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2023年2月10日
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「明るい高齢者雇用」

第46回 山一産業で明確に―衰える心身機能:再就職は専門家のみ

(「週刊 労働新聞」第2193号・1998年3月9日掲載)

 

 前々回、前回と高井法律事務所所員である足代清氏から中高年への就職・転職に関する5つのアドバイスをご紹介した。

 次は企業の高齢者雇用へのアドバイス。彼は2つ挙げている。1つは「高齢者は賃金にこだわらない人も多い。やりがいある仕事にこだわる」というものである。平成9年版の労働白書の「高年齢就業者の就業理由調査(男子)」によれば、55歳~59歳では「自分と家族の生活を維持するため」という理由をあげる者が最も多いが、これは年齢層の上昇とともに低下し、「生き甲斐、社会参加のため」、「健康上の理由(健康に良いから)」等の割合が相対的に増加してくる。老齢年金の支給状況に対応する形で生き甲斐派が増えているようである。71歳の彼もこのケースに当たる。採用する企業側としては賃金額による誘因ではなく、仕事の意義・やり甲斐をいかに理解してもらうか、あるいはそのような仕事をいかに用意するかが課題となる。

 さて、高齢者を生かす「やりがいある仕事」とは何であろうか。2つの要素が考えられる。1つは「専門知識と経験を生かした教育的仕事」である。人に教える立場を与えるということは本人のそれまでの職業人生の積極的肯定を意味する。また、教えるという行為は属人的暗黙知としての知識・経験を誰でも理解共有できる形式知に転換することであり、職業上獲得した勝ち財産の社会的敬称である。本人にとっても企業にとっても極めて重要な意味を持っている。

 もう1つの要素は「コミュニケーション」である。仕事を通じて性・世代を超えた社会的交わりを継続することは社会と隔絶しがちな高齢者に心身両面の健全性をもたらす。人に教えつつ社会参加を継続することが仕事のやりがいにつながるのである。

 彼の企業の高齢者雇用に対するアドバイスの2つ目は、「ハイキャリアの高齢者は給与以外のサムシングが必要」とのアドバイスである。例えば超ハイキャリアであれば車・個室・海外出張時のファーストクラス等の待遇が考えられるが、一般的にはフレキシブルな勤務時間や名刺上での役職名への配慮がこれにあたる。

 これまで足代氏の中高年の就職・転職に関するアドバイスと企業の高齢者雇用へのアドバイスを書いてきたわけであるが、「若いうちに自分の商権を確立せよ」とのメッセージが強く印象に残っている。

 折しも昨年来、山一証券の自主廃業に伴う社員の再就職問題が話題になり、新聞も「中高年再就職に寒風」、「モテる若者、寒空の中高年」と中高年の再就職の厳しさを連日報道している。

 山一証券グループの社員の受け入れを表明した企業の募集職種を見ても、「デリバティブの専門家」、「M&Aの専門家」、「ファンドマネジャー」、「店頭、アジア株担当者」、「アナリスト」、「投資信託の専門家」等、その道のエキスパートを求めていることがわかる。

 「若いうちに自分の商権を確立せよ」とのアドバイスをもっと早く受けておけば良かった…と嘆息している中高年も残念ながら多いのではなかろうか。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第48回>社長の話し方6例~部下に責任を推しつける話し方ではダメ~

(1998年6月17日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

1)部下に責任を推しつける話し方や、経営判断を回避する態度ではいけない。「私がいいと思うからやる」という話し方でないといけない。社内を引っ張っていくのに、「私が責任を取る」という話し方でないと社内はまとまらない。

 「労働組合が悪い」と言う社長が多いが、それはその社長の経営力がないのだ。組合が会社を潰すことはない。経営が脆弱だから会社が潰れるのだ。その意識改革なくして再建はあり得ない。

2)社員に対して本人に不都合不利益なことを話す時は「残念だが」、「申し訳ないが」という一言を付ける。謝罪の意を表する態度でいかないと、その後の協力は得られない。

3)語尾が明瞭であること。明瞭でないと説得力がない。

4)幹部には、いいことにしろ悪いことにしろ、一般社員より一刻でもいいから先に話しておく。幹部と一般社員とに同時に話すのでは、幹部が統率力を失なう。

5)従来より少し数字を入れ込んで話をする。社会がデジタル化しているから、社長の話しもデジタル化しないといけない。抽象的なことを言うより、具体的な数字を入れること。

6)幹部には何でも真っ正直に話すこと。

 今朝、再建問題である会社に行った。その時いくつか条件を出したが、その一つが「何でもいいから悪い情報を必ず伝えてほしい」ということ。そうでないと私は引き受けない。社長は「自分の会社にとって都合の悪いことは顧問弁護士に伝えたら不利」と判断してはいけない。己を知らないと何もできない。それと同様、幹部には真っ正直に話すこと。

 もう、経営者が言葉巧みに部下を騙せる時代ではなくなった。逆に部下の方がよく知っていたりする。社長は裸の王様になってはいけない。企業の中で情報をディスクローズ(公開

する姿勢がなければ、社内で話をする資格も意味もない。

「明るい高齢者雇用」

第45回 「自分軸」の確立を―衰える心身機能:企業頼みではダメ

(「週刊 労働新聞」第2192号・1998年3月2日掲載)

 

 71歳で新しい職場に飛び込んだ足代清氏は中高年の就職・転職に関するアドバイスとして5つのポイントを挙げている。

 第1番目として「30代で自分の専門領域を見極め、その後に自分の商権を確立すること」。商権とはギブ&テイクのできる有望な人脈、把握された市場、商売に関する専門知識の総体である。彼自身、中国大陸を長春からウルムチまでビジネスとして飛び回った経験があり、地域特性に応じたきめの細かいコンサルティングができる由縁である。もし、あたなが人事部長という立場で、「自分の商権」という言葉を自信を持って発する中途採用の商談者に出会ったならば、それだけで「採用!」と判断するのではないだろうか。「自分の商権」は、ビジネスマンとしての最上級の付加価値を示す言葉の一つといえよう。

 第2番目は「組織の中で歯車にならない努力をすること」である。今や、企業と個人がドライな関係になりつつある。拘束もしないが、ケアもしない関係と言ってもいいだろう。所属する企業にしか通用しない能力は最早能力とは言い得ない時代になっている。彼の場合は中国という国を商売上のみならず、歴史、風土の上からも知り抜いたエキスパートとしての強みがあり、その能力は銀行でも商社でもメーカーでも必要とされていたに違いない。「エキスパートになれ、資格を取れ、忙しがるな、自分が活かされなければ転職もよし」という彼のアドバイスから、企業に主軸を置いた価値観ではなく、自分のキャリア形成のために何をすべきかという「自分軸」が若い時から確立されていたことがうかがえる。「自分軸」の確立はプロとしての業務遂行を促し、業績への貢献につながるのみならず、労働市場における個人の価値を高めることになる。

 第3番目には「商談は人間が行うものである」。OA化が進み、いわゆる事務作業レベルの仕事はコンピュータが極めて効率的に処理してくれる時代になった。その分営業マンであればピュアセールスタイム(営業に専念できる時間)が確保でき、商談に専念できることになるはずであるが、肝心の商談ができない若い営業マンも多いと彼は指摘している。そして、「商談はコンピュータがやってくれるわけではない。外に出て、対話を通じて商売ができることが営業マンとしての最低条件だ」という。

 第4番目に「“使ってもらう”という謙虚な姿勢を持て」を挙げる。高齢者の転職・再雇用の厳しさは経験した者でないと分からない。長年勤務した会社と新しく勧める会社では、そもそも労働市場における価値が異なる。圧倒的な買手市場での売手側の立場の弱さを認識し、応募者としての謙虚さを身につけていないと第1次面接の突破も困難であろう。

 そして彼は、最後のアドバイスとして「家族の理解が大切」であることを強調している。仕事と家庭の両立ができて初めて一人前のビジネスマンになる。彼は単身赴任の多い日本人の中で、ホームベースとしての家庭の重要性を充分理解しており、欧米企業のビジネスマンの様に家族も含めて現地化することで厚い信頼のネットワークを獲得できたのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第47回>新しい成長市場を常に目指す~魅力ある商品づくりを~

(1998年5月20日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 市場というものを絶えず意識して売上増を狙うのが経営の基本。今は利益だけにこだわってどんどん縮小しているが、成長と言う概念は、売上を伸ばすということが基本であることを忘れてはあり得ない。

 GE社は「どんな地域でも混乱、衝突、障害があるが、その危機は克服できる。その市場がGEの成長にとって必要なら投資の後退などありえない。アジア進出を忘れたグローバル化はない」と断言している。

 どんな時でも将来への投資がカギとなる。日本の企業は将来への投資が委縮してしまっている。これが近い将来、仇になる。将来への投資を一定額拠出して、効率的に行うこと。それはGE社に言わせればアジア投資ということになる。

 例えば、昔は「よろず屋」がどの村にもあった。今あるのはコンビニだ。駅前の商店街はさびれる一方で、郊外型店舗がどんどん成長しいている。それは全国展開のチェーン店だったり、支店だったりする。それと同じ現象がグローバルな社会でも起きている。

 だから日本企業として生き残るには将来への投資をすること。そのためには「新しい市場を目指す」、「魅力ある商品を作る」この2つしかない。これを忘れた経営はあり得ない。

 投資で大切なのは費用対効果を絶えず意識すること。意気に感じるだけではダメ。この視点を忘れてはならない。

 第2に大切なのはコックピット経営。人・モノ・金、すべての情報が社長の周りに集まること。執行は部下に任せて社長は経営判断だけやる。あまりブレーンを多くしない方がいい。

 社長の資質として大切なのは、無理しない自然体で、権威主義的な考え方に囚われず、経理がわかること。

「明るい高齢者雇用」

第44回 70歳過ぎて現役―衰える心身機能:プロ集団形成めざす

(「週刊 労働新聞」第2191号・1998年2月23日掲載)

 

 これまで、多方面の取材を踏まえて高齢者雇用について論じてきたわけであるが、ある読者から「高井法律事務所こそ高齢者雇用を実践しているのではないか」とのご指摘をいただいた。これまでの取材を通じて、高齢者雇用の難しさや問題点を把握することができたが、その成功事例となると少ないといわざるを得ない。私共の事務所が成功事例と言えるものかどうか分からないが、「種々の職業経験を積んだ高齢者はその分野において仕事のプロ」であるという認識のもと、高齢者採用について力を入れてきたのは事実である。法律事務所というのは弁護士がその資格において行う活動のほかに情報の収集から慶弔の挨拶まで種々の業務や事務が発生する。これらをその道の専門家に行っていただくことで法律事務所としての戦力がトータルで向上するのである。今回、当事務所の高齢者雇用を客観的に評価してみるつもりで、事務所の社外相談役にお願いして、当事務所の5名の高齢者職員を取材していただいた。高齢者雇用の何らかのヒントを読者と共有したいと考える次第である。

○中国問題の専門家の採用

 最初は中国問題の専門家、足代清(あじろきよし)氏である。足代氏は大正15年生まれの71歳。昭和18年に大阪府の派遣生として東亜同文書学院に入学、生涯を東亜の発展に捧げるべく上海に渡った。これが中国通となるきっかけである。その後、終戦を迎え、京都大学経済学部に転入学し、近代経済を専攻した。ゼミのほとんど全員が学者を目指して大学院に残る中、海外雄飛の夢捨て難く、大手海運会社に入社した。その海運会社では皆が憧れる欧米勤務を望まず、一貫してアジア地区を担当として香港に勤務したのである。海外勤務を経験した社員は次には「できるだけ早く日本の本社に戻りたい」と言い出すのが常であるが、彼は「自分を切り拓くのは香港だ。現地の人との交流を深め商圏を確立したい」と意欲を燃やし続けた。中国海運の近代化・コンテナ化における彼の功績は大きく、中国交通部から高い評価を受けた。

 そして、昭和54年に大きな転機が訪れる。今日でいうヘッドハンティングを受けたのである。当時中国進出を企図する大手都銀が中核となる人材を探しており、彼に白羽の矢が立ったのだ。それも頭取自らのヘッドハンティングによりその都銀に転身することになり、昭和57年には初代の北京駐在員事務所長に任命された。プロパーの行員でない者の登用は極めて異例なことであり、当時の銀行業界を驚かせるほどの人事であったという。

 北京駐在員事務所長時代の彼は長年培った中国に関わる深い造詣と堪能な北京語を駆使して金融界・貿易会に多くの人脈という財産を築き上げ、帰国後も顧客の中国進出の支援に貢献したのであった。結局彼は都銀として異例な処遇を受け、70歳を過ぎるまで雇用を全うされたのである。現在高井法律事務所では上海事務所の開設に向けて準備を進めている。中国に精通した足代氏を昨年の9月に当事務所に迎えたのも、その余人をもって替え難い専門性と年齢を感じさせない心身の若々しさによるものである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第46回>会議の3原則~結論を出せ~

(1998年4月21日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 ミーティングばやりで朝から晩まで会議している会社がある。しかし、まず会議は午前中だけとか月曜日に限るとか、時間を限定することが大事。会議ばかりやって具体的な実務が進まない企業が非常に多い。だから、まず会議を行う曜日か時間を限定することだ。

 ある優良企業は土曜日にやっている。役員会も土曜日。そして「月曜から金曜は営業に使え」と言っている。

 日本はこれまで合議制、コンセンサス重視の経営体だったが、もう時代に合わない。特にいけないのは、会議は責任の所在を不明にするという最大の弊害があること。今は知的企業社会だから、リーダーが方向性を示し、その上で実践策を検討する会議でないといけない。会議では方向性は示さず、挙句の果てに責任の所在が不明確になるというのでは意味がない。

 第2は、会議の結論を必ず出すこと。結論とは担当責任者とタイムリミットを決めること。

 第3は、簡潔な議事録を作ること。その議事録の内容にある結果を生かす方策を具体的に考案し実践すること。

 

「明るい高齢者雇用」

第43回 職場の「和」大事に―衰える心身機能:神経症など予防を

(「週刊 労働新聞」第2190号・1998年2月16日掲載)

 

 前回は、作業方法・機械を見直し、中高年作業者が生き生きと働ける労働環境の整備を図り、人手不足解消を実現している東京美装興業(株)の状況をご紹介した。次に、同社の明るい高齢者雇用実現に向けての要件である健康管理・衛生管理についてみてみよう。

 東京美装興業では、50歳以上の従業員が約50%を占めている。定期健康診断の報告によれば、高齢者の中の3割程度が「要再検査」等の所見があり、従業員の出退勤と健康相談に留意している。

 精神疾患では家庭環境と対人関係の悩みがノイローゼ、あるいは出勤拒否につながることもあることから、(財)労働科学研究所が開発した蓄積疲労兆候インデックス(CFSI)でチェックするなど、精神的ストレスについても、情緒面の安定の調査を行っている。因みに労災には電車のプラットホームでの事故が多いという。中高年労働者は疲労度も高く、俊敏性も年齢とともに衰えていくことから、通勤・帰宅時の混雑に充分対応できにくくなることもその一因といえよう。この点からも企業は気配りが必要である。

 作業者にとり疲労した心身を休める控え室の環境も大切な要素の1つである。狭く暗い部屋では、とても疲れを癒すことなど出来ない。やはり換気の良い清潔な部屋、特に高齢者業者には部屋の気温設定にも留意し、冷暖房や窓がきちんと設置されていることが望ましい。また、流し台などの設備に対する要望も高い。仕事の仕方、職場の組織や作業環境を考慮しなければならないことは第で既に述べたが、その時にご紹介したトヨタ自動車の例にみられるように作業中の緊張を解くことで生産性・能率が上がることからも、控え室の環境整備の必要性は認められよう。

 組織については、従業員同士が限られた空間で長時間一緒に作業をするため、福利厚生施設の充実、グループ(職場)ごとの春秋のレクリエーションに補助金を出すなど、「人と人の和」をことのほか大事にしている。現場の主任クラスには人間的な幅、「職場の父親」の役割が要求される一方、女性が60%が占める中、最近では女性の主任が輩出している。

 モチベーションを高めることが「明るい高齢者雇用」を実現するには何より大事なことである。東京美装興業はスキー部に力を注いでおり、オリンピック等に選手を送ることも目指しているが、それは職場の同僚が世界の檜舞台で活躍することによって末端の社員のモチベーション、やる気を刺激することにあると言ってよい。清掃という業務自体、陽の当たらない仕事である。八木祐四郎代表取締役会長は、このことを実践してJOC専務理事になり、今回の長野オリンピック団長を務めるに至り、役員及び選手10名が、この長野オリンピックに参加している。

 同社のスキー部員はシーズン外は、午後3時まで通常業務に当たり、それ以後を練習に打ち込むことになる。スキー部員も一般社員と同様の業務を担当し、引退後は同社に勤務するということが一体感を強めると共に、社是である「ファミリー精神」と「低く座して高く考える」というモットーを実践しているのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第45回>自動化ラインよりも人間の力を活かす工場・経営体へ

~流れ作業よりもチームで完結するモノ作り~

(1998年3月18日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 前回(1月13日)に、セブ島のミツミ電機が13,000人を使って工場でモノづくりをしている話をした。自動化ラインがないことに驚いたが、完全自動化よりもその方が生産性が上がるという工場長の説明に感銘を受けた。その話をした日の夕刊に「自動車組み立てラインの新傾向」という記事が出た。私の方が数時間、早かったわけだ。

 人間の力を活かす方法で経営体を考えなければいけない。機械は補助道具だと思って経営すること。人間が機械に使われる工程を作ってもうまくいかない、という結論を、人が有り余っている海外で実践している企業が成功しているのだ。

 ワタベ上海を訪ねたら、生産性も品質も美意識も見事に整っていて唖然とした。教育次第である。中国人だからどうだということは全くない。

 ワタベではウェディングドレスを作っている。非常に細かい仕事で美意識も品質もスピードも要求される。その中で様々な工夫をして生産性を上げていた。

 流れ作業ではなく、各班10名の中で仕事を完結させる。そして、1着作るのに30時間かかるとしたら、それを25時間でやったら5時間分のボーナスを出すシステムをとっている。もちろん品質テストで合格したものに限る。これは日本でもどこでもできる。そして完全受注生産である。

 また「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ」というモノづくりの基本を徹底して教えこんでいる。

 これまでいろいろな企業を見てきたが、ワタベ上海がナンバー1だ。本当に「やればできる」という世界を見た。

 

「明るい高齢者雇用」

第42回 国家試験に挑戦―衰える心身機能:東京美装が訓練校

「週刊 労働新聞」第2189号・1998年2月9日掲載)

 

 高齢になると、労働意欲に対してフィジカルアクティビティ(身体的能力)・スキル(技能)が衰えていくのは必然のことである。トヨタの事例に続き、企業側の職場の環境、道具、設備の改善により中高年労働者が重要な戦力となっている企業をご紹介しよう。

 東京美装興業(株)は、ビルの設備・清掃・警備・運営支援サービス・商品販売の5つを提供するビルメンテナンスの総合管理業者として、創立40周年を迎えた現在、従業員7000名余を抱える企業に発展している。そしてこの5つの業務を支えるために、人材育成、研究開発、事業開発の3つの支柱を確立する一方、ビルの管理のみならず、運営即ちビルマネジメントに新しい扉を開こうとしている。今回は、臼杵繁取締役人事部長と前川甲陽技術開発センター長のお二人への取材を基に、同社の「明るい高齢者雇用」をご紹介しよう。なお、参考として同社技術開発案正田浩三氏が(財)労働科学研究所の協力を得て行った科学的調査をまとめた資料を使用させて頂いた。

 東京美装興業には現在60歳以上の従業員が約600人在籍している。60歳定年制度を採用しているが、本人の意思と健康診断の結果で65歳までの継続雇用が可能なのである。定年に達した者のうち、約85%が継続雇用を希望し、嘱託社員となる。ちなみに、継続雇用者の一部に高年齢者多数雇用奨励金が助成されているが、平成10年度より制度が改定され、削減される方向にある。

 ビルメンテナンス業の災害の発生率は建設業、製造業よりも高い。これは、中高年者が多いという事実によることが第1の理由として挙げられ、中途採用者が多いことによる経験不足が続く。そこで東京美装興業では、業務災害を防ぎ貴重な人材の安全を確保して、人手不足を解消し、高齢者にも働きやすい職場を作り上げている。

 高齢者の清掃中の災害では転倒、特に床洗浄中の転倒事故が約半数を占める。例えば転倒し骨折すれば休養期待が3カ月にもなってしまう。貴重な人材が職場に復帰できなければ人手不足に拍車がかかる。そこで、滑り転倒を解消するため、作業手法を洗浄によるメンテナンスからドライメンテナンスへ移行しようと労働作業環境の整備に努めている。

 作業者に分かりやすく扱いやすい機械化を図ることも作業環境整備の1つである。加齢によって作業能率が落ちるのは避け難いことである。例えば早朝限られた時間内に定められた作業を終えることがなかなか難しくなる。そこで同社は、昭和53年より東京と認定の事業内訓練校を設置し、技能向上訓練を通じて従業員の技能向上を促進させている。高齢者も積極的にビルクリーニング技能士という国家試験に挑戦し、有資格者はすでに300人を超えている

 清掃業務の完全機械化は難しい。もちろん能力の個人差は著しい。そこで、作業者、特に高齢者にとって使いにくい機械・器具を見直し、小型で軽い、安全で使いやすい製品の採用と安全教育を行っている。

 次回は、精神面から中高年労働者を支え、企業体として一丸となる同社の状況をみてみよう。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第44回>企業経営に必要な「空気」づくりを

(1998年1月13日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 サッカーW杯日本代表チームの岡田武史監督の心の支えになった本は山本七平の『空気の研究』だったという。

 刑事訴訟法は刑事裁判の手続きで、民事訴訟より厳格な証拠を要求する裁判手続きだが、後に東京大学の総長になった刑事訴訟法の平野竜一先生は「裁判に勝つのは法廷の空気がどちらを味方しているかで決まる」と述べていた。「証拠」ではなく「空気」だというのだ。

 中国の方言にも「お白州で決まるのではなく、村で決まる」とある。村の空気で決まるというのだ。

 企業経営で忘れてならないのはこの「空気」。だが、経営者は空気だけに頼ってはいけない。細かいデータを踏まえた空気づくりが大切。うまく経営の出来ない経営者はこの空気づくり下手だ。空気とは「勝ちムード」である。

 そして経営者は、数字を忘れてはいけない。それが細かいデータである。その上で、会社が伸びているとか、発展しているとか、よその会社よりよくなっているとか、回復基調にあるとかいったような、空気づくりを念頭に置かなければならない。

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