当社では3月末で60歳の定年退職を迎える社員がおり、当該社員が継続雇用を希望していることから、再雇用することを検討しています。
再雇用の際の労働条件はどのように設定すればよいでしょうか。当該社員の希望に応じた労働条件にしなければ、高年齢者雇用安定法違反となってしまうのでしょうか。

高年齢者雇用安定法第9条第1項は、65歳未満の定年を定めている事業主に対して、定年の引き上げ(第1号)、65歳までの継続雇用制度の導入(第2号)、定年の廃止(第3号)のいずれかを講じることを求めていますが、第2号の継続雇用制度を選択した場合、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で自由に決めることができるとされています(厚生労働省ホームページ・高年齢者雇用安定法Q&A・Q1-4参照)。

そして、仮に労働者の希望する労働条件について企業がこれに応じず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、事業主が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません(厚生労働省ホームページ・高年齢者雇用安定法Q&A・Q1-9参照)。

したがって、定年後の再雇用の際の労働条件を定めるにあたっては、必ずしも当該社員の希望に応じたものにする必要はありません。

 

もっとも、事務職に従事していた労働者に対して、定年後再雇用の際にパートタイマーとしての清掃業務等を業務として提示したことについて、トヨタ自動車ほか(定年後再雇用の選定基準の相当性)事件(名古屋高裁平成28年9月28日判決)において、裁判所は、定年後再雇用の際に定年前の業務と異なった業務を提示することは許されるとしつつも、「両者が全く別個の職種に属するなど性質の異なったものである場合には、もはや継続雇用の実質を欠いており、むしろ通常解雇と新規採用の複合行為というほかないから、従前の職種全般について適格性を欠くなど通常解雇を相当とする事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されない」と述べ、結論として、本件では「実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められないのであって、改正高年法の趣旨に明らかに反する違法なものであり、被控訴人会社の上記一連の対応は雇用契約上の債務不履行に当たるとともに不法行為とも評価できる。」と判示しました。

本判例によれば、定年後再雇用の際に会社が提示する業務が定年前の業務に対して「全く別個の職種に属するなど性質の異なったもの」である場合には、高年齢者雇用安定法の趣旨に反し、債務不履行および不法行為に該当することになりますが、「全く別個の職種」の具体的な判断基準は示されていません。

この点については、今後の裁判例の蓄積を待つほかありませんが、再雇用後の業務内容については、できるだけ定年前と同様の業務を提示することが望ましいと考えます。

 

(※ 参考)

厚生労働省ホームページ「高年齢者雇用安定法Q&A」

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/