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第36回 上司の教育的役割(上)
(2009年12月21日転載)


高井伸夫弁護士は、上司は部下の人生そのものに愛情と責任を持って教育・指導に当たらなければならないと強調する。良い上司との出会いは、その後の人生を左右することすらあるからだ。部下との間の報告・連絡・相談を密にするとともに、「学び方」の学習に力点を置く必要があると訴えている。

 

上司の能力著しく劣化

「やってみせ、言ってきかせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている姿勢を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」(山本五十六元帥・1884~1943)。世に知られるこの言葉には、理想の上司像の要件が集約されていると言っても過言ではないだろう。

ここから彷彿とされるのは、部下との強い信頼関係で結ばれ、人としてのピュアな使命感を抱き、部下を的確に教育・指導・育成して次の世代へのバトンタッチを行い、組織の成長に着実に貢献する頼もしい上司像である。

しかし、現実にはこうした力量に恵まれた上司は少ない。このような上司であれば、パワハラ問題など起こるはずもないが、今の企業社会では、上司として当然の教育・指導を行ったとしても、上司と部下の間に確固たる信頼関係が築かれていなければ、パワハラと言われてしまうおそれがある。

日頃、私が人事労務問題を専門とする弁護士として企業のご相談に与る中で強く感じるのは、パワハラ問題に限らずあらゆる局面で、上司の上司としての能力が著しく劣化してきているということである。

 

あり得ない“全知全能”

上司の役割は多様であるが、本来的に果たすべき役割とは、ドラッガーが「何よりも経営管理者を他の人から区別するものは、教育的な役割の有無である」(ドラッガー著『現代の経営(下)』第27章参照)と喝破したように、およそ様ざまな局面で部下の教育をなし遂げるよう努めることである。

部下を人材として教育・育成し、企業の業績に資する働きを遂げさせ得る能力が上司になければ、企業の将来はない。ここに、終身雇用制が崩壊しつつある中で、企業のDNAをいかに伝承し企業の存続と成長を実現するかが重要な課題である今こそ、上司に求められる教育的役割について再認識すべきとなるのである。上司が教育的役割を果たすことは、部下の成長を促し、ひいては企業の力を強めることにつながるのである。

また、ここで言う教育的な役割とは、仕事のやり方だけに限らない。部下は上司の働きぶりを間近で見て仕事に対する姿勢や情熱を体感しながら自ずと教育を受けていることも考えると、上司は仕事だけではなく、人格や生き方全般において部下の見本となることで、教育的な役割を果たしていると言ってよい。

しかし、全知全能の神のような人間はあり得ない。著名企業のある女性管理職に、部下への指導で留意している点についてお尋ねしたところ、「①その場で叱る(後日では忘れてしまう。場所は選ぶ)、②くどくど言わない、③良いところをほめて伸ばす、④他の人からの評価を伝える、⑤常に言葉と笑顔をかける、⑥家族のことを気遣ってあげる、⑦自分の弱さも隠さず表し部下の成果を横取りしない」という極めて率直で有用なご回答を得たが、自分の弱点にも自覚的で正直な姿勢は、上司として持つべき大切な人間性であろう。

なお、部下の教育には時間を要するうえに忍耐力が必要であり、上司は教育のために自分自身の時間さえも犠牲にしなければならない。それは組織での仕事に伴うものであるから、何らかの「手当」で彼らを遇するべきであろう。例えば、税理士の小原靖夫先生が2001年から用いられている「役割貢献給」という名称は、組織における上司の教育的役割の意義を分かりやすく示す好例であると思われる。

良い上司との出会いは部下にとって一生の宝であり、若い頃上司に言われた教えが、その後の人生を左右することすらある。その意味で、上司は部下の人生そのものに愛情と責任を持ち、部下が職業人としてどのように歩んでいきたいのかをよく把握した上で指導しなければならない。

特に、専門資格者である弁護士は、一般的にセルフィッシュで功名心があり、排他的な傾向があることは否めない。私が日頃の業務の中で、どのようなことに留意して勤務弁護士を指導してきたかもご紹介しながら、上司の教育的役割について考察を進めよう。

 

基本的挨拶から始める

第1に、上司は部下に分かるように伝えるコミュニケーション能力を有していなければならない。そして、部下が技能や意識の面で上司の指導を受け入れる準備がどの程度できているかを考え、適切な量と質の指導を行うことを心掛けるべきである。

私は、この点を見極めるために、まず、「おはようございます」「お先に失礼します」「行ってきます」という基本的な挨拶をすることから始める。これに応答できない者は、そもそも上司の教育を受け入れにくい存在ということになろう。

また、限られた時間をやりくりして、私は30年以上にわたり部下から「報告・連絡・相談」を定期的に受ける場を設けてきた。毎週と毎月の始めに短時間でもヒザ詰めで話し、二言三言でも私が発言・助言をすること自体が、教育的役割を果たしてきたと確信している。「報告・連絡・相談」は、コミュニケーションの第1ステップであるだけでなく、互助と牽制と成長を実現する方法として最も簡便で分かりやすい方途である。

「報告・連絡・相談」を書面で受けた上司は、それに対してわずかでもコメントを書き込むことによって、部下に互助と牽制の意義を気付かせ、成長を促すきっかけを作ることになる。

私の場合、弁護士からの成果を上げた報告書等には「よかったネ!」「ご苦労さまでした!」「よろしく」等のコメントを直筆で書き込み戻すように心掛けている。こうしたプロセスを受け入れられない者は、組織の外にあるものとして評価せざるを得ない。

「報告・連絡・相談」は、組織におけるコミュニケーションの基礎であると同時に、マネジメントの要でもある。「企業は人なり」という言葉どおり、組織とは、人を組み合わせ、一体として存在し続けることに意義がある。コミュニケーションと「報告・連絡・相談」は、人と人との結束点としての役目を果たす方途に他ならない。その意味で、「報告・連絡・相談」を軽視する者は、組織の構成員たる資格がないと言っても過言ではないのである。

 

学び方の学習が必要に

第2に、上司は部下に学び方を学ばせなければならない。

私は部下の弁護士に対して、ひとつの案件ごとに判例・文献を十分に調査し、そのうえで少なくとも2~3種類の雛形を調べるように常々言っている。この指示は、先人や先輩の教えを学ばせることが眼目であるが、判例・文献等を模倣するだけでは進歩がない。より重要なのは、本人が疑問点を積極的に探究しようとする姿勢である。新しい考え方・感じ方をするためには、まず先人・先輩の考え方・感じ方を知り、その上で自分なりの新しさを生み出すことが必要になる。このプロセスでユニークさを持ちたいと強く思うことが、競争力をつける原点なのである。

学び方を学ばせるとは、自学自習で成果を上げる方法を教えることである。一番分かりやすい例はコーチングであろう。

コーチングの意義を端的に言えば、個人の特性を見極めて各々の性向に合った学び方を習得させるということになる。現に最近の学習塾は、クラス全体を指導する方式から個別指導の時代に移ったというが、これもまた、より効果的に学び方を学ばせるための実践策と言ってよいだろう。

努力家には努力家としての学び方、発想豊かな人には発想の仕方を学ばせるのである。これが最も効率的な学び方なのであり、学び方を学ばせるとは、千差万別の個性を把握しそれぞれに最適な導き方を実行することに他ならない。そして、ここにこそ“教師役”の難しさの真髄がある。

先生になる人は学問ができるよりも学問を青年に伝えることのできる人でなければならない。学問を伝えることは一つの技術であるという趣旨の言葉が内村鑑三の著作(『後世への最大の遺物』参照)

にあるというが、各自の個性を見極めてそれに応じた指導をする能力は極めて高度な辞技術と言えるだろう。

 

決して王道を外れない

こうして本人の資質に合った学び方を学ばせるに当たっては、何を学ぶべきかについても十分の吟味しなければならない。まず習得すべきは、どの分野であれ、“原理原則”的な事象であることが鉄則である。決して王道を外れてはならない。新しい発想は王道の上にこそ生まれるからである。

原理原則を学ぶとは、過去の実例を分析し、総括したものを確認することである。

何よりも重要なのは、本人自身が自分の頭で原理原則を追求することであるが、加えて、古典に親しみ古典に学ぶ姿勢を持たなければならない。古典は先人たちの思考の蓄積の産物であり、現代でも生命力のある原理原則を打ち立てたものだからである。

 

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第8回 素晴らしい出逢い

 

こんにちは。

 

株式会社新規開拓 代表の朝倉千恵子です。

東京は暑さのピークも過ぎて、日差しも柔らかく感じますね。

 

今年は突発的な大雨や雷、それによる被害も大変なものでした。

被災された方々の思いを考えると、胸が苦しくなります。

 

何か私たちに対する地球全体からのメッセージとともに、

試されていると感じます。

 

今一度日々の当たり前に感謝し

大事にしなくてはならないことを真剣に考え行動したいですね。

 

高井先生とのご縁を通じて、沢山の素晴らしい出逢いがありました。

 

その中のお一人である

安曇野ミネラルウォーター株式会社 代表取締役の新井泰憲様。

 

弊社で開催している「経営者ビジネス懇談会」にて、

高井先生とのご縁を語ってくださいました。

 

以下、新井社長がまとめてくださった

ご縁のエピソードです。

 

***************

 

出会いの質が人生を変える。

と、私が本気で思ったきっかけは、

高井先生との出会いとその教え、実践からです。

 

私は20代で法曹になることを志しましたが叶わず、

30歳から地元の長野県に帰り働くことを決めました。

どの道をどう進むか決められないまま、

漂うように日常を過ごしていました。

 

そんなとき、

実父が高井先生と懇意にさせていただいた関係で、

私も会食を共にする機会を得ました。

 

大変著名な高井伸夫先生にお会いするということで、

緊張し、滝のように汗をかいたことを覚えております。

 

初めてお会いしたとき高井先生は私に向かって、

「人生の目的は何か、何に人生を捧げたいと思っているか」

という質問をされました。

 

答えあぐねる私に高井先生は、

インドに一緒に行こうとだけおっしゃいました。

 

そうして、あれよあれよという間に、

私は高井・岡芹法律事務所のインド視察団として、

共に視察することとなりました。

 

そのインド視察の終わりの頃、

高井先生と2人で白い七面鳥を見に行った際に、

車中で2人きりになりました。

 

そこで遠くをみながら、高井先生が、

「新井くん、ビジネスをするなら、朝倉千恵子さんを訪ねなさい」

とおっしゃいました。

 

いつも多くを語らない高井先生。

 

私は高井先生のおっしゃられたことだから、

きっと深い意味があると思い、日本に戻って、

すぐに朝倉千恵子様を訪ねました。

 

「高井先生のご紹介で参りました。

新井泰憲と申します。」

 

ご挨拶申し上げると、

「高井先生のご紹介ですね。」と

微笑みながら朝倉社長にご挨拶をいただき、

「私の全てを伝えます」と営業力強化セミナーへの参加を

ご紹介いただきました。

 

当時、事業の立ち上げ中で、

売上も社員もなかった私としては、

社員教育や営業力強化につき、いま必要なのかどうか

躊躇する気持ちもありました。

 

逆に何もないからこそ、

飛び込んで何かを掴まなければ、、、

という気持ちで参加しました。

 

営業力強化セミナーでは一言で、

ビジネスの道を歩む気構えの厳しさを知ることとなりました。

 

また、朝倉千恵子社長のように、

つきぬけた目標に向かって走り続ける経営者にならなくては、

という強い思い、目標をたてる機会となりました。

 

そのときから、

何か苦しいこと、

悩ましいことがあれは、

朝倉社長の教えに触れるようになりました。

 

私にとって朝倉社長は北極星のような存在です。

迷ったときに、遠くで光り続け、人を導く星。

 

いま思うと、

ビジネスが何たるか何も知らない私に、

北極星の存在、ありかを高井先生は教えてくださったのだと思います。

インドでいただいた出会いが私の人生を大きく変えました。

(私がもう1人、ビジネスの世界で師と仰ぐ鮒谷周史様とは、

インド視察団として出会う機会を頂きました)

 

ビジネス、ひいては人生の標となる、

北極星、目標、ロールモデルと出会い、

私の心、あり方に強烈な変化が起こり、

私の人生が変わりました。

 

出会いの質は、人生を変える。

 

高井先生を通していただいた出会いが、

本当に私の人生を変えてくださいました。

 

言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。

いつか私も、誰かの標、北極星になれたらと精進して参ります。

 

株式会社安曇野ミネラルウオーター

代表取締役 新井泰憲

 

―――――――――――――――――

 

経営者としてこの先どうしていくべきか?

何を優先し、未来に向けどう行動すべきかを悩んでいる中、

高井先生の一言でよし!と決め動く。

 

その行動力が壁を突破する力になっていると

感じるエピソードですね。

 

新井社長はインド視察からの帰国後、

高井先生のアドバイス通り、弊社に連絡をくださいました。

 

そして社長自ら、

私が講師を務める「名古屋営業力強化セミナー第7期」を受講され、

その後は社員にも同じ学びを共有したい、と

スタッフをセミナーにご派遣いただいたり、

自社でも研修を導入いただいたり、と

非常に熱心に社員教育に取り組んでおられます。

 

安曇野ミネラルウォーター様では、

取引先様が工場に視察に来た時には、

スタッフの第一印象が別格だと声が上がるそうです。

 

「いったい何をしたら、社員がこんなに明るく、

生き生きと仕事をするようになるのですか?」

 

「気持ちの入った商品は必ず売れます。

この会社の水には気持ちが入っています」

と、高い評価を受けていらっしゃいます。

 

今日も長野県安曇野市から安全で美味しいミネラルウォーターを

気持ちを込めて全国に届けていらっしゃいます!

 

また、2016年10月1日(土)には、

「松本から日本を元気に!」という志の元、

長野県松本市での講演会を企画していただきました。

 

地域の活性化。

生まれ育った場所をもっともっとよくしたい。

 

互いに切磋琢磨しあって、

経営者同士が成長してこそ企業が成長する。

 

そんな価値観の元、地元の経営者の方々にたくさんお集まりいただきました。

 

新井社長と私との数々のエピソード。

 

全てのきっかけは

「日本に戻ったら朝倉さんと逢いなさい…」

高井先生のその一言だったのです。

 

高井先生の言葉をそのまま素直に聴き、聴くだけにとどまらず

何よりも即行動に移され自らが学びに徹する

新井社長のその姿勢が素晴らしいと思いました。

 

ときに厳しいことも高井先生はおっしゃいます。

あまりにも率直なため、人によっては受け止められず、

聴くだけに留まる人も少なくありません(恐らく、、、)

 

たくさんの素晴らしい出逢いは、高井先生のアドバイスや言葉を聴き、

行動に移されている人だからこそだと思っています。

 

私もその一人?

自分ではそう思っていますが、きっと高井先生はまだまだ!

 

と感じているかもしれませんね。

 

高井先生に認めてもらえるように

更に精進します。

 

株式会社新規開拓
代表取締役社長 朝倉 千恵子

 

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「仕事人のための接待学」第3回 高井伸夫

 歓談を演出するコツ

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年4月27日掲載

 

接待の場では、おのずから会話があり、話が弾み、まさに歓談とならなければならない。そのためには、事前の情報収集が大切である。

NEC常務取締役の大森義夫氏がこのたび、97年7月から12月にかけて日本経済新聞夕刊「あすへの話題」に寄稿したエッセーを取りまとめた小冊子を発表された。その中に「パワーステーション」という標題の文章がある。

そこでこう語っている。「情報は、時に大いに集め、大いに散ずるのがよい、その方がよく集まる」「他人の情報は熱心に“収奪”するが自分の知っている情報は全くしゃべらない人物がいた。面白くないと感じていたが、周辺もそうだったらしく彼にはだれも情報を話さなくなった」

然りである。

寡黙な人の接待は、時にシーンとなって、話がとぎれ、違和感すら生じる。そしてお互いに疲れを感じるようになる。時を忘れて談笑しストレスを解消するには、胸襟を開いて己を語ることが必要である。

また接待の場において最も大事なことは、寡黙にならないこととともに、自慢話をあまり露骨にしないことである。大森氏のエッセー集の最後に「露骨はいやだね 小粋がいいね」との一節があるが、まさにその通りである。

問題はここからである。

接待の場では、相手が自慢したがっていることに触れ、そして相手が自然と自慢話ができるような状況設定をしていくことである。そうするとおのずから会話が弾む。

この情報の交換という世界は極めて楽しい。私はこれを接待における一つの実践目標にしている。その結果、様々なことを学ぶ。

例えば、接待は営業のために行なうのが大半であるが、営業の本質について思い付いたのも、この語り合いの中だった。『営業は偶然と奇跡の連続だ』『営業力とは、偶然を必然にし、奇跡を平常にする努力をいう』といった私のテーマの一つが生まれたのも、接待の場においてだった。

それには、彼・彼女に語ってもらうだけでなく、自分も一緒にその場に参加して語り合いの焦点を合わせる努力をすることである。

そして談笑する時に大切なことは、相手の人にお会いできたことに感謝する気持ちを持つことである。これがなければ、談笑には余韻が残らない。

一期一会の精神というが、まさに偶然と奇跡によってその人と会うことになったことを、大げさに言えば神に感謝するほどの気持ちがなければ、談笑は空虚なものになってしまう。

 

 

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第35回 人事・労務の未来(終)
(2009年10月26日転載)


人生のあり方そのもの

本稿第3回でも述べたとおり、日本は総人口も労働力も減少の一途を辿っている。そうした状況では、右肩上がりの成長を望めないことはもちろん、後述のとおり、むしろ下降するばかりであろう。

しかし、このようなマイナス成長経済環境下においてもなお、いかに“従業員満足モデル”を追求するかという新たなテーマが、人事・労務において重要性を増す。つまり企業は、労働者に対しては、賃金だけではなく、働きがいを与えることを通じて生きがいを体感せしめることが重要となってくるのである。この働きがいとは、単に金銭的に報われるだけではなく、手・脚・頭脳という人間の全ての能力を十分活用することで成果を生み出し、自らの労働に社会的意義があると実感できることである。

人材問題のスペシャリストから、今の時代は人生の喜怒哀楽の8割以上は仕事から発せられているとの意見を聞き、納得したことがある。とすれば、雇用者が就業者全体の「86.5%」(総務省「労働力調査」平成20年速報)を占める今日では、雇用の未来とは人生のあり方そのものであると言っても過言ではない。それゆえ、人事・労務管理は“雇用と未来と人生のあり方の礎”となろう。

ところで、現在の日本は広く社会構造の転換点を迎えている。先の衆議院選挙で民主党政権が誕生したことは、国民が日本全体の貧困化を無意識にせよ予見した上で、今までの大企業の中心の政治から中小企業をも包含した政治への転換を期待した結果であるとも言える。連合が支える民主党政権下においては、後述する賃金ダウンの実情と相俟って、経営者は厳しい状況に立たされるのである。

この状況下では、従業員に対して金銭的報酬の向上以外に、拠りどころや働く意義を提供していくことがますます必要となってくるのである。そのためには、まず会社の規模を問わずに、事業理念・経営理念と職場のミッションおよび自己の目標が直接つながり、自分の仕事が事業の発展を通じて社会に貢献していると実感できることが重要である。それには何よりも、トップは経営理念を実現するために必死に活動し、そうした姿を通して周りから信頼を集める存在でなければならない。そして、業界のリーディングカンパニーになれる可能性があり、将来の希望を語れる企業となって、目標の達成感と成功体験を共有できるようにすることが肝要である。さらに、上司・リーダーの役割も重要性を増していく。

以上のような前提の下に、生きがいを生み出し、自己の仕事に働きがいと誇りが持てる職場をめざすには、具体策としてどのようなものがあるだろうか。

第1には、本稿第2回で述べたように、単に職位を与えるだけでなく、正しい評価による認知・称賛を形にして報いる方法を検討すべきであろう。これは、マズローの自己実現に関する欲求段階の5段階のうち、人間の本質的欲求の一つである「尊厳・認知欲求」を充足させる手段とも言える。

第2に、これからの経営者・管理監督者は、人事・労務の重要性を十分に理解しているのみならず、IQの高さに加え、EQ(心の知能指数)も高く、人間性も優れ気働きもできる人物でなければならないであろう。IQとEQが共に和音を奏でないと、良い人間関係を構成する基礎ができず、論理的に正しくても相手にうまく伝わらずに、仕事の成果も十分得られないからである。このように新たなリーダーシップスタイルで日常的な指揮命令ができる体制を作るのが、人事・労務の適正な運用の基礎となるであろう。

第3に、これからは“真性”成果主義型の人事制度導入が考えられる。真性成果主義型とは、日本的な長所(真面目に仕事に取り組む・チームワークを大事にする等)を残しつつ、自主独立・自己責任を涵養する施策を採り入れることである。

具体的には、売上げなど数値のみの結果主義や人件費カット・人員整理が見え隠れしたような成果主義制度ではなく、数値では測れないような複数のプロセスの進展度、あるいは複数名で分担したチームとしての成績などを加味した、本来の意味での成果主義の人事賃金制度をいう。このような真性成果主義を導入することにより、仕事の成果・業績と、人の能力・行動特性を分けて両面から評価でき、適材適所の人事ができるように制度と運用の仕方を決めるのがこれからの時代に必要であろう。この場合、企業が社員に求める仕事能力を再確認し、それを社員全体が共有できる仕組み作りが肝要であると言える。

したがって、①年度ごと(より短期にするなら四半期ごと)の成果実績については単年度の賞与等で社員に報い、②将来の貢献度も含め中長期的に判断すべき能力や行動特性については、昇進や年度の昇給・配置で報いることが考えられる。

 

致し方ない賃金ダウン

以上のように、働きがいと誇りが持てる職場づくりに向けて様ざまな施策を採る中でも、冒頭で述べたマイナス成長下においては、今後も賃金ダウンに至るという大筋に変わりはない。

民間企業の08年平均給与(429万6000円)は、前年より1.7%(7万6000円)減と減少率が過去最大となったし(国税庁「民間給与実態統計」)、また、月額所定内給与の面では、2001年に最高額(30万5800円)を記録したが、08年は10年前の98年と同額(29万9100円、01年より約0.2%減少)であった。こうした状況は今後も継続すると思われるから、10年後の2018年には1988年と同水準の23万1900円(08年より約22%減少)へと近付いていくであろう。

この賃金ダウンという従業員の士気・やる気を損なう人事・労務施策を採らざるを得ない日本では、働きがいと誇りが持てる職場づくりの施策を通して、従業員に人間としての尊厳を実感させるとともに、社会思想全体を変革する必要がある。

2005年のヒット作、映画『ALWAYS三丁目の夕日』には、建設中の東京タワーが映る印象的な場面があり、昭和30~40年代当時の高度経済成長期の雰囲気をよく表している。しかし、こうした東京タワー的な新しい建造物は斜陽化する日本にあっては、今後永久に建設されないのではあるまいか。そして、社会構造の面でも、例えば企業トップと一般社員の賃金格差が縮小していくのではないか。こうした事態に備えるために必要なのは、いかに貧しくとも「清く美しく」生きるという日本人本来の姿を大切にしながら、労働者さらには国民全体を根本的に育成し直すことである。それには、教育やマスコミ等世論の形成が大きな役割を果たすのである。

いずれにしろ、人事・労務制度は曲がり角に来ており、これをどのように改めて行いくべきか、各企業それぞれ真剣に検討し、今後の在り方を決めなければならない時期にさしかかっている。

 

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第7回 感性を磨く

 

こんにちは。

株式会社新規開拓 朝倉千恵子です。

 

本格的な夏が始まり、暑い日が続いております。

皆様どうぞご自愛くださいませ。

 

「壁と思えることも

自分で作り出しているものに過ぎない。

 

問題点を見つけ出せない人が、

営業として成功するわけはない。

 

営業マンにとって最大の資質は、

お客様の問題を発見する能力である」

 

上記は、高井伸夫先生から教えていただいたお言葉です。

 

【問題発見能力】

これは本当に大事であると思います。

 

変化を感じること。

「アレ?」というポイントを見つけること。

 

当たり前のように聞こえますが、

これがなかなか難しいものです。

 

なぜなら人は自分の見えているもの、感じられているものが、

全てだと考えがちだからです。

 

そもそも認識できていないものに対して、

どうやって意識をしたらよいのか?

 

日ごろからアンテナをピン!と張っていないと、

営業先に行ったとしても、

お客様が出す小さなヒントに気付くことはできないのです。

これは自社の社員を見ていても感じることでもあります。

 

オフィスのレイアウトが変わっても気付かない。

目の前に落ちているゴミに気付かず素通りしている。

 

そんな感性で、

どうやってお客様の「困った!」をキャッチするのだろう。

と思ってしまうようなシーンも実際にあります。

 

部下たちには常にアンテナをピンと張って、

周囲の情報やお客様が発するヒントを敏感に察知して欲しいと思います。

 

「感性を磨く」にはどのようにすれば良いのだろう?

常に自問自答していることの1つです。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【感性】

① 〘哲〙 〔英 sensibility; ドイツ Sinnlichkeit〕

㋐ 認識の上では、外界の刺激に応じて、

知覚・感覚を生ずる感覚器官の感受能力をいう。

ここで得られたものが、悟性の素材となり認識が成立する。

㋑ 実践的には、人間の身体的感覚に基づく自然な欲求をいう。

理性より下位のものとされ、意志の力によって克服されるべきものと

されることが多い。 → 理性 ・悟性

 

② 物事に感じる能力。感受性。感覚。

「豊かな-を育てる」 〔「心に深く感じること」の意で

江戸期の浮世草子に既に載っている語。

「哲学字彙」(1881年)で英語 sensibility の訳語として広まる〕

 

weblio辞書より引用

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

以前開催した、セミナーでのエピソードを紹介させていただきます。

 

その日は40名の方々が参加してくださいました。

 

質疑応答の時間までとっても充実しており、

私も思いを真剣にお伝えさせていただきました。

 

参加者の3分の2が営業職に就いている方で、

身を乗り出して聞いてくださる人も多くいらっしゃいました。

 

ところが、

私が大事な話をしている際に

一人の部下が後ろのスタッフと会話をして扉を開けて外に出たのです。

 

最も集中して聞いてほしかった話の箇所。

 

彼女にはその話を聞いてくださっているお客様に対する思いがないのかと

正直ものすごく腹立たしく感じました。

 

昔、研修最後の読み物をしている際に、

マイクのボリューム調整をしようと部下が後ろから

前に動いたことがありました。

 

その時、私はものすごく厳しく叱りました。

 

受講生が最後の話に一番集中している、

また最も集中して聞いて欲しい箇所。

 

場の空気がピンと張りつめた状態。

 

「余計なことをするな!」と

厳しく叱りました。

 

その部下は、その真意を理解し二度とやりません。

 

神聖な場での振る舞いはいかにあるべきか?

お客様への思いやりとは何なのか?

 

自分第一主義ではお客様の心など

分かるはずもないのです。

 

以下、社員に送ったメールです。

 

*******

 

私は悲しかった。

感性が麻痺していることに。

 

非常に残念でした。

打ち合わせをするタイミングも考えられないのか?

 

私にではなく、講師に対して、

何よりも受講生に対して無礼であり非礼。

 

感性の麻痺した心のない営業は愛されません。

 

*******

 

部下たちには大事なことを忘れてほしくない。

と心底思います。

 

人は失って初めて大事なものに気付くもの…

 

しかしそれでは遅すぎる。

高井先生にいつも教えられているように思います。

 

感性が麻痺してはいい仕事ができないということ。

例えば、高井先生は何気ない会話をきちんと覚えています。

 

「私、○○が大好きなんです!」と食の話題の際、

話したことを覚えていてくださり、

あるときのお中元やお歳暮で、何気ない会話で話した大好きなモノが

届くことがありました。

 

あのときの会話、覚えていてくださったんだなぁ。

と、正直とても嬉しくなりました。

 

これも感性のアンテナですよね。

 

私が膝に水が溜まり歩行困難になったときも、

高井先生は直ぐに異変に気付いてくださり、

素晴らしい治療院をご紹介くださいました。

 

違和感に気付く。

変化に敏感になる。

 

これこそが違いを知る感性ですね。

 

感謝の心、素直な心。

学ぶ心、謙虚な心を忘れずに。

 

目の前の事柄から一つでも二つでも、

吸収できる感性を磨きたいものです。

 

株式会社新規開拓
代表取締役社長 朝倉 千恵子

 

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「仕事人のための接待学」第2回 高井伸夫

 思い付きメモの効用

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年4月20日掲載

 

私はほとんど毎日のように、時には昼休みにも、接待を受けたり、接待をしている。職業上の必要性からだ、と言ってしまうと身もふたもないが、まずは人間関係の構築、すなわち信頼関係を築くことなしに、事実の解決への道も開けないからである。

それでは初対面の人、あるいは心配事を抱えた人との間に、どうしたら信頼関係を築けるのだろうか。

まず相手から学ぶ、教えていただくという気持ちを持つとともに、相手に安ど感を与えるために、晴れやかな顔、自信のある顔で対することである。不安げな顔、おぼつかなげな表情では相手の気持ちを落ち込ませる。

また、相手が話したいことや、こちらの質問に対する答えを最後まで話してもらう(途中で話の腰を折らない)ことも大事だ。そして、相手の関心事に対して的確な応答をすることである。

私の本業は企業の人事労務に関与することだから当然ながら、社長、人事部長など企業の幹部との会合が圧倒的に多い。そこで、相手が持っている悩みなりストレスなりにいかに近付くか、すなわち、共感していかに的確にアドバイスするかに腐心する。

さて、私はそのような会食・接待の場にいつもメモを持って行くことにしている。

それは相手の話の中で琴線に触れたところや、引き受けた用件、関連あるいは類似する案件、人物などをメモするだけではない。話の途中で、本当に唐突に思い付いた言葉、他の用件、あるいはひらめきといったものを、わずか五文字か十文字くらいでチョッチョッとメモしておくのだ。

話題豊富な人と面談すると、これが二十や三十の項目となる。

このような少し仕事から距離を置いたフランクな場で思い付くことは実に豊富だ。会議で真剣に討論している時より幅広い項目に及ぶことは言うまでもない。

それらをメモしておかないと、忘れてしまうだけでない。忘れまいとする気持ちから、現に歓談している相手との話がはずまなくなる。メモをすれば、まさにその瞬間から忘れてよいことになるから、ストレスにもならない。そして私は遅くとも翌朝午前中には、その項目を処理している。

接待とは実は相手のためにするのではない。自分自身のために行っているのだということが、このことでもわかるだろう。だからこそ接待相手への礼を失することがないように、いっそうの気配りを改めて心しなければならない。

 

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第34回 人事・労務の未来(3)
(2009年10月19日)

 

人事・労務を軽視すると、後に述べる労働力人口の急激な減少と相俟って、企業にはどのような弊害が生じるのだろうか。

 

崩壊する労使協調路線

人事・労務の軽視は、人を大事にしないということであり、その結果、従業員の勤労意欲の減退・士気の低下を招き、社員・従業員のロイヤリティーが徐々に薄れていくことは言うまでもない。そして、社員の能力が発揮されず組織のパフォーマンスが落ちることにより、創造性(製品開発力)、生産性(営業力・品質・コスト管理力)も当然に低下し、労務対応のコストが増大する。その代表的な事象として、訴訟が提起されるなど経営の求心力が失われ、労働側の意見を集約しづらくなることが挙げられる。さらに、労使関係が悪化し、日本の良き風土として利点であった経営と労働側の協調路線も崩れていくだろう。

そして、企業は人なりという本筋が失われ、優秀で貢献度の高い社員は退職し、他の企業へ流出する。また、社員の育成も進まず、人事労務の責任者や管理監督者も育たなくなり、他社と違ったユニークで戦略的なポジションをとるためのマネジメント層も不足し、組織の存続が一層脅かされる。こうして企業競争力は劣化し、最終的には淘汰されてしまうのである。

このように、人事・労務を軽視することにより様ざまな弊害が起こり得るが、最も大きな弊害の一つに、風評被害(レピュテーションリスク)が挙げられる。

従来、企業はヒト・モノ・カネの三資源でできていると言われていたが、本稿第1回で述べたとおり、私は数年前から信用と組織がそれらに追加されるべきであると説いている。企業間競争が激しくなればなるほど、信用の重要性が高まり、その反作用として、レピュテーションリスクが顕在化するのである。つまり「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」(『潜夫論』より)という故事成語のように、まさに噂が噂を呼び、悪評が企業の負荷になるのである。その対象は、マスメディアのみならず、ネット上の数多くの情報(書き込み・掲示板・ブログ・SNSなど)まで及ぶ。情報量の急増により、利用者が個々の情報の真偽を判断することは難しく、間違った情報でも情報量が多ければ、人間の心理として信用する傾向がある。リスクが顕在化した場合の顧客離れ・売上減少・株価下落・訴訟等によるブランドおよび信用の失墜・損失は計り知れず、会社の存亡に大きな影響を与えかねない。

ところで、こうしたレピュテーションリスクの問題はコンプライアンスとも大いに関連がある。そして、コンプライアンスは企業倫理のごく一部を把握しているものにすぎず、例えて言うならば、“企業倫理の浮島”とも言うべきなのである。それゆえ、企業経営においては人事・労務の面でも、法令遵守義務を果たすだけではなく、企業倫理を極めようとする姿勢が必要不可欠となる。そして、前述のような風評被害のリスクが蔓延する社会状況であっても、経営陣以下全員が、わが社は倫理上も誤った対応をしていないという確信を持てるように、人事・労務の仕組みの中で、従業員らに企業倫理・コンプライアンスの重要性を徹底的に叩き込まなければならないのである。

 

後継育成が大きな使命

さて、日本の総人口は減少の一途を辿っており、このままでは労働力不足による経済の縮小は避けられない。日本の現在の人口は約1億2770万人であるが、2055年には8993万人となり、50年もしないうちに3割もの日本人が姿を消し、さらに2105年には、4459万人にまで激減すると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所)。また、厚生労働省の推計によれば、2030年の労働力人口は、女性や高齢者などの就労が進まない限り、現在より約1070万人減の5584万人(約16%減少)まで落ち込むという。これは「生産性の伸びによって補える人口減少規模でなく、労働力人口の減少は、確実に経済成長を抑制する」と指摘されている(日本経済団体連合会「少子化対策についての提言」より)。この人口激減リスクに対する抜本的な処方箋の一つとして、移民法制も視野に入れなければならなくなるであろう。

さて本稿第2回でも述べたとおり企業の成長に資する能力を持つ者は限られた割合でしか存在しない以上、人口減によって企業に有用な人材の絶対数が減少し、社内人材の衰退・対価が急速に進行すると予測される。

そのような状況下で、必要となってくるのが、若年労働力の確保と活性化である。

ドラッガーも「若年人口の減少が国内市場を根本的に変える」「人口構造の変化こそ、ネクスト・ソサエティーにおいてもっとも重要な要因である」と述べているとおり、それを実現するための教育等の諸施策が必要となってくるであろう。各企業は生涯にわたり教育を施し、特に若年労働者に向上心を持たせ続ける努力を行うとともに、企業が仕事を通じ、従業員の知的能力・体力・精神力を鍛えることができるようなプログラムを実施すべきである。企業の指名は利益の追求にあるのは当然だが、人材を育てて初めて企業は継続する価値があると言えるのである。

具体的には、企業が給与以外の恩恵ももたらしてくれると考え、仕事そのものにやりがいと生きがいを感じる従業員を育て上げ、人間としてのレベルアップを継続させることが必要である。そして経営者は一人でも多くの良き後継者を育てるべく、自ら率先して一生勉強を怠らない姿を見せるとともに、一緒になって勉強することである。

 

修正すべき年功型賃金

さらに、若年労働力の確保と活性化についての施策として、年功型賃金制度を見直し、職務や成果を適切に反映した報酬体系に組み直すことが考えられよう。労働力不足になれば、需給のバランスが崩れるのであるから、初任給を含む年功給的体系から今以上の能力給あるいは成果給体系に移行せざるを得ないだろう。従って、現在ほぼ新卒共通の初任給水準も、会社の事情に応じて個別に設定することになろう。

一般的に年功型賃金制度のもとでは、業務に習熟する入社数年後から、職位を与えられる30代半ばくらいまでが、業績への貢献度に対して報酬水準が比較的低い年代と位置付けられる。一方で、40代以上の社員のなかには、貢献度に対して報酬水準が高すぎる者が一定量発生する。コストパフォーマンスの高い若年労働者が不足し、その業務を割高な中高年労働者でカバーしようとした場合、人件費負担が増大し、これまでの収益モデルは破綻に向かい深刻な問題となるのは明白である。そこで、貢献度に対して報酬水準が高すぎる中高年社員のそれを適正化し、雇用を維持しながら若年労働者に代替していくことが考えられるのである。

 

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第6回 あなたから買いたい!と言われる自分となれ!

 

こんにちは。

株式会社新規開拓 朝倉千恵子です。

 

今年も早いもので半年が過ぎようとしていますね。

忙しい毎日ですが、1日1日を大事に過ごしたいものです。

何となく過ごしていると1年は本当にアッという間に終わってしまいます。

 

さて、高井先生のブログに連載を書かせていただき、6回目となりました。

このような機会を頂き本当にありがたいです。

心から感謝申し上げます。

 

”「あなたから買いたい!」と言われる自分となれ!”

 

これは弊社の社是として会社設立当初から掲げている言葉です。

 

それから世の中は大きく変化し、

今やパソコン・インターネットが日本中に普及し、

いつでもどこでも仕事ができ、

日本国内はおろか、海外からでも簡単に、モノが買えるようになりました。

 

また、近年ではAI(人工知能)の出現がしきりに叫ばれ、

私たちの生活・仕事環境はますます大きく変化していくことは間違いありません。

 

とはいえ、

インターネットやAIが普及して、世の中がどんなに便利になろうとも、

 

最後には、「人」は「人」からモノを買う―

この鉄則は不変だと、私は考えています。

 

普段から連絡手段はメールやチャットばかり、

企業から届くお知らせはキレイな写真が掲載された印刷物。

 

そんな中、思いがけず手書きのお手紙が届き、

嬉しくなった経験はありませんか?

 

デジタルが普及した結果、

逆にアナログであることが良い意味で目立つ事例が増えています。

 

アナログには言葉にできない温かさがあるからです。

 

昔は当たり前だったことも、世の中が変化したが故に、

思いがけないポイントに心が動かされることが多々あります。

 

デジタルカメラやスマートフォンで誰でも簡単に

キレイな写真が撮れるようになりましたが、

昨今「使い捨てカメラ」が若い人たちの間で再び流行している、

という話も聞きます。

 

「どんなものが撮れているか現像しないと分からない」

ことが新鮮なのだそう。

 

人の心は、“便利”“簡単”だけを求めている訳ではありません。

アナログだからこそ生みだせる感動も実はたくさん潜んでいるのです。

 

とはいえ、もちろん、

昔のように全てをアナログに戻した方が良い!

というお話ではありません。

 

10年前よりもはるかにスピード感を持って仕事ができているのも

様々な便利な機器のおかげです。

 

大切なのは、そうした機器といかに付き合っていくか?

ということではないでしょうか。

 

デジタル化で浮いた時間を別のことに使う、

普段はデジタルだけど、ここぞというところで

アナログを活用する…などなど。

 

ものすごいスピードで世の中が変化している今だからこそ

 

「自分だからこそできる思いやりをいかに形に表すことができるか?」

と常に自問自答することが必要だと考えています。

 

実は人と人とのコミュニケーションを考えたとき、

アナログにせよ、デジタルにせよ、

手段は違えどもその本質にはあまり違いがありません。

 

ところが、残念なことに社会が便利になるに従い、

コミュニケーションそのものまで簡単に考えてしまっている人が

増えているような気がしてなりません。

 

簡単に人とコミュニケーションが取れるということと、

コミュニケーションは簡単に済ませて良いということは同じではない

ということが見失われてしまっているように思えるのです。

 

理念は愚直に守るもの。

誠実に、誠心誠意を尽くし行動することを忘れず。

 

高井先生から学ばせていただいた大切な教えの1つに、

「熱意と努力と創意工夫」があります。

 

「創意工夫とは、自分の商品をよく勉強すること。

お客様の商売を熟知するする(彼を知り己を知りて百戦危うからず)ことだ。

 

創意工夫の次にはお客様に好意を持つ。

すなわちお客様から好かれるのではなく、お客様を好きになること。

 

そしてお客様のお役に立つという精神を持つこと・・・」

 

このお言葉は高井先生から教えて頂きました。

努力は嘘をつかないですね。

 

私は高井先生から沢山の学びや気付きを得ましたが

 

その中でも特に印象に残っている教えのひとつです。

高井先生は常にこの言葉通りのことを実践していらっしゃいます。

 

ある年のブログに、高井先生が私のことを紹介してくださいました。

 

無用の用~高井伸夫の交友万華鏡

http://www.law-pro.jp/weblog/2011/08/83814820.html

 

私としては高井先生のブログに掲載していただけるだけで

大変光栄なことなのですが、

 

・どんな紹介をすればいいのか?

・原稿チェックは社員の誰がやるのか?

・一番PRしたいことはどんなことか?

 

など、内容についても事前に色々こちらの要望を細かく聴いてくださいました。

本当にありがたいことです。

 

人のために思いやりをもって行動する、というのはこういうことを言うのだなと

身をもって学ばせていただいたエピソードの1つです。

 

高井先生と出逢い、勉強することの重要性。

年齢関係なく好奇心を持つことの大事さ。

 

そして、人のために誠実に行動することの意義を学びました。

 

信頼される人間になれ!-

どんなに時代が変化しても、結局はこの一言に尽きますね。

 

「あなたから買いたい!」と言われる自分となれているか

今一度自らを振り返ります。

 

日々進化・成長できるよう

精進あるのみですね。

 

株式会社新規開拓
代表取締役社長 朝倉 千恵子

 

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「仕事人のための接待学」高井伸夫

「原点」はパーティー

日本経済新聞(夕刊)連載 1998年4月12日掲載


企業の接待の中で一番大掛かりなのは、社長就任、新社屋披露などの各種パーティーだろう。

 

そしてほとんどの場合、冒頭に企業の代表者の挨拶(あいさつ)がある。この挨拶の内容で、その企業の実力が判然となる。接待する、接待を受けるということによって、それぞれの企業の力量があからさまになるのである。

この3月21日、東京で「21世紀にのぞむデュポンのグローバルディレクション」の集いがあった。その冒頭の米国デュポン社社長兼最高経営責任者(CEO)のホリデー氏の挨拶は、極めて素晴らしいものだった。49歳で世界企業デュポンのCEOになるとは、よほどの人格・識見・手腕・力量がある人物だろうと思って臨んだが、まさにその通りだった。

まず、話が極めて手短でありながら多岐にわたり、しかも現代経営全般の核心をつくものだった。ある実力経営者がかつて語った「社長挨拶は紙に書いたものを読むものでは駄目だ。その挨拶文を作る人こそ社長になるべきで、それを読み上げる人は社長たる資格はない」との言葉が脳裏に浮かんだ。

ホリデー氏の挨拶は、まさに原稿なしで当意即妙。その内容も経営の課題だけでなく、学ぶ心、感謝の心を絶えず表している素晴らしい表現力だった。

さて、接待とは、今述べたとおり、その企業の訴えたいところを明らかにする一つの場でもある。企業を代表して接待する側の人格・識見・手腕・力量があからさまになることも知っておかなければならない。

接待にわざわざ時間とお金を費やす以上、自分自身をいかに売り込むかが課題になるからである。

ソフト化社会を迎えまさに頭脳労働時代となった。企業の能力格差は、足腰・手足・口先が武器だった農業・工業・商業・サービス業の時代の経営体以上に広がる。それにふさわしいまさに有能な人物が社長にならなければならない時代となったことを、接待の場であるパーティーでも知るのである。

社長の挨拶・話の内容が貧相で情熱がないものであれば、企業も貧相で情熱を欠いた存在であるとイメージされてしまう。

 

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第33回 人事・労務の未来(2)
(2009年10月12日転載)

 

「平準化」した人間関係

本稿第1回では、これからの企業では個別人事管理を強く意識せざるを得ないがゆえに、集団労務管理がより一層難しくなることを述べた。

今回はまず、上下関係を忌避しがちな平準化した今の社会の人間関係の中で、いかにして秩序立った円滑な人事・労務の仕組みを築くかということが、これからの人事・労務管理の課題であることについて述べたい。

一般に今の時代は、親子関係も師弟関係も本来の上下の秩序を前提としたあり方ではなく、尊敬の念が薄れ、友人や兄弟のような関係に変化している。例えば、学校で教師が生徒に気を遣い、生徒は教師と対等な口をきくゆゆしき現状がある。こうした環境で成長し社会人となった若手社員と先輩社員との関係は、かつてとは異質なものに変化していることは、必然と言えよう。仕事も大学のサークル活動の延長線上にあることを望む若手社員に、上司に対する尊敬・畏敬の念を抱かせること自体が、そもそも難しいのである。

こうした状況では、労働者の権利義務をどのように位置付けるかという従来からの課題が、より重要かつ困難なテーマとしてクローズアップされる。

それには、まず新入社員に企業のあり方を徹底して教え込み、甘えを排除することから始めなければならない。企業には優勝劣敗という決定的な判断基準があり、勝ち残ることが最終的な目標となる。その目標達成のためには企業の構成員が心を一つにして他企業との戦いに挑むことが最も重要であるが、それは単なる友達付き合いのような甘い人間関係では果たせない。構成員の絆は、互いが切磋琢磨し高め合う中で得られる連帯感でなければならないのだ。

また、企業は階層社会であって、その階層があるがゆえに統一性や秩序を保てるという事実がある。しかし閉鎖的な階層社会になってしまっては、今の社員・従業員・労働者を活性化させることはできず、さらには優秀人材を当該企業に引き留め、定着させることはできない。

さらに、企業間の競争が激化した結果、利益・成果をあげるために閉塞的な環境で非常にきめ細かい社員マネジメントを行うと、社員にハラスメントやメンタルヘルスの問題が生じかねない点にも大いに留意しなければならないのである。

ハラスメント問題の背景には、上司に心理的余裕がなくなり、相手の立場に配慮して指揮命令するセルフコントロール、自己統制力が乏しくなっていることがある。部下の教育・指導に当たり、業務外のコミュニケーション促進による適切な職場人間関係の形成を併せて行っていくことが効果的であろう。

その意味で、今後は企業には開かれた階層社会であること、つまり、実力に応じて昇格を果たし、誰もが管理監督者・経営者になり得る組織であることが求められているのである。ここに実は、公正・公明・公平な評価が求められる所以がある。

ところで、評価とよく似た言葉に査定があるが、査定と評価の根本的な違いは、公開性の有無である。即ち査定には公開性がないが評価には公開性がある。しかし、日本人は「公開」について非常に消極的である。公開すれば日本人の民族性である集団主義が瓦解するのではないかということを恐れ、評点を公表することを忌み嫌う傾向がある。例えば、最近の事象では、いわゆる全国学力テスト(文部科学省)の市町村・学校別のテスト結果を公表するという自治体側の判断が、市民的運動として猛反対を受けた事実がある。

それゆえに、人事考課は査定が一般的であって、評価という意識があまりない。しかし、個別的人事管理と人材育成が重視される時代となれば、当然、公開の方向で人事管理をしていかなければならないであろう。即ち、先に述べた企業における開かれた階層社会を作り、その結果を社員の指導に用いるためには、公開を旨とする「評価」の方向が模索され具体化されなければならないのである。

一般に査定は密室で行われるがゆえに、社員・従業員・労働者に不安感・恐怖感が伴い、対象者の人格を否定することにもつながりかねない。そこで、日本人にとって、評点を公表することに耐えられるかが今後の大きな課題となってくる。

その際、個人情報保護の法理が公開の大きな障害となるが、人事考課の公開の重要性が意識されるならば、まずは各考課の対象者個人にその評価を告知することが必要となる。これにより、人事労務の公明・公平・公正という原則に一歩でも近づくことになるのである。

しかし、何度も述べたように人事考課を評価として公開すると、公正さ・公平性を一層担保しなければならないが、これは容易なことではない。なぜならば、人事考課はデジタル数値によってのみ行われているのではなく、その要素にはアナログ要素をも加味されているからである。アナログ要素を取り入れて、より公正・公平な人事考課を行おうとする努力の一環として、各企業で評価項目と基準の明確化の努力や人事考課の調整作業が行われているのはそのためである。昇格の折には、業績だけではなく、人格や人望についても評価の対象とすることは言うまでもない。

 

裁判も総合判定を是認

しかし何はともあれ、査定ではなく評価としての考課となれば、公正・公平性を担保する困難さという隘路を克服しなければならないのが、今後の人事労務の大きな課題となっている。

また、労働組合側が、組合員から人事考課の公開を委ねられて公開を要求し、それに使用者は応ずべきかという課題がある。この要求は正当性があるように思われるが、当然それには様ざまな弊害がある。その一つとして、デジタルな数字だけではなく、アナログの数字をも斟酌して人事考課を行っていくことを、使用者は率直に明言しなければならないのである。

この点、裁判所は、会社に査定義務違反があるかどうか争われた事案で、「人事評価は、使用者が企業経営のための効率的な価値配分を目指して行うものであるから、基本的には使用者の総合的裁量的判断が尊重されるべきであり、それは社会通念上著しく不合理である場合に限り、労働契約上与えられた評価権限を濫用したものとして無効となる」として、アナログ的な評価要素をも十分に念頭に置いた判決を下している(東日本電信電話事件=東京地判平16・2・23)。また、含み損社員の解雇の効力が争われた事案では、「勤務実績」「性格」「適性」等の項目を基に総合判定された勤務評定について、それぞれの項目に属するアナログ的な諸要素(仕事の結果・仕事の仕方・仕事に対する態度・部下の統率の仕方・誠実さ・積極性・意志の強さ・慎重さ・機敏さ・辛抱強さ・几帳面さ・協調性・明朗さ等)を前提とする勤務評定を是認している(東京都土木建築健康保険組合事件=東京地判平14・10・7)。裁判所は、デジタルな客観評価だけではなく、アナログ要素の評価も加味してこそ正しくなされるとしている。

 

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