遅刻や急な欠勤が多く、勤怠状況が悪かったアルバイトを雇止めしたところ、所轄の労働局から「あっせん開始通知書」と題する文書が届きました。
文書には、アルバイトの言い分として、「雇止めは無効なので、引き続きの雇用を求める。また、違法な雇止めの慰謝料として50万円を支払うように」と記載されており、来庁の日時が記載されています。どのように対応すべきでしょうか。

担当者 高亮 弁護士

前回は、労働局のあっせん制度の概要、参加・不参加の決定について説明しました。今回は、あっせんへの参加あるいは不参加の場合の具体的な対応について説明します。

 

(1)不参加の場合の対応

労働局のあっせんに不参加の場合は、労働局の担当者に対し、「あっせんには参加しない」との意向を伝えれば、あっせんは開催されずに終了します(不参加の理由等を伝える必要はありません。)。

ただ、あっせんに参加しない場合、労働者としては、訴訟・労働審判等の更なる手段を執ることが予想されます。そのため、雇止めの根拠となる証拠(例えば、遅刻や欠勤の記録となるタイムカード、PCのログイン記録等、注意指導をしたメール・文書)を保管するとともに、当該アルバイトの上長や同僚から聞き取った記録等をメモにまとめるなどして、紛争になった場合に備えておくことが重要です。

 

(2)参加の場合の対応

労働局のあっせんに参加する場合、あっせん期日であっせん委員から労働者を説得してもらい、有利な内容での解決を図るためには、あっせん委員に対し、あらかじめ雇止めに至る経緯及び雇止めに合理的な理由があること(アルバイトの勤怠状況の悪さ、会社による注意指導にもかかわらず改善がなかったことなど)について、意見書及び証拠を提出することが適切です。

なお、あっせん委員は弁護士等が労働局の委嘱を受けて務めているものであり、多忙であることが多いため、意見書については、裁判の書面のように数十頁にもわたる分量になることは避け、長くとも10頁程度にまとめ、証拠についても重要なもの(設問では、遅刻の事実が分かるタイムカード、当日朝に急に欠勤の連絡をしてきたメール、会社からアルバイトへの注意のメール等)を厳選して提出することがよいと考えられます。

あっせん期日では、労働者と会社側が交互にあっせん委員の部屋に赴き、事実確認及び話合いによる解決に向けた協議をすることになります。

設問のような雇止めに関する事案について、あっせんでは会社側が一定の解決金を支払い、アルバイトが退職を受け入れるという内容で解決することが一般的であり、解決する旨の合意が成立した場合は、その旨の合意書が作成されます。

解決金の金額は、会社の主張に相応の根拠があるような場合では1~2ヶ月分程度で妥結する場合が多いのではないかと思われます。

 

(3)合意書の条項に関する留意点

なお、合意書について、解決金の支払及び退職の確認以外の条項としては、以下のような条項が盛り込まれることが一般的に見られます。

・ 秘密保持条項(あっせんに至る経緯、あっせんの内容、合意内容を第三者に口外しないとの条項。例外を設ける場合は、例外の対象を特定する。)

・ 清算条項(合意書に定めた内容以外に、労働者と会社との間に債権債務がないことを確認する条項)

・ 誹謗中傷の禁止を定める条項

・ 離職票の記載内容に関する条項(自己都合退職または会社都合退職)

・ 貸与物(社員証、健康保険証、携帯電話、鍵、PC等)の返還に関する条項

特に、秘密保持条項及び清算条項は、紛争の最終的な解決の確認やレピュテーションリスク等を避ける観点から、会社にとって設ける必要性が常に高い条項です。その他の条項については、事案の性質により、設ける必要性が異なり、あまり多くの条件を求めると、解決自体が困難になるおそれがありますので、あっせんによる解決をどの程度優先するかを考慮して、要求や譲歩の当否を決することが適切です。

 

以上