2012年11月4日(日)朝7:22
東京都渋谷区代々木公園にてゴンズイを撮影
花言葉:一芸に秀でる
10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。
さて、リーダーの最大かつ重要な役割は、その組織に属する者たちにヴィジョン・方向性を指し示すことです。そして、リーダーには、方向性を指し示すだけではなく、組織に属する者たちが一丸となって、迅速に、かつ的確にこれを実現できるように統率することが求められます。リーダーは、問題が生じた場合は、すぐに的確な指示を部下に示さなくてはなりません。
そのために、リーダーが日頃から実行すべきことのひとつは、事実関係の把握にむけた現場主義の実践です。私は、依頼を受けた時に、まずその企業へ訪問することを心掛けていました。その際には、受付で挨拶をし、従業員の皆さんが勤務している傍らを歩き、案内された応接室で深呼吸してから、現場の担当者の話を直接聞くようにしていました。そして、お聞きした話を書面化したうえで、担当者を含む関係者に何度も確認をして事実関係の把握につとめました。こうすることで、企業の持つ独特の雰囲気・空気を五感で感じて、生の声に接してはじめて問題の真の全体像を見ることができるのです。現場の様子を私自身がよく体感したうえで、依頼者に対して、「気がかりなことは何ですか。心配なことは何ですか」と尋ねれば、依頼者も率直に不安材料を吐露できます。これが人の心というものだと思います。
ホンダの創業者本田宗一郎氏が「現場」「現物」「現実」の重要性を提唱した言葉は、「三現主義」として人口に膾炙していますが、改めて申すまでもなく、「三現主義」は、製造業に限らずどのような分野についても念頭に置かなければならないキーワードです。ちなみに、「三現主義」の「現場」「現物」「現実」に「現状」「現金」を加えて、ビジネスで重要な「五つの現」と説いている経営コンサルタントが私の知り合いにいます。ことほどさように、物事の本質を理解するうえで「現場」は重要なものです。
上に立つ人のなかには、決裁する書類の数に追われていることを理由に、現場に赴かず、自分の執務室にこもって仕事を進めてしまいがちな人もいるかもしれません。また、部下が提出した報告書に目を通して事実関係を把握したつもりになっている人もいるかもしれません。リーダーが現場をよく知らなければ、部下は自分に都合のいい報告をするようになり、そのためにリーダーの理解は現場から遠くなり、判断は歪んでしまいます。リーダーが問題解決のための的確・明瞭なヴィジョンを部下に指し示すためには、リーダー自身がしっかりと現場を理解していることが必要なのです。
(リライト 加藤・宮本)