本社があり、ハノイとヤンゴン、ビエンチャンに現地法人のある、精密機械工業・手術用縫合針製造のマニー株式会社(東証一部)では、「世界一の製品を世界のスミズミに」を合言葉に、毎年、主力製品ごとに果たしてこの製品は世界一かどうかを徹底的に調査し、判定する「世界一か否か(いなか)会議」を開催しています。

 

(2)また、幹部社員の多くは、海外の現地法人の経営責任者として勤務の経験、「修羅場体験」をされています。

 

Q5:最後に一言どうぞ。

A:

福沢諭吉先生の「学問のすすめ」では、身分や貧富の差がつくのは学問をしたかどうかによるとの議論がありましたが、今日の社会では、顧客の問題解決、顧客価値創造をすることでお客様のお役に立つためには、仕事に必要なことを、その分野で最も熱心に学べる場で学び、成長する以外にない、「仕事で人は成長する」ことが肝要と考えます。

 

2016年5月25日7時18分

 

 

開倫塾のホームページ(www.kairin.co.jp)に林明夫のページがあります。

毎週、数回更新中です。

お時間のあるときに、是非、御高覧ください。

 

 

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右から時計回りに
2016年5月4日(水)13:03西早稲田1にて鈴蘭を撮影 花言葉:「再び幸せが訪れる」
2016年5月3日(火)8:14中目黒公園にてカーネーションを撮影 花言葉:「無垢で深い愛」
2016年5月3日(火)8:08中目黒公園にて昼咲月見草を撮影 花言葉:「無言の愛、自由な心」

 

 

第4回 注目すべきキャリア権(中)
(2008年1月28日転載) 

 

 

法政大学諏訪康雄教授が提唱されるキャリア権の概念が、前回紹介したように社会的にも法的にも急速に認知されてきている背景には、仕事に対する意識の変化がある。つまり以前は、とにかく就職すること・職業に就くこと自体が資産であると考える傾向が強かったが、現在では、自らが興味や関心をもって本気で取り組むことができる、即ち自己実現できる分野でのキャリア形成を目指し、人材としての価値をより高めようとする意欲が強くなってきている。ソフト化の時代には、組織内雇用そのものへの固執より個々人自身のキャリア展開が志向される傾向が強まるのである。

 

こうした変化は、企業にも社会全体にも成果主義的な評価が定着し、組織の中にあっても「個」としての能力が問われる時代になったことの反映である。どの世界での成果を上げて競争を勝ち抜くには非常な努力が必要となるが、「志」に支えられたパッションとも言えるような強い気持ちがなければ努力を継続して仕事をやり抜くことはできない。そしてこのパッションは、仕事への興味や関心や使命感等の内面にこそ支えられるものなのである。

 

人脈一覧表で内実探る

職業の選択にあたって、興味や関心を持てるか否かという基準が重視されるようになったことに伴い、キャリア権が一段とクローズアップされていくことは間違いない。仕事へのモチベーションが短距離走のエンジンであるとすれば、キャリアは長距離走のエンジンなのである。

 

日本のプロ野球選手のメジャーリーグ(MLB)への進出が顕著である。プロフェッショナルとしてのパッション、モチベーション、自己実現欲求からみても当然であり、日本のプロ野球界が選手のキャリア形成というものを軽視してきた結果とも言える。プロフェッショナル度が高い職業ほど、キャリア権は使用者のコントロールの枠組みをたやすく超えていく。併せて、本人のキャリア形成に関する客観的なアドバイザー機能が一層求められることになる。

 

例えばMLBの例で言うと、球団と選手との契約交渉には選手の代理人が必ず登場して、選手のキャリアアップをサポートする。松井秀喜や松坂大輔らの代理人は、本人の能力やチームへの貢献可能性を把握しMLB球団と条件交渉しつつ、彼らの語学習得や子ども教育への配慮までするという。これからは、日本のプロ野球のみならず日本の企業においても、MLBでの選手の例のようなキャリアのサポーター・アドバイザーの存在が必要になってくる。

 

また、キャリア権は企業における全ての労働関係の事象において展開されるべき基本的な論理である。諏訪先生が論文等で判例理論にも言及されながらキャリア権との関連性を解説されているのは「就労請求権」「配置・配置転換・出向・転籍」「年次有給休暇」等であるが、もちろんこれらにとどまらない。労働関係の基本的項目だけに限っても、(1)採用、(2)評価、(3)人事異動、(4)解雇等の局面でも問題となり得る。

 

(1)採用について

「採用」においては、①採用内定取消、②試用解約、③採用差別禁止等がキャリア権の問題と関連するが、ここでは採用の端緒である応募者からの提出書類に着目してみる。

 

日本の企業では、新卒採用と中途採用を問わず応募者に履歴書の提出のみ求めるのが通例であったが、近時では中途採用の場合には履歴書のほかに職務経歴書も提出させるのが普通になっている。職業キャリアを意識しての現象であり、職務経歴書の内容が採用・不採用を決するほどの重要な役割を担いつつある。そして職務経歴書にとどまらず、「人脈一覧表」の提出を求める企業もある。この試みは、経歴の中で「どのような人と交流・協働しながら、どのような価値貢献を果たし、結果としてどのような人の信頼を得たか」ということの重要性を意識するのみならず、応募者の職務経歴の真実性を探索する意味もある。要するに本人の単なる履歴ではなく、内実としての職務歴を承知しなければ、応募者の業績・人柄への信頼性の有無を正しく判断できない。採用内定取消等について詳述する紙幅はないが、それらはまさにキャリア権と直接にかかわりを持つものである。

 

「首切り」による断絶

 

(2)評価について

人事労務の基礎的概念である「評価の公正さ」如何は、キャリア権の侵害の有無という観点から判断されるべきである。

 

この点に関する海外の具体的事例として仄聞したのは、1980年代の西ドイツ(当時)の例である。従業員が円満退職で転職する際にはその者の職務経歴について、「どのよな仕事に就き、成績はどうであったか」等の証明書を元の企業が本人に交付し、次の企業では同じ職種でのキャリアが同様に認められる制度を国が保証していたという。次のキャリアを求めての転職が珍しくなくなっているわが国でも、こうした制度は検討に値するであろう。

 

その他の「評価」についても、キャリア権が機能している場面が数多くある。

 

(3)人事異動について

人事異動権の濫用について、現在の判例も学説も企業の業務上の必要性を判断する際に労働者の家庭事情等を斟酌するというパターンが定着している。しかしそれはあまりに矮小な世界である。人事異動権についても、労働者のキャリア権との対比において業務上の必要性の有無をまず論じるべきであるというのは、極めて正当な理論である。

 

米国等諸外国の例であるが、社内の空きポストが出ると、まずは社内で公示して社内からの希望者を募集することを企業側に義務付ける制度が確立しているという。これはキャリア権の発露の一場面として、わが国でも即実行可能なシステムであろう。この場合、本人の自己責任がキャリアアップの基本であるが、本人の希望を人事部門に自己申告させ、空き席の有無および人事部による適性判断でこれに応え得る人材と評価できる場合には、まさに自己実現への第一歩に近付くことになる。

 

(4)解雇について

解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労基法18条の2)は権利の濫用として無効になることも、キャリア権が大きく機能する事象であるといってよい。

 

日本人は解雇されることを「首を切られる」と慣用的に表現する。労働者にとって労働契約の解消がまさに「死」に値するという意味が込められているのだろう。そしてこれをキャリアの観点からみると、解雇によって本人のキャリアが今まで生きてきた組織内で断絶・中断されることはまさにキャリア発展を決定的に阻害する行為であり、実態を的確に示す表現であると言える。かくして組織を離脱することが「首切り」=キャリア断絶にならないような社会的仕組み作りが必要とされている。

 

 

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2016年5月3日(火)8時過ぎに中目黒公園にて撮影 上から時計回りに
椿 花言葉:「完全なる美しさ、至上の愛らしさ」
薔薇 花言葉:「嫉妬、友情」
ネモフィラ 花言葉:「どこでも成功」 アルメリア 花言葉:「思いやり」




第3回 注目すべきキャリア権(上)
(2008年1月21日転載) 

 


「知識労働者にとって仕事は生き甲斐である」(P・F・ドラッカー著『ネクスト・ソサエティ』)―この至言ほど、企業とそこで働く人びとに仕事の意味を示し、共感を得る言葉はないであろう。そして、このテーマを法的に説き起こしているとも言えるのが、「キャリア権」概念なのである。

 

キャリア(career)権は、労使関係論・雇用関係論はもちろん労働法学をも新たに基礎づける概念として、法政大学諏訪康雄先生が10年ほど前から構想されている画期的な権利概念である。現代では職業キャリアこそが働く者にとっての「資産」であるという視点から、キャリア権とは、職業をめぐる人間の自己実現の権利であり、「働く人びとが自分なりに職業生活を準備し、開始、展開することを基礎づける権利」であると定義されている(諏訪康雄「キャリア権の構想をめぐる一試論」日本労働研究雑誌468号<1999年>、「キャリア権は何をどう変えるか」同544号<05年>等参照)。

 

諏訪教授によれば、この権利は、理念としては憲法に根拠を求めることができるという。まずは憲法13条(幸福追求権)が最も根本的な基礎となり、さらには、22条1項(職業選択の自由)、25条(生存権)、26条(教育を受ける権利・学習権)、27条1項(勤労の権利と義務)等が根拠になるという。

 

素晴らしい着想と評価

実定法上も判例上も未だキャリア権という文言は登場しないものの、雇用対策法3条、職業能力開発促進法2条4号、男女雇用機会均等法2条、労働者派遣法25条等々では、キャリア権を念頭に置いた「職業生活」「職業生活設計」等の文言が用いられ、次第に具体的内容あるものとして展開されつつあるという。また、教育基本法3条、学校教育法21条10号等も職業キャリアを十分に意識した規定であるといえよう。

 

人事労務問題専門の弁護士として45年以上の経験を持つ私にとり、コロンブスの卵とでも言おうか、このいたってシンプルかつ明快なキャリア権概念には目から鱗が落ちる思いがした。

 

かつて、私は拙著「人事権の法的展開」(1987年有斐閣出版サービス刊)において、企業と労働者との労働契約関係を法律的に構成するには“組織法的な視点”が不可欠であるという理論を展開して人事権を構想した。これは当時は理解されにくかったかもしれないが、近年次第に認知されつつあると言ってもよいだろう。例えば、菅野和夫先生は「労働法(第7版補正2版)」66頁で、「労働契約による労働は企業という事業遂行の組織体の中で行われるので、使用者による労働者の組織的管理(いわゆる労務管理)が行われる。すなわち、使用者は、事業の効率的遂行のために労働の組織を編成し、そのなかに労働者を位置づけてその役割を定め、さらに労働の能力・意欲・能率を高めて組織を活性化するための諸種の施策を行う。これが、いわゆる人事権の中心的内容である」とし、組織法的視点の意義を説かれている。

 

キャリア権は、こうした構想に匹敵あるいは凌駕する素晴らしい着想であると評価し得る。総人口も労働力人口も既に減少局面に突入しているわが国においては、労働生産性を向上させることが喫緊の重大テーマである。企業における人事労務は、成果主義を前提としたうえで、改めて「集団主義」の意義を認め、連帯してチームワークで仕事をする利点を見直す必要に迫られている。個々の労働者の能力も組織としての業績も、相互に高め合いながら向上するためには、「組織法的理論」と「キャリア権」という2つの概念が共に必要不可欠となる。

 

思えば、私がキャリア権に直感的ともいえる大いなる納得感を抱いた遠因は、少年時代に読んだリンカーン伝にあるかもしれない。彼は大統領に選出されたとき、人事の推薦をしてきた者に向かって「あなたが推す人は卑しい顔をしているから登用できない」と極めて明快に回答したという。リンカーンは「責任ある仕事を為し遂げた経験は、必ずその人の容貌に表れる」と喝破し、“仕事が人を作る”という事実を端的に示した。

 

キャリア権概念は、仕事で得た経験知こそが、単なる財産に留まらず人格的な「資産」・法的保護に値する「資産」として評価されるべきであるとするが、この点こそが企業がキャリア権を意識しなければならない第一の理由であるといってよい。

 

諏訪先生に直接お会いしてキャリア権についてご教授賜り、私はそれまで自分が執筆等で展開してきた考え方への明解な理論付けを与えていただいたと感じ、得心がいった。

 

従属労働からの脱却

パスカルの言葉「人間は考える葦である」が名言として残っているのは、独創的に「新しく考えること」が非常に難しいからでもある。フットワークからヘッドワーク、そしてハートワークへと移行していく現代社会の状況をみるにつけ、単なる考える葦ではなく、それこそキャリア権という抽象的な概念ではあるが、それを認定して、様ざまな形で労働関係の規律を構想すべきであるという指摘は極めて優れたものである。

 

ところが、労働法学者は諏訪先生のこの素晴らしい着想に対し反応が鈍いというのが実情であるという。最近では幾人かの学者はこれに着目するようになったと伝えられるが、労働法学者の本流が、労働関係の根本的な価値であるキャリア権を無視あるいは冷笑し続けることは遺憾である。小生は、諏訪先生ご提唱のキャリア権の定立のために、ささやかなお手伝いをしたい。それは労働者の権利概念という小さな枠を超えて、日本の産業社会の発展に資するものと確信するがゆえである。

 

キャリア権が学会で注目されていないことは、使用者がキャリア権を忌み嫌う所以をともなっている。しかし、労働者の自立性を確立し、従属労働からの解放を目指すという労働法の根本理念の実現のためには、このキャリア権概念を認知していくことこそが、実は全勤労者のあるべき姿を実現する手法であり、そして、全勤労者の自立を促すことこそが、産業社会の生産性を高め、企業が社会的な役割を一層果たすことにつながるのである。キャリア権のこうした機能に着目すれば、使用者がキャリア権を積極的に肯定する努力をしてこそ初めて、日本の産業社会は新しい時代を迎えることができると言えるのである。

 

 

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2016年4月9日(土)12:19 長野県松本市島内にて野沢菜を撮影
花言葉:「活発、快活」




第9回 勉強
(2015年9月28日より転載)

 

戦後の日本の教育の最大の欠陥は、教える立場にある教員に対して、教え方を専門的に教授していないことにあると思う。教え方を知らない教員は、児童・生徒・学生に学び方を教えることができないために、児童らは学び方・勉強の仕方を知らないまま長じてしまう。このように日本の社会全体が勉強の仕方を真に学んでいないことが、日本人の進歩を停滞させている根本原因ではないだろうか。

 

折しも、日本の高校生は米国・中国・韓国と比べて自己評価が著しく低いという調査結果が報道され、非常に気になった(国立青少年教育振興機構・8月28日発表)。高校生の生活の中心は学業であることを考えれば、勉強をやり抜いたという実感と自信が持てない者が多いことが、自己肯定感が低い大きな要因であると思う。

 

私の経験でいうと、豊かな人生を送り、仕事でも賞味期限切れにならず第一線で活躍し続けている人は、とにかく勉強家である。もし勉強法を身に付けていなければ、学生も社会人もどのように勉強してよいか分からず、成長は望めないだろう。

 

私が実践している勉強法は、まず自分でテーマを定め、そのテーマに関する事項を徹底的に調べ上げ、考え、疑問点をつぶし、重要なキーワードを収集することから始める。そのうえで、多くの資料をもとに自分自身の思考をめぐらせ、独創的な発想を構築するのである。つまり、大部の資料郡から自分の感性・理解・判断に照らして良いと思う要素をすくい取って真似てみて(真似ぶ=学ぶ)、最終的には、手垢の付いていない斬新な独自の思考と表現を確定するために、何度も推敲を重ねて文章化する。この過程でいつも感じるのは、勉強とは自分を磨き自己革新を図り続けることにほかならないということである。

 

弁護士の場合、依頼者の利益を実現するためには、相手方の弁護士を凌駕する勉強を必死でこなさなければならない。加えて近年では、裁判例のデータベースはおろか、大きな事件では人工知能の強力な情報処理能力が証拠の探索等にフルに活用されることも珍しくなくなっているから、勉強の質も常にブラッシュアップする必要がある。

 

勉強の本質は、自分で考え抜いて理解し、トレーニングを重ねて知識・知恵を身に付けることだが、勉強法も内容も時代とともに変容を遂げるのは当然である。あらゆる仕事について常在戦場であるためには、時代の変化に即した勉強を続けなければならない。IT等の新しい知識や最新の社会の動向が分からなければ、進んで若い世代に教えを乞う謙虚な姿勢も重要になる。まさに下問を恥じず(『論語』公治長篇)の理念の実践である。

 

「我以外皆我師也」(我以外、皆、我が師なり)とは、『宮本武蔵』などで知られる作家吉川英治(1892-1962)の造語であるというが、こうした謙虚な心がけが勉強には大変重要であると思う。

 

私は、多種多様なテーマに関する自分の考えを文章化して論稿や書籍にまとめて発表することが、多少なりとも社会貢献につながると信じて、これを勉強の大きな目標としていた。勉強は怠け心との戦いでもある。どの様な仕事に就いても、自分なりの確固たる目標を定めてキャリアを向上させるべく勉強し続けることが、自分自身を日々新たにし社会に貢献する結果をもたらすことを、読者の皆さんに改めて強調したい。

 

 

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