第9回 高井先生言行手控え


 

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2015年8月9日(日)15:17 紀尾井町6にてヘメロカリスを撮影
花言葉:「とりとめのない空想」

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

■共感を呼び起こすつ6つの方策

「人間関係の充実は労働契約上の要請である。労務管理を推進するにあたっては、婚姻法に見られる人格結合的要素である合意(納得)、相互協力、信頼、協働、扶助といった情況を、顕在化させることを目標の一つとしなければならない。それは企業構成員間の精神的結合をまって初めて可能となる。」とする髙井先生は、職場で共感を呼び起こすための6つの具体的な方策を述べておられます。

 

①挨拶を交わすこと

挨も拶も語源はピッタリくっつくことである。総じて、精神の共鳴、同心化、共感を求めることが挨拶の意味である。目を見る。声をかける、肩を叩く、握手するといった五感の触れ合いから情感の交流が始まり、信頼感が醸成される。この信頼感の本質は、信念、情熱、雄々しさ、悲壮感、正義感等であり、思いやりである。

 

②トップと管理職の意思統一

経営のトップと管理者、いわゆる使用者間において、一体感と意思統一が形成されていなければならない。さもなくば、企業構成員全体の精神的結合は求め得べくもない。

 

③社長は現場を回れ

組合のない企業あるいは労使がうまくいっている企業の共通の特徴の一つは、代表者が現場にたびたび姿を現していることである。従業員に声をかけ、相手の考えていることに同調するよう努め、担当する仕事のこと、部下自身や家族の健康のことなどを話題にすることが肝要である。

 

④褒め上手・叱り上手なれ

叱るより、褒めろと言われている。叱ること即ち邪心に対して牽制することが、むしろ気重で、歓迎されない傾向にある。褒めるだけでは、甘え、放縦、身勝手が蔓延る。競争力を強化していくためには、叱ることが人事労務管理の標語とならねばならない。叱りながら人間関係上の摩擦や軋轢に葛藤し、克服していくことで上司も部下も鍛えられるのである。

 

⑤管理者は人間的であれ

企業における人間らしさとは、怠惰ではなく、勤勉で直向きであることである。困難・危険に直面して真っ向勝負する上司こそが人間的である。

 

⑥業績アップが最良の策

企業における良好な人間関係を樹立するためには、企業は業績を上げることが最も肝要である。

 

■四半世紀前から派遣労働者の教育を提唱

ここで時事案件を入れたいと思います。去る9月11日、189回通常国会において「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、9月30日に施行されることになりました。労働者派遣法の改正については、労働市場に関わる多くの人が注目しており、髙井先生の論と併せて紹介したと思います。今回の改正の付帯決議も含めて詳細は厚労省のHP

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

をご覧いただくとして、平成5年(1993年)の本書にはこうあります。

「人材派遣はここ数年間20~30%の成長を続けているが、それは必然的に人材育成をないがしろにする傾向となっている。人材派遣業界は専門性を育む・育成する・教育するといったシステムをなおざりにしては業としての意味合いを欠くに至り、専ら単純なマンパワーの補給基地になるにとどまることになる。それは、人材派遣業あるいは派遣労働者の社会的評価を低めることにもなるであろう。(中略)派遣事業は派遣元企業がプロ中のプロ集団になる企業努力を怠らないこと、具体的には(……)

派遣労働者の質的向上に務めること、換言すれば有能極まりない派遣労働者にその将来ヴィジョンとしてコンサルタント等に従事し得る可能性を見出し得るとの希望を与えてこそ、その将来が保障されるといってよい。」

髙井先生は、使用者側に立つ労働法・労働問題の専門弁護士です。

そのお立場で、四半世紀も前から人材派遣業界に警鐘を鳴らし、派遣労働者の育成と評価の向上の大切さを説いておられたわけです。今回の法改正では、「専門性を育む・育成する・教育するといったシステム」の法制化を、派遣元・派遣先に派遣労働者のキャリアアップの措置・支援の実施を義務付けるという形で実現に至りました。

 

<改正労働者派遣法における派遣労働者のキャリアアップの措置>

 

①派遣元は

20150924図①.png

 

②派遣先は

20150924図②.png

 

③派遣労働者は

20150924図③.png

 

(以上は厚生労働省ホームページより抜粋)

 

派遣法が成立した1985年に派遣対象として認められていたのは、常用代替のおそれの少ない専門的知識等を必要とする13 業務のみでしたが、その後数回の改正を経て、1996年には26 業務にまで拡大され、

1999 年には建設・港湾・警備、製造業務などを除いて、派遣対象業務が原則自由化されていました。

この当時、先生は「安に居て危を思う」という春秋左氏伝の故事を引用し、「派遣業界は急成長の今こそ、規制緩和の要望だけではなく、労働市場の適正化のために何ができるかを考えなければならない。己の喉元に法律の切っ先を当て、派遣労働者のためにどのような規制をすべきかを提言すべきだ。世論を味方につけた主張でないと業界エゴとしか映らない。政治家はなんの役にも立たない。社会の成熟とはそういうものだ。」と力説しておられました。この洞察の鋭さを今日改めて感じるところです。

 

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