2014年11月23日(日)東京都港区芝公園にてイワツツジを撮影
花言葉:「愛の喜び」
(5)チームワーク
複数の弁護士でチームを組んで仕事をする際、チーム内で相談もせずに、独断で仕事を進めてしまう弁護士がまま見受けられる。他人とうまく連携を取りながら物事を推進する能力と創造力に欠けると、悪くすると上司にさえ報告を怠る。このような弁護士がいると、事務所としての組織は維持できなくなってしまう。なぜなら、情報が正しく共有されず、他の者は方向性を把握できず、結果としてお客様の信頼を失うことになるからである。ときとして、このような問題弁護士への対応力も、弁護士には求められるのだ。
また、部下に責任を押し付ける弁護士もいる。責任転嫁に終始する態度は、これもまた、お客様の信頼を失うことにつながるだろう。
ときには、「担当の弁護士を変えてくれ」とお客様から要請されることもある。それに応えることは、顧問契約を維持するために必要なことでもあるが、慎重に検討しなければならない。なぜなら、不信任を受けた弁護士が落胆するだけでなく、新しく担当する弁護士が若く経験の浅い者であれば、専門知識の咀嚼が十分ではないがために、お客様とのコミュニケーションをとりづらくなるということが想定されるからだ。
特に、お客様から、法律関係の最新情報に接しているであろう若い弁護士に変えてくれと言われたときの対応は、非常にリスキーである。その場合には、事務所の代表弁護士が対応した方がよいだろう。若い弁護士に任せることでお客様の信任が得られず、状況がさらに悪化しかねないからである。
弁護士が、チーム一丸となって取り組み、成果をあげるためには、チーム全体で目標をしっかりと共有することが必要である。そして、その目標を実現するために、弁護士それぞれが強い意思のもと自主的に勉強し、準備をし、努力をすることが大切である。
(6)人間性に訴えること
たとえば、裁判案件でご相談にみえたお客様が勝訴を求めているときに、弁護士として勝訴は不可能であると予測できたとしても、その仕事を引き受けることは、結果としてお客様を失うことにつながるだろうか。
こうした状況では、お客様の人間性を念頭において受任するかどうか判断しなければならない。お客様がどのような人間性なら引き受けられないのか、そして断る際はどのように断るのか。これが、お客様が増えるか、減るかのひとつの大きな分岐点になるであろう。
お客様が企業の場合、たとえば、企業の人事労務に関する資料(諸規程)を読むことで、その内容もさることながら、その企業の体質を知ることができる。そして、今後の助言の硬度、難度、波長の長短を、弁護士は自ら決めていかなければならない。
私は依頼者の人間性について、①正直者であるかどうか(狡猾な人間であるかどうか)、②気が弱いか気が強いか、③自己中心的であるかどうかの3つの視点から考える。これ以外の視点からも分析する人がいるが、それはそれでいいだろう。要するに、自分に合う視点が持てれば良いのである。いずれにしても依頼者の人間性を念頭に置くことが肝要である。
(7)弁護士にとっての「発言」の意義
また、お客様からの要望に対して、「それは法的にいって無理です」「それは判例からみて無理な主張です」などと、否定のみで対応してはならない。法律の専門家として否定的な助言をするにあたっては、綿密に準備・調査をしたうえで、弁護士として独りよがりな助言にならないように自戒するべきである。否定的な発言をせざるをえない状況に陥った場合でも、「こうすれば大丈夫ですよ」というような肯定的な助言をする必要にせまられることもあるだろう。また、単に否定するのではなく、常に正義感に裏打ちされた理論展開をおこなうことが肝要である。お客様の態度を非難するのに一生懸命な弁護士もなかにはいる。これは、弁護士が偉ぶるための一番易しい方法にすぎない。
そうはいっても、違法な事態を招来する事柄に対する相談、あるいは、脱法的な事案についての相談に肯定的な対応をしてはいけない。そのようなことをしていれば、経営体自体が衰退していくことをお客様に気づかせることが大切である。これを怠れば、結局は自分自身の職業的利益を失うことにつながる。
弁護士の中には、あえて発言しないという弁護士がいる。団体交渉に同席したときでさえ、発言しないことさえある。そうなると、当然のことながら、依頼者からの信頼を失う。事前の打合せ時にはたくさん発言する弁護士が、いざ団体交渉の場において、相手方の主張に対する的確な発言ができないとなると、クライアントは深い失望に陥るだろう。
一方で、裁判において、とかく発言をしたがる弁護士もいる。これは、自己アピールのつもりなのか、特に依頼者の関係者が傍聴している場合などに多く見受けられる光景である。裁判が団体交渉と違うのは、法廷には、対峙する相手方だけでなく中立の立場の裁判官がいるために、圧迫感が小さくなり安心して発言できるという点である。しかし、裁判でもつまらない発言をすれば裁判官からも失笑を買い、心証を悪くする。弁護士は、当方を有利に導く意義のある発言をするためにも、いつも勉強しなくてはならないのである。
以上
※ 本2014年のブログの更新は本日が最終です。次は新年1月9日(金)を予定しております。みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。