第8回 高井先生言行手控え

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2015年8月2日(日)8時5分 東京都新宿区若葉2にてエボルブルスを撮影
花言葉:「清潔、清涼感」 

 

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

■協調的・結合的・人格発展的関係が労働契約の本質

 

前回より、髙井先生のご著書「企業経営と労務管理」の中から、名言・至言、寸鉄・箴言を選りすぐってご紹介しています。労働契約及び集団的労働関係の本質について、髙井先生が以下のように述べておられます。

 

最高裁判所は、富士重工事件(昭和52年12月13日判決)において、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労働提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」と説示している。これは、三菱樹脂事件において最高裁が示した、雇用関係が「単なる物理的労働力の提供の関係を超えて、一種の人間関係として相互信頼を要請する」(大法廷昭和48年12月12日判決)という実態論と軌を一にしたものと考えるべきだろう。(中略)私は労働契約を単に債権的な権利義務関係と見るならば、むしろ労働者の利益を制約することになること、換言すれば、労働契約の人格的な要素を承認してこそ組織法的な権利義務関係に労働契約関係が埋没する危険性を封じ、企業と労働者の利益の均衡が図れると同時に、より人間的な温かさのある関係が成立するものと考えるものである。契約を実効あるものとする上で、この人格的支配関係は対立的関係として規定されるべきではなく、協調的・結合的関係・人格発展的関係として規定されなければならないことは言うまでもないことである。労働裁判例においてしばしば「信頼関係」――相手を信じて頼ること――が論じられるが、この「信頼関係」こそが規範的に確立されなければならないのである。そして、この信頼関係は、命令する者において命令される者を陰日向なく保護する義務、命令される者において命令者の発する具体的なさらには抽象的な事柄に忠実に従う義務が確立されてこそ、円満に形成されるものである。

 

■職場の人間関係は労使コミュニケーションの重要事項

 

多くの労務問題の解決にあたってこられた髙井先生は、労働契約及び集団的労働関係の本質は、「信頼」「共感」にあると賢察され、数多くの著書の中で言及しておられます。このことは、厚生労働省の、『平成26年「労使コミュニケーション調査」』の結果にも表れています。

 

この調査は、労使間の意思の疎通を図るためにとられている方法、その運用状況等、事業所側の意識、労働者の意識等の実態を明らかにすることを目的に、5年ごとに行われています。

労使それぞれが重視するコミュニケーション事項(複数回答)として、

 

  • 事業所(企業)は、 「日常業務改善」75.3%が最も多く、 「作業環境改善」68.5%、 「職場の人間関係」65.1%など
  • 一方、労働者は、 「職場の人間関係」60.8%が最も多く、 「日常業務改善」51.7%、 「賃金、労働時間等労働条件」50.6%など

 

となっています。

 

今日においても、労働者は賃金などの労働条件以上に「職場の人間関係」を重視しています。それを個別雇用契約や就業規則上に、人間的な温かさをもって、表現することが人事部の役割であることがわかります。先生は、過去の書式をそのまま活用したりネット上のテンプレートをコピペするのではなく、脳漿を絞り出す思いで、真に協調的・結合的・人格発展的関係を書面化することの必要性を説いておられると思います。

 

■人格発展的関係

私は特に人格発展的関係性という言葉に惹かれます。これは、おそらく先生が独自で発想された造語ではないかと推察しています。私が、入社して3年目頃のことです。ROD(リクルート・オーガニゼーション・デベロップメントプログラム)という研修を上司(課長)が受講し、職場の部下に結果をフィードバックする場を設けられました。この研修とは、職場での日常行動について、自分自身(この場合は上司)の認識と、周囲からみた自分とのギャップから、仕事や周囲との関わりに表れる自分の特徴を把握し、行動を変えていこうというプログラムのことです。上司に対する部下のアンケートを踏まえ、通意性、要望性、信頼性、共感性の4つの指標が5点満点でデータ表示されます。この指標自体、奇しくも、髙井先生が強調する集団的労働関係の本質である信頼性と共感性を内包しています。さて、くだんの上司ですが、仕事はよく出来る人で、大変高いスコアでした。しかし、フィードバックの場では部下は今一つ不満げな顔つきでした。それは、フリースペースの助言欄に複数書かれた文章に反映されていました。要約すれば、「仕事の上だけではなく、人間的に成長したい。そのために幅広く指導してほしい。」というものでした。大卒や高卒の新入社員やアルバイトなど若い部下の組織の中で、この声を上司は驚きつつもしっかり受け止めて、こう言いました。「目標達成のためのビジネスライクのマネジメントのみならず、私に徳育も求めているのか。」と。人格発展的関係性を実践することは、現在からみれば、ハードルの高い日本的マネジメントですが、アングロサクソン系マネジメントに打ち勝つヒントがあるように思います。

ちなみに、先の4指標のうち管理者に最も必要とされるのは要望性です。要望性の強さは、いわゆるリクルート出身者の共通の因子であり、ある種の臭みでもあるとも言われています。

 

 

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