遅刻や急な欠勤が多く、勤怠状況が悪かったアルバイトを雇止めしたところ、所轄の労働局から「あっせん開始通知書」と題する文書が届きました。
文書には、アルバイトの言い分として、「雇止めは無効なので、引き続きの雇用を求める。また、違法な雇止めの慰謝料として50万円を支払うように」と記載されており、来庁の日時が記載されています。どのように対応すべきでしょうか。

担当者 高亮 弁護士

(1)あっせん制度の説明

労働局のあっせんは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律5条に定められた制度であり、個別労働関係紛争(労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生するおそれがある状態)の解決の援助を行うため、労働局の紛争調整委員会の委員が当事者双方の言い分を聞き、非公開で話合いによる解決を試みる制度です。

紛争調整委員会の委員は、弁護士等の法律や労働問題の専門家が委嘱されていることが多く、中立的な立場から労働者・使用者双方の話を聞き、和解案の作成や各当事者の説得を行います。

なお、労働者があっせんの申請をしたことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(同法5条2項)。

 

(2)参加・不参加の決定

あっせんは、あくまでも話合いによる解決を試みる制度であり、参加するか否かは、申請をされた側の自由に委ねられており、参加をしないことで、申請をした側の主張が認められるなど、法的な不利益が生じることはありません。

また、話合いで解決を試みる以上、参加したとしても、双方の条件が一致せずに、合意がまとまらず、解決に至らないこともあります。

しかしながら、あっせんには、簡易迅速な手続きで早期に労働紛争を解決できる可能性があること、中立的な第三者が間に入ってくれることで、感情的な対立を回避できて合意がしやすい可能性があること、解決金の水準も訴訟等の手続きよりは低い、といったメリットもあります。かつ、あっせんが不調に終わった場合、労働者としては次なる手段(弁護士への相談、訴訟や労働審判の提起、労働組合を通じた団体交渉等)を取ることが予想され、それらの手段を取られた場合、最終的に勝訴できたとしても、対応により多くの費用と時間を費やすおそれがありますので、そのように事態がエスカレートする前に、あっせんの段階で早期解決を目指すことは、十分検討に値すると考えられます。

 

そのため、以下のような事情を総合的に考えて、参加の可否を決めることがよいと考えられます。

  •  更なる紛争になった場合の勝訴の見込み(主張の有効性や証拠の有無)
  •  話合いによる解決の現実的な可能性(先方の提示条件や性格からして、合意の余地がないということはないか)
  •  筋を通すために妥協ができない事案ではないか(懲戒解雇の事案等、当方が妥協して話合いに応じるべきではない事案ではないか)

 

※ 参加・不参加の場合の具体的な対応については、次回(2)をご確認ください。

 

以上