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 (2011年4月18日 朝6:53 東京都千代田区北の丸公園にて撮影  白妙)

 

 東日本大震災による福島第一原子力発電所の被災は、高濃度の放射能漏れという事態に発展しています。外国の人々は、この事態をどう見ているのでしょうか。

 

【フランス】

 フランスは、1966年から96年までの間、アルジェリアのサハラ砂漠や仏領ポリネシア等で核実験を210回実施しています。その実験を通じて、放射能汚染や核実験被害者らの存在等により、核爆発の恐ろしさをよく知っています。

 私と関わりのあるフィリピン人のメイドの方は、地震後フィリピンに帰国しました。その理由は、雇い主である在日フランス大使館員ご夫妻が、お子さんを連れて一旦福岡に逃れた後、母国フランスのパリに帰られたからです。それは言うまでもなく、原発事故にともなう放射能問題を恐れたことによります。同館員が帰国されたのは、個人の行動としてではありません。フランス政府の方針としてこのような行動をとったのでしょう。また、館員はフィリピン人のメイドに、エアチケットを購入してあげて帰国させました。このことからも、フランスがどれだけ福島第一原発事故を重大視し、恐れているかが分かります。

 フランス政府は、東日本大震災に対するフランスの自国民への対応として、まず、2011年3月13日付で、今後の余震や被災した原子力発電所の被害状況が不明であるとし、首都圏から離れるように勧め、在日フランス大使館のウェブサイト上で、強い余震が起きる可能性があると指摘し、日本への渡航自粛と、予定がある場合は延期するよう強く勧めました(同日付ロイター通信より)。次に、4月7日付で、同在日フランス大使館のウェブサイト上で、東京に住むことは、健康上危険はないが、宮城・福島・茨城・栃木からは退避するように忠告する文章を掲載し、現在も掲載を続けています(最終更新日4月14日)。

▶ 在日フランス大使館ウェブサイトはこちら
  

【アメリカ】

 アメリカ国務省は、名古屋以東で働く政府関係者の不必要な渡航の延期や、一般市民の観光等の自粛を呼びかけました(2011年3月13日付ロイター通信)。また、日本政府は、福島第一原子力発電所から半径20km圏内の住民に避難指示、半径20km以上~半径30km圏内の住民に屋内退避指示を出していますが(首相官邸ウェブサイトより)、アメリカ国務省は、同省ウェブサイト上(日本への「Travel Warning」、最終更新日3月30日)で、米国人に対し、福島第一原発から半径約80km(50マイル)圏外(日本政府の指示している避難範囲の約16倍)への退避を勧告しました。その後、4月14日付で、3月16日から発令してきた名古屋以東で働く政府関係者の自主的な国外避難勧告は解除したものの、米国人を対象にした、福島第一原発から半径約80km圏外への退避勧告は継続しています(同省ウェブサイト上、日本への「Travel Alert」より)。

 また、福島第一原発の事故で心配されるのは、放射能による汚染ですが、この放射性物質のうち、甲状腺ガンの原因となるのが、「放射性ヨウ素」と呼ばれるものです。甲状腺を予めヨウ素で満たしておく(摂取しておく)と、被爆しても甲状腺に放射性ヨウ素が取り込まれず、甲状腺ガンを予防できるものですが、この度の福島第一原発事故を受けて、このヨウ素剤がアメリカで売れに売れて、「バージニア州の製薬会社『アンベックス』によると、通常は1週間に数箱の注文が、今は1分間に3箱くらいの注文になり、すでに1万箱以上を売って品切れ状態」(2011年3月18日付サーチナニュース)とのことです。それに比して日本ではヨウ素剤が病院にも残っています。アメリカの方が神経過敏なのか、日本の方が鈍感なのか、一度学者の意見を聞く必要があると私は思います。

 東京都調布市にあるアメリカンスクールインジャパン(ASIJ)では、5月に日本に帰ってきて授業を受ける外国人生徒は50%と言われているそうです。そして、9月に新学年を迎えるときには、全体の15%の生徒は日本を放棄してしまうということです。

▶ 首相官邸ウェブサイトはこちら
▶ アメリカ国務省ウェブサイトはこちら 
▶ アメリカンスクールインジャパン(ASIJ)ウェブサイトはこちら

【中国】

 地震当日の3月11日、私は地震の最中に、私の事務所の入っているビルの隣のビルにある中国飯店市ヶ谷店で、仕事をしていました。積水ハウスの久保田芳郎監査役などと一緒に打ち合わせをしていました。なぜ中国飯店から仕事を中断せずに避難しなかったかというと、市ヶ谷法曹ビルの耐震診断結果では、震度6、7などの強震の場合は、倒壊・崩壊の危険性があると言われているのに対し、中国飯店の入っているビルは震度7以上に対しても耐震性があると聞いていたので、私はそれを信じて仕事を続けました。

 中国飯店市ヶ谷店の支配人のお話によりますと、地震が起きた時、支配人は「このビルは絶対倒れません。物の落ちないところに避難していて下さい。」とお客様にお声掛けをされていたそうです。それにもかかわらず、同店の中国人の従業員は、お客様を押しのけ、「我先に」と外に出ようとしたとのことです。

 さて、この中国飯店市ヶ谷店では、結局、3月11日、地震で、中国人従業員11名が一斉に中国に帰ってしまったそうです。11名のうち、4名は無断で、3名は人伝え等直接断りを入れず、また4名は断りを事前に入れて帰国されたそうです。中国飯店では、3月11日時点で、全店舗合計で約100人の中国人従業員を雇っていたそうですが、その半数にあたる約50名の中国人従業員が3月11日から2~3日の間に地震を受けて帰ってしまったそうです。地震で日本を離れてしまった中国人従業員のうち、4月12日までに半数(約25名)が日本へ戻ってきたそうですが、残りの半数はまだ中国へ帰ったままだそうです。18日も支配人とお話をしましたが、その後戻ってきた人数に変更はないそうです。支配人は、「地震から1カ月以上経過してもまだ戻ってこない中国人従業員は、地震の揺れ以上に、今は原発問題・放射能を怖がっているのでは」とおっしゃっていました。また、支配人は、最近来店する外国人客は、地震それ自体よりも原発問題や放射能のことを話題に上げている印象を受けるそうです。

▶ 中国飯店市ヶ谷店ウェブサイトはこちら
▶ 積水ハウス 株式会社ウェブサイトはこちら

 

【観光立国日本はどうなる】

 日本は、放射能汚染の結果もあって、諸外国から遠ざけられているという危険を含んでいます。もちろん、商業・製造業等も多大な影響を受けていますが、観光立国という日本の国策も断念せざるを得ません。朝日新聞4月15日付朝刊の記事によると、「3月に来日した外国人は35万2800万人と、前年同月より50.3%減少し」、「落ち込み率は、大阪万博の反動が出た1971年8月(41.8%)を上回る過去最大」だそうです。3月11日の地震後、海外で福島第一原発事故処理への不安が広がり、外国人観光客が相次いでツアーをキャンセルするなど、外国人観光客のショッピングの売上高が激減しているそうです。Asahi.com 2011年4月11日付記事によると、松屋の銀座店では、外国人観光客の3月の売上高が「前年比95%程度減少しており『皆無に近い状況』になってい」て、また、外国人観光客でにぎわっていた秋葉原の電気街は、毎日新聞2011年4月9日付朝刊の記事によると、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは、「来店客数が半減」し、「購買力旺盛な中国人客が特に減っている」そうです。福島第一原発事故の収束の目途がたたない限り、秋葉原の電気街は倒産が相次ぐでしょう。そして、「秋葉原(AKIBA)」という地名も国際的な地名から抹消されることになる可能性が十分だと思います。

▶ Asahi.comウェブサイトはこちら
▶ ヨドバシカメラマルチメディアAkibaウェブサイトはこちら

高井・岡芹法律事務所
会長弁護士 高井 伸夫

(次回に続く)

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