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2016年12月28日(水)11:20 東京工業大学周辺にてプリムラを撮影
花言葉:「青春のはじまりと悲しみ」


 

第21回雇用の未来(2)
(2009年2月2日転載) 

 

 

 

 これからの雇用は労働の成果に着目して捉え直さなければならない。つまり、労働の価値は拘束される時間の長短によって評価されるのではなく、人間性の発揚如何によって労働の定義を構築し、報酬もまたそれにそって支払わなければならないのである。

 

主体的働き方を促進へ

報酬についてさらに言えば、奴隷制の時代には、まさに人間としての生存本能だけを満足させるに足りるかどうかが問題であった。しかし、それだけでは人間として遇したことにならないから、人間としての存在価値を認めるに足る第一歩として、自由時間を設定することを意図し、労働時間の長さと能力を報酬の基準として採用したのである。

それは、人たるに値する生活を維持する賃金ということになる。このことは、最低賃金法(1959年成立)第1条が、「労働者の生活の安定」と「労働力の質的向上」を満足させる報酬・賃金であるべきと定めていることからも分かる。

しかし、未来はそれだけでは不十分である。つまり、人生をかけた本人の「熱血・入魂・本気」の仕事への取組み如何に呼応して、どのような報酬を与えるかということである。そうなると、金銭といった物的な報酬だけではなく、労働を提供する者の心をも満足させ、充足させる対価を与える必要が生じてくるのではないか。そして、経営者には、労働の提供に対して人間性をもって応えることで、まさに人間の尊厳を守ることが迫られていることになる。これこそが、次回以降論じる“ヒューマンワーク”の時代に相応しいだろう。

雇用関係については、近い将来、主体的な労働に転換しなければならないことは既に述べた。その第一歩として、請負的契約を更に推進しなければならない。即ち働く者それぞれが技術・技能を蓄え、その発揮による成果報酬で毎日生活していくという姿勢でなければならないのである。現在の契約概念では、雇用契約(民法第623条)とは「労働に従事すること」と「報酬を与えること」が雇用者と被用者との間でなされるべきことであるが、労働者が主体性をもって働くということになれば、雇用契約は限りなく請負契約的にならざるを得ないのではないか。

この点、カール・マルクスはすでに19世紀後半に、出来高賃金(=請負賃金)は、個性に対してより大きな裁量の余地を与えるため、一方では労働者の個性、自由の精神、独立、克己等を発達させる傾向があると同時に、他方では労働者同士の競争を強化する傾向があるという趣旨のことを述べている(『資本論』第1巻第6篇「労働賃金」第19章「出来高賃金」参照)。

また、この資本論では、少数のますます富んだ資本家が生み出され、一方で多くの貧しい労働者が拡大再生産されることを明らかにして、貧富の差、即ち所得格差が生み出される社会メカニズムを指摘している。2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・R・クルーグマン(プリンストン大学教授)は、「所得格差、これこそアメリカにおける大問題の一つである」と近著『クルーグマンの視座』で述べている。

ソ連が崩壊し、共産主義は瓦解したが、マルクスが指摘した問題は今日においても、そして今後においても克服されないであろう。

 

定年は50歳に引き下げ

雇用の未来において、労務の提供のあり方が請負的な契約に変わることは、正社員を理由に優遇されることがなくなるということも意味する。

雇用調整に当たっては、まず「含み損社員」であるかどうかが判断基準であるべきであり、これは正規・非正規を問わないものである。自分の給料の3倍の粗利を稼ぐのが優秀な社員、3・5倍を稼ぐのが超優秀な社員、そして2倍以下の者は含み損社員であると私は規定している。

正社員といえども、それこそ真剣に働かなければ生き残ることはできない時代となり、身分は意味を持たなくなるだろう。特に、高い賃金を受けているにもかかわらずそれに見合う仕事をしない中高年役職者は、典型的な含み損社員であると言ってよい。これらの者を退かせ、その分の人件費で優秀な若年労働者を多く採用することが、企業組織の活性化と好業績につながる。

そのためには、定年年齢を50歳前後に引き下げるという思い切った施策も、①若年労働者の雇用の場を確保し、②優秀な労働者の海外への流出を阻止するために必要となってくるだろう。即ち、第2の人生を公式に認めることが、それぞれの労働者の若年からの技術と技能を蓄えることにつながる。

そして、この第2の人生には厳しい峻別が待ち構えており、さらには第3の人生を構想する社会が切り拓かれていくであろう。しかし残念ながら、ここに到達できる者は極めて少なく、まさに切磋琢磨がものをいう狭き門となるのである。第3の人生に入れない者はまともな職業に就けず、いわば日雇い的な仕事に甘んぜざるを得なくなるだろう。

公務員についてもこのことは当然あてはまり、そのためには行政サービスをしっかり評価するシステムを構築すべきである。そのシステムができたとすると、果たして何人の公務員が含み損にならず生き残ることができるだろうか。現在においては、ほとんど全員が含み損人材と評価されても仕方ない状態であろう。

 

「派遣切り」の要因とは

雇用契約が請負契約的になればなるほど個々の労働者は自らの技能・技術を磨き研鑽することが何よりも重要になる。これは言ってみれば、労働が人間を創るという基本精神に立ち帰るべきであることを意味している。雇用の未来においては、この基本精神こそが何より重要なのである。

一時もてはやされたような、好きなときに働いてそれ相当の報酬を受け取るという生き方は人間本来の働き方ではない。こうした片手間の労働という誤った思想を増殖させた時代は、昨年秋以降の悲惨な「派遣切り」の状況を生み出した誘因のひとつだったのである。格差問題の根本は、職業能力開発・育成格差であるとも言える。

そして、雇用契約の請負契約化が進んでいくことは、個々の職業能力がいよいよ問われる時代になるということを意味している。

また、現下の厳しい経済状況においては賃金ダウンも当然のことになるから、知識・技能・技術を日々向上させるとともに、経済的に少しでも余裕を持てるように誰しも「蓄える思想」を持つことも今後重要になってくる。これは、「恒産なきものは恒心なし」(定まった財産や職業がなければ、正しい心を持つことができない。物質面での安定がないと精神面で不安定にあるという意味。「孟子」)の言葉につながるものであろう。

 

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2017年1月7日(土)8:48 港区六本木5にて梅を撮影
花言葉:「高潔、忠実、忍耐」

 

 

平成28年9月22日から同月24日まで、私と弊所亀梨伸夫参与、山下靖典氏の3名で北京を訪れました。訪問の際の出来事を山下氏にまとめていただきましたので、今回はその旅行記を掲載致します。

 

平成28年9月22日~24日「北京訪問記」

 

2016年9月22日から24日までの二泊三日で北京を訪問された高井・岡芹法律事務所の会長の高井伸夫先生(弁護士)に同行した。山下は北京に一人残り28日の帰国となった。この間、久々の北京とあって友人たちと会うためであった。

22日午前、日航機で羽田を出発した。同行は山下と同法律事務所参与の亀梨伸夫さん。合計3人のツアーである。

山下はこれまで高井先生のお供をして二度海外に出かけている。最初は北朝鮮、二度目は中国の東北地区の延辺朝鮮族自治州であった。今回も含めいずれも北東アジア地域である。

ほぼ満席の飛行機はそれこそ一眠りする間もなく、北京首都空港に到着。

空港では高井先生と大変懇意な律師(弁護士)の王建寧先生がドライバー付きの自動車共々出迎えて下さっていた。

旅行前に来日された王先生に山下は高井先生のご紹介でお会いしたが、日本語が大変お上手なのに感心した。王先生が滞在中色々ご案内くださるとあって誠にこころ強い限りであった。

到着後の最初の日程は、横井裕駐中国大使への表敬である。この春大使が北京に赴任される際高井先生と山下は祝意を表させていただくため外務省にお伺いしている。その際、高井先生は「北京に行ったら必ず大使館を訪問します」と約束されており、それを果たすという意味合いもあった。

日本大使館の警備は、当然のことながら大変厳重である。旅券、携帯電話、カメラは受付で預け、帰りに受け取るという仕組みである。

横井大使は昭和54年外務省入省、中国課長、上海総領事、北京の大使館公使など対中国外交の枢要ポストを務めたいわゆるチャイナスクールだ。無論中国語研修組なので中国語は相当な力量と承っている。

大使表敬の後は、高井・岡芹事務所の北京事務所を訪問した。中心部の高層ビルの中にある。事務所が北京に進出したのは2006年10月、今年は進出10周年の節目の年である。事務所では、所長の五十嵐充弁護士、上級顧問の包香玉さん、秘書の何雲さんが出迎えてくださった。

五十嵐さんは慶応大学法学部卒。山下は同学部での先輩にあたるが、法律はさっぱりダメで、出来の悪い先輩で申し訳ない気がするほどである。包さんは内モンゴル出身で、京都大学に留学した経歴の持ち主。包さん、何さんともに日本語はとても上手だ。

事務所は主に中国に進出した日本企業から、労務問題などについての相談に乗ったり、関係する役所と交渉したりするのが主な業務だ。

夕食は市内のレストランで、みんなで頂いた。

その後、車で約一時間ほど離れた所にあるリゾートホテルに宿泊した。

翌朝朝食をホテルのレストランでいただいた後、このリゾート施設の社長、甘蓮舫さんに施設を見学させていただき、概要を説明していただいた。

実は甘社長は、王弁護士の親戚にあたられる方だという。

ホテルの最上階のバルコニーから見える土地はすべてこのリゾートのものだそうである。それほど広大な敷地に、ホテル、老人ホーム、スパ、プール、ゴルフ場、スキー場、大学、分譲別荘などが立ち並んでいる。ちなみに別荘は二階建てが多かったが、一軒あたり400-500平方メートルの広さだという。

敷地が、無論、上から全てが見えるわけではない。とにかく広い。経営上の問題は習近平政権の反腐敗運動による規律引き締めで役所、企業の接待が激減、利用者数が落ち込んでいることだという社長の話である。

その対策の一つとして、日本からのツアー客を呼び込むアイデアも高井先生から提案された。

蓮舫というのは民進党の代表と同じ名前、それを話題にさせて頂いていかなる意味かと質問したが、よくわからないとのお答えであった。甘社長は元々はビリヤード台のメーカーの社長だった。ブランド名を「星牌」といい、世界的なビリヤードの選手権大会でも使用されるほどの名品だったという。

それが成功し、次には不動産事業でも当てて、このリゾートの開発に取り組んでいるとのことである。

北京2日目は、関係先の企業の団体回り。顧問先に挨拶すると共に、最近の状況を掴んでおくことも重要だ。

ランチは日本航空のご招待にあずかった。日本の経済団体の訪中ミッションの一員として北京滞在中の大西賢会長もご多忙の中加わって頂いた。

大西会長は東大工学部卒業のエンジニアで、元々は整備畑だが、お話しは分かりやすく面白い。

筆者が「ジャンボ機の整備マニュアルを全部覚えこむのは大変ですね」と素人質問をしたところ、返って来たのは、「いえ、あれを全部覚えようとしてはいけないのです。うろ覚えでやると間違ったりしたら大変なことになるかもしれない。問題、疑問が出てきたらその都度該当のページを開いてきちんと読んで、確認、理解することが大切です」とのことであった。なるほど、うーんと唸らされる思いである。膨大な整備マニュアルを全て暗記できるはずもないし、中途半端な記憶こそ危険である―という考えは全ての安全工学に通じそうにも聞こえた。

この日の夕食は有名な全聚徳の北京ダックを頂いた。

肉、皮、薬味共に山盛り。また、北京ダックの骨からとったスープがコクがあるさっぱりして美味しい。

二日間高井先生、亀梨参与と行動を共にさせて頂いたが、感心したのは高井先生の訪問先へのお土産の心配りであった。

あらかじめ日本で相手先を想定して仕入れたお土産は大きなトランクにまるまる一杯となった。相当な重さだと思われるが、運び役の亀梨さんは軽々と運んで行く。それもそのはず、亀梨さんは栃木県黒磯高校~城西大学の野球部で名選手だった方。体格も大柄で、筋肉質である。黒磯高校は同県の野球の名門校である。

お土産は訪問先の代表者のみならず、その夫人、家族といった人にもわたるように、きめ細かく組み立てられている。お土産の中身も相手の好みなどを考慮されている。極めて行き届いた配慮がなされているのには感心した。

24日朝、高井先生、亀梨参与は午前の日航機で帰国。

山下は一人北京に残り、28日までの日程を友人との面談、食事などで楽しみ28日午後日航機で帰国した。

 

山下靖典様記

 

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2016年12月31日(土)12:27 新宿区山吹町で山茶花を撮影
花言葉:「困難に打ち克つ、ひたむきさ」


 

第20回雇用の未来(1)
(2009年1月26日) 

 

 

高井伸夫弁護士は、世界恐慌が深刻化するなか、「雇用の未来」を改めて問い直すべきであると提言している。柔軟な解雇法制と雇用の確保という、一見して相容れない要素を両立させる新しい労働概念の構築が待たれるという。

 

現下の厳しい経済情勢の中で、雇用の確保が最も重要かつ喫緊の政治的・社会的課題であることは言うまでもない。そこで、こうした状況を踏まえつつ雇用の未来を考えたい。

米国のサブプライムローン問題に端を発した金融不況は、瞬く間に100年に1度ともいわれるほどの世界恐慌に至ってしまった。これを単なる不況だと主張する者もいるが、物が売れず、ほとんどの企業が恒常的に赤字経営の状態に陥り、工場生産がストップし、人員削減が猛烈なスピードで進み、消費がさらに委縮するという悪循環に陥っている世界的状況を、恐慌と呼ばずして何というのか。

恐慌(panic)とは、経済用語ではなく、本来は心理学用語である。猛烈な不況の中で、社会全体が言いようのない不安や閉塞状態に陥り、先の見えない恐怖と闘う心理状態に追い込まれてしまうことである。私はこれまで経済を専門に勉強したことはないが、人事労務を専門とする弁護士として多くの企業経営の実態について現場の目から経済の動向を見続けてきた。だから雇用の問題を通してではあるが、恐慌についても私なりの見解を持っている。

恐慌とは、すなわち社会的に物やサービスが売れなくなる状態であると定義するのが最も妥当であろう。これは企業において固定費をまかなう収入すら得られない状態が広がり、赤字経営が一般化するという状況である。この状況に陥ると、消費が落ち込み、物が売れず、企業が在庫を抱え、在庫の保管場所さえなくなり生産を止めざるを得なくなる。そうすると従業員は解雇され、物を買う金もなくなり、悪循環が始まる。あちこちの企業から端を発して、全国的にかかる状態になると、国内恐慌といえる。さらに全世界的に物が売れなくなる状態を世界恐慌という。現在はその真っ只中に向かいつつある状態のなのである。

 

正規・非正規基準の行方

実体経済を支える製造業があっという間に前代未聞の著しい不振に陥った。例えば、自動車もデジタル機器も工場の操縦が大幅にセーブされたり工場建設が延期されたりしている。こうした実体経済に表れている事象こそが、経済を考えるに当たり、最も重要である。アメリカの自動車会社は「経済破綻しないよう金融支援をせよ」「資金繰りを助けよ」「救済法を制定せよ」という趣旨のことを言っているが、そういうことが世界的に広がると、日本においては単に自動車産業だけでなく電機産業等々すべての輸出関連企業に伝播し、貿易立国の日本は破産する。

すでに各企業はこうした経営不振に耐えきれず、人員削減を余儀なくされている。今は非正規社員が先にリストラの対象にされるのが普通であるが、次回以降に詳述するとおり、近未来においてはこの正規・非正規の判断基準はなくなると言ってよい。

そして、これまでは2年ほどのタイムスパンで雇用調整が行われてきたが、今は6カ月ぐらいで行われている。しかし、さらに迅速に3カ月ぐらいで瞬時に雇用調整を行わなければ、経営は大変な事態を迎えることになる。

この状況が現実となったことで、経営者や人事労務に携わる者すべてにとって、雇用の未来について考え、適切な施策を講じなければ生き残れない様相を呈してきた。

社会・経済が激変しているからこそ、未来への方向性をしっかりと踏まえた人事労務施策が求められるのである。即ち、施策をこれからの事業戦略の実現に貢献し得るものにするためには、未来を透視した先見性に富んだものでなければならない。私は、本紙でも機会あるごとに「事業戦略は人事政策に宿る」と述べてきたが、同様の言い方をすれば、「雇用戦略は企業の未来展望力に宿る」といえるのである。

 

「ユニークネス」追求を

いったい人事労務の未来について考えることは何のために必要かと言えば、人事労務は法律より少し先行して進めなければならないからである。法律が定められ、運用・適用されるのは、実は既に起こった事象を追認するという形で展開されていくのが実態である。人事労務の未来を見つめるのは、未来の方向性を推認するということであるが、そのことは実は法律を先取りして事態を改める手続きを進めるということになる。

企業の進歩は競争であるがゆえに、あるべき未来を明確に想定して、「戦略」の立案つまりユニークネス(独自性)を追求することが少しでも早ければ、企業間競争に勝ち抜くことができる。

未来を予測することは、今起きたことを確認する手続きではない。様ざまな兆候の中から、未来のあり方を透視して、それに基づいて施策を実施していくことであり、必要なのは、ユニークネスを追求するために、未来を予測したうえで「やるべきこと」を明確に定めると同時に「決してやらないこと」を明確に定めること、つまり「トレード・オフ」を実行することが求められるのであり、このことが企業戦線において勝利するために肝要と言ってよいのである。

先陣で走れば走るほど抵抗が強く、困難が多いものの、収穫も多いということになる。そのことから、何と言っても正しい展望をもって未来を見つめることが必要である。誤った方向で未来を見てしまったら、先陣を切って走ることが、後塵を拝することにつながることは言うまでもない。

雇用の未来は何であるかと言えば、労務提供のあり方の変化、あるいは報酬のあり方の変化、さらには雇用関係、能力強化のあり方を見極めることである。

そもそも、労働の世界は奴隷制から始まったが、やがて、労働時間制が採用され、労働のあり方が規制されることになった。そして、その先が何かと言えば、労働時間の規制を超えて、新しい労働の概念を構築することが必要であるということである。

その際には、フレキシキュリティー(flexicurity)という新しい政策目標も検討課題となるべきであろう。フレキシキュリティーとは、「flexibility=柔軟性。柔軟な解雇法制」と「security=安全を保障すること」をつないで作られた造語である。これは労働市場の柔軟性を維持することと雇用を確保するという矛盾しがちな2つの目標の両立の方向性を目指す言葉であり、近年EUで注目されているという(日本総研「Business & Economic Review」2007年6月号・藤井英彦氏「OPINION」等参照)。

 

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2016年12月25日(日)8:15 須賀神社にて撮影


 

 

第18回「評価の真髄」
(平成28年6月20日)

 

 

かつて大宅壮一が一億層評論家時代と揶揄したように、当事者意識に欠ける第三者的発言をする者を「彼は所詮、評論家にすぎない」という場面は、よくみられるものだ。これらは評論家を名乗る人には失礼な言辞だろうが、一面の真理である。自分自身には経験も技量もないのに上から物をいうように論評を展開しても、説得力はなく、概ね共感を得られない。

あらゆる分野に評論家はたくさん存在する。しかし、実際に経験した者でなければ物事の真髄は分からない。プロ野球の例でいえば、野村克也氏は自分自身が秀でた捕手であり監督であったからこそ、優れた野球評論ができ、視聴者や読者を唸らせるのである。また野村氏は、愛のある非難・叱責であれば選手に愛が伝わるという発言をしているが、選手の成長を旨とするこうした視点も、評論に深みを与えているに違いない。

評論と似て非なる概念に、「評価」がある。私なりの理解では、評論とは対象物の世界を研究して丹念に論じながら本質に迫る努力であるのに対し、評価は一定の理由付け・基準の下に対象物の価値を相対的に定める行為である。いずれも、対象物の成長と社会の進歩に裨益するものでなければならないという使命を負う点では共通である。つまり、評論・評価される側が、第三者の見解を受け入れ、克服し、挑戦する意気込みを持ち得る内容であることが求められているのである。

企業における人事考課は、「評価」の代表例の1つである。成果主義人事制度・賃金制度は、従前の終身雇用に基づく年功給を見直し、仕事の「成果」をいかに評価して賃金に反映させるかに腐心してきた。裁判例は大要、基本的には使用者の総合的裁量的判断が尊重されるとして、当該制度の手続き・基準等が合理的であるか、これら手続き・基準による評価が適切に行われているかを判断している。つまり、公明・公正・公平が保たれ、恣意性が排除されているかということになるだろう。評価者は一定基準の下で判断するという点において裁量が認められ、また、格付けが念頭に置かれる以上、多かれ少なかれ評価は主観に基づかざるを得ない。

そもそも人間社会における「評価」の起源は、原始の動物としての人間の営みに求められるのではないか。生きるか死ぬかの食料をめぐる生存競争を繰り広げていた人間が、独力では勝てないときに信頼できる者・能力のある者を選んで仲間を形成し始めた。その過程で、協力し合えるか、信頼できるか、能力があるか等について判断し、「主観」による真剣な選別がなされた。ここに人間社会での「評価」が始まり、私たちのDNAに刷り込まれているのではないか。しかし、仲間が増えると、評価について皆を納得させる客観性も必要になってくる。そこで評価の「基準」が生まれたのではないか。つまり、組織を秩序立てるために評価という手法が生まれ、主観に加えて客観性を担保する基準が採用されたのであろう。

近未来はAIの発達もあって一層無機質なハイテクの時代になる。評価システムにもAIが活用されるだろう。だからこそ、私たちは、相手を尊重し愛情をもって互いに見つめ合い、謙虚な姿勢でハイタッチで評価することの意義を重視しなければならない。血の通った評価こそが、人間味のある付き合いを活性化させ、社会に落ち着きをもたらす。これこそが、これからの評価の真髄なのである。

 

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  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第8回目です。
  • 第8回目は アタックス税理士法人 酒井悟史様、株式会社リクルートキャリア藤井薫様(50音順)です。

 


 

■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第8回)■ ■ ■ 

 

アタックス税理士法人 公認会計士・税理士  酒井 悟史 様

株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT  編集長 藤井 薫  様

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昨今テレビや新聞を毎日賑わせている「人工知能(AI)」。人工知能が私たちの生活に及ぼす影響は甚大であり、今まさに大きな注目点です。より多くの方々にこの問題を身近に感じ、また考えていただく機会となることを願い、昨年4月~6月、「週刊 労働新聞」において連載「人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~(全12回)」を企画し、私を含め5名で執筆させて頂きました。

また同年10月には、ユカイ工学株式会社 代表 青木俊介氏と、株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長 藤井薫氏の2名を講師にお招きし、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」を開催し、企業におけるAIの活用状況や人間とAIのこれからの付き合い方についてお話しいただきました。

今回の一問一答は平素より小生が「AI」や「ビックデータ」についてご教示頂いている、アタックス税理士法人酒井悟史様、また上述のセミナーで講師をお願いした株式会社リクルートキャリア藤井薫様にお話しを伺いました。

 

酒井悟史様写真

[アタックス税理士法人 酒井悟史様プロフィール]

 

アタックス税理士法人 公認会計士・税理士 慶應義塾大学経済学部卒。

 
有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス事業部を経て、2014年アタックス税理士法人に参画。トーマツでは、監査業務の他、株式公開支援、業務プロセス効率化支援、連結財務諸表作成支援等に従事。現在は、主に上場中堅企業の法人税務業務の他、相続対策や資本政策等に従事している。

 

 

 

藤井薫様写真

[株式会社リクルートキャリア 藤井薫様プロフィール]

 

株式会社リクルートキャリア   リクナビNEXT編集長 兼 株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 編集委員 兼 リクルート経営コンピタンス研究所 エバンジェリスト 
リクルートキャリアリクナビNEXT編集長。


88年、リクルート入社。TECHB-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長を歴任。リクルートワークス研究所、リクルート経営コンピタンス研究所兼務。16年4月、現職に就任。

 

 

[今回のインタビュアーは以下の通りです]

  • 高井伸夫

(取材日:2016年11月15日(火)場所:中国飯店市ヶ谷店にて)

 


 

高井

本日はお集まりいただきありがとうございました。まずは皆様の近況をお伺いしたいと思います。まずは酒井さん、近況を教えてください。

 

酒井様

フィンテック企業(注1)のサービス等により、一次データの収集を通じて顧客行動を可視化したり、収拾したデータを後工程に転用して経理作業を効率化する支援をしています。また収集データの分析結果に基づいて、経営のアドバイスをしています。例えば、担当している美容業界の会社で言うと、店舗別スタイリスト別・曜日別時間別のデータを活用し、再来店率の向上に向けた取組みを会社と一緒になって検討しています。またクリーニング業界の会社では、店舗別のデータを収集するための仕組み作りや、一次データの後工程転用による経理処理の自動化する仕組み作りを支援しています。そもそもクリーニング店でのお客様データは、店舗での接点でしか収集ができなかったため、アナログなレジだとお会計が済んだら完結してしまい、そのデータを後工程で活用しようという発想がありませんでした。今まで見えなかった店舗別の顧客動線を可視化することで、洗濯物の収集ルートや回収先の工場を見直すことで、業務の平準化に活かす仕組みづくりの支援をしています。

注1 フィンテック企業:「フィンテック」とはファイナンスとテクノロジーの2つを併せた造語。「フィンテック企業」とは金融IT分野のベンチャー企業(新興企業)を呼ぶことがある。


高井

大手企業はどのような仕組み作りをしているのですか。

 

酒井様

大手企業は独自の基幹システムやPOSレジ(注2)を導入し、一次データの収集・活用をしているケースが多いです。中堅中小企業は業務の中にデータを収集する仕組みを組み込んでいない場合が多いため、業績に変化が生じた場合、原因の特定ができない、あるいは非常に時間がかかるため、効果的な改善策を実行できない、または実行が遅れることがしばしばあります。

 注2 POSレジ:売上が発生する時点で、その買上げ商品の値札に付与されているバーコード情報をスキャナーで瞬時に読み取り、その商品の部門、品名、値段などを画面に表示しレシートに印刷。それと同時にレジ本体の記憶部(メモリー)に各種情報を記録するレジのこと。


高井

藤井さんの近況はいかがでしょうか。


藤井様

リクルートグループでも美容業界への経営支援を展開していますね。ホットペッパービューティーという、ヘアサロンやネイルサロンの検索・予約サービス(BtoC)がありますが、経営支援ということで言いますと、『SALON BOARD』という顧客管理システムもサロン向けに展開しております。 また飲食店の予約サービスである、ホットペッパーグルメでは、Airレジ(注3)を使い、会計などの業務プロセスと販売促進を組み合わせて、より広範に経営を支援するお手伝いをしています。そうした意味では、リクルートは個人向けサービスに加え、企業向けサービスまで含めた、経営並びに業界全体の支援にチャレンジしています。

注3 Airレジ:0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ。会計の際伝票を作成せずに、ipadを使用することで、30分後の空席状況を把握でき、リアルタイムでホットペッパーグルメのサイトに反映できる。


高井

美容室は、リピーターを増やす事、また売上を増やすために、シャンプーなど物販販売をして顧客単価を上げることが重要だと思います。


藤井様

そうですね。物販販売や、ECサイト(注4)を持っている美容室もありますね。顧客単価の向上以外に、経営課題としてますます重要になるのが、人的資本の最適化も含めた生産性の向上です。これは美容業界だけに限らず、飲食業界、介護業界など、全てのサービス産業の企業に当てはまります。パート・アルバイトのシフトの最適化、長時間労働の是正、従業員の離職率の改善、さらに定着率の向上と能力の開花。そして生産性の向上。これらは、人口減少社会の中で経営を行う、全ての企業の重要な経営命題だと思います。そうした社会構造的な課題解決にリクルートグループはお手伝いをしていこうとチャレンジしています。

注4 ECサイト:自社の商品やサービスを、インターネット上に置いた独自運営のウェブサイトで販売するサイト


高井

リクルートとしてビジネスになっているのですか。


藤井様

はい。今後日本の人口は減少していきますので、採用に加えて活躍にもビジネスの力点をシフトしてゆく。これからは人口知能やピープル・アナリティクス(注5)など利活用して、希少な人的資本の最適化を支援する。時期は明言できませんが、そうしたような方向により進んでいくと思っています。

注5 ピープル・アナリティクス:人材・組織に関するデータを活用することで、生産性を高めて従業員に合った部署に配属したりすること。


高井

酒井さんは様々なデータ収集をしているとのことですが、今後そのデータをどう活用していきますか。


酒井様

我々のようなコンサルティング業務の一番の付加価値は、クライアントと対話を重ねて課題を正確に抽出し、改善策を提案し、実行を伴走することだと思っています。そのためには、課題を正確にえぐるための感度の高いデータが必要になります。従来は会計データに基づく分析から課題にあたりをつけて掘り下げていくことが主流でしたが、IoTの発達等もあり、非会計データが容易に収集できる時代になりました。先ほどの美容業界の会社のように、来店頻度等の非会計データの方が課題に対して分析感度が高く、より効果的な改善行動を計画しやすいのです。昨今、AI(人口知能)は士業の仕事を奪うと言われることが多いですが、クライアントと対話を重ねて、KPI(注6)を設定し、何をキーとして向き合っていくか。そのためにはどんなデータが必要で、どのように収集する仕組みを構築するか。一部の分析作業はAIに置き換えることが可能ですが、これら一連のファシリテート(注7)プロセスは人間にしかのできないと考えています。したがって、データを適宜活用しながら、高品質なファシリテートを実行していきたいと思ってます。

注6 KPI:企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のこと。

注7 ファシリテート:会議やプロジェクトなどの集団活動がスムーズに進むように、また成果が上がるように支援することをいう。


高井

藤井さんの今後の目標をお聞かせください。


藤井様

日本だけの問題で言うと、急速に労働人口が減っています。今までの人材ビジネスは、良い人が採用できるかが鍵でしたが、それは人口が多くいた時のパラダイム。働き手が少なくなっている今は、入社後にどう活躍するかに軸足が移っています。しかし一人では活躍できませんので、どのようにして人を組み合わせるかが問われます。経営戦略との組み合わせ、業務との組み合わせ、組織との組み合わせ、生活との組み合わせなど、組み合わせをするポイントはかなり多くなってきました。一方で、AIテクノロジーの登場で、そうした無限の組み合わせに、きめ細かく向き合える機会も広がっています。利器を上手く使いこなし、一人一人が輝き活躍できる組み合わせを提供する。そんな社会になると良いと思っています。

 

高井

本日は色々なお話をありがとうございました。   

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本年10月に開催いたしました特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」の開催報告はこちらをご覧ください⇒AIセミナー開催報告

 

以上

 

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2016年12月14日(水)17:38 スーパームーンを撮影

 

 

 

株式会社 開倫塾
代表取締役 林 明夫

 

「多様な働き方改革を考える―人件費を固定費から流動費に―」

 

1.高井伸夫先生からお教え頂いたことは数知れません。

(1)「企業は原則倒産」

昨年のように今年があり、今年のように来年があると考えたら、2年後、3年後には、その会社は存在しない。

(2)「事情変更の原則」

企業を取り囲む環境変化は著しい。事情が大幅に変化したら、今までの考え方を中止し、状況に合った考えに基づいて行動しなければならない。

(3)「人件費を固定費から流動費に」

売り上げ、利益は、競争状態や社会の経済状況によってどんどん変化する。上昇し続ける人件費を、固定費として存続し続ける企業はない。人件費をどう流動費とすることができるかを考え続けよ。

(4)「雇用契約(労働契約)」を「請負契約」に

労働生産性が低い企業、とりわけ、サービス産業は雇用契約(労働契約)ではもたない企業が多い。新しくサービス産業をやるのなら、はじめから請負契約で行った方がよい。

(5)「多様な働き方改革」

この改革をすすめる企業以外、これからは生き残れない。

 

2.(1)以上の教えは物事の本質を見事に突くもので、文字通り「ぐうの音」も出ません。私にとっては考えたこともないことばかりで衝撃的で、しばらく思考停止になってしまうほどです。

(2)ただし、表現は激しく、抽象的ですが、折に触れ1つ1つの教えの本当の意味は何か、自分の会社にとってどのような意味があるかをゆっくり考えてみると、少しずつでも取り組むべき道筋が出てきます。

(3)開倫塾は1979年創業、2017で創業38年目を迎える栃木県・群馬県・茨城県に60校舎を展開する小学生・中学生・高校生を対象とする社員400名余りの地元になくてはならない中堅企業を目指す企業ですが、高井伸夫先生の教えを少しでも実行に移し、倒産しない会社づくりに昼夜励んでいる企業でもあります。

(4)この1年間12回にわたり、「髙井伸夫先生から教えて頂いたこと」というテーマで文章を書かせて頂いた最終回として、「開倫塾の多様な働き方改革への挑戦」を紹介させて頂きます。

 

3.開倫塾の働き方改革を考える

(1)「企業は原則倒産」―「倒産しない会社づくり」が第一。

①高井先生から「企業は原則倒産」と何十回も教えて頂いたのですから、働き方改革の前提として、どんなことがあっても「倒産」だけは避けたい。

②開倫塾は未公開会社ですが、2011年より四半期決算を確実に実施。その前提として、月次決算を行うために毎月末には本部と60校舎すべてで実地棚卸しを実施。2016年から財務会計に加え、管理会計も導入しました。経営者である私は、地域の中堅企業としての「統合報告(Integrated Reporting)」の勉強をスタート。社員や金融機関、ビジネスパートナー、地域社会の皆様が見るに耐えるだけの統合報告書の作成を目指しています。

③「人づくり」こそが、「倒産しない会社づくり」の「基本のキ」。経営幹部にはできるだけ質の高い専門家の先生方の直接指導・個別指導を毎月お願いしています。

(2)「出入り自由な開倫塾づくり」

①様々な理由で開倫塾を一度退社した方々をもう一度開倫塾にお迎えすることが、「超人手不足」の解消に直結します。

②10年前、20年前に開倫塾を退社なさった方々が、子育てや介護を終えられて、再び開倫塾で働くことができるよう、万全の体制を整えています。

(3)「パソコンのスキル向上のためのパソコン研修」

①2015年度から、開倫塾では全社員を対象に、年間で合計8日間の本格的なパソコン初級研修を実施。

②タッチタイピングを含む「パソコン基礎」「ワード初級」「エクセル初級」がその内容です。

③2017年は、開倫塾本部と60校舎すべてのパソコンをwindows10に交換するので、「パソコン研修windows10版」も企画。

(4)「キャリア権推進企業宣言」

①開倫塾は、2011年度より「キャリア権推進企業」を宣言。「自分のキャリアを自分で形成することは基本的人権の一つ」であると考え、塾生や保護者、地域社会の人々、ビジネスパートナー、そして何よりも社員の皆様の「キャリア形成」を全面的に支援しています。

②開倫塾のすべての研修会は、非常勤講師の先生や事務パートの皆様も参加可能で、すべての研修会への積極的な参加を呼びかけています。

③幹部登用に向けての外部研修の半数以上は女性の参加になるよう努めています。

(5)「85歳過ぎまで働ける職場づくり」

①開倫塾の先生の条件は3つ。「子ども好き」「声が大きい」「研究熱心」、この3つの条件に適い、塾生を教えるに足りる「学力」と「気力」のある方であれば、性別、年齢、出身などは一切関係なく、開倫塾の先生として活躍可能です。

*ちなみに、開倫塾の絶対的禁止事項は、「セクシズム(性による差別)」、「エイジズム(年齢による差別)」、「レイシズム(出身による差別)」です。

②事務やカウンセリング、校舎管理など、教科を教える以外の仕事も山ほどあります。

③開倫塾でよければ、元気に働ける間は、85歳過ぎまで働く。たとえ週1回、1時間でもOKですから、元気に働く。85歳過ぎまで働ける職場づくりが、開倫塾の目標です。

(6)「テレワーク推進企業」

①開倫塾の仕事の中には、本部事務所や校舎でなくても、自宅などでできる仕事がたくさんあります。

②2017年より、作業の見直しや標準化を大幅にすすめ、「テレワーク」を大いに推進したく存じます。

③現在でも、一部業務を自宅等でやって頂いております。

(7)「健康経営企業づくり」

①まずは、「歯科」を含む「定期健康診断」の全員受診と診断結果の最大活用が第一。

②そのために、総務部に「健康経営企業推進室」を設置。健康診断をしてくださっている病院と産業医、顧問をお願いしている歯科医の先生方との協力を綿密にして、非常勤講師や事務パートの皆様を含む全社員の健康づくりに励んでいます。

③毎学期に一回ずつ、産業医や地元の足利工業大学看護学部長の先生方を講師としてお招きし、「健康ライフを考える会」を開催。

(8)①開倫塾では、社員が被選挙権を行使する際には、社員としての身分のままで立候補でき、また、公職を離れた場合には元の職に復帰できます。

②公民としての社会的義務を果たすことを支援する企業を目指しています。

③ただし、被選挙権を行使し、選挙に立候補する社員を企業として応援するか否かは、政策内容によります。社員同志が応援するのは自由です。

 

おわりに

(1)2016年1月から12月まで12回にわたり、高井伸夫先生から教えて頂いたことをどのように活かしたらよいかについて、私の拙い文章をお読み頂きありがとうございました。

(2)私自身、大学を出て29歳まで、開倫塾を創業するまで司法試験の勉強をし、また、実の弟の故林俊夫(ペンネーム、森圭司)が弁護士をしていたため、弁護士である髙井先生にお教え頂いたことをいつも特別な親しみと感謝をもってお伺いしておりました。

(3)お教え頂いたことを、少しずつ温め、試行錯誤、失敗に失敗を重ねながら、実行に移し、今日に至っております。これからも、読者の皆様とともに、高井伸夫先生にお教え頂き、一歩一歩確実に前進して参りたいと存じます。

ありがとうございました。

感謝

―2016年12月26日(月) 林明夫記―

 

開倫塾のホームページ(www.kairin.co.jp)に林明夫のページがあります。

毎週、数回更新中です。

お時間のあるときに、是非、御高覧ください。


 

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2016年12月10日(土)7:19 中目黒公園にてアゲラタムを撮影
花言葉:「信頼、幸せを得る」

 

 

 

成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第5回(最終回)

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、最終回は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

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■今回、話を伺って、私(鮒谷)が強く感じたのは、

私自身、十数年の長きに渡り、

莫大な量のコンテンツをネット上に発信し続けてきたわけで、

それが「私自身の思索のすべて」とまでは言わないにせよ、

それらをすべて吸い上げ、解析すれば、「私がどのような人物であるか」、

私という存在が、おおよそ理解されてしまう時代が遠からず、

そしておそらくは間違いなく、訪れるであろうということです。

 

■とはいえ、(以下、異論もあるかとは思いますが)

これから時代において、それを恐れて、

一切の情報を発信しないという選択は許されなくなりつつある、

のではないでしょうか。

 

■あるいは、もし、発信しないという選択を取ったとすれば、

「伝えなければ、伝わらない」わけだから、

その分、発信することに対する報いが少なくなるのも仕方ない、と自らを納得させるしかない、

という二律背反状態に置かれることになるのかもしれません。

 

■とはいえ、考えてみるとやはり、

「社会に対して何らかの貢献をする」「仕事上で成果を残す」

ことを心がけようと思ったら、

やっぱり、どうしたって、一切の発信を止めることはできないわけで、

であるならば、やがて、発信してきた情報から解析されるであろう、

「(私の)性格、価値観、思考、態度、姿勢」等々について、

解析されても問題ないように(!?)

今から自らを律し、躾け、陶冶していくしかないのではないか、と思われた次第。

 

■そのようなことは以前より、漠然とは考えておりましたが、

この度の講演を聞いて、漠とした思いが確信に変わりました。

どのみち、鮒谷という人間は近い将来、(もちろん私だけでなく、あなたもそうです)

外面のみならず、内面も含めて丸裸にされるわけだから、

「(永遠の理想であるところの)本物の存在」

になれる日は永久に訪れないとはいえ、目指すべき北極星として、

「本物」を目指し、日夜、精進を重ねていくことが

来るべき将来に向けて、今からできる最適、最善の準備、といえるのかもしれません。

 

■もちろん、私を含め、あなたも、あるいはこの世の全ての人間は、

これからも、そしてこれまでも不完全であり続けるわけであり、

それがAIの発展とともに、白日の下に曝け出されることとなるわけだから、

この大局的な流れの中で、それなりの時間をかけて

「新たな人間観」「新たな倫理観」が構築されていくのでしょう。

 

■だからこそ、(以下は仮説ですが)

どうしたって人間、聖人君子たり得ないわけであり、濁りから逃れることはできませんが、

多少濁っているけれども相対的に許容できる、

あるいは濁りきっていてとても社会的に許容されうる存在ではない、

といったことが見透かされる時代が遠からず訪れるのであるとするならば、

そうした未来が訪れる前提で、

今から「自らを律し、躾け、陶冶する」日々を過ごすことが

(一見、大変なように見えてその実)

「安寧の未来を手に入れる最善の道」なのではないかということを、改めて考えた次第です。

 

■こうした日常が習慣化されたレベルで実現できるようになれば

「仮説が当たっても、当たらなくても、未来の泰平が約束される」ようにも思われます。

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全5回にわたって、株式会社労働新聞社と高井・岡芹法律事務所の共催で、特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」についてご報告させていただいた。

AIは今こうしている間にもすさまじいスピードで進化している。すべての人間にとって身近でかつ重大な問題であることは間違いない。少しでも読者のAIへの興味関心を喚起できていれば幸いである。

 

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2016年12月4日14:41 千代田区九段南3にてポインセチアを撮影
花言葉:「祝福、幸運を祈る」 

 


第19回人材グローバル化(終)
(2008年11月3日) 

 

 

協調性を重んじる意識

今年のノーベル物理学賞・化学賞を日本人が計4人受賞したことは、日本による研究が国際的に評価された結果である。自然科学3分野に限っていえば、日本人(出生時)受賞者はこれで13人になるが、同分野全体の530人に比べれば僅かにすぎない。そして、日本人受賞者には米国籍を取得したり米国の研究所に在籍している方が多いことを考えれば、純粋に日本の力であるとはいい得ず、素直には喜べない。日本国籍あるいは日本国内の研究所では世界に羽ばたけないという現実が研究者の世界にあるといわれて久しいが、改善が遅々として進んでいないようだ。

オリンピックを成功させた中国は、次なる目標としてノーベル賞受賞者の増大をめざし、全学者を叱咤激励していくに違いない。そこで日本もさらなる精進が必要であるが、それは研究者のグローバル化以外にない。

前回も述べたが、日本は人口減少の桎梏から逃れられない。2015年には世帯数も減少局面に入ると推計されているので、国力はあらゆる分野で衰退していく。その結果、世界における日本のプレゼンスは大いに低下し、経済では世界に相手にされない国となってしまうだろう。そのため、日本は経済的にもグローバル化せざるを得ず、幼稚園・小学校から実践につながる語学教育をたたき込むことは勿論のこと、日本史・世界史等の充実を図っていかなければならない。文部科学省が推進したゆとり教育などは、世界に遅れをとるあまっちょろい政策であることを自覚しなければならない。そしてダイバーシティ教育を単元として採用することも、グローバル教育の一環として必要になっていくであろう。今の日本の教育のままでは国内有名大学を卒業したとしても単なる井の蛙にすぎない。

今の日本には、「第一の開国」(明治維新)、「第二の開国」(戦後復興)に続く「第三の開国」=「制度疲労を乗り越え、グローバル化を加速する」が必要であると説く文献は、私の認識と同一であるといってよい(『2015年の日本』東洋経済新報社)。

極東の島国であるという地勢的な問題もあり、日本人はグローバル化が不得手とみられがちであるが、諸外国と比べて日本人・日本企業は協調性を重んじる意識が高いという点は、グローバル化に向けての長所である。これを自覚し長所を伸ばしていけば、日本人はグローバル化が不得手と決め付けることはできない。

多様な人々と共に働き、社会を構成するには、民族・国籍等の属性を超越した生身の人間としてのコアな部分が、より一層重要な価値を持つことになる。それを象徴的に表現する言葉として「ハートワーク」があるが、これは「良心・善意・成長」を基本とする概念である。そして、「ハートワーク」よりもなお一層人間性如何が問われるものとして、「ヒューマンワーク」という概念が生まれる。これは、心身を限界まで尽くして、「血と汗と涙の結晶」としての全人格・全人間性をかけての自己表現をすることであり、人間の理想である「夢・愛・誠」の世界に通ずるものである。どんなに些細なことでも相手のことを考え、一生懸命に尽くし、「結晶」を見せることによって、猜疑心や反発で頑なになった心を溶かすことができるのである。

余りにも繊細すぎる表現や手法は普遍性を失い、民族性や文化が異なる相手には通じない。人間関係において、日本人が血と汗と涙をともに流すことができる存在として、外国人に認識してもらう態度を取れるかどうかが課題となるのである。

 

外に向け発信する努力

人事労務の課題としては、グローバル化には「日本ファン」を作ることも重要である。我々が相手国を尊敬する気持ちと同様に、日本文化に対する敬意を持つ人でなければ、パートナーとして選ぶことはできない。

中国人が日本を見て憧れるのは、よくある現象である。私の上海事務所と提携している中国人弁護士は、この夏初めて訪日した折の滞在記でその感動を語っていた。きれいな空気・青い空や海に感激するだけでなく、日本人社会の緻密さに強烈な印象を持ち、清潔感や繊細かつ緻密な美意識に富んでいること、日本人の生活が秩序立っていることに感動していた。そのように感じる中国人は非常に多い。

こうした気持ちになってくれる外国人を増やすことは、日本のグローバル化を下支えする重要な要素であるから、海外企業における人事労務は内にこもってはならず、外に向かって日本の良さを発信する努力をしなければならない。

また、企業がグローバル化すれば、自国の技術力は当然現地にも広まり、それを凌駕しようと各国のライバルが磨きをかけてくるから、他国の追い上げに負けぬよう自らの技術力・技能をさらに進化させなければならない使命を負うことになる。「技術」はデジタルな世界であって、教えたり伝えたりできるものだが、

「技能」はアナログな領分であり、教えることのできない匠の世界である。そのため、技能を身に付けるためには、民族・国籍を問わず、血と汗と涙の結晶を求めて磨き続けるしかないのである。

そしてこの論稿の最後に、明治30年代に日本人で海外経営に成功した人物を紹介しておこう。それは、のちに東京市長となった後藤新平(1857~1929)による台湾統治である。後藤は日本人が台湾に行って、台湾人を日本人のようにしようとしてもできるはずがないし、やってはならない、現地の人々の習慣を重んじるべきであるということを旨とし、台湾全土に向かって「民政優先」を宣言し、港や道路、鉄道を整備し、東京よりも早く上下水道まで完備したという。また殖産のためには、郷里(陸奥)の後輩、新渡戸稲造をスカウトし、彼が提言したというさとうきびの品種改良の大成功で、台湾に多くの富をもたらした。後藤と新渡戸は台湾の産業育成と近代化に大いに成功したのである。

 

他国の幸福を願うこころ

晩年の後藤がことあるごとに説いて回った「自治三訣」、つまり「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」という思想は、日本人の海外経営に当たっても教訓を与えるものである。即ち、経営の現地化に当たっては、現地の文化・習慣等を尊重して現地に合わせる姿勢を前提としたうえで、絶えず刺激を与え続けることが重要である。

今の世界的な金融不安により経済沈滞が、グローバル化を停滞させると見る向きもあるようだが、グローバル化という時代の流れはもはや決して押し止めることはできない。政治、経済、文化をはじめあらゆる面で世界と強く連動する時代のなのである。今後も世界の中で日本企業の存在感を保持し高め得るかは、謙虚で他国の人々の幸福をも心から願える人材を育成できるか、そして、そうしたグローバルに対応できる人事労務制度を構築できるか否かにかかっているといっても過言ではない。

 

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2016年12月10日(土)7:20 中目黒公園にてゴールデンボーダーを撮影
花言葉:「友情、献身」 

 

 

 

平成28年10月12日「AIと人事労務セミナー」 開催報告第4回

 

10月12日(水)開催の特別セミナー「AI(人工知能)が拓く未来 ~人事労務分野への影響を探り可能性を考える~」について、第4回は、第2部「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか~その背景と今後の可能性について~」について、講演要旨と、講師である藤井 薫 氏(株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長)のご感想を掲載する。

 

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1.講演要旨

【第二部:㈱リクルートキャリア リクナビネクスト編集長 藤井薫氏】

<新しい時代の幕開け>

今は第四次産業革命。AI で加速している。

・「新しい人事」の幕開け:能力の刷新、仕事の定義、人類のあり方が問われている。

・民多利器、國家滋昬。民多智慧、邪事滋起。(老子の言葉より)

訳:民に利器(=AI)が多く行きわたると、国はますます混乱する。老子の心配が現実になりつつある。

・今こそ民多智慧になるべき。訳:民に知恵多くなるべき。

人事プロフェッショナルこそ、現代の利器(=AI)の可能性と留意点を知らならない。

 

<人事は何故、AIに向き合う必要があるのか?>

・企業を取り巻く3つの変化:

GDP(Global/Diversity/Productivity)、サービス経済化、KKD(勘と経験と度胸) → KDD(Knowledge Discovery in Database)

・人事に要求される新たな力

L人智を超えた多様性対応力、人智を超えた可視化力、人智を超えた意味抽出力

 

<AI ×人事 何ができる?>

・人事のあらゆる領域でAIの利活用が広がっている

人材採用、労働生産性の向上、優秀人材の保持、業績管理・評価、動機付けなど

・グローバルでは既に5割前後の企業が、データで未来予測をしている。

 

<未来の活用例>

・AI×採用

AIが、世界中のWebの海から自社の戦略やタスク、ポートフォリオに合った人材を自動探索したり、景気シミュレーションを活かして、早めに組織構成・配置を変えるように提案する。

・AI×リテンション(維持)

従業員が希望するキャリアプランやプロジェクトアサイン期間、労働時間や日常のコミュニケーションデータから、意欲の低下や体調不良などの異常値がある場合に警告を発し、予防的に仕事やキャリアの見直しを提案する。

 

<人事×AI どう利活用する? 未来の留意点は?>

・Archiveなくして Analyticsなし

・Account (勘定)よりAccountability(説明責任)へ

※AIの限界を示す思考実験

・AI が下記のような提案をしてきた場合、それを実行できるか?

「5 年後、売り上げを、10 倍にする打ち手があります。その答えは、経営陣全員クビ。その理由は説明できません。」

→人事は、「最適解」より「納得解」が大事である。人間の脳を真似る人工知能は説明しづらい。(例:「好き」に理由は無い。)

 

私たち人間は、「最適解<納得解」が必要 。

 

20161109§AIセミナー△1ブログ掲載原稿用_第4回挿入画像.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.講師からの感想

高井先生の構想で始まった『労働新聞社』様の連載「人工知能が拓く未来」にお声がけいただいたご縁で、講演の機会をいただきました。「今なぜ、人事がAIに向き合わなければならないか?」随分、遠大な演台でお話しましたが、思いは一つ。AIが駆動する第四次産業革命の前夜の今こそ、「新しい人事」の幕開けであること。能力・仕事・会社の在り方も激変すること。その推進には、人事プロフェッショナルの概念工事が不可欠であること。そのことをお話しました。

可視化→最適化→自動化。AIが突きつける原因と結果の連動システム(因果律)の広範な社会適応は人・組織の新たな可能性を拓く。ただし全て可視化できるかと言われれば否。縁が起こり、臨機応変が生まれるのが社会の実相です。因果の間には縁がある。因果律ではなく因縁果律。その目に見えない「縁」を見つめ、臨機応変する力こそ、AI全盛時代に人事プロフェッショナルの正念場、真骨頂なのだと思います。私自身も、引き続き、機に臨み、変化に応じ、縁を観つめてゆきたいと思います。

(リクルートワークス研究所 兼 リクナビNEXT編集長 藤井 薫)

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※次回(最終回)は、参加者のお一人である鮒谷周史氏(株式会社ことば未来研究所)よりお寄せいただいたご感想を掲載する。

 

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2016年12月4日(日)14:42 千代田区九段南3にてビオラを撮影
花言葉:「誠実、信頼」

 

 

第18回人材グローバル化(4)
(2008年10月27日) 

 

 

この10月1日に松下電器産業がパナソニックに社名を変更した。同社が目指すのは、真の「Global Panasonic」の実現であるという(同社2007年度決算説明会〔2008年4月28日〕配布資料より)。同社は売上高に占める海外比率が50%程度であり、ライバル社と比べて国内依存度が高いことを弱点として、その克服を成長戦略の一つに掲げた。この社名変更はそこから脱却しようとする姿勢を象徴的に表している。同社は、グローバル化しなければ生き残れないとの判断に立ち未来像を描いていたのだ。

日本企業にグローバル化が必要なのは、諸外国の経済的発展が著しい中で、日本が人口減少から逃れられないからである。日本の総人口1億2700万人余は、2046年には1億人を割り込み、日本全体が“過疎化”し、“うつ状態”に陥るのは明らかである。

 

「海外人事部」の設置へ

そうした中で日本人が活性化し生きていくためには、発展している海外に市場を求め、自らを磨きあげてグローバル化を進展しなければならない。国としても、企業がグローバル化のために求める、より具体的な実学をベースとした最新の知見を集約する研究機関を持つべき時期にきている。海外事情について調査・研究の余裕のない中小企業でも海外進出できるための情報インフラの整備を主たる目的とする部署を置くべきである。

加えて、企業側のより進んだ対応としては、日本人への人事部とは別の組織として「海外会社人事部」を作らなければならない。なぜなら、現地では、労働法・労働慣習に沿って現地人の人事的な枠組みを決める必要があるからである。例えば、幹部に登用した場合の役割・権限・責任・報酬等について、大企業といえども未整備なところが多い。人材の選抜と定着が難しく、現地マネジメントの悩みになっている。いかに小規模の企業でも、小さいなりにグローバル対応の人事部署を設けることが必要となるのである。

経営的には対症療法的な取組みだけでなく、経営体質自体を強化する観点からの継続的取組みが必要となる。その一環としての海外人事部には、国内人事部と同等の権限を付与する必要がある。海外の占める割合が大きくなるにつれ、将来的に国内人事部以上により大きい権限を付与することになろう。

要するに、日本的な感覚だけで現地スタッフの配置・選抜・教育等を行ってはならず、それぞれの海外拠点に相応しい人事対応がなされなければならない。基本的な思想は、年功要素を排除し、能力重視型あるいは成果重視型の制度を打ち立てることである。グローバルに人材を扱う際の統一価値観であり、統一価値観はこれしかない。

企業における現地化にはいろいろな要素があるが、現地化としては人の問題に行き着く。社長たる者、専務たる者、総務、人事、経理、販売等々要職に就く者の現地化を進めなければならない。経営理念のしっかりした企業ほど、海外の現地雇用の社員に日本人と差異なく接していると感じられる。ただし、文化的な背景や社会性の違いなど働く者のモチベーションにかかわる部分等の心理的な面では、日本人の感覚とは異なるケースが多いので、この点留意する必要がある。それらにきちんと対処しながら、日本の本社と情報を共有し、かつ現地雇用の社員に将来展望をもってもらうという観点からすれば、早い段階で漸次現地社員に経営を委ねる必要があるが、本稿1~3回でも述べたとおり容易ではない。

しかし、終局的にはソニー、日産や日本板硝子のように、外国人社長が日本本社のトップに就任することも厭わないスタンスを持つことが、単なる理想論でなく現実的課題としてこれから次々と登場するであろう。

さて幹部候補となる優秀人材の採用と引留め策は、現地雇用の社員がキャリアを明確に描けるかどうか、特に優秀な者にとって、経営トップになれる夢を描くことができるかどうかにかかっている。中国でいえば、残念ながら日系企業ではその夢を果たせる可能性はまずない。そのため従業員は自身について明確な将来像を描けず、日本の企業は欧米の企業に比して劣位に置かれてしまうのである。

 

現地主義を貫く方法

日本企業は未だ終身雇用制を基調とした労務管理であるため一旦採用した者を囲い込む傾向があるから、雇用の流動性を旨とする多民族の行動・資質を理解し難いという弱点がある。

要するに、本人の資質が向上し労働価値が高まれば、当然のことながら転職し易くなる。ここにこそ、実は働く者の「学習権」「キャリア権」(本紙2665~2667号掲載拙稿「注目すべき『キャリア権』」参照)の本質があるといってよい。自分を磨き上げることによって、より広い活躍の場を得て、より高い報酬を得ることができる。これは、グローバル化に伴う当然の現象のみならず、国内企業も「学習権」「キャリア権」を意識して人事制度を改めなければならない時代に来ていることを示している。

企業が従業員に対して教育機会を提供し、実行していく姿勢をみせることが必要不可欠であると意識しなければ、企業はグローバル化を達成し得ない。企業自らの現在の成長だけではなく、将来にわたっての成長をもたらす優秀な人材を引き留めることができなくなるのである。

企業のグローバル化とは、競争が一層激しくなるがゆえに、「絶えざるイノベーション」につながっていくことが肝要である。そのために企業は、新商品・新経営システム・人事等の新諸制度・新事業を創出しなければならない。とすれば、本社の所在地は、企業としてのイノベーションを最も良く実現し得るのはどこかという視点から、全世界の都市を候補として検討される必要が生じるだろう。グローバル化の行き着くところ、企業グループが成長し続けるための本社の海外移転が、現地主義を貫く具体的な検討課題として現実性を帯びてくるに違いない。つまり、真のグローバル化とは、このテーマを真剣な態度で検討する姿勢を持つかどうかにかかっているのである。

それにはまず確固たるグローバル戦略を打ち立て、地域ごとに独自の経営組織を構築し、調和のとれた事業計画を推進する母体を作ることが大切である。

本社を日本国内に限定する拘りや先入観がなくなり、海外への本社移転を、身近な感覚で捉えられるようになると、人事労務のあり方も根本的に変質しよう。そのとき日本企業は“三種の神器”~「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」の呪縛から解放されることになるだろう。

では、日本企業の近い将来の新三種の神器とは何か?これについては多くの議論を重ねていく必要があるが、目指すべき方向性としては、①「キャリア権の尊重(個人の職業キャリアと人材教育の重視)」、②「ダイバーシティ(性・年齢・国籍によらない雇用の多様性)」、③「日本的成果主義(プロセスと成果の評価)」ではないかと思われる。少なくとも、これらを充足できない企業は脱落する。

 

 

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高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
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